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文化審議会

2002/09/27議事録
文化審議会著作権分科会法制問題小委員会(第4回)議事要旨

文化審議会著作権分科会法制問題小委員会(第4回)議事要旨



1  日  時     平成14年9月27日(金)10:30〜13:00

2  場  所 文部科学省分館2階201・202特別会議室

3  出席者
(委員) 石井、上原、金原、北川、児玉、齋藤、菅原、瀬尾、関口(説明者)、  土屋、生野、福田、松田、三田、山際、山口、山地、の各委員
(文化庁) 銭谷次長、岡本著作権課長、吉尾国際課長、尾崎著作物流通推進室室長,堀野著作権調査官ほか関係者

4  配付資料  
    資料1   文化審議会著作権分科会法制問題小委員会(第3回)議事要旨
    資料2 関係者間で合意形成が進められつつある事項
    資料3 「教育」「図書館」関係の権利制限見直しの概要
    資料4 「教育」「図書館」に係る権利制限の見直しについて(案)

5  概要
(1) 事務局から資料4に基づき、「教育」「図書館」に係る権利制限見直しに関して、まず、「法改正を行う方向とすべきと考えられるもの」についての説明が行われた。その後、以下のような意見交換が行われた。
(以下  委員:○、事務局:△)

○: 教育の検討会においては、教育現場のニーズを考えながら鋭意検討を行い第35条の適用を受ける複製行為の主体に「学習者」を加える法改正について合意した。併せて、第35条但し書きの厳密な運用のためのガイドラインを策定することで権利者側の懸念を解消しようということに合意した。

○: 教育検討会の過程において、権利者側から懸念事項が示されたことを踏まえて、利用者側としては、この法改正に伴い、著作権教育の推進に努めていかなくてはならないと考えている。

○: 教育や図書館の検討会におけるガイドラインの作成等の合意事項については、権利者側も積極的に進めてまいりたい。

○: 図書館側としては、技術の変化により再生手段の入手が困難となった図書館資料を保存するため新しい方式で複製する場合を第31条の適用を受ける複製行為に加えることについては、是非実現していただきたい。図書館資料の貸出に係る補償金については、基本的に反対はないが、だれがその補償金を負担するのかということが重要だと考えている。

○: 教育検討会において、「授業」の概念は検討されたのか。卒業記念行事や文化祭のために学習者が何かをつくる場合などは「授業」に該当するのか。

△: 「授業」というためには、教える者と教わる者がいることが必要であり、児童が勝手に複製することは認められない。我が国においては、必修クラブ活動は教育課程の一部であるから「授業」、課外活動としてのクラブ活動は「授業」でない、というように比較的明確に決められるのではないか。

○: 再生手段の入手が困難となった図書館資料を保存するため複製することに関して、SPレコードのようなものをハードディスクに複製することも含まれるのか。

△: 著作権法一般としてはテクノロジーフリーなので含まれる。

○: 試験問題の公衆送信に関して、例えば、コンピュータによる試験は、どのような場所、方法で行われるのか。

○: 試験問題の公衆送信に関しては、既に遠隔地におけるカンニングをどのように防ぐのかといったことを含む形での研究が行われており、実証実験も開始されていると承知している。

○: コーディネータの検定試験においては、同一会場の受験者に対して、時間制限を付けて個々のディスプレイ上にランダムに出題する方式の試験が既に実施されている。

○: 法改正を機会として、著作権教育を進めていくということを是非お願いしたい。

△: 権利制限を享受する側は、権利の保護に対する意識が薄くなる傾向がある。その点については、著作権法の改正がいい機会であると考えているので、関係者と協力しながら積極的に進めてまいりたい。

○: 「法改正を行う方向とすべきと考えられるもの」については、大筋として了解が得られたと思うが、一般に各々の権利制限規定において、権利者の利益を不当に害する場合、許諾を求めるのか、補償金で対応するのか、ガイドラインを作成するのかということは常に検討していく必要がある。「意思表示システム」については、「権利管理情報」の中に埋め込まれている権利者の意思表示との関係にも留意する必要があるのではないか。

(2) 次に、事務局から資料4に基づき、「教育」「図書館」に係る権利制限見直しに関して、『第38条第1項に規定する非営利・無料の「上映」について、「上映を禁止する旨の表示」がある場合を権利制限の対象から除外すること』についての説明が行われた。その後、以下のような意見交換が行われた。

○: 映像の著作者として、このような法改正を要望しているのは、上映を全て禁止するという意図ではない。あくまでも商業的利用が行われている映画の著作物について、現在の権利制限の枠内で上映されると、近隣の映画館やビデオ販売、レンタルなどに及ぼす影響が大きいことから事前に許諾を得て上映していただきたいということを要望しているものである。

○: 「上映を禁止する旨の表示」だが、どこに表示して、それを購入者がどのように知覚することができると考えているのか。また、誰がその表示を行った場合有効な表示であると考えているのか。さらに、外国との関係でいえば、その表示は何カ国語で表示するかということも考える必要がある。

○: 表示の方法については、ガイドラインの作成を検討中である。表示の主体については、権利者か権利を委託された者かははっきりしないが、媒体作成者が表示する以外ないのではないかと思う。外国語表示については、念頭になかったので、持ち帰って検討したい。

○: 図書館検討会の議論の中で懸念が示されたことは、「上映」の概念が広いために、データベースの場合、図書館職員なら見ても良いが、一般利用者には見せられないというものが出てくるのではということであった。また商業的上映と競合するものについては、協議を行ったが、映像ソフト協会の管理外の映画の著作物はどう扱うかを検討しなくてはならない。

○: 電気屋のショーウィンドウでインターネットの画像をディスプレイに映すのも「上映」であり、上映の範囲が広い。様々なものに禁止の表示が付された場合に、上映して良いかどうかの判断について、利用者が困るケースが増えそうな気がするが、その点について議論があったのか。

○: 検討会においては、様々な議論がなされた。マイクロフィルムやCD-ROMなどについても検討がされたが、1つ1つの静止画に禁止表示をする人はいないのではという結論だった。「教育機関による教育目的の上映」については、権利者の利益を不当に害することにはならないと考えられるので、何らかの形で引き続き無許諾利用とする方向で考えている。

○: 図書館側としては、実際法律に書いたときに、禁止の表示が出てくる可能性の広がりについて懸念はある。マイクロフィッシュに上映禁止と書くとは思えないが、実際の影響がどうなるのかを計りかねている。

○: 著作者の立場からすると、図書館側が、図書館予算を増やし、著作者に著作権料を支払うことを基本として議論を進めていただければと考える。

△: 様々なご指摘をいただいたので、事務局としても再度幾つかの案や例を考え、その上で、もう一度ご議論いただきたい。

○: 権利者側からの禁止の表示という一方的な意思表示について禁止の効力をどう考えるかという点について留意する必要がある。一方的に認めるのであるから、追認するのかどうか。また、「権利者の利益を不当に害する場合を除く」という趣旨の但し書きは、権利制限全般にあってもよいのではないかと思われるが、これは将来の問題として検討していただきたい。

(3) 最後に、事務局から資料4に基づき、「教育」「図書館」に係る権利制限見直しに関して、「新たに検討すべき事項」についての説明が行われた。その後、以下のような意見交換が行われた。

○: 現在の機器の進歩、ネットワーク化の中で、一定のタイプの機器を指定して、何らかの法規定を作るのは、規定の作り方として問題があると思う。機器を特定することで解決しようという方法論をとらずに、もう少し広く考えた方が良いと思う。

○: 複製の代理申込みをするのを図書館等に限定する理由は何か。データベースが、既にあるのならば、本人に対し公衆送信すれば良いのではないか。利用者にも金銭を一部負担してもらっても直接本人に送信するようなサービスがあれば良いと思うが、どう考えるか。

○: この議論のスタートは、利用者本人に送信できるようにすることであったが、権利者側から、電子的な複製物を利用者に送信すると、その後どこまで再送信されてしまうのかという懸念があり、歯止めが効かない状況になってしまうのではないかとの危惧があったため、送信先を図書館等に限定するという結論になった経緯がある。

○: 現在のパソコンにはFAX機能があるので、データベースとしてパソコンの中に蓄積されると、蓄積されたデータをもとに、それを販売する業者が現れるという事態がおきて、データが無限に世の中に流通してしまう恐れがある。これを制限しようとしても送信する図書館側には、相手のFAXが紙に打ち出す機器か、コンピュータかはわからないので、最寄りの図書館で、紙の状態で利用者に渡るのであればよいと権利者側で提案したことから、こういう複雑な形になった。

○: コンピュータさえ操作すれば、必要な情報を取り出せるような形は便利ではあるが、そうすると、中央図書館や国会図書館に、出版物が1冊あれば足りるということになってしまう。ただし、図書館が、民間業者のように、権利者に必要な対価を払って利用者への送信サービスするのであれば反対はしない。

○: 図書館は特別な権利制限を享受している公共機関なので、民間の出版社の市場と競合するようなことになってはいけないのではないか。また学術書や論文の多くは、図書館の購入によって支えられている。送信サービスはユーザーからすれば便利だが、出版文化の保護という著作者の権利に立った視点を含めて議論していただきたい。

○: 民間との競合はわかるが、図書館は無料だから足を運ぶ労力を使わせてもよいのだということではないと思うので、図書館の利便性の向上という観点もあってよいのではないか。

△: この問題は、図書館のあり方に関わる問題であるが、情報化が進展する中で、現在の技術に着目して、こういう改正を行うことが果たして適切なのかという問題であり、引き続き検討していただきたい。また「引き続き当事者間で協議を進めるもの」の中に、図書館の利用者本人に送信するのはどうなのか、31条の複製について補償金を課すのはどうなのかということも今後協議されるので、それらの協議の状況も踏まえつつ、再度検討いただきたい。

○: 利便性や技術の活用も必要であろうが、権利者の利益を不当に害しないことも必要であり、相互に両立する方法を模索することが重要だと思う。

   閉会
事務局より、次回は10月7日に開催することが説明され、閉会した。



(文化庁著作権課)

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