【甲野著作権課長】 おはようございます。まだ到着されていない委員がいらっしゃいますけれども、時間でございますので、只今から第18回文化審議会著作権分科会を開催いたします。本日は御多忙の中、御出席をいただきまして誠にありがとうございます。私は著作権課長の甲野でございます。本日は第6期目の文化審議会著作権分科会の最初の会議ですので、後程分科会長を選出していただくことになりますが、それまでの間、私が進行させていただきますので、御了解をいただきたいと思います。
はじめに、委員の御紹介をさせていただきます。配付資料1の、文化審議会著作権分科会委員名簿順に御紹介をさせていただきます。青山善充委員でいらっしゃいますが、本日まだ御到着になっておられません。続きまして大林丈史委員でいらっしゃいます。岡田冨美子委員でいらっしゃいます。本日は御欠席ですが加藤幹之委員もお加わりいただいております。それから御到着が遅れておりますが、角川歴彦委員でいらっしゃいます。金井重彦委員でいらっしゃいます。金原優委員でいらっしゃいます。後藤幸一委員でいらっしゃいます。到着が若干遅れておりますが、迫本淳一委員もお加わりいただいております。それから本日は御欠席ですが、佐々木正峰委員にもお加わりいただいております。佐藤修委員でいらっしゃいます。里中満智子委員でいらっしゃいます。本日は御欠席ですが、佐野真理子委員にもお加わりいただいております。瀬尾太一委員でいらっしゃいます。それから、本日は御欠席でいらっしゃいますが大楽光江委員にもお加わりいただいております。つづきまして田上幹夫委員でいらっしゃいます。辻本憲三委員でいらっしゃいます。道垣内正人委員でいらっしゃいます。常世田良委員でいらっしゃいます。土肥一史委員でいらっしゃいます。本日は御欠席ですが、永井多惠子委員にもお加わりいただいております。中山信弘委員でいらっしゃいます。野村豊弘委員でいらっしゃいます。福王寺一彦委員でいらっしゃいます。松田政行委員でいらっしゃいます。三田誠広委員でいらっしゃいます。本日は御欠席ですが、村上政博委員にもお加わりいただいております。森忠久委員でいらっしゃいます。最後、本日は御欠席ですが、紋谷暢男委員にもお引き受けをいただいております。多くの方々につきましては、委員を昨年に引き続いてお引き受けをいただきました。また新たに、何名かの方に加わっていただきました。また本日はまだ発令にはいたっておりませんけれども、さらに一名消費者関係の方々にもお加わりいただく予定でございます。今期もまた積極的な御議論をお願い申し上げます。
つづきまして、文化庁関係者を紹介させていただきます。辰野裕一長官官房審議官でございます。川瀬真著作物流通推進室長でございます。白鳥綱重著作権課著作権調査官でございます。なお文化庁次長の加茂川幸夫も出席の予定でございますが、現在国会関係の業務がございまして到着が遅れております。
先程御紹介遅れましたが、青山善充委員が到着されましたので、御紹介をさせていただきます。青山善充委員でいらっしゃいます。
それでは、まず今期の分科会長の選出をお願いしたいと思います。選出方法につきましては、文化審議会令第5条第3項の規定によりまして分科会に属する委員の互選により選任することとなっております。事務局といたしましては、前期に分科会長をお務めいただきました野村委員に分科会長をお願いしてはどうかと思いますが、いかがでございましょうか。
(「異議なし」の声あり)
【甲野著作権課長】 御異議が無いようですので、野村委員を分科会長として選出するということで御承認をいただきたいと思います。それでは、野村委員には大変恐縮でございますが、分科会長の席のほうへお移りをいただきたいと思います。
それでは、これからの議事進行につきましては野村分科会長にお願いをしたいと思いますので、どうぞよろしくお願いをいたします。
【野村分科会長】 只今、選出されました野村でございます。前期に引き続いてということで、本来民法を専門にしておりまして必ずしも著作権を研究しているわけではありませんけれども、務めさせていただくということにしたいと思います。この著作権分科会では、昨年から色々な著作権法の問題点の見直しということで審議を始めておりますが、まだ色々残っている問題がたくさんありまして、また新聞報道などによりますとまた新しい問題も出てきているということで、ますますこの分科会が重要になっておりまして、これから任期一年ですけれども、一年の間にできる限り問題についての結論を得て審議を進めていきたいと思いますので、どうぞ御協力の程よろしくお願いします。
それでは、まず文化審議会令第5条第5項の規定に基づきまして、分科会長の代理として副分科会長を指名させていただきたいと思います。私としては、前期に引き続きまして中山委員を副分科会長として指名させていただきたいと思います。大変恐縮ですけれども、中山委員には、こちらの副分科会長席にお移りいただきたいと思います。
それでは、まず事務局より配付資料の確認をお願いいたします。
【白鳥著作権調査官】 それでは、議事次第の一枚紙がございます。そちらの中段以下に配付資料の一覧がございますので、あわせて御覧いただければと思いますが、本日配付させていただきます資料は5点ございます。資料1につきましては、先程御覧いただきました当分科会の委員・専門委員の名簿でございます。資料2は当分科会の運営規則の(案)です。資料3は当分科会の議事の公開についての(案)でございます。資料4ですが、小委員会の設置について(案)でございます。資料5は部会・小委員会の委員の名簿の(案)でございます。なお参考資料といたしまして、文化審議会の関係法令等も配付させていただいております。各資料の右上に資料番号を付してございますので、万一不足等ございましたら事務局に御連絡いただきますようお願いいたします。
【野村分科会長】 次に著作権分科会の運営に必要な事項として、「文化審議会著作権分科会運営規則」と「議事の公開の方針」を決定したいと思います。資料2及び資料3について事務局より説明をお願いいたします。
【白鳥著作権調査官】 それでは、資料2と3を御覧ください。資料2は文化審議会著作権分科会の運営規則の(案)でございます。こちらは、文化審議会令及び文化審議会の運営規則に基づきまして、当分科会としての運営の規則を定めるものでございます。内容につきましては、部会の設置に関するものが第2条に書いてございます。具体的には、第2条第1項において、使用料部会の設置とその所掌事務として、一号におきましては、教科書関係の補償金や裁定に関する補償金の額に関する事項について規定しています。二号でございますが、商業用レコードの二次使用料の額の関係の事項であります。三号ですけれども、商業用レコードの貸与により公衆に提供する場合の報酬の額に関する事項でございます。それから四号と五号ですけれども、私的録音録画補償金の額の認可等に関する事項でございます。六号につきましては、著作権等管理事業法における使用料規程についての裁定に関する事項。七号は、万国著作権条約の実施に伴う著作権法の特例に関する法律に定めております、翻訳に関しての補償額に関する事項でございます。つづきまして第3項では、部会の議決をもって分科会の議決とするというものについて定めておりまして、只今申し上げた事項のうち、裁定にかかる補償金に関する事項、商業用レコードの二次使用料の額に関する事項、期間経過後の商業用レコードの貸与にかかる報酬の額に関する事項、あとは万国著作権条約関係の補償額に関する事項を定めております。
小委員会の設置につきましては、第3条において規定がございまして、分科会に小委員会を置くことができるとしております。また、小委員会に属すべき委員、臨時委員及び専門委員は分科会長が指名することとし、小委員会には主査を置き、当該小委員会に属する委員、臨時委員及び専門委員の互選により選任をするという形になっております。
会議につきましては、過半数の出席が定足数でありまして、過半数が出席しなければ会議を開いて議決することができない。議決につきましては、出席者の過半数で決し、可否同数の場合は、主査の決するところによるとしています。
それから、各小委員会における審議の経過及び結果について各小委員会の主査は分科会に報告するものとする、としております。
最後に、主な条文としては、第4条に会議の公開についての規定がございます。議事は公開して行うとし、ただし、特別の事情により分科会において必要と認めるときはこの限りではないとなっております。
なお第4条の第2項にございますとおり、公開に関しまして必要な事項は別に分科会長が分科会に諮って定めるとされております。これに基づくものとして、資料3を御覧いただきたいと思いますが、当分科会の議事の公開についての(案)でございます。1.に会議の公開という項がございまして、内容は、会議は原則公開とすると定めております。ただし、次の(1)から(3)の案件を審議する場合は除くという形になっております。(1)につきましては、分科会長の選任その他人事に関する案件、(2)は使用料部会の調査審議事項に係る案件、(3)は上記のほか、分科会長が公開することにより公平かつ中立な審議に著しい支障を及ぼすおそれがあると認める案件、その他正当な理由があると認める案件でございます。これらの案件に関しては、例外的に非公開とできるという形になっております。なお会議の傍聴等については、基本的に報道関係傍聴者あるいは各府省の関係者、または一般傍聴者を含め、会議開催日の3日前までに事務局に登録・申し込みを行う、という形の手続を予定しております。それから4.ですが、分科会長が許可した場合を除いては会議が開始した後の入室、撮影、録画、録音その他の議事進行の妨げとなる行為は禁止するとし、つづきまして、5.では、会議の進行を妨げるといった傍聴者がそのような状況であると分科会長が判断した場合におきましては、退場を命ずるといった必要な措置をとることができるとしております。議事録の公開につきましては、原則として発言者名を付して公開をするということでございます。ただし、公開によって公平かつ中立な審議に著しい支障を及ぼすといった場合、その他正当な理由があると認める場合につきましては、議事録の全部又は一部を非公開とすることができるとしております。それから、議事録を非公開とする場合の取扱いですが、7.におきまして規定しております。その場合につきましては、議事要旨を作成して公開をするということになります。最後に、会議資料の公開でございますが、会議資料は原則として公開という扱いでございます。ただし、先程のように公平・中立な審議に著しい支障を及ぼすことが認められる場合等につきましては、全部又は一部を非公開とすることができる、という内容でございます。
以上、資料2と3の内容につきまして、お諮りさせていただきたいと思いますのでどうぞよろしくお願いいたします。
【野村分科会長】 それでは只今説明がありましたように、運営規則と議事の公開につきましては第5期とほぼ同様でございまして、特に議事の公開につきましては原則として一般に公開した形で会議を開催するという案でございます。このことについて、御意見がありましたらお願いいたします。よろしいでしょうか。特に御意見なければ、案のとおりに分科会の決定といたします。なお、本日4番目の議事におきましては小委員会の設置の決定とあわせて部会及び小委員会への委員の分属の指名を行う予定となっております。これは、只今決定した議事の公開の方針を参照いたしますと「人事の係る案件」とも考えられますが、委員の皆様に御審議をいただいて決定する案件ではありませんので、小委員会の設置について決定をした後に、私から分属の指名を行うこととし、それも含めこれ以降の議事を公開により行いたいと考えておりますが、いかがでございましょうか。
(「異議なし」の声あり)
【野村分科会長】 それでは、これ以後、本日の議事は公開といたします。事務局の方は、傍聴者の入場の誘導をお願いいたします。
(傍聴者入場)
【野村分科会長】 それでは、加茂川文化庁次長より御挨拶をいただきたいと思います。
【加茂川文化庁次長】 失礼をいたします。国会審議の関係で遅参いたしましたことを、まずお詫び申し上げたいと思います。第6期の文化審議会著作権分科会の開催に当たりまして、一言文化庁を代表して御挨拶を申し上げたいと思います。
委員の皆様方のおかれましては、御多用の中、本分科会の委員をお引き受けいただきましたことを、まず御礼申し上げたいと思います。
当分科会におきましては、平成17年1月に、大局的・体系的な視点から今後優先して検討すべき著作権法制に関する課題について、「著作権法に関する今後の検討課題」として取りまとめをいただいたわけでございます。
また本年1月には、著作権法制に関する具体的な検討でございますとか、「著作物の円滑な流通」、さらには「国際的な課題」に関する検討の結果につきまして、「著作権分科会報告書」としておまとめいただいたわけでございます。
文化庁といたしましては、この報告書でお示しをいただきました方向性でありますとか、基本的な考え方を十分踏まえまして、今後の著作権法の整備を含め、速やかに必要な施策を推進して参りたいと考えております。
ただ、御存知のように、この報告書のおきましては、「私的録音録画補償金の見直し」をはじめとしまして、今期に引き続いて皆様方に御検討をお願いすべき、または検討を行うべきものとして整理された課題も残っておるわけでございます。
さらには、「通信と放送の融合」といった課題への対応も緊急に検討を開始すべき事柄と思っておりまして、こういった課題も新たに出現をしておるわけでございます。
今期の本分科会におきましては、是非これらの課題について迅速に御検討いただきまして、確かな方向性を示していただきたいと考えております。どうぞよろしくお願いいたしたいと思っております。
大変お忙しい中で、議事の日程についても御無理をおかけすることが多いと思いますけれども、是非御協力を賜れば大変ありがたいと思っております。どうぞよろしくお願いいたします。
【野村分科会長】 ありがとうございました。次に、文化審議会著作権分科会運営規則第3条第1項、先程の資料2の2ページにございますが、この規定に基づきまして小委員会の設置について決定したいと思います。今期の小委員会の構成については、資料4に案を示しておりますが、このことについて事務局より説明をお願いいたします。
【甲野著作権課長】 それでは、事務局より御説明をさせていただきます。お手元に配付をしております資料4を、御覧になっていただければと思います。小委員会の設置につきましては、先程決めていただきました運営規則第3条第1項の規定によりまして、分科会長が分科会に小委員会を置くことができるとされておりますけれども、実際には分科会で決定をいただいて、それに基づき分科会長が置くという形をとっているのが、実情でございましたので、今回もそのような形で、分科会決定をしていただければと思っているところでございます。今回、小委員会の設置につきましては法制問題小委員会、私的録音録画小委員会、国際小委員会、この3つを置くということを案として出させていただいているところでございます。それぞれの委員会の審議事項につきましては、この項目の2のところでございますが、法制問題小委員会におきましては著作権法制の在り方、私的録音録画小委員会におきましては私的録音録画に関する制度の在り方、国際小委員会におきましては国際的ルール作りへの参画の在り方、アジア地域等における著作権分野の国際協力の在り方でございます。それぞれ各小委員会の構成につきましては、分科会長が指名する委員、臨時委員及び専門委員により構成をするものとし、分科会長は会議に出席し随時発言することができるものとする、ということでございます。またその他といたしまして、小委員会における審議の結果は分科会の決議を経て公表するものとする。また議事の手続、小委員会の運営に関し必要な事項は、当該小委員会が定めるということでございます。前期と変わりましたのは、前期においては契約・流通小委員会が置かれていたこと、そしてそれを今回置かないということ、それから私的録音録画小委員会を新たに置くという点でございます。契約・流通小委員会におきましては、管理事業法の見直し等のテーマを御審議いただきまして、その結果を報告していただきましたので、今回は特に置くということはございません。これに加えまして、私的録音録画小委員会でございますけれども、前期法制問題小委員会で御検討いただいたわけでございますが、その後2年間抜本的な補償金制度の見直しをするという報告内容でございました。それを検討するに当たりましては、やはり当事者の方々等の加わった形で、大変大きなテーマでございますので、法制問題小委員会とは別に組織を置くことが適切ではないかということで、新たに設けようとするものでございます。なお、法制問題小委員会におきましては、先程加茂川次長のほうからもご説明がありましたとおり、「通信と放送の融合」、その他大変たくさんのテーマを扱うということになりますので、そちらの面からも独立して審議をしたほうがいいという形で、このような構成を案として出させていただいたところでございます。
以上が、小委員会の設置についてでございます。どうぞよろしくお願いします。
【野村分科会長】 それでは、只今の御説明につきまして、御意見がありましたらお願いいたします。よろしいでしょうか。では、特に御意見がなければ使用料部会のほかに、この3つの小委員会を今期設置するということで、お認めいただいたということにいたします。
つぎに、使用料部会と小委員会に分属をお願いする委員については、これも先程御決定いただきました運営規則の規定と、文化審議会令第6条第2項によりまして分科会長が指名することとされております。したがって、私から指名をさせていただきたいと思います。資料5を御覧いただきますと、使用料部会及び各小委員会の名簿の案が示されておりますが、私としてはこのような形で分属の指名をさせていただきたいと思います。委員の皆様におかれましては、どうぞよろしくお願いいたします。
本日の予定しておりました議題は、以上なのですけれども、少々時間が残っておりますので、御出席の委員から今後の各小委員会において検討を進めるにあたって留意すべき点など、御自由に御発言をいただきたいと思います。どなたからでも結構でございます。
【佐藤委員】 日本レコード協会の佐藤でございます。IPマルチキャストに関する著作権法の取扱いについて、一言意見を述べさせていただきたいと思います。IPマルチキャストを用いた放送の同時再送信については、日本レコード協会としても、実現に協力したいと考えております。現在、日本レコード協会は放送番組のネット流通において必要な送信可能化権の許諾契約を一元化、簡素化するために集中管理事業の準備を進めております。これをこの春に導入することにより、放送番組のネット流通がより促進されるよう支援するとともに、IPマルチキャストを用いた同時再送信についても円滑な導入に協力できるものと考えております。
このような、民間レベルでの取り組みにより解決可能な課題であるにもかかわらず、あえて著作隣接権者の権利を縮小するような法改正を行うとすれば、それは知的財産の創造、保護の促進に逆行するというふうに我々考えておりますので、この点の御理解をよろしくお願いいたします。以上でございます。
【野村分科会長】 それでは、他の方。
【大林委員】 今回、補償金制度の見直しの中で3つの方針がありまして、その方針にしたがってやっていかれるということですが、一方で、権利者の権利が流通を妨げているのではないかという一方的で不毛な議論が外野でどんどