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著作権分科会 法制問題小委員会(第6回)議事録

1 日時  平成17年7月28日(木曜日) 14時〜16時55分

2 場所  如水会館2階 「オリオンルーム」

3 出席者
  (委員)
  市川,大渕,加藤,小泉,里中,潮見,末吉,茶園,土肥,苗村,中村,中山,浜野,前田,松田,村上,森田,山地,山本の各委員,野村分科会長
(文化庁)
  加茂川次長,辰野長官官房審議官,甲野著作権課長,池原国際課長 ほか関係者
(オブザーバー)
  亀谷(社団法人私的録音補償金管理協会事務局長),高比良(社団法人私的録画補償金管理協会専務理事・事務局長),菅原(社団法人日本音楽著作権協会常任理事),椎名(社団法人日本芸能実演家団体協議会・実演家著作隣接権センター運営委員),生野(社団法人日本レコード協会専務理事),上野(社団法人音楽制作者連盟常務理事),泉川(社団法人日本音楽著作権協会常務理事),児玉(社団法人日本映像ソフト協会専務理事・事務局長),竹内(日本放送協会マルチメディア局業務主幹),亀井(社団法人電子情報技術産業協会著作権専門委員会委員長),光主(社団法人電子情報技術産業協会法務・知的財産権総合委員会運営委員会委員長),大森(社団法人電子情報技術産業協会法務・知的財産権総合委員会運営委員会副委員長),河野(社団法人電子情報技術産業協会著作権専門委員会副委員長),中根(社団法人日本記録メディア工業会著作権委員会委員長),石塚(社団法人日本記録メディア工業会著作権委員会委員),岩田(社団法人日本記録メディア工業会著作権委員会委員)
の各説明者

4 議事次第
 開会
 議事
(1) 私的録音録画補償金の見直し[3]
(2) 各ワーキングチームからの検討結果報告
1  デジタル対応ワーキングチーム
2  契約・利用ワーキングチーム
3  司法救済ワーキングチーム
 閉会

5 配付資料
 
資料1   ハードディスク内蔵型録音機器等の追加指定に関する主な意見
資料2 文化審議会著作権分科会法制問題小委員会 デジタル対応ワーキングチーム検討結果報告
資料3 文化審議会著作権分科会法制問題小委員会 契約・利用ワーキングチーム検討結果報告
資料4 文化審議会著作権分科会法制問題小委員会 司法救済ワーキングチーム検討結果報告

参考資料1   文化審議会著作権分科会法制問題小委員会(第5回)議事録
(※第5回議事録へリンク)
参考資料2 文化審議会著作権分科会法制問題小委員会審議予定

6 議事内容
  (中山主査) それでは時間でございますので、ただいまから文化審議会著作権分科会法制問題小委員会の第6回を開催いたします。本日は御多忙中、また暑い中を御出席いただきましてありがとうございます。
 議事に入ります前に、本日の会議の公開につきましては、予定されている議事内容を参照いたしますと、特段非公開にする理由はないと思われますので、既に傍聴者の方にはお入りいただいておりますけれども、この点に特に異議ございませんでしょうか。

〔異議なしの声あり〕

 それでは本日も従来と同様、議事を公開といたします。傍聴者の方には、そのまま傍聴をしていただきたいと思います。
 なお、今回も引き続きまして、事務局からお知らせがございましたように、現在、政府全体で「ノーネクタイ、ノー上着」という軽装を励行しておりますので、本日の小委員会でも軽装でも差し支えないという取扱いにさせていただきたいと思います。
 なお、事務局に異動がございましたので、御紹介をお願いいたします。

(白鳥著作権調査官) はい、それでは7月20日付で事務局に人事異動がございましたので、御紹介いたします。
 私でございますが、文部科学省高等教育局私学部私学行政課専門官から、新たに文化庁長官官房著作権課著作権調査官に就任をいたしました白鳥綱重でございます。どうぞよろしくお願いいたします。
 著作権課長の人事異動の御紹介をいたします。文部科学省研究振興局学術研究助成課長から、新たに文化庁長官官房著作権課長に就任いたしました甲野正道でございます。

(甲野著作権課長) 甲野でございます。どうぞよろしくお願いいたします。

(白鳥著作権調査官) なお、甲野著作権課長の前任の吉川でございますが、文部科学省の科学技術・学術政策局政策課長に転出しております。また、私の前任の山口は厚生労働省の医政局総務課長補佐に転出しております。以上でございます。

(中山主査) はい、ありがとうございました。それでは議事に入ります前に、事務局から資料の確認をお願いいたします。

(白鳥著作権調査官) それでは着席のまま失礼いたしますが、資料の確認をさせていただきます。お手元の議事次第の1枚紙がございますが、この下半分に配付資料の一覧が書いてございます。
 配付資料は全部で4点でございます。資料の1ですが、「ハードディスク内蔵型録音機器等の追加指定に関する主な意見」の1枚紙、そして資料の2から4が法制問題小委員会のもとに設置されております各ワーキングチームからの検討結果報告でありまして、そのうち資料の2がデジタル対応ワーキングチーム検討結果報告、資料の3が契約・利用ワーキングチーム検討結果報告、資料の4が司法救済ワーキングチーム検討結果報告でございます。
 このほか、参考資料といたしまして2点ございます。参考資料の1が前回、第5回法制問題小委員会の議事録、参考資料の2が本小委員会の審議予定となっております。各資料の右肩に番号を打っておりますで、御照合の上、万一不足等ございましたら、事務局までお知らせいただきますようお願いします。以上でございます。

(中山主査) よろしゅうございましょうか。本日も3時間の長丁場になる予定でございますので、初めに議事の段取りについて説明をしておきたいと思います。
 まず、前回は「私的録音録画補償金の見直し」についての議論を行いましたけれども、ハードディスク内蔵型録音機器等の追加指定の論点につきましては、意見の収束を見るには至っておりませんでした。
 したがいまして、本日は事務局よりハードディスク内蔵型録音機器等の追加指定に関する意見を整理していただいておりますので、それを参考に引き続き意見交換の時間を1時間ばかりとりたいと思います。
 なお、本日も前回質疑等のために御出席をいただいた方々にも、改めてお越しいただいておりますので、適宜議論に御参画いただければと思います。
 休憩を若干挟みまして、次の議題(2)の「各ワーキングチームからの検討結果報告」に移ります。各ワーキングチームにおける検討結果につきましては、各座長より各々10分程度で報告をいただきまして、残りの時間を意見の交換にあてたいと思います。
 それではまず、「私的録音録画補償金の見直し」についてですけれども、ハードディスク内蔵型録音機器等の追加指定につきまして、前回から引き続いた議論を行いたいと思います。
 事務局よりハードディスク内蔵型録音機器等の追加指定について、今までの意見を整理していただいておりますので、まずそれを説明お願いいたします。

(甲野著作権課長) それでは事務局より説明をさせていただきます。お手元に配布いたしました資料1を御覧になっていただければと思います。
 「ハードディスク内蔵型録音機器等に追加指定に関する主な意見」。これまで4月28日、6月30日と2回にわたりまして御審議をいただき、それらの中で多くの意見をいただいたわけでございますが、事務局としてこのような形でまとめさせていただきました。
 まず、ハードディスク内蔵型機器を追加指定すべきとの意見でございますが、1つといたしましては、やはりこうしたものにつきましては、音楽のデジタル録音等を主たる用途として想定して開発・設計している、又は、それを目的として販売・購入され、また現実にそのような目的で使用されているのではないかという意見がございました。
 また、2番目といたしましては、すでに補償金の対象となっているMDに対し、ハードディスク内蔵型録音機器は市場においては代替する機器というふうに現状としては捉えられることから、MD等は機器と媒体が一体化していなくてかかっているのに、機器と媒体が一体化しているかといって課金しないというのは公平の観点では妥当ではないのではないか。このような意見もあったところでございます。
 また、3番目といたしましては、現時点において、技術の発展に伴い個々の課金が可能なケース、これは次第に増えてくる傾向にあるように見受けられるけれども、それが可能でないケースも依然として残っているのではないか。そうしたような現状にかんがみると、現実問題としては一種のきめの粗い課金方法である、この補償金によらざるを得ないのではないか、こうした意見がございました。
 また、4番目といたしましては、ハードディスク内蔵型のこうした機器の追加指定をせずに、DRMの強化により対処した場合、消費者への様々な行動の制約あるいは負担への影響はどうなるのか。ユーザーにきちんとこれを問うてみる必要があるのではないかといった御意見や、あるいはそもそもこうした補償金制度が機能しないような場合、著作権法の私的録音録画複製のところの制度的な部分への影響はどうなるのか。こうしたことを考える必要があるのではないか。こうした意見が出されたところでございました。
 続きましてこれは追加指定すべきでないという意見でございますけれども、1番目といたしましては、非常に多かったわけでございますが、この制度自体が多くの基本的な問題を内包しているという認識で、制度の根本的な見直しについて議論することなしに機器の追加、これによって制度を肥大化させるというのは、これは不適切であるだろうという御意見でございました。
 また、2番目でございますが、これは個別にこの内蔵型の機器についてどうかという議論でございますけれども、一体化している、あるいは汎用的に使うものであるということから、追加指定は困難ではないか。そうした御意見がございました。
 また、3番目といたしましては、いわゆる二重徴収ということでございまして、ネット配信の時に課金され、また補償金を支払うというのは二重徴収になるのではないか、という御意見でございました。
 4番目といたしましては、これは補償金を負担することとされている消費者、この消費者の方々が補償金制度の内容や実態についてはほとんど知らないのではないか。そうしたところで機器の追加を行うというのは不信感を増すだけではないか。こうした御意見があったわけでございます。
それから、その他といたしまして、若干法制的な面の御指摘を付け加えさせていただきました。若干2のところとダブる面もございますけれども、そもそもハードディスク内蔵型の機器、これを条文で規定することができるのかどうかという課題があるということでございます。先程少々触れましたように、法律で機器と記録媒体という書き分けをしておりまして、それに基づきまして政令でそれぞれ機器、媒体、区別して規定をされているところでございます。
 そうしたことから制度全体としては、媒体と機器、これが一体化したハードディスク内蔵型録音機器を位置づけることができるのか。少なくとも制定当時は想定をしなかったものと考えることができますけれども、そもそもできるのか、あるいは法律的に可能なのか、困難なのではないかという課題でございます。そうしたことを前提にいたしますと、仮に政令で何らかの指定というものをやる場合においても、法律を何らかの形で手直しする必要があるのではないか、というような議論にもつながってくることがあろうかと思います。そうした意見も出されたところでございました。以上でございます。

(中山主査) はい、ありがとうございました。この資料1のこのペーパーは今までの議論の経緯を事務局にまとめてもらったものでありまして、必ずしもこれが拘束力を持つというわけではございません。この言葉の一語一語を議論しても仕方がないので、これを参考にして議論をしていただければと思います。
 それでは今のハードディスク内蔵型の録音機器等の追加指定につきまして、御意見のある方はお願いをいたします。

(中村委員) 1点、コメントと、それから1点質問をしたいと思います。私は政令に指定する、しないという結論が出た場合に、それに対して異を唱えるものではないのですが、コメントとしてはきちんと行政として判断をしていただきたいということを、前回そのような意見を提出したのですが、もう1度それを申し上げておきたいと思います。
 この件は法律が行政に仕事として政令ということで委任をしておりまして、しかも必要的諮問事項ではありませんから、この小委員会に決定権といいますか、判断権があるとは思いません。したがって、このように意見が割れたということが行政判断の決定理由になるとは思えないわけです。
 仮にこうした議論が行政の判断する上での判断材料になるとしても、拮抗したということが必ずしも不作為が妥当になるということではなかろうと考えます。不作為は不作為でその積極理由が必要なのではないかと思いますので、最終的に行政として判断するにあたっては、積極理由をどこをどうとってそういう結論になったのかということを明らかにしていただきたい。さもないと、行政の責任が曖昧になりはしないかという懸念があります。
 もう1点は、関係者の方が来られているので質問をしてみたいのですが、これも私、前回申し上げたように、この件というのは予算措置を通じてでも調整できる案件ではないかという気もいたしまして、つまり政令云々だけではない、業界の調整マターの色彩もあるだろう。しかしながら、法制小委での議論の帰趨によっては、どうやら我々も何らかのリスクを負うかもしれないということでお聞きしたいのですが、権利者さん、それからメーカーさん双方に対して、意に沿わない結論となった時に、どのように対応されるおつもりかということを聞いておきたい。権利者さんは政令に指定されなかったらどうされますか。それから、メーカーさんは政令に指定されたらどうされるか。簡単でいいですから、考えをお聞かせいただければと思います。

(中山主査) では、簡単にお願いいたします。

(椎名日本芸能実演家団体協議会・実演家著作隣接権センター運営委員) 芸団協の椎名でございます。前回の法制問題小委員会の時に、吉川前課長から御指摘もありましたとおり、iPod等が指定されない場合、実質的には補償金がゼロになっていく、この制度が機能しなくなっていくということになると思います。その場合、ベルヌ条約等との関係から、補償金を前提にしています30条1項の私的利用に関わる制限の条項を見直していただくということを要望していくことになると思います。

(中山主査) はい。それでは亀井さん、お願いします。

(亀井電子情報技術産業協会著作権専門委員会委員長) 電子情報技術産業協会の亀井でございます。もし政令で指定をされるということになりました場合には、1つはやはりそもそも論というものを続けて御審議いただけるようにお願いをしたい。それから個別の議論ということでは、104条の5にございます製造業者の協力義務の範囲というものがいったいどこまであるかという議論について、ぜひお願いをできればというふうに思っております。これも前回、前々回、御報告をさせていただきましたように、汎用的な装置になりますと、何が対象かという点について製造者では判断がつかないから、どこまでを代替、立て替え払いすべきかというところが不透明になってまいりますので、その辺りの議論をお願いしていただくということになります。以上でございます。

(中山主査) それから第1の点につきましては課長にお願いします。

(甲野著作権課長) もちろんこの制度につきましては、法律に制度が立てられ、それに基づいて必要な指定を行うということでございまして、中村委員がおっしゃったとおり、その委任を受けて内閣において決めるべきものというふうに考えておりまして、行政であります内閣が粛々と決めるべきものかというふうに思うわけでございますけれども、やはりいろいろな方々がどのような意見を持っているかということは、十分参照してこれは聞かなければならないことではないかと思います。いずれにいたしましても決断といいますか、決めるに当たりましては、どうしてそうなったかということはきちんと説明をできるような形で決定をしなければならないというふうに思っております。

(中山主査) よろしいですか。他に何か御意見がございましたら。はい、どうぞ、小泉委員。

(小泉委員) 先程お配りいただきました主な意見の中の1の(4)のところで、DRMを強化すると消費者への制約があるという指摘があるわけです。確かにDRMといってもいろいろな技術があるわけで、消費者に好かれる技術もあれば、嫌われる技術もあるだろうと思います。
 DRMの技術と私的録音補償金との大きな違いというのは、DRMの場合は市場に嫌われればただ消えていくだけのことであるのですが、私的録音補償金というのは法定されてしまっているので、固定されてしまうということにあると思います。
 私が懸念しますのは、2の(3)に書かれている二重徴収なのです。二重徴収の問題というのは、もし今回仮に課金をしてしまうと、顕在化すると思います。私的録音補償金を維持したままで二重徴収をやめさせようとすると、結局特定のDRMを指定して法律で禁止するという話になるのだと思うのです。そのように、特定の技術の発展を法律で止めるというのは避けるべきだと思います。このように考えていきますと、先般から申し上げておりますとおり、課金をもう少し様子を見る、DRMの市場での発展の様子を見るというのが妥当なのではないかなと考える次第です。以上です。

(中山主査) ありがとうございました。他に御意見ございますでしょうか。はい、どうぞ、山地委員。

(山地委員) その他のところについて、1点コメントを申し上げます。先程御説明にありました機器と媒体が一体になっているという困難さがあるのは確かでございますけれども、もう1つあると思っております。それは仮に政令を改正することになり、機器と媒体が一体になっているものが追加可能になったとしても、こういう種類の機器をどのようにして日本語という自然言語を使って規定するのかというワーディングの問題があると思っています。
 既に議論もされておりますように、すでに規定されたものにおいてさえ理解が困難だとして、非常に評判が悪いものがあります。私は法技術的にはあのような表現もやむを得ないと思っています。例えば、何百キロヘルツでとか、スパイラルに溝があってとか、素人には極めて理解困難な難しい表現を使わざるを得ないことになっている。それはそれで法技術的にはやむを得ないと思っていますけれども、権利者サイドからは非常にわかりにくいという批判の声も相当出ているわけであります。
 今度こういうハードディスク内蔵型の汎用的機器をそういう文章で書くとなると、極めて困難になることが予想されると思っております。そのことを付け加えさせていただきたいと思います。

(中山主査) 確かにこの3は法律がそこまで政令に委ねているかどうかという点と、今おっしゃいましたように具体的にどう書くのか、書けるのかという2つの問題を含んでいるとは思います。他に御意見ございましたら。
 あと、2.の指定すべきでないという意見の中に、二重徴収の問題とともにコピーをしない人からも取ってしまうという問題も強く出たと思うのですけれども、それを反対の根拠の1つに加えていただければと思います。他に何か漏れているとか、こんなことを言ったはずだという意見で、もし入ってないものがあれば。はい、どうぞ、苗村委員。

(苗村委員) 今まですでに発言したことと重複しておりますが、1つはこの具体的な事例についての判断はぜひ早急にしていただくことが必要だと思います。一般論としての補償金制度そのものの議論は、多分まだ継続してやらなければならないと思いますので、その議論は継続するとして、早急にすべきであるというのが1点。
 それからもう1つは、同じように早急にすべきことがこの2の(4)に書いてあるのですが、つまり今回の結論がどちらになるにせよ、ともかく私的録音録画補償金制度の内容実態について、一般の消費者に対してもっと、また権利者に対してもですが、より積極的かつ具体的に、特に量的な事実をぜひ通知していただきたい。
 時々いろいろ誤解があるのは、現在の例えば私的録音補償金制度が媒体当たり数十円であるというふうに考えている消費者がいて、高い高いと言っていたりする。そういうことが現実にいろいろな場で議論されているのですが、実際には2円程度である。それで何曲も録音できるということが知られないままで、ただ私的録音補償金制度は不都合だという消費者が多いというのも実態ですので、知らないだけではなくて誤解をしていることも含めて解決すべきだと思います。
 それから1つ、単なる質問ですが、その他に書いてある中身と2の(2)は、これは別件なのでしょうか。同じことを言っておられるのか、違うことを言っておられるのかが、少し分かりにくかったのですが。

(甲野著作権課長) かなりの部分同じでございますが、あえて申しますと、2の(2)のところは汎用機器であるということを理由にして、追加指定は困難であるということを言っているという点でございまして、一体化しているから追加指定は困難であるという部分につきましては、同じでございます。

(中山主査) 3のその他はかなり技術的な問題で、これはもし条文できちんと書けるのならば別に反対の意見ではない、書けないならばできないということを言っているのであり、1.とか2.は現実的にそもそもいいとか悪いとかという話なので、少し性質が違うような気がしますが。
 それから最初におっしゃった具体的な事例を検討すべきだということですが、具体的な事例というのはどのようなことでしょうか。

(苗村委員) 失礼しました。説明が悪かったのですが、前に問題点といいますか。論点を分けて出されましたが、そのちょうど1番目の事例、1番目の論点についての話です。ですから、より汎用機器の話とか、より長期的な問題は別として、具体的に音楽専用として実際に世の中に出ているものについてどうするかという、その問題です。

(中山主査) 具体的にはiPodとか、あるいはそれに類するものについてという、こういう趣旨でよろしゅうございますか。

(苗村委員) はい、そうです。

(中山主査) 分かりました。他に、はい、山地委員。

(山地委員) 2点コメントいたしたいと思います。1つは二重徴収の問題でございまして、私自身は小泉先生がおっしゃった懸念を同じく抱くものであります。ただコメントさせていただきたいのは、この二重徴収については「そうではない」という意見があるわけでございます。それは、オンラインの音楽販売について許諾しているのはパソコンに取り込むまでである。したがって、そこから先へiPodのような音楽プレーヤーに転送することは許諾の範囲外だ。そういう意見があるわけですけれども、しかし現実を見れば、オンラインのミュージックストアから買ってダウンロードしたものは携帯の音楽プレーヤーに入れてみんな聞いているわけなので、そこまでを対象にして許諾されていると理解するのが普通ではないかと、私は思っております。
 それから2つ目のコメントは、1の(1)のところでございますが、主として現在音楽に使われているのではないかと書いてございます。確かに今日現在、日本では主としてかもしれませんが、技術の変わりようは非常に速いようでございまして、もうアメリカではすでにiPodについて、ポッドキャスティングが圧倒的な勢いで伸びているわけであります。
 これは例えばウェブログというインターネット上の文字情報を音声にして聞くとか、あるいは朝早いニュースを録音しておいて、それを通勤途中の電車の中で聞くとか、あるいは日本人なら英会話の勉強のために聞くとか、そういう使い方なのですね。ですから、非音楽の使い方が急激にもう今すでに増えている状況にあるわけであります。
 したがって、今日現在主としてだからというので立法すると、2〜3年後にはまた大変世の中が変わっているということにもなるのではないでしょうか。したがって、その辺の状況判断とか市場調査も大事ではないかと思っております。

(中山主査) はい。それでは村上委員。

(村上委員) 私の意見は基本的にこの2の1で、基本的問題を内包しており、根本的に見直しについて議論することなしに追加指定することは不適切だというものです。けれども、確かにこの問題は短期間というか、至急けりをつけなければならないという問題だろうと思います。それで仮に専用機に絞って追加指定するということになるならば、多くの問題を内包している基本的な制度についても解決せざるを得ないというのが、多くの人の思っていることだと思います。
 例えば2年以内なら2年以内、3年以内なら3年以内。それから、ここでやるのがいいのか、もう少し利害関係者を広く含めた場でやるべきかどうか。そういう場所でこの補償金制度の廃止も含めて抜本的に見直しするという、最終的に全体の決着をつけるということを、どこかに条件付きで入れて、それで専用機だけの指定をするという、そのくらいの手当ては実施すべきというか、仮に本当に専用機だけを指定するということになったら、ぜひそういう形での条件付けはしていただきたいと思います。

(中山主査) 前回も申し上げましたとおり、仮に指定するとしても抜本的な検討は必要だろう、仮に指定しないとしても、そのままで終わりということではなくて、やはり抜本的な議論は必要になるのではないかとは思います。おっしゃるとおり、恐らく2年なら2年という期限を指定するというところに意味があるのではないかと思うのですけれども。
 他に。はい、どうぞ、加藤委員。

(加藤委員) 基本的には、今村上先生がおっしゃったように、私も2.(1)で言っていることをこれまでも重ねて申し上げてきたわけでございますので、追加指定するのがいいのかどうなのかということ以前に、現行の私的録音録画補償金制度ができた時、もう十数年前でございますけれども、現在のようにパソコンやインターネットがこれほどまでに普及している時代ではない時に作られた制度でございますので、現状に合っていないということ、それから多くの消費者がやはり知らないということも含めて、根本的な議論をする必要があるだろうという考えは全く変わっておりません。
 それから主な意見、資料1の1.(4)のところでDRM強化により対処した場合、消費者への制約・負担を考える必要があるというようなことも書かれていますが、これは具体的にどういうことなのか。仮にこういうようなことがもし、起こらないと思いますけれども、起こることが想定されるのでしょうか。

(中山主査) この点については、課長からでよろしいですか。

(甲野著作権課長) DRMの強化ということになりますと、いわゆるコピーガードがかかっているという状態になるわけでございます。そうしますと、家庭内で自由に本来ならば他の媒体に移すということが30条の1項でできるにもかかわらず、それがあるために家庭内でもこっちからこっちに移すということができないという状態が起こるわけでございまして、それを消費者への制約という形で表現させていただきました。
 また、それを前提として、やはりネットの配信、その他によりまして、個別に課金をするという制度もどんどん広まりつつあるわけでございますが、そうなりますと、具体的にそこでその場合に消費者が支払うお金と、それから先程1件当たり2円というような御紹介がありましたけれども、それと比べると負担はどちらが大きいのだろうか、そういうような問題意識が提示されていたというふうに理解をしております。

(加藤委員) 私、技術に詳しくないので、これはメーカーさんにお尋ねした方がよろしいのだろうと思うのですけれども、仮にこのようなことが起きた場合には消費者はノーと言うはずですよね。そういうビジネスが成熟しているわけがないわけで、こういうことを想定できるわけでしょうか。メーカーさんに教えていただきたい。

(中山主査) それでは亀井さんでよろしいですか。

(亀井電子情報技術産業協会著作権専門委員会委員長) 奇しくも今朝の日経だったでしょうか。放送がコピーワンスから少し広がるという議論がなされると報道がありました。あれはまさに市場が受け入れていないという1つの証左だと思います。したがいまして、全く禁止するというようなシステムになってしまうとすると、われわれメーカーもこれは商売できないということでございますので、そこはもっと柔軟な、DRMというのはもともと柔軟な仕組みでございますので、そこを使って利用者の方にも受け入れていただく、権利者の方にも受け入れていただく仕組みというのを作っていくということになろうかと思います。

(中山主査) よろしいでしょうか。

(加藤委員) ここの(4)のところで消費者への制約や負担のことだけマイナスのお話だけ出るのですけれども、現生の権利者の方にもお考えいただきたい。こういう技術的な保護手段が進むことによって、権利者の方の権利はほぼ管理が強化していくことにはつながらないだろうかと思いますが、いかがでしょうか。

(中山主査) はい、どうぞ。

(椎名日本芸能実演家団体協議会・実演家著作隣接権センター運営委員) 基本的に1つ1つの録音が管理されて権利が守られるということが、もちろん権利者としては反対すべきことではありませんし、歓迎すべきことだと思っているのですが、家庭内にまでギチギチにそういうルールみたいなものが入り込んで、自由にコピーができないような状況というのはどうなのかなということは思います。文化ということで考えた場合に、理想的な状況であるかどうかについては疑問だと思います。
 それからここに「制約・負担」と書いてあるのですが、DRM技術もただではないわけです。DRM技術のコストというのは必ず消費者に転嫁されている事例が、今まで携帯なんか見ていても同じことなのです。結果的に今の補償金よりはるかに大きな負担をすることにならないかということは、すごく懸念しております。

(中山主査) この点、前回苗村委員からの問題提起だと思うのですけれども、何か補足することございますか。

(苗村委員) 私はこの前も同じことを申し上げましたが、個人的にはぜひDRMでやってほしいということを10年前からずっと言い続けております。
 問題は、例えば音楽1曲当たりDRMのコストがいくらで使えるかです。それが10円以内であれば、それはかなりいいでしょうが、現状どうもそうではない。数十円かかるだろう。ですから、これから10年後どうなるかという議論は、ぜひ私もDRMのほうに一本化したほうがすっきりすると思うのですが、現状では例えばMDの場合に、先程のオンラインで入手したものであれ、レンタルで借りてきたものであれ、自由にコピーができていて、実質的に消費者側にかかる付加的なコストはほとんど無視できる状態になっています。それが前のコピーコントロールCDと同じような形でいろいろDRMもかけていくと、その値段が多分2円よりもはるかに高くなるだろうという、そこを心配しているわけです。
 そこができますということを提案者側が、つまり補償金よりもそっちの方がいいと言う、DRMの方がいいと言う側から積極的に言っていただきたいのですが、そういう話がなくて、将来はDRMは例えば10円以内でできるだろうと、そういったような見通しだけで今走ることに心配をしている。1度補償金制度をなくせば、後からもう1回入れるという答えは多分ないと思いますので、じっくりきちんと議論をすべきだというのが私の意見です。
 ただ、当面の問題と根本的な議論とはちょっと切り分けないと混乱を起こすという、それだけの話です。

(中山主査) はい、どうぞ、土肥委員。

(土肥委員) 私は前回の委員会における発言としては、追加指定を考えた方がいいのではないかというふうに提案をしたわけであります。
 それは現に特定機器、特定記録媒体に関しては補償金が対象になっているわけですね。内蔵型録音機器、汎用型ということでこれを落とす積極的な理由が見当たらない。つまり、そもそものスタートとして考えるべきことは、こういう複製がなぜ自由にできるのか。個人複製あるいは家庭内複製といえども、これは条約上明確に、著作物の通常の利用を妨げず、かつ著作者の正当な利益を不等に害しないことを条件とすると、こう書いてあるわけでありますので、この条件に合わないようなそういう複製が行われているという事態がある時に、ここを落とすというのは非常に公平性に反するということが言えると思います。
 それでいくつかこれまで反対の意見をおっしゃる方が出ておるわけでありますけれども、二重徴収等の問題については、例えば通信カラオケなんかの問題がすぐに出てくるわけでありますけれども、そこについても同じようにおっしゃるのかどうかですね。そもそも著作権法のパラダイムというものは、そこを分けて考えているということでありますから、パラダイムを全部ひっくり返してしまうというのであれば別なのですけれども、そういう構成を前提にする以上、こういう問題は起こってくるというふうに思っています。
 それからこれを入れる時に、むろん消費者等の了解が得られるということは必要なことなのだろうと思うのですけれども、ある一定期間、暫定的に追加指定するということであれば、恐らく今の補償金規定のところの(1)が特定機器で、(2)が特定記録媒体とこういうふうになっているわけでありまして、それぞれそういった額についても、その状況に応じて決められるのだろうと思います。
 そうすると、この暫定的な制度の中では、そこの額等についてのものも恐らくそういう対応はされるのではないか。そういうことで、今回追加指定を暫定的にやったとしても、消費者を含めた社会の了解を得られるのではないかなというふうに考えております。

(中山主査) 通信カラオケの問題とは。

(土肥委員) 公衆送信と演奏権というものは別なわけですから、そこは。そういう意味です。ここの場合も二重徴収、これは送信のところの話ですよね。公衆送信の部分と複製の部分の二重の部分、そういうふうに聞いたのですけれども、それは間違っておりますでしょうか。公衆送信の部分と、それから複製の部分。そこは分けて考える。こういう理解です。

(中山主査) はい、どうぞ、山地委員。

(山地委員) 今のところですが、私の理解は、二重課金というのは何を言っているかというと、オンラインミュージックストアで、例えば1曲を1ドルで買う。そのお金を、何に対して払っているかというと、日本では、公衆送信権があるわけですが、それを含めて曲を自分のパソコンに複製して、なおかつそれを自分の持っている携帯音楽プレーヤーに複製をして、それを持ち歩きながら聞くというところまでを許諾されていると理解しています。にもかかわらず、そこで私的複製があるから、その私的複製に対して補償金を払いなさいというと、2度目のお金を払うことになりますね。その意味で二重課金になっているという理解であります。公衆送信権がある、だから二重と言っているわけではないのです。

(土肥委員) この契約の内容が、実際にネット経由でネット配信における音楽コンテンツの送信がどのようになっているのかということについては、十分検討してみたいというふうに思っておりますけれども、公衆送信される部分について許諾の対象になり、そしてそこから先の複製についてさらに許諾の対象になるということだと思うのです。
 ですから、そこのところがそれぞれ分けられて、額としてそれがどのように構成されているのか。実際の契約はあまり承知していないのですけれども、理屈の上ではそこは分けてもいいのではないかというふうに思っているという意味です。送信の部分と複製の部分は分けていいという理解です。

(中山主査) はい、山本委員。

(山本委員) この二重徴収の問題として指摘されているところを少し整理したいのですが、中でも問題になっているのは公衆送信権と複製権と2つの権利が働くから二重徴収ではないかという問題ではなく、私的録音録画補償金も私的複製について、著作権者にそれの対価を払うべきだという制度であって、このダウンロードによる複製に対してDRMを使って課金するのもやはり複製に対する課金なわけですね。ですから、複製に対しての課金は二重になされているというのが、ここでの問題だと思います。ですから、公衆送信権どうのこうのという問題ではないと思います。
 二重徴収の問題として焦点をあてられているこのところが核心部分なのですけれども、本当のところは、こういうハードディスク内蔵型録音機器等に複製されるのはどういうものなのかというのを考えると、音源になるものがどういうものになるかというのは5つくらいあると思います。一番問題になるのはP2Pで無断でアップロードされたものをダウンロードしてくるという場合、これはまさに補償金をかけたい場合だと思います。
 それからレンタルCDを、借りてきたものを録音するというような場合も、これはレンタルしている間、鑑賞するという権利は与えられているけれども、それを複製して未来永劫に使えるという権利まで与えられているわけではないので、それを複製することについてやはり課金しないといけない。
 ここまでは分かるのですが、まだ3つあって、PD(公有)になっている音源を録音するという場合があります。これについてはそもそも著作権者に権利がないので、これに対して課金するというのはおかしいわけです。
それから、自分が持っているCDを他の媒体にプレイス・シフティングと言われるものですが、自宅で聞くのではなく、車の中で聞くためにMDに録音するとかというような、自分の持っているCDを録音するという場合、この場合も、これはもうすでに対価は支払っている問題ですので、課金するというのはおかしい話です。
 それから、今度このハードディスク内蔵型の場合には、DRMで課金した上、ダウンロードする。これももうお金を取っているわけですから、課金するのはおかしいわけです。そうすると、この5つの中で最初の2つのために、5つ全部について課金するのが正当なのかどうかというところが、根本的には問題だと思います。
 そういうことから言うと、DRMで課金するという制度ができた使い方というのは、恐らく大きいのではないか。PDになったものを録音するというものは、規模としては小さいと思うのですが、DRMで課金するというのはそれなりの規模があるだろうなと思われるのに、この5つの形態全部について課金するという制度が果たしてフェアなのかどうか、多分に疑問がある。そこに、今議論しているところの根本的な問題があるように思います。

(中山主査) はい、松田委員。

(松田委員) 典型的なCDから、自分が所有しているCDからコピーをする。家庭内でコピーをする。これは本来許されていることだから、このデジタル方式の私的録音録画補償金問題の外にあるものだというような趣旨の御発言ですけれども、それは本当は違うと思います。まさにそのことのために作った制度です。
 私的録音録画補償金制度は、30条の範囲内にある録音録画でありますが、デジタルの信号については劣化することなく、新生のものとまったく同じものになるからこそ、実質的な著作者に対する影響が大きいので、特に30条の範囲内であるものだけれども機器等の協力義務を定めて、そして一定金額をラフな状態だけれども、回収するという制度にしようではないかということで踏み切ったものです。
 ですから、すでに30条に許容されているCDからコピーするということは、まさにこの制度の対象のものですと私は考えます。
 ただ、ネットからコピーすることを前提にして課金してダウンロードし、そしてiPodに、ないしはCDに、あるいはMDにコピーをするというようなことは、これは確かに家庭内で行われている受信ないしは複製ではありますけれども、料金を取っているわけですね。これと私的録音補償金の制度とが二重になった場合に、二重課金の問題が起こる。このことは私、そのとおりだと思うのです。
 結局、私はこの問題の対比している1枚ペーパーの対比の中で、一番考えなくてはいけないのは、この二重の課金の問題だろうと私自身は思っております。というのは、だんだんだんだんネット型で料金を払って家庭内でコピー、複製をして持ち歩く。この形態がますます増えるわけです。そして世の中はそちらの方に向かおうとしているわけです。多分、このビジネス形態といいますか、これを促進しようというのは反対する人はいないのではないかと思います。
 しかしながら、その方向性があるから現在のiPod型のものがそちらの方向に向かっているから、将来そういう利用が多くなるから、今課金をしないでおいてくださいというのは、どうも当たらないのではないか。それはやはりここにもありますように、典型的なCDからコピーをして、そしてMDで持ち歩くという従来型のものに代替することは絶対間違いないからであります。
 そうなりますと、ネット型で料金を払って、これをDRMというふうに表現しているところがあるのですが、その形とCDからコピーする形と、これをどういう割合で計算するかということは、採用されない私の少数意見なのですけれども、その割合を調査することは私はできると思っている。そして一定期間でそれを調査していったら、ラフな制度だけれども、今言った2つの対応の状況を適宜把握して、適正に近い課金形態を作ることができると思っております。
 もちろん、それは政令を変えなければならないかもしれませんが、法律を変える必要はない。どうしてそういうことに賛同してくれないかと、私は皆様のことが不思議で仕方がないのですけれども。
 というのは、例えば資料を見てください。ここにある資料の中の、これは録画の例ですけれども、62ページに録画される対象は何であって、それがどこから来て、そしてその配分をどうしたらいいのだというパーセンテージを定めています。これはどういうことから生じたか、こういうことができたかというのは、これは市場を調査したからなのです。市場を調査して、民放連は何パーセント、映像ソフトは何パーセント、もちろんこれに漏れていて、里中さんにこれには漫画家協会が入っていないと言われていますけれども、私、それについては一定の考えがありますけれども、こういうパーセンテージを定めることが実はできるのです。これは調査を行ったのです。
 だとしたら、たった2つの対応だけ、ネット型でコピーしているのか。これは料金払いますね。それからCDから家庭内コピーをしているか。この内容がどれくらいの割合かということを調査するなんていうことは、このサンプル調査からしたらもう微々たるもの。それをやれば、もう少し変わるはずです。
 それから、だんだんだんだんパーセンテージが変わるはずです。そして、ネット型が主流になったらもう課金しなくていいということになるはずです。そうするとこの場合、先程言われたように固定はしないと思うのです、小泉先生の言われるように。やはり調査をして時々変えていく。そういうことの工夫をすれば、現行の制度を維持できて、だから正議ですけれども、確保することができると思っています。ぜひ机上配付資料62ページの図などを見て、私の言った2種類のサンプル調査ができないはずがないことを御理解願いたいと思います。

(中山主査) 例えばサンプル調査をして、CDからのコピーが5割、ネットからが5割とすれば、通常の機器に課金している割合の半分を課金すると、こういうことですか。

(松田委員) そうです。だんだん100に近づいていくと思います、課金方式ですね。

(中山主査) その理屈からすると、例えば汎用コンピュータの1割がもしコピーしていれば、汎用コンピュータにも普通の課金の1割かけるとか、そういう話ですか。

(松田委員) ただ、これはあくまでもラフですから、どんなものでも100パーセント汎用とか、どんなものでも100パーセント専用なんていう機器は本来ないのです。iPodだってテキストデータを入れようと思えば入れられるはずです。そうすると、この法律の適用については、例えば80パーセントくらいまでは音楽のコピーだね、録画のコピーだねというものについては、これは専用機として考える。そしてそれを越えた場合には、それは無理ですから、100パーセント以内。そういう線は持ち出しにしたって必要だと思います。だから、現行のパソコンには課金すべきではないと思います。

(中山主査) はい、どうぞ、小泉委員。

(小泉委員) 今の話ですけれども、確かに従来型のCDのコピーの機能も残っているのだから、少なくとも残っている分だけは課金すべきだ、今まで10取っていたところを、例えば2取ればいいではないかというのは、ロイヤーとして非常によくわかりますし、妥協の論理として通るのですけれども、ただしそれは今までのこの制度自体の見直しの議論を全部ネグった場合の話です。そもそもこの課金という制度自体に問題があるということが明らかとなり、その上であえて今後続けていくかというのが今問われているのではないかと思うわけです。

(中山主査) はい、どうぞ。

(松田委員) 私も小泉委員の言われたところはおおよそは認めます。基本的問題を内包しているという点です。ところが、この立法段階でも、これは最初の段階でも基本的問題は実は内包していたのです。そのことを織り込んでこういう制度にすることの落差があるけれども、その方がまだ、言ってみますと、権利者と事業者の間の調整ができるというふうに考えたわけです。
 今はその立法事実が変わって改正をしなければならないというのであれば、私も賛成したいと思います。ところが、iPodが生じたからといって、私は立法事実は変わっていないと思っているのです。
 それはなぜかというと、確かにコピーをするメディアが変わってくるわけですから、それからネットも盛んになり、利用も増えているわけですが、実はその程度のことはこの立法段階でもある程度予想していたはずです。成文の資料があるわけではありませんが。
 それから、立法事実が変わっているということをもし言うのであれば、2.の方のこの機種を政令指定するとしたら、機器等の追加により制度が肥大化するかどうかだと思います。極端に肥大化するのであれば、やはり立法事実が変わっていると言ってもいいのかもしれないからです。
 肥大化の問題ですけれども、私はiPod型が普及して、それによる課金がプラスされたとしたら、今までコピーメディアとして使っていたところ、例えばMD、この売上げは本来相対的に減ると思います。もし減らないのであれば、音楽の使用量が増えているのだと思います。たった1人がiPodか、他のメディアを選ぶ場合、そういう沢山の利用をしているのであれば、これは増えてもいいはずなのです。代替性のあるメディアであったとしたら、実は制度としては肥大化してないのではないか。むしろ課金していたら額が増えたというのは、それは音楽の使用が増えたのです。だから、制度としては肥大化していないというふうに言えるのではないかと思っています。どうでしょうか。

(中山主査) 1つ確認だけ。割合的課金という言葉を使っていいかどうか分かりませんけれども、割合的課金をするとすれば、現行法が一応全部100パーセント取って、あと使わない人に返すというシステムになっているのですけれども、現行法の部分も割合的に直そうということですか。それともiPodの部分だけですか。全部調査をして、現在のシステムも例えばこの機械は9割しか使っていないと、そういう場合1割を返すという、こういう趣旨ですか。

(松田委員) そうだと思います。そう考えます。

(中山主査) そうすると、今のかなり抜本的な改正ですね。

(松田委員) はい。

(中山主査) 取って返すのではなくて最初から割合で。

(松田委員) いや、政令でできるのではないでしょうか。

(中山主査) いや、条文で、全部取ってしまって、私的録音録画以外に使用することが証明された場合に返すという条文になっていますから、そこを変えないと。

(松田委員) ですから、どのメディアを使っても、私は音楽コピーは絶対しませんということであれば、返してもいいのではないでしょうか。だから、その部分は変える必要はないでしょう。

(中山主査) 割合的に取って、かつ、返す分も返すという、両方とも行うわけですか。

(松田委員) ええ。私はゼロですという立証すれば返します。

(中山主査) 分かりました。はい、どうぞ、山本委員。

(山本委員) 松田委員の御発言に対していろいろお話ししたい点があるのですけれども、まず今の割合的課金というのはかなり乱暴な議論ではないかと思います。
 と言いますのは、まず本来的には利用する人に対して課金して、それが権利者に流れるという市場原理の中でお金が動くということによって、必要なところに必要な供給が生まれるという、そういうシステムが生まれます。しかし、この補償金制度というのは、それをすごく大雑把にとらえて、お金の再分配を行うというものですが、それがあまりにもラフなために、そういう創作に対し、お金が流れることによっての創作促進効果がある一方で、本来自由であるべき自由利用を抑制する効果が存在します。割合的課金という議論は、自由利用を抑制する効果に対しての視点というのが全く落ちている。そういうものを全く考慮していないと議論になるように思います。
 たとえ10パーセントの割合であろうと20パーセントの割合であろうと、お金をかけられると、そういう用途の利用をしない人の購買も市場でそれだけシュリンクするわけで、決して市場の観点から考えて適正なことだとは思いません。
 もちろん今お話がありましたように、そういうコピーに使わないというふうに約束したらお金を返すということですけれども、現在のお金を返すという制度だって使われていない状況の中で、それが機能するとは思えないわけです。ですから、やはり自由利用の抑制効果という点から考えて、そういう考え方は採り得ないと思います。
 第2点目は立法事実がこの補償金制度ができた時から変わっていないのではないかという御指摘がありましたが、これはだいぶ変わっているのではないかと思います。
 まず1つは、このハードディスク内蔵型が今登場してきました。コンピュータの中に入っているハードディスクに対して課金していなかったということとほとんど変わりないわけですが、このハードディスク内蔵型というのはそのハードディスクがポータブルで持ち歩けるようになったというだけです。ということは、今まではそういうものは課金の対象になっていなかったという立法事実があって、過去の立法事実からいうと、そういうのは課金されない対象だった。ところが、そのハードディスクが持ち運びが可能だという状況が生まれた。ということは、この補償金制度が生まれた時に予想していなかった事実が生まれてきているということだと思います。したがって、ここで新たな議論をしないといけない、まさにその立法事実が生まれているのだと思います。
 それと補償金制度のここでの見直しの問題として、補償金制度の合理的な根拠はどこにあるのかというところも、また見直しの対象になっているのだと思います。その1つは、松田委員が御指摘になった、自分が持っている例えばCDについて、それをコピーすることに対して課金するのが正当かどうか。私は正当ではないと申し上げました。この辺も議論があるというのは当然分かっておりますが、私の場合は自己所有のCDについて課金するというのはダブルの課金だと理解しております。
 と言いますのは、自分がお金を出して例えばアルバムを3000円で買った場合には、そのアルバムの中の音楽を譲渡するなり破棄するまでの間、自由に鑑賞できる、そういう利用権を買ったのであって、それを他の媒体で聞きたい、他の場所で聞きたいがためにコピーするというのは、やはりそれは権利者に対しての対価を支払い済みであって、どのように鑑賞するか、それに対して新たにお金を払わないといけないような、そういう問題ではないように思います。
 したがって、もし御指摘のように、補償金制度ができた段階でそういうものも課金するべきだというような議論があったのだとしたら、それを見直さないといけない。そういう問題状況があるのだと認識しております。

(中山主査) もう1回だけ、松田委員、確認したいのですけれども、現行法は100パーセント取ってしまって使わない人に返すというシステムで、それがうまく機能しないから割合的課金ということが出てきたわけではなくて、割合的課金と使わない人に返すというのは両方併記させる、そういう御意見と考えてよろしいですね。

(松田委員) そうです、はい。

(中山主査) 他に何か御意見ございましたら。はい、どうぞ、前田委員。

(前田委員) 私は現行法の制度の中で、iPod等の機器に対して追加指定を行うべきであると考えております。先程から、ネット経由で音楽配信によってダウンロードしたデジタルコンテンツをiPod等で聞く場合には、二重課金が生じるのではないかという御指摘があるわけですけれども、前回か前々回か御説明いただいたiPodの仕組み等によれば、iTunesで購入した場合でも、同時に視聴可能な複製物が複数生じるということは可能なようですし、同時に視聴可能である複製物が複数生じるという現象が生じるのであれば、ネット配信でダウンロードしたものに関して、必ずしも二重課金が発生するといえるのかどうか、私は疑問に思います。
 もし仮にその部分では二重課金だとしても、先程からいろいろな方から御指摘がありましたように、実際にiPod等に複製される音源としてはレンタルCDだとか、友だちから借りたCDだとか、あるいは放送というものもあるのかもしれませんし、いろいろなものがあるわけで、そういうものも音源となるという以上は、iPod等も補償金対象に指定すべきなのではないかと思います。
 それは現状でMDにおいても、それを会議の録音に使うこともあるでしょうし、必ずしも音楽の録音に使われるとは限らないわけですけれども、そこはざっくり補償金の対象にしているわけですけれども、それと類似のことなのではないかと思います。
 それから制度の肥大化について議論があるわけですけれども、市場においてiPod等がMDの代替商品として今、どんどん代替していっているという現状を見ますと、iPodを指定することこそが、どちらかというと現状維持になるのではないかなと思います。むしろiPod等のものを指定しない場合には、MD等がどんどん市場において少なくなっていく。そうすると、制度自体の根本的な見直しの議論をする前に、事実上、録音に関しては私的録音録画補償金制度の空洞化が生じていくということにもなりかねない。それはどうかなと。MDの代替商品であるというように見られる限りは、まずそれを補償金対象に指定して、その上で制度全体の見直しの議論が必要であればそれをするというのが筋ではないかなと思います。
 それから近い将来、新しい技術がどんどん出てきて、現状ではiPod等は主として音楽録音に用いるものであるかもしれないけれども、2〜3年たったらそうではなくなるかもしれないという御指摘があったかと思うのですけれども、それについては現に主として音楽に用いられる機器がどんどん発売されて、市場においてMDに代替しているという事実がある、その現実にまず対応していく必要があって、2〜3年後にもし状況が変わったとすれば、その時点で何らかの見直しをすればいいのではないかなと思います。
 それから資料1の3で指摘された問題ですけれども、ワーディングが難しいから指定を見送るというのは、順序が逆ではないかと思います。まず、指定すべきかどうかという議論をして、指定するという結論になった場合には、ワーディングは一生懸命検討して、何らかの手段において実質的な結論が反映できるような法技術的な工夫をすべきであって、ワーディングの方から逆に実質的な判断をするというのは、思考の順序としては逆なのではないかなというふうに思います。
 それから資料1の3の中でもう1つの問題として指摘があったと思いますのは、現行法の30条の条文の下で政令指定することが認められているかということなのですが、その点については30条を見ますと、必ずしも機器と媒体が分離されている場合だけが対象になるというふうには、30条は読めない。つまり、分離されていようが、されていまいが、機器があってその機器の中に記録媒体部分が存在していれば、30条の範囲に入るのではないかと思います。以上です。

(中山主査) 確認をしておきたいのですけれども、レンタルCDから自分のiPod等に入れる場合、これは課金しても二重にならないというのは多分一致しているのではないかと思うのですけれども、ネット配信で例えば1回だけコピーできる、2回だけ、3回だけできるとか、そういう契約になっていて、配信会社が権利者にその分お金を払っているという場合も、これも二重課金にはならないという、こういう趣旨と考えてよろしいですか。

(前田委員) そこは私としては二重課金と言えるかどうかは疑問だと申し上げて、二重課金でないとまでは断言はしていないのですが、私としては二重課金と断言することに疑問を感じています。
 二重課金ということに疑問を感じている理由は、例えばコピーが1つしかユーザーの手元に残らないというような配信の仕方であれば、さらに補償金がかかるというのは二重課金だと思うのですけれども、どうもそのような形にはなっていなくて、異なる人が異なる場所で同時に視聴しようと思えば聞けるような複製物が複数発生し得るというような形での配信が行われているようでございますので、そうであれば単純に二重課金とまでは言い切れないのではないかと思った次第でございます。

(中山主査) はい。では、加藤委員。

(加藤委員) 前田先生のお話の中に、iPodを課金対象に加えないと現行制度が空洞化していくのだという、こういうお話がございました。私はそもそもそこの前提が違うかなと思います。現行制度はすでに現状において破綻しているわけで、すでにもう空洞化が進んでいるという理解でございます。
 今回、資料1のところでハードディスク内蔵型録音機器等の追加指定と謳われておりますけれども、パソコン等汎用機器媒体が課金対象にされない分、ここだけ課金対象したにしても、やはり公平性という観点からすれば十分ではないわけでございます。だから、ここだけを課金対象追加指定の議論をしていても建設的ではないと思いますし、そういう意味でも現行制度はやはり破綻していると言わざるを得ないと思います。

(中山主査) はい、ありがとうございます。はい、どうぞ、里中委員。

(里中委員) すみません。法律的なことは少し難しくてよく分からないのですけれども、最初この問題が出た時に申し上げたかと思いますが、iPodに代表されるハードディスク内蔵型録音機器等が世の中に出てきて、私は「ああ、よかった」と思ったところは、先程おっしゃったように、いくらでも複製ができないというので権利者にとっていいなと思ったのですよね。
 つまり、自分のパソコンに取り込んだ音楽をiPodに移す。それをまたどこかにコピーしようとするとできない。もちろん破る方はいらっしゃいます。どんなことでもいろいろと技術を使って破る人は出てくるでしょうけれども、とにかく自分のパソコンの中でしか動かせないということが、これこそ音楽媒体の著作権が守られる素晴らしい方法だなと思ったのです。
 ですから、その辺はどうも誤解があるのではないのかなということが1点と、それと現在、1枚記録媒体を買うごとに2円くらいのものだというように受け止めたのですが、ちょっと分かる方に質問したいのですが、2円というのは生のDVDなりにつけられている値段なのでしょうか。機器に対してかけるとしたらもっと多くなるわけで、あと技術的なこと、いろいろコピーガードをかけたり、1回ならいい、いや、2回ならいい、フリーにできるといろいろやると、10円くらいかかってしまうのだろう。だから、経済的な理由からとりあえず消費者に負担をかけないために安くできる方法でやっておくべきだというのは、少し違うのではないかなと思いました。
 たとえいくらかかろうと、わが国のコンテンツ、文化資材をきちんと守って、今後50年100年のことを考えますと、いや、50年100年じゃなくても、10年20年でもいいのですけれども、つまりわが国に発信した文化コンテンツについては、著作権者とか権利者団体が決めた回数コピーできるように技術的に整えていく。それがわが国の文化力を高めるのであり、ひいては経済力に結びつくのではないかなと思っております。
 この私的録音録画補償金制度というのは、いろいろなコピーガードにより、1回ならいい、2回ならいいと、いろいろコンテンツをオープンにできなかった時代に決められた制度だと思います。制度があるのでこれを生かそうというよりも、こういうことを考えて見直しをして、関係者、権利者団体、みんなが一生懸命知恵を絞って、わが国のコンテンツを守るためにどうしたらいいかというとてもいいチャンスだと、個人的には思っています。
また、先程お話がありました音楽をいくらでもコピーできるというのは、むしろパソコンとか、他のハードディスク型の機器に対して言えることであって、最近出てきましたiPodに代表されるいろいろなメーカーさんが出してらっしゃいますけれども、それはむしろ複数回あるいは複数枚同時に聞くことを困難にさせている機器だと私は受け止めております。
 補償金制度がやがて空洞化すると言われますが、むしろ補償金制度よりも著作権を守って正当に権利者団体なり権利者がきちんと回数に合わせて権利金を取れるように技術革新をする。そして消費者も納得した上で1回当たりいくらと支払う。そういう世の中にするために頑張ったほうがいいのではないかと思います。アバウトな言い方ですみませんが、認識が間違っていたらお許しください。
 あともう1つ、すでに放送番組、先程コピー・ワンスはきつすぎるので見直しされているというお話がありましたが、すでにコピーガードがかかっている番組があるわけですね。それに対して確かに消費者として不自由な思いをしております。後で見ようと思って見る時間がないうちに、ハードディスクがいっぱいになってしまって、ではDVDに移したいと思っても、もう1回コピーしたから駄目ですと言われる。不自由だなと思います。
 思いますけれども、ではそれを何に入れるのか。それによってやはり二重課金というのが出てくると思います。言い方がラフで申し訳ありませんが、実生活の中で不自由な思いをしながら二重に課金されているという実感を味わっております。
 すでに放送に代表されるように、コピーがかかっているものが一般家庭に出回っているわけですね。そういう形で保護されているものがある。では、それを生かして、そういう技術を生かして発展させていくほうが公平だと思っております。今、家庭の中では、1枚何円が取られているか分からない生のDVDとかCDと、そしてコピーガードがかかっている番組あるいは音楽媒体が同居しているわけなのですね。これを整理するべきだと思っております。
 質問が後先になりましたが、先程から2円とか出ていると、数字というのは何に対してかかっているのかな、DVD1枚当たりなのでしょうか。もしもそうだとしますと、外付け型のこういうものにかけた場合に、結局いくらくらいになるのか、そういう試算というのはおありになるのでしょうか。お聞かせ願えればと思います。

(中山主査) この点は、では中根さん、お願いします。

(中根日本記録メディア工業会著作権委員会委員長) メディア工業会の中根でございます。今、里中先生のおっしゃられた御質問で、先程から出ている2円というのは、今日現在の補償金の額で言いますと、DVDの−Rにほぼ相当します。あえてほぼと申し上げますのは、正確にはきちっとした計算式が定められておりますので、それによって算出しております。
 MD、例えばDVDのRAMとかいろいろなものが媒体にございますけれども、媒体ごとによって値段は、補償金の価格は変わっております。媒体の方に関しては、こういう状況でございます。

(中山主査) よろしいですか。はい、どうぞ。

(亀谷私的録音補償金管理協会事務局長) 里中先生の御質問にお答えをいたします。前回及び前々回、もう1つ前ですか。この制度自体の御説明の時に、すでに1回説明があったと思いますけれども、私的録音補償金の額というのは文化庁長官に対して私的録音補償金規定というものを提出して、文化庁長官の認可を得まして定められております。
 例えば音の場合には、機器に対しては機器のカタログ価格の65パーセントに対して3パーセント、それから媒体の場合にはカタログ価格の50パーセントに対して2パーセントというふうに定められております。実質的には機器の場合には結局値段が変わってきますとどんどん変わってきますので、平成16年の現実で1台平均が411円、媒体の場合にはMD等々ですが、1枚当たり3.81円、これが音の場合の額でございます。ですから、これはカタログ価格というか、その売られている価格によって変化してくるし、その計算の仕方については文化庁長官に対して出しております規定に定められた計算方法によっております。2円につきましては、録画のほうから御説明いたします。

(高比良私的録画補償金管理協会専務理事・事務局長) 私的録画補償金の関係でございますが、平成16年度中に出荷された記録媒体の補償金単価はDVD−Rに関しましては、先程日本記録メディア工業会から御発言がございましたが、平均して消費税込みでだいたい2円でございます。DVD−RWはもう少し高くなって5円くらいです。−R、−RWいずれの場合もプラスR、プラスRWを含めた額の平均です。RAMになりますと、さらに高くなりまして、新しいデータで平均しますと9円程度になっております。ただ、メーカーの製品ごと、品番ごとによって出荷価格が異なっておりますので、同じDVDでも補償金の額は変わってきます。なお、R、RW,RAMを含めた全体の平均でとりますとDVD1枚当たり3円30銭になります。以上でございます。

(中山主査) よろしいでしょうか。時間ですので、ごく簡単にお願いします。

(椎名日本芸能実演家団体協議会・実演家著作隣接権センター運営委員) 里中委員のiPodの話で、自分で録音したものは自分でしか使えないというお話だったのですが、そこを少し訂正したいのですが、iTunesというCDから音を取り込んだりネットワークから音を取り込んだりするソフトがあります。これには共有という概念がありまして、パソコン同士つないでいる場合、いわゆる家庭内でLANなんかを組んでいる場合は、取り込んだ音楽は共有できるようになっています。だから、複数の人間でそのiTunesに入っている音源を利用できる形になっているということです。だから、自分1人で使うことしかできない、外に出せないということではないので、それだけを訂正させていただきます。

(中山主査) はい。予定した時間を過ぎましたけれども、何か他に議論ございましたら。よろしゅうございましょうか。
 この問題につきましては、皆様からペーパーを頂戴いたしましたし、また前々回、前回等で議論を重ねてまいりましたけれども、現状ではなかなか1つの方向にまとめるのがどうやら難しいのではないかと、私には思えるわけであります。
 次回のこの小委員会におきまして、何らかの報告をしなければいけないわけであります。今までの方針ですと中間まとめ案というものを次回、8月25日にお出しをするということにしておりましたけれども、今までの議論を聞いておりますと、それも難しいのではないかと思われます。
 もう1つのテーマである権利制限規定の見直しというものと、この問題とあわせまして、次回には中間まとめというよりは、むしろ「審議の経過(案)」としてお出しをして、さらに議論をしていただくということ以外にはないのではないかと考えております。そういう方向でよろしゅうございましょうか。

〔異議なしの声あり〕

 では、その方向で次回は議論、審議の経過をまとめた案というものを提出するようにいたしたいと思います。
 それでは、この問題については一応終わりまして、次の議題に入ります前に、長丁場でございますので、若干の休憩をとりたいと思います。今、少し予定をオーバーいたしまして3時25分ですけれども、35分までの10分間、お休みといたしたいと思います。それでは、35分までお休みください。

〔休憩〕

(中山主査) それでは残りの時間を使いまして、次の議題であります「各ワーキングチームからの検討結果の報告」の議論に移りたいと思います。
 各ワーキングチームにおける検討結果については、各座長より10分程度で報告をしていただき、最後にまとめて各々20分程度の意見交換の時間をとりたいと思います。
 なお、各ワーキングチームにつきましては、本日の委員会において、検討結果についての報告をいただきまして、今日、各委員からの御意見を頂戴する予定でありますけれども、この小委員会全体から見ますと、「権利制限の見直し」と、今議論いたしました「私的録音録画補償金の見直し」と比べますと、議論の時間が十分にとれません。したがいまして、各ワーキングチームの結果につきましては、この小委員会終了後、事務局から各委員にあてて書面で御意見をいただくということも予定しておりますので、よろしくお願いいたします。
 それでは、まずデジタル対応ワーキングチームの茶園座長よりお願いをいたします。

(茶園委員) では、デジタル対応ワーキングチームの検討結果報告を簡単に御説明させていただきます。
 このワーキングチームにおきましては、機器利用時・通信過程における一時的固定、デジタル機器の保守・修理時における一時的固定、そして技術的保護手段の規定の見直し、この3点を検討いたしました。
 まず、1番目の機器利用時・通信過程における一時的固定についてですけれども、検討結果報告の2ページのところから、この点について述べております。最初の「問題の所在」にありますように、デジタル化、ネットワーク化の進展に伴いまして、コンピュータの機器内部における蓄積やネットワークの中継サーバにおける蓄積など、プログラムの著作物等の著作物を一時的に固定するという利用形態が広く行われるようになっております。それらの一時的固定を、著作権法上どう捉えるかという問題について、検討いたしました。
 まず、これを著作権法でいうところの複製と捉えるか、複製と捉えた場合に複製権を及ぼすかという問題ですが、恐らくこれまで我が国におきましては、とりわけコンピュータのRAMでの蓄積について著作権法上での複製ではないという考え方が強かったのではないとかと思います。
 ただ、国際的な状況を踏まえまして、もしこれらの一時的蓄積を複製に当たるという方向に解するといたしますと、機器の使用あるいは円滑な通信に支障を生じるという恐れがありますことから、何らかの立法的な措置が必要なのではないか、こういった問題がございます。
 そこで、このワーキングチームにおいて検討いたしました結果、基本的な方向としまして、6ページから御覧いただきたいのですけれども、いわゆる一時的蓄積を複製に当たるという方向で考えた場合ですけれども、それでもCDプレーヤーによって音楽CDを再生する場合等のように、本当に瞬間的過渡的なものについては、これは複製には該当しないであろうと思われます。
 では、それ以外のもの、図では一時的固定(複製)と書いてありますけれども、これらについて複製と解した場合、先程申しましたように、機器の使用あるいは円滑な流通を考慮して権利を及ぼすべきではないというものがあるのではないかと思われます。そのため、新たな権利制限規定を設けるとした場合、どういうふうに考えるべきかということなのですけれども、7ページの真ん中より少し下の(4)というのを御覧いただきますと、仮に立法的措置を講じるとした場合には、1著作物の使用または利用にかかる技術的過程において生ずる、2付随的または不可避的、3合理的な時間の範囲内、これらを要件といたしまして、権利制限をかけるということが考えられるのではないかという結論に至りました。
 ただ、ここで検討いたしました一時的蓄積、一時的固定につきましては、現在緊急に対応すべき事態が実はあまり発生していないと思われます。そこで、9ページのところを御覧いただきますと、一番最後ですけれども、これらの課題につきましては、今後の技術的動向を見極める必要もあることから、現時点では緊急に立法的措置を行うべきとの結論には至りませんでした。
 しかし法的予測可能性を高めて、萎縮的効果を防止することにより、権利者や利用者が安心して著作物を流通・利用できる法制度を構築するという観点から、今後もこの問題について立法的措置の必要性につきまして慎重な検討を行いまして、平成19年を目処に結論を得たいというように考えております。
続きまして、2番目のデジタル機器の保守・修理時における一時的固定についてですけれども、これはデジタル機器一般について検討したのですけれども、現在特に問題として挙げられるのが携帯電話です。
 携帯電話の普及とともにその保守・修理の機会というものも増えております。その際、携帯電話に蓄積されているコンテンツを保守・修理後においても継続的に利用できるようにしてもらいたい、そのために保守・修理後に元の機器に複製を行ってもらいたいという要望が利用者や修理業者から寄せられております。
 ただ、現行法におきましては、このような保守・修理時であっても、複製を行うということは、これは複製権侵害に該当するのではないかと思われます。そこでこのような複製についてどう考えるかということなのですけれども、検討いたしました結果、コンテンツが外部流出をしないよう、外部流出措置を講じるということをすれば、保守・修理時における一時的固定というものを複製権侵害に当たらないと考えたとしても、恐らく権利者に著しい不利益を与えないだろうというように考えられます。
 そこで14ページのところから、この問題に関する基本的な対応の方向性を示しているのですけれども、この14ページの一番最後のパラグラフを御覧いただきますと、具体的にはデジタル機器の保守・終了を行う者は、作業終了後、一時的に固定されている著作物、これを消去することを条件に、当該著作物を一時的に固定し、それを修理後の機器に複製することができるように、著作権法によって権利制限規定を設けることが適当である。このような結論に至りました。
 こちらの15ページを御覧いただきますと、なお書きにありますように、このデジタル対応ワーキングチームにおきましては、保守・修理というものに限って検討いたしました。デジタル機器の買い換えによります更新につきましては、保守・修理とは異なる問題が発生するであろう、それを認めると、権利者の利益を不当に害する場合が発生する恐れがあるということで、更新につきましては、本措置の対象外とすべきであるとしております。
 また、デジタルコンテンツにつきましては、技術的保護手段が施されているものがございますが、そのようなものをどのように取扱うということにつきましては、またこれは全く別の問題になりますから、ここでは検討から外して、さらに今後慎重な分析が必要であるとまとめております。
 最後、3番目の技術的保護手段の規定の見直しについてですけれども、現行著作権法ではWIPO著作権条約、WIPO実演及びレコード条約に基づきまして、技術的保護手段に関する規定を設けております。わが国の著作権法ではコピープロテクションについては規制をかけ、アクセスコントロールについては規制をかけないというやり方をとっているわけですけれども、この立法がなされて以後、技術の進歩により、相当に立法当時とは状況が異なっているだろうと思われます。そこで現在において、現行の規定の見直しが必要であるかどうかという問題について検討をいたしました。
 基本的な対応の必要性ということで21ページに書いておりますけれども、技術の発展により、例えばコピープロテクションとアクセスコントロールが重畳的に施される技術の複合化、こういう流れがあるわけですけれども、現行の規定において、この複合化によってコピーコントロールに対して著作権法の規制の効果が減少するという事態は、現時点においては生じていないのではないかと考えられます。そこで現時点においては、新たな立法措置を講ずる必要性はないのではないかというように考えております。
 そこで22ページ、これが最後の結論ですけれども、現時点では現行著作権法の技術的保護手段に関する規定を直ちに改正すべきという結論に至りませんでした。ただ、技術に変更があった場合を考えまして、今後も技術動向に注意しつつ引き続き慎重な検討を行いまして、平成19年を目処に結論を得るべきと考える、という結論を得ました。以上です。

(中山主査) はい、ありがとうございました。それでは引き続きまして、契約・利用ワーキングチームの土肥座長よりお願いをいたします。

(土肥委員) それでは契約・利用ワーキングチームの検討結果報告を申し上げます。案を御覧いただきたいと思いますけれども、本ワーキングチームにおきましては、目次のところにありますように、都合6項目を検討の対象といたしました。
 著作権法と契約法の関係、いわゆる契約による権利制限規定のオーバーライドの問題が1つ。それから2つ目に、著作権法63条2項に規定する許諾に係る利用方法及び条件の性質、この問題、これをどう理解するか。それから第3に、譲渡契約の書面化の必要性があるのか否か。それから第4に、権利の一部譲渡というものはどこまで認められるのであろうかという問題。それから61条の2項、権利の譲渡時における翻案、及び二次的著作物の利用に関する権利についての留保の問題。それから最後に、未知の利用方法に係る契約についての問題、この6項目でございます。
 まず、最初のいわゆる契約による権利制限規定のオーバーライドの問題でございますけれども、規定そのものも種々の内容のものがあるわけでございまして、規定そのものがどういう趣旨あるいは立法目的で制定されているのかどうか。あるいは、権利としては本来、権利制限されているところまで効力が及んでいるにもかかわらず、一定の理由で制限されているのか。あるいは、もともとそこは権利の効力が及ばない範囲であるかどうか。そういう問題もあるわけでございますけれども、この30条以下の権利制限規定が確保しております自由利用を契約によってひっくり返すという問題は、従来からこの著作権分科会等で様々な議論がなされておるところでございまして、非常に大きな問題ということが言えるわけでございます。
 この問題と、その他の5つの問題というのは少し性格が違うのかなと思っております。つまり、あと残りの5つのものは何がしか強弱はありますけれども、相互に結び付いているような、そういう問題でありますけれども、いわゆる契約によるオーバーライドの問題というのは非常に大きな問題という捉え方をしております。
 それで様々な議論があったわけでありますけれども、結論から申しますと、8ページ、9ページのところに検討結果ということで出しておりますが、権利制限規定をひっくり返すような、例えばどの規定についてオーバーライドをすると当該契約が無効になるのかどうか。こういう問題を考えていく場合に、そもそもでありますけれども、こういう契約でもって権利制限規定をひっくり返す場合に、常に絶対無効であるような、そういうことが果たして言えるかどうか。
 つまり、いわゆる民法91条の強行規定違反ということだけで無効と言えるのか。あるいは公序良俗違反等の様々な理由を用いて、初めて無効ということが言えるのか。こういうそもそも民法における契約の捉え方、そこまで来るわけであります。
 それで著作権法の中で、例えばこういう権利制限規定をひっくり返す場合に、いくつかの規定について一般的に無効とするというような規定を導入するのかどうかということについて、今の段階においては、まだ結論が出ない。つまり、この問題についてはもっと時間をかけて慎重に考えていかなければならないというのが、ワーキングチームの当面の結論でございます。
 これにつきましては、先程の説明のような形で申しますと、この問題については本ワーキングチームにおいて、引き続き検討させていただいて、立法による対応の必要性がどういう形で求められるのかということを含めて、2007年度を目途に結論を得ていこうということでございます。
 即ち、このワーキングチームにおいて6項目という項目を検討したということもございまして、なかなか基礎的に重要な問題について時間を十分にかけることができませんでしたので、この報告書案にありますように、我が国において確保すべき議論の経過を紹介しておりまして、こういうことをベースに今後検討を進めていかなければならないのではないかというふうに考えております。
 それから次の第2の問題、63条の2項の問題になるわけでございますが、これは先程申し上げましたように、許諾による利用方法及び条件の性質の問題でございまして、どちらかというと講学的な研究対象、検討対象ということになるのだろうと思います。
 これは13ページにございますように、問題の所在としては、63条2項でいう利用方法及び条件には、利用許諾契約で定められているすべての条項が該当するのかどうかですね。あるいは、この利用方法及び条件の範囲に反して著作物を利用した場合に、ライセンシーは著作権侵害を問われることになるのかどうか。こういう形でよく議論が出てくるわけでございます。
 こういうことにつきまして検討した結果、15ページのところでございますけれども、こういう利用許諾契約の場合には、差止請求権を行使しない旨を定めた著作物利用適法化条項と、対価の額等、解除事由にしかならないような単なる契約事項があるのだろうというようにまとめております。
 それで一番下の2行のところにございますように、特許法と同様、この規定の理解の仕方としては、現時点では直接的に立法的解決を図る必要性に乏しく、契約の解除の効力の問題も含めて、やはりこれは解釈論に委ねるべきではないかというように考えております。
 したがいまして、この点は立法的な対応の必要性というものは、ワーキングチームとしては認められなかったということでございます。この領域における今後の判例なり、学説の展開、蓄積、そういったものを見守っていきたいというように思っております。
 それから17ページのところにございます書面化の問題でございますけれども、書面化の問題につきましては、諸外国では書面化を求める立法例が少なくないという状況がございます。
 それから、こういう書面化を進めることによって、契約関係の明確化、紛争の発生を未然により防止できる。そういう観点もありましょうから、こういうことをわが国でも考えてみる必要があるのかどうか。この検討がここで行われたわけであります。
 確かに外国の立法例等を見ますと、こうした著作権譲渡契約、あるいは利用許諾契約、こういうものについて書面化が必要とされていることは確かなのでございますけれども、こと我が国における著作権法の理解、あるいは著作権譲渡契約についての理解ということに限った場合、我が国の法体系との関係で言えば、著作権の譲渡契約についてだけ特に要式契約にするという、書面契約でなければならないということにするだけの十分かつ合理的な理由が認められない。つまり、外国なんかの例を拝見しますと、他の法制度においても、例えば不動産の所有権とか、一定の価値以上の権利の譲渡にも書面を求める、こういうふうになっておりますけれども、我が国ではそこは何も言っていないわけでありますので、それと異なるわが法制度において同様に考える必要性は強く認められなかったということでございます。
 そういうことでございまして、22ページのところに最終的なところをまとめておりますけれども、外国と渉外的な取引をやる場合には、当然書面が必要になってくるわけでございます。したがいまして、書面による契約が常態化している取引領域も確かに少なくない。こういうことでございます。
 ですから、この問題については、なお引き続き検討を進めながら、今後の対応についてワーキングチームとして検討を継続していきたいというふうに思っております。その上で、最終的な方向性についての判断をするというまとめ方にさせていただいております。
 それから、4番目の一部譲渡の問題でございます。25ページのところからの話でございますが、61条第1項におきまして、著作権その一部を譲渡できる。この一部というのはどういう単位を示すのかということでございます。
 この裁判例等を見ますと、非常に細かくこの一部を切っている。期間、地域、対応、形態、こういったところで細分化を認めておるわけでありますけれども、それはどこまでできるか、こういうことのある種講学的な検討も含めてやったわけでございます。
 これにつきましては、30ページのところに今後の立法対応ですけれども、だいたい出ておるのかなと思うのですが、要は一部譲渡の問題というのは、登録制度の見直しの問題との関係が非常にある。
 つまり本来、先程申し上げましたような著作物、著作権の一部譲渡は、これは利用許諾の実態があるわけでありますので、なぜ利用許諾によらずに一部譲渡をやるか。こういうライセンシーといいますか、譲受人保護の問題、権利の譲受人との関係におけるライセンシー保護の問題がこの問題の理解の上で重要であろう、と考えております。
 この登録制度というものが利用許諾の点で欠けている、こう言われておるわけでございますので、そこがきちんといけば、また第61条1項の問題についても結論が得られるのではないか。このように考えました。
 それで30ページの一番下の段落のところから、「以上のことから一部譲渡の問題はライセンシー保護の制度・登録制度の検討の中で、著作権者が物件的権利を第三者に設定・移転するための制度設計の問題として、専用利用権制度を含む著作物の利用権に係る制度の創設も視野に入れて議論されるべきではないか」、こういうことでございます。
 それでこれについては、今申し上げましたように登録制度との関係が非常に重要でございますので、この登録制度とも検討の中で専用利用権といいましょうか。特許でいえば、専用実施権、そういう制度を含む著作物の利用権にかかる制度の創設と併せてこの問題については議論をしまして、2007年を目途に結論を得るというまとめ方をしております。
 それから37ページのところの5.61条2項の問題でございます。これは先程言いましたように、翻案権とか2次的著作物の利用権について特定されない限り留保されるという規定があるわけでございます。一般的な常識からすると、すべての著作権を譲渡するというような契約をしても、残るものがあるのは当事者の意思に照らしてどうかと、こういうことが昔から言われておるところでございます。
 これについて当時の立法例を見ますと、懸賞小説への投稿のような場合について念頭に置いて規定がなされたということがございますが、もっとこの61条の2項の問題を遡りますと、これはそもそも譲渡する契約権の範囲について契約上の限定がされていない場合は、契約上予想されない方法により著作物を利用する権利は譲渡した者に留保する、留保されたものと推定するというような、そもそも著作権法の草案の段階における議論があって、その結果は少し行き過ぎではないかという形で61条2項が入ったという経緯があるようでございます。
 これはいろいろ言われておりまして、弱者保護の1つの考え方の表れであるとか、様々な言われ方があるわけでございますけれども、立法の経緯からすると、今申し上げましたようなこともございまして、それを受けてこういう規定ができておりますので、あと未知の利用方法に係る契約との関係の議論も必要になるというように思われるわけでございます。
 そういうことで、ここでは確かに方向性としてはそういうふうに廃止の方向になるだろうけれども、ここだけ特に取り上げて、今回直ちに手を入れて、この61条2項を落とすということは適当でないであろう。他と一緒にセットで議論した上で結論が得られる方がいいと考えたところであります。
 それから最後、43ページのところの未知の利用方法に関する契約でございます。これについても議論のあるところでありまして、放送権を譲渡したけれども、その後に衛星放送というような技術が現れてきた時に、それはどうなるのかというようなことが裁判例でも争われておるわけでございます。
 ここで著作権法にそういう場合についての特則を設ける必要があるのかどうか。こういうことになるわけでありますが、確かにそういう指摘もあるわけですが、43ページの下から2つ目の段落にまとめておりますけれども、これはやはりなかなかそれも難しい。未知の利用方法に関する利用契約の問題は、個別具体的な事例に即して裁判所がまず法的な解釈のもとに判断を示す。そういう裁判例の集積を通じて法的体形成がなされる。裁判所がそういう法形成、判断を集積する上で障害があれば、それは著作権法上、その障害を除去するような特別規定が必要になるのだろうと思われますけれども、そこが認められない限りは民法の一般原則による解決で足りるのではないか。そういう理解をしております。
 そういうことで、この問題については当面は裁判例の対応を見守り、裁判例において契約全般に妥当する解釈原則が足りないという指摘があれば、その段階で著作権法の中に特有な解釈規定を、そういうことをワーキングチームとしては結論として得た。こういうことでございます。以上でございます。

(中山主査) ありがとうございました。それでは最後に、司法救済ワーキングチームの大渕座長からお願いいたします。

(大渕委員) それでは資料4の司法救済ワーキングチームの検討結果報告について、要点につき、簡潔に御説明したいと思います。
 まず冊子を開けて目次を見ていただいた上で、1ページの「はじめに」というところに(1)問題の所在というところがございます。司法救済ワーキングチームの検討項目と申しますのは、これは括弧付きでありますが、「間接侵害」というものと、それから損害賠償・不当利得等という、この2点がございます。この2点は非常に異なった独立の項目でありますので、本ワーキングチームといたしましては、まず前者の「間接侵害」の検討を開始して、その後に損害賠償・不当利得等の検討を行うということにいたしました。
 まず「間接侵害」について、括弧付きという辺りから、これをどう定義していくかに本ワーキングチームも苦慮していることが窺えるかと思うのですが、この用語自体はもちろん法令上の用語でもございませんし、また講学上の用語としても論者によりかなり内容が異なっておりまして、そのために各種の議論の上においても無用の混乱が生じている面もあると言えるのではないかと思います。
 それで本ワーキングチームにおきましては、まずこの問題をどのようなものとして定立していくべきかというところが、最初の検討課題であるわけであります。この点については、「間接侵害」について検討せよということなのですが、むしろ問題点を「間接侵害」という言葉を用いることなく以下のように設定するというところから、検討を始めております。
 つまり、「間接侵害」というのは呼びやすい用語なので時々使っておりますけれども、分析検討の道具概念自体としてはむしろ使わないで、以下のように問題点を設定して検討していくという方向で検討を進めてまいりました。
 ここで問題になりますのは、もう皆さん御案内の条文かと思いますが、著作権法112条1項では、差止請求の相手方といたしまして、「侵害する者又は侵害するおそれがある者」と現行法上規定されておりまして、「おそれがある者」も重要ですが、結局のところは差止めに当たって最も重要な点は「侵害する者」というのがいかなる者なのか、という点にあり、どのような者が「侵害する者」に当たるかによって、差止めができるかどうかが決まってくるのですが、これについて必ずしも明らかではないということであります。その下の段落にありますとおり、現行法の条文を見ますと、著作権者に無断で著作権の権利範囲に属する利用行為を物理的に行う者が「侵害する者」に当たることは、もうほぼ異論はないところかと思うのですが、この物理的な利用行為の主体以外の者に対して差止めを肯定することができるのかどうか、あるいはその範囲については、現行著作権法上は必ずしも明確ではないということがいえるわけです。
 そこで従前の判例を見ますと、物理的な利用行為の主体とは言い難い者を一定の場合に利用行為の主体であると評価して差止請求を肯定したもの、これは後に御説明しますクラブ・キャッツアイ事件という有名な最高裁判決で認められているものがあります。それから次の点は、まだ判例上いろいろ対立がある点ですけれども、ヒットワン事件という大阪地裁平成15年の判決においては、一定の範囲の幇助者について侵害主体に準じるものとして評価して差止請求を肯定したものもあるわけであります。
 ただ、後者の件につきましては、後に御説明しますように、これとは逆の立場をとる下級審裁判例もありまして、その意味では非常に対立が先鋭なところだと思います。
 結局のところ、いま申し上げましたとおり、「間接侵害」という用語を使わずに、物理的な行為主体以外の者に対して差止請求を肯定できるかどうか、あるいは肯定できるとしたらどの範囲かという形で問題点を整理して、この点について検討を以下加えています。
 この点を検討するに当たりまして、3ページ以下の裁判例からのアプローチということで、従前、現行法においてどのような司法的判断がされてきたかという裁判例を概観し、それから9ページ以下にありますとおり、外国法からのアプローチということも加えまして、さらに13ページ以下では、特許法については非常に参考になる点がありますので、特許法との比較対照ということで、以上の3点を軸に検討を加えてまいります。
 まず最初の、3ページ2.の裁判例からのアプローチという部分でございますが、これにつきましては、裁判例には参照すべきものは多数あるわけでございますが、これを本ワーキングチームといたしましては、ここにございますとおり、(1)クラブ・キャッツアイ法理、カラオケ法理関係のものと、それから5ページにあります(2)の侵害行為の幇助者に対する差止請求の可否について判断したものと、それから7ページにあります(3)のその他という、この3つのグループに分けて整理いたしました。
 (1)カラオケ法理関係では、最初に先程申し上げました最高裁昭和63年のクラブ・キャッツアイ事件は、これは要するに侵害主体を著作権法の規律の観点から規範的にとらえるという形で理解することができるわけですが、この法理を検討した上で、4ページにありますとおり、この最高裁判決自体はカラオケスナックの事件だったのですが、それ以外にもカラオケボックスについてもこの法理は適用されておりますし、それからバレエ作品振り付け事件というようなカラオケ関係以外にも拡大されているということでありますし、さらには、4ページ、5ページにあります2のように、ファイル交換関係事件という、現在非常に注目されているものについても、基本的にはこの趣旨ないしその延長線上にあるような形で捉えられているということであります。
 それから5ページに侵害行為の幇助者に対する差止請求の可否というものがありまして、ページをめくっていただいて6ページにあります〔7〕ヒットワン事件というのが、先程お話したとおり、侵害の幇助行為を現に行う者であっても、このa)、b)、c)という点から、侵害主体に準ずるものと評価できるということで差止請求を肯定しているものであります。
 これに対して、この真下にあります〔8〕の2ちゃんねる小学館事件第1審判決という東京地裁の判決は、これとは異なる判断を示しているわけでありまして、このように下級審としても、この点については対立点がこのような形で表明されているわけであります。
 それから7ページの(3)その他というところにあります2ちゃんねる小学館事件の控訴審は、また全然違っておりまして、先程の幇助者に対する差止請求というよりは、放置行為自体をもって著作権侵害と評価しているのではないかと窺われるものでありまして、結論的には先程の東京地裁の判決とは逆の結論を導いております。
 それから次に9ページに入っていただいて、比較法という点も非常に重要でありまして、主要法制として、ここにございますとおり、ドイツ法、フランス法、アメリカ法、イギリス法について検討を加えている次第でございます。
 これについては時間の関係もありますので、御覧いただくことにいたしまして、それからその次に13ページでは特許法からのアプローチということで、特許法におきましては直接侵害が、特許権者に無断で特許発明を業として実施するということであり、間接侵害につきましては、基本的には直接侵害の予備的・幇助的行為のうち、直接侵害を誘発する蓋然性の高い行為として同法101条に規定されたものをいうということで、著作権法の場合とは若干趣を異にしておりまして、比較的コンセンサスのある形で用語ができておりますので、ここでもそれによっております。参考になる101条の間接侵害といたしましては、1号・3号の特許発明の実施にのみ用いられる物の生産・譲渡等をする行為というものと、それから2号・4号の発明の実施に用いられる物で、その発明の課題の解決に不可欠なものを情を知りつつ生産・譲渡する行為という、異質な2つのカテゴリーのものが含まれているわけであります。
 細かい点はお読みいただくことにいたしまして、特許法の関係で参考になり得る点といたしましては、15ページの一番下のほうにある点でありますが、先ほど御説明いたしましたとおり、1号・3号の専用品の提供行為に関する規制という、いわゆる「のみ品」という、「のみ」という点が重要なのですが、そういう客観的要件1本で規制している規制の仕方と、それから専用品以外の物品等を情を知りつつ提供する行為に関する規制という、客観的要件と主観的要件の2つを用いて規制対象を規定する規定の仕方との2種類の形で侵害規定が特許法の場合組まれているわけなのですが、著作権法でこれを参考にする場合には、前者のような客観的要件のみの規制だけを参考にするのか、あるいは後者の客観と主観と両方組み合わせた形のものも参考とするのか、などの辺りが特許法との関係では参考になり得ることではないかと思う次第であります。
 最後に、17ページの5.の検討結果が、中心になる部分でございますが、「間接侵害」という、先程のような形で問題とした点につきまして、裁判例、比較法、それから特許法における間接侵害規定等の対比ということを軸に検討を進めてまいりました。
 先程のように規定した問題点は、これは「間接侵害」と呼ばれるものとほぼ一緒かと思うのですが、結局のところは著作権法において差止請求をいかなる範囲で肯定すべきかの問題にほかならないわけでありまして、この点は差止請求権や損害賠償との関係や、あるいは一面では刑事法の関係といった、一般法上の論点も本格的に視野に入れるべき、非常に複雑困難な総合的な検討を要する論点であります。しかしながら、本格的な先行研究というのは必ずしも豊富とは言い難い状況にあるということでありまして、時間の制約の中で最大限検討を進めておりますが、先程の主要法制につきましても、なかなか全てを網羅するというまでには時間的制約のために至っておりませんので、今後さらに本格的に検討すべき点は多々あって、今後の検討が重要になるわけであります。その検討状況を前提といたしましても、一応ワーキングチームのメンバーの間でコンセンサスがありましたのは、先程の特許法101条の前半部分の1号・3号そのものズバリというわけではなくて、著作権法的な修正等は当然必要になり得るわけですけれども、101条1号・3号に対応するような間接侵害の規定を著作権法にも何らかの形で盛り込むというような基本的な方向性については、特に異論はなかったということで、この点、また今後検討を深めていく必要があるわけですが、それ以外に、それを超えるような形でのどのような点について規定を導入すべきかという当否の点につきましては、ある意味では緒についたばかりという面もある比較法の研究等をさらに深めた上で、その総合的な検討をした上で検討をさらに継続すべきではないかというふうに考えまして、最終的な結論は2007年を目途に検討をして得るべきものとされました。
 なお、司法救済に関するもう1つの検討項目であります「損害賠償・不当利得等」につきましては、本日御紹介いたしました「間接侵害」関係についての検討が相当程度進んだ段階で、その検討を開始して並行的に進めて、これについても2007年を目途に検討の結論を得るべきものとされました。以上でございます。

(中山主査) はい、ありがとうございました。各ワーキングチームごとに20分間くらい議論をしていただく予定でしたけれども、ちょっと時間が押してまいりましたので、10分くらいしかないかもしれませんけれども、初めにデジタル対応ワーキングチームの報告につきまして、御意見、御質問を頂戴したいと思います。何かございましたら、お願いいたします。
 ローマ字の3文字、4文字の略語が多く出てきますけれども、何か最後に一覧表で簡単な説明なり、あるいは原文なりをつけてもらえると分かると思うのですけれども。特に21ページ辺りは、恐らく内容が分からない人が圧倒的に多いのではないかと思うので、よろしくお願いします。
 他に何かございましたら。はい、どうぞ。

(苗村委員) 小さな確認のための質問です。2番目の項目、デジタル機器の保守・修理時における一時的固定ですが、中身はだいたい分かりますし、これが必要であることも分かりますが、タイトルが一時的固定と書いてあって、もちろんこの一時的固定を権利制限とすることも必要ですが、その後、当然その修理が終わった後の機器に戻す必要があるわけですね。そこでもう1回規制を加えるわけで、多分そのことを含めて、後ろの方では回復ですか、そういう言葉もあると思うのですが、何か一時的固定の部分だけを権利制限にするように読めてしまったので、念のために確認です。

(茶園委員) おっしゃるとおり、ここで問題になりますのは、デジタル機器を保守するために一度外に出す。それが一時的固定なのですけれども、修理がし終わった段階でまた戻すということで、おっしゃるように、後の方については一時固定という言葉を使うと含まれないので、ちょっとすみません。趣旨は先生おっしゃるとおり、もう少し考えさせていただきたいと思います。

(中山主査) 趣旨としてはもちろんそれは戻すことも含むということですね。

(茶園委員) そうです。言葉をどうするかという問題です。

(中山主査) はい。どうぞ、村上委員。

(村上委員) 私もデジタル機器の保守・修理、これは認めていくべきというのは同意見ですけれども、逆に反対解釈として、携帯電話ですけれども、現行実務と同じようなことをやった場合に、現状は著作権法に違反しているというのか、という点をお聞きしたいと思います。

(茶園委員) 今、御質問があったのは一時的固定についてで、保守・修理のための一時的固定は、複製であると言わざるを得ないでしょうし、複製権が及ぶということも認めざるを得ないと思いますから、これに対して明確に適用されるべき権利制限規定は見当たりませんので、まずは権利侵害と言わざるを得ない。そこでその後に、権利侵害にしないという方向で考えるのであれば、例えば権利濫用ということが考えられるかなというように思っております。

(中山主査) 裁判所に行ったらそうかもしれませんが、これは措置はしないという意味ですか。権利濫用というのは裁判所で判断することですので、立法の措置としてはしないという、そういう御趣旨ですか。つまり、この条文ができたから、過去の分は侵害だといって訴えられた場合の条文上の措置は設けなくてもよろしいという、こういう御趣旨ですか。つまり、この条文が立法化される前のことについてですが。

(茶園委員) 現時点という意味ですか。

(中山主査) そうですね。立法からいうと過去のことは、条文上は措置をしなくてもよろしいという御趣旨ですか。多分、村上委員もそういう質問だろうと思うのですが。

(村上委員) この内容自体は非常に結構な話だと思うので、もし決着をつけるなら、今でも許されるということが黙示の許諾とか何かの解釈ができるなら、このままで検討してもらえればいいのですが、もし今本当に何もなければ違法だということならば、早めに決着つけてもらった方がいいという趣旨であります。

(中山主査) では、それは宿題で。

(茶園委員) 先程みたいに1番目の問題と違って、あとこれだけなのですけれども、権利が及ぶ、ということはちょっと認めざるを得ないことで、問題はその後なのですけれども、これは何とかする必要性があると思っております。

(中山主査) はい、どうぞ、前田委員。

(前田委員) 権利者の許諾の下で携帯電話等で有料配信されているようなコンテンツについては、推定的同意があるということで何とか現行法でも適法と言えて、それをある意味確認するような規定になるのではないかなと思います。
 ただ、権利者の許諾なく携帯電話等で配信されていたようなものについては、推定的同意があったとは言えず、現行法では適法と読みにくくて、その部分については、やはり権利制限規定がないと、ちょっと救済できないのかなという気がします。
 今回、もし制限規定を置くとした場合には、権利者の許諾なく携帯電話等で配信されたものについても、権利制限規定をかぶせるという御趣旨になるのでしょうか。

(茶園委員) そうですね。検討結果報告には、その旨を記載していないと思います。まだ、十分に検討していなかったと思うのですけれども、私個人としては、それも含めたほうがいいのではないかと思っています。保守業者にとっては、それが合法的な複製物なのか、あるいは違法な複製物なのか分からないので、両方を含める必要があるのではないかと思いますけれども、恐らくワーキングチームにおいては、その問題を詳しくまだ検討していなかったのではないかというように思いますが。

(山地委員) そんなに深くではないけれども、一応違法複製物が中に含まれていた場合にどうするという議論はしたように記憶しております。その時に出た大きな議論は、座長がおっしゃったように、修理業者から見ると、それは合法的にライセンスを受けたものか、そうではないのかがわからないので、法的にはそれを除外することはできるかもしれないけれども、それをしてしまうと、実際問題として結局修理業者は修理ができないということになってしまうので、修理の観点からいうと、それは区別しないで権利制限にしていいのではないかという議論があったと記憶しております。
 それをもしも権利者が問題にするのであれば、修理の問題とは別に、違法複製をしているわけですから、複製権侵害で争えばいいのではないかと、私自身は思っております。

(中山主査) 他にいかがでしょうか。それでは、また後でペーパーで御意見を頂戴する予定ですので、とりあえず今の問題はそのくらいにいたしまして、次に契約・利用ワーキングチームの報告につきまして、御意見、御質問ございましたらお願いいたします。これはかなり根本的な問題も含まれていると思いますけれども、どうぞ遠慮なく。
 どうぞ、山本委員。

(山本委員) 質問なのですが、この問題を考える上で1点お聞きしておきたいのですが、61条の1項の一部譲渡のところの話なのですが、期限付きの譲渡が行われますけれども、聞いた話で、先日の著作権保護部会の中でも、期間譲渡について著作権法上、登録が可能だという話が出ていたのですが、実際はどうなのでしょうか。それによってどういう対応が、さらに立法してしまって必要かということが変わってくるように思いますので、その点、御紹介いただきたいと思います。

(中山主査) これは事務局からお願いします。

(川瀬著作物流通推進室長) 過去に期限を付した譲渡の登録した例はございます。登録実務では、立法当初期限付きの譲渡は可能だというような見解が示されておりましたので、その見解に基づいてされた、というように考えております。

(中山主査) よろしいですか。

(村上委員) 13ページのここの63条2項の(2)の問題の所在の3の「ライセンシーの契約違反を理由に契約を解除した場合、解除前に行った利用は著作権侵害になるのか」という感じでは、私は昔から知的財産権のライセンス契約の場合は解約した、解除と書いてあるのですが、解約した場合には将来に向かっての解約なので、必ずしも過去に全面遡及はしないというか、過去にやったことも全部が違反になることはないという、こういう印象を持っていたのですが、判例の方はそこは固まっていないということでよろしいですか。

(土肥委員) 今の点の判例ですか。判例は承知していないのですけれども、ありましたでしょうか。少なくともワーキングチームの中でこの点について裁判例を過去調べてということはしていないのですけれども、これは他の委員におかれまして、この点について何かお分かりになることがあれば教えていただきたいと思います。

(村上委員) いや、確たる自信があるわけではないので。

(土肥委員) 裁判例があるかないかということですか。

(村上委員) 一般的にこういう知的財産権のライセンス契約の場合に、いわゆる継続的取引関係の法理が適用されて、解約された場合に過去にやっていた行為も含めて、それが全部無効になってということは普通はあり得ないので、解約した後からのものについて解約の効果があるということで、過去に遡及しないという、そういう形で一般的に理解していたもので、その辺がそういう受け取り方では必ずしもないことを前提にしなければならないのかなということですが。

(土肥委員) ここでの議論は、債務不履行の内容になるのか、あるいは著作権侵害になるのか、そういう議論だと思います。今おっしゃったところのそういうライセンス契約のような継続的に契約関係が出てくる場合に、解約する前の事態が遡って侵害になるということですが、債務不履行にはなるが、著作権侵害にはならないのでしょう。

(中山主査) どうぞ、森田委員。

(森田委員) この点については、ワーキングチームでも議論しましたけれども、そこで分かったことは、私は少し驚いたのですけれども、このような典型的なケースについての解釈問題について、知的財産法学においては未だ確立した見解がないようだということです。
 解除の効果が遡及するかどうかですが、継続的契約の場合に解除の効果が遡及しないというのは、すでに適法に履行された部分については遡及しないということでありますが、ここで問題になっているのは、最初から1銭もライセンス料を払っていない場合において、ライセンス料の不払いを理由に契約を解除する場合にその効果は遡及しないのかということであって、民法の一般原則からいけば、解除の効果は遡及するということにならざるを得ないのではないかと思います。遡及効が及ばないという見解に立つときは、その理屈を説明するのは難しく、ワーキングチームにおける検討の過程ではそのような合理的な説明は見つからなかったということだと思います。この点については、解除の遡及効を否定する必要があるかどうかも含めて、さらに詰めておく必要がありますが、一般原則からいけば、解除の効果は遡及するということになり、利用許諾も遡ってなかったことになるわけですから、解除前の利用行為も遡って著作権侵害になるのではないかというふうに、私は考えております。

(村上委員) 解除理由にもよるのだと思いますけれども。

(中山主査) 特許ですが、似たような事例として、例えば特許が無効になった場合に、すでに払ったライセンス料を返還すべきか、それについては特許の方議論されております。解除ではなくて無効の場合ですが。知的財産の場合、かなり難しい面はあると思いますけれども、もう少し検討をお願いします。
 他に何か御質問がありましたら。はい、どうぞ。

(大渕委員) 質問ではなく、感想というか、意見なのですが、契約関係についてもこの審議会で検討を行っておいた方がいいのではないかと思いまして、私もこの点を提案いたしましたので、提案者の1人として、その観点から少し印象的な点を申し上げますと、今回は非常に数多くの広範なテーマにつき検討を開始していただいて、いずれも立法的な検討を直ちに行うというものではありませんが、重要な問題でありながら今まで必ずしも十分議論がなされていなかったところを、メンバーについても若手を大胆に活用して本格的に検討を開始していただいております。私もこれを提案した際には、むしろすぐにでも立法が必要というよりは、今後こういう点が問題になってくるので、それが問題になった際にすぐに検討しようとしても検討時間が足りないというようなことにならないように、早いうちからしっかりとした研究基盤を審議会の場でも作っておく方がいいのではないかと考えまして、これを提案した次第であります。まさしく今回、まだ今後検討を深められるということだと思いますけれども、非常に広範に基礎的な研究を開始していただきました。この研究の成果は将来に実ることがあるかと思いますから、その方向で是非とも検討を進めていただければと思います。以上です。

(中山主査) どうもありがとうございました。実務的にも譲渡契約の書面化とか未知の利用方法というようなものは、重大な問題があると思われますが、特に弁護士の先生なんかはどのような御意見がございますでしょうか。
 それでは時間の都合もございますので、最後の司法救済ワーキングチームの報告に移りたいと思います。この件について、何か御意見あるいは御質問ございましたら、お願いいたします。

(苗村委員) 直前の契約・利用ワーキンググループの報告書に関して、質問というよりはただコメントでして、今後継続検討される中で参考にしていただきたいと思います。61条2項の件ですが、ここに書かれていることについて、特に私は異論はありませんし、直ちに廃止するのではないとして、将来廃止の方向で検討されるとすれば、この2つの場合を合わせて考えていただきたいというのがあります。
 1つは自然科学系の学会等が、その論文の著者から著作権を学会に譲渡するという慣例があります。これは当然、学会の規約として決めておいて運用しているわけですが、その時に当然、暗黙のうちにこの条文が適用されていると私は理解をしていて、明示されていませんが、当然著者はその論文を元にして研究を続け、新しい論文を書いたりするわけで、いちいち学会から許諾を得ているわけではありませんので、実際は適用されていると思います。ただ、自然科学系ですので、あまり法律の条文を厳密に見ていないでやっておりますので、質問しても一般の研究者はそう言わないかもしれませんが、適用されていると思いますというのが1つ。
 もう1つは大学で、高校、中学校、小学校もそうですが、最近教材をどんどんマルチメディア化しておりますが、その著作権の帰属がどこかというのは、まだ必ずしも明らかになってないわけで、多分実態としては、法人著作物になっている場合と、教員個人の著作物として扱っている場合と両方あるわけですが、運用上は個人である教員が著作者であるけれども、その組織、大学等にその著作権を譲渡するということがあり得ると思うわけですが、この場合もその教員がそれを元にして新しい教材なり、特に別の大学に移れば別の教材を作る時にまた許諾を得なければならないというのも、やはり実務的にやや奇妙ですので、そういった点もこの61条2項の検討される時にはやっていただきたいと思います。過去に判例があるわけではありませんが、実務的にそういうことがあると思います。以上です。

(中山主査) 何かコメントはありますか。

(土肥委員) はい。今の御指摘も入れて、確かに学会の学者の研究論文、研究者の研究論文に関する著作権を学会に移転したような場合に、それもさらに発展していくと、こういうふうなことは非常に重要なことになるわけでございますから、そういうようなことも含めて、ある種、この61条2項ということがなお一定の領域において意味を持っている場合もあるのではないかという趣旨ですね。
 確かに、権利を全部譲渡したのに残っているというのもまたおかしいではないかと、こういうふうにいわれるところもございまして、この点についてここだけ取り上げて早急に何かするというよりも、全体的ないろいろなつながりの中でもう少し時間をかけて結論を出したい、こういう趣旨です。

(中山主査) 今の問題は理系の先生とか、あるいは学校だけではなくて、例えばコンピュータプログラムの下請け企業に作らせて全部の権利を譲り受けてしまう。その下請けの企業はそれに基づいて新しいプログラムを作ることができないだとか、いろいろなところで問題は出てくるかと思いますけれども、そこら辺を含めて検討をお願いいたします。
 他に、今の司法救済のほうに戻りますけれども、何かございましたら。
 どうぞ、末吉委員。

(末吉委員) 先程、契約・利用の方の論点は実務家はどうとらえるのかという話があったのですが、契約・利用の方はどちらかというと事実認定の方なので、なかなか一般的な論点としては検討も難しいだろうなと思って実務家として見ているのですけれども、弁護士などで一番やはり悩むのは、いま問題になっている司法救済の、特に間接侵害のところです。結局、例えば112条をとらえて、誰に対してどういう理屈で差止請求権が立つのかというのは、もちろん最高裁の判例とか出ているのですけれども、理論的な整合性をもって法律構成がしにくいというところにあって、これはもう事実認定の問題よりも、むしろ法律構成の問題なので、今後の司法救済をめぐって非常に重要な論点であると同時に、平たく申しますと、できるだけ早く解決していただきたいという論点でございますので、こんなことも決まっていないのかというふうによく御指摘されるわけです。知的財産以外の分野の方々からですね。できるだけ早期に鋭意論点を検討いただければというふうに、心から私どもは願っているところで、ただなかなか慎重な御検討が必要なのだろうなと思っておりますが、大渕座長の御努力に期待をしたいという意見でございます。よろしくお願いいたします。

(中山主査) ワーキングチームに対するエールであると受け止めましたけれども。

(大渕委員) この論点が理論的にも、それから実務的にも重要であることは今、末吉委員から御指摘いただいたとおりでありまして、その関係からできるだけ早い検討結果をお望みであることもまったく理解できることであります。そのためにわれわれも鋭意努力しているのですが、このテーマは一般法にも及ぶ数多くの論点にも密接な関連性を有するものでありまして、これら全体につき、統一的・横断的に検討し始めると、膨大な作業を要することとなり、回答を得るには膨大な時間を要するものであります。
 このような一般法にも密接な関連を有する複雑困難なテーマに関しましては先行研究が乏しいというのが一般的傾向としてあるわけですが、このテーマについてもこのような傾向が顕著に見られます。そのような状況の下で、本格的に主要法制であるドイツ、フランス、アメリカ、イギリスの4国について調査検討を行うにしても、著作権法だけでなくて、各国とも特許法その他との関係も見なければいけないし、それから民法等民事法一般、あるいは場合によっては刑事法等も視野に入れなくてはいけないということで、大変な作業を要することもまた事実であります。先程の熱いエールをいただいた上で、先程申したような膨大な量の作業を要するものではありますが、できるだけ速く検討を進めたいと思っております。

(村上委員) 3つとも非常に重要なペーパーだと思います。そこで2007年といっていますけれども、例えば市場開放問題なんかでは、いつまでにやるというので非常に厳しい条件がかかります。半年以内、1年以内という意味です。そういう意味で、この3つの課題で2007年というのは、例えば2007年に開始するのか、2007年度中というのか、2007年12月までというのか、その辺期限というか、その辺の共通認識はあるでしょうか。

(中山主査) これは最初に3年計画としてこれだけのことをやりますというあのペーパーに基づいてやると思いますけれども、2007年というのは2007年度の通常国会という意味ですか。

(山地委員) 委員としての理解を申し上げますと、吉川課長が最初に言われたことですけれども、急ぐものについては平成18年度の通常国会での立法を視野に入れたい。時間がかかるものについては、1年おいて2年後の平成20年度の通常国会を頭に置いて議論したいという御発言があったと思います。
 もちろん個別にもう少し早くとか、中間でとかということも可能性としてはあるから、それを排除するわけではないけれども、大枠はそういう考えで、この審議会を運用していただきたいという御発言だったと理解しております。

(中山主査) そうですね。それは確か最初に配布した予定表のペーパーに、今それは持っていませんけれども、あったと思います。いずれにいたしましても、鋭意ワーキングチームも努力をしていただきたいと思います。
 他にこの3つを通じて何かございましたら、意見を承りたいと思います。はい、どうぞ、浜野委員。

(浜野委員) デジタル対応ワーキンググループの15ページの中頃に「機器の更新等は本措置の対象外とすべきである」と書かれていますが、例えば本人の意向にかかわらず会社がOSを変えてしまって、特定のCPUだけしか動かないというのでハードウェアを変えざるを得なくなったり、例えばPHSのサービスが中止され、違うサービスに切り替えなくてはならず、ハードを変えなければならない事態も起こっています。そういったインフラ側のサービスの停止とか、OSの更新でハードウェアそのものを変えざるを得ない状況が頻繁に起こっています。そう考えた場合、機器の更新が除外されてしまうと、そこに入っているものを全部あきらめて捨ててしまえということになり、現状では、こういった事態も考慮していただきたいなと思います。

(茶園委員) 御趣旨はよく分かります。ここでまず議論いたしましたのは、特に携帯電話、デジタル機器の保守・修理においては、少なくともこう言えるだろう、つまり、コンテンツが外部流出しないということを担保できれば、いったん出してまた戻すということについて、権利制限することが許されるのではないかということだったのですけれども、それ以外のことにつきましては、例えばここに書いております買い換えですね、あるいは今、先生がおっしゃったようなOSの変更に伴うものとかですが、そのようなものにつきましては、いろいろな別の問題が発生すると思いますので、あるいは今後さらに関連して検討させていただくことになろうと思います。

(中山主査) プログラムについてだけはリクエストの情報がありますけれども、裏から読むと、じゃあプログラム以外は駄目かという議論も出てくるのですけれども、そうすると今のような問題が出てきますので、その点も含めて検討してみてください。

(茶園委員) はい、分かりました。

(中山主査) 他に何かございましたら。よろしゅうございましょうか。
 時間ですので、ワーキングチームについてはこのくらいにしたいと思いますけれども、先程申し上げましたように、十分時間がとれませんでしたので、また御意見を伺うということにしたいと思いますので、その折にはペーパーで意見を提出していただければと思います。
 次回の本小委員会におきましては、本日御報告いただきました各ワーキングチームの報告内容もビルトインいたしまして、これまでの本小委員会での議論を踏まえて、「審議の経過(案)」という形で御検討していただきたいと思っております。
 最後に事務局から連絡事項がございましたら、お願いいたします。

(白鳥著作権調査官) 本日は長時間どうもありがとうございました。第7回目となります次回の法制問題小委員会の日程につきましては、正式には近日中にホームページに掲載する予定でございますが、お配りしている参考資料2にございますとおり、次回は8月25日の木曜日、9時半から13時まで、場所は本日と同じこの如水会館2階「オリオンルーム」にて行うことを事務的には予定しておりますので、よろしく御承知おきくださいますようお願い申し上げます。以上です。

(中山主査) はい。では次回は9時半からですので、よろしくお願いいたします。それでは、本日はこれで文化審議会著作権分科会の第6回法制問題小委員会を終了したいと思います。どうも長時間ありがとうございました。


(文化庁長官官房著作権課)

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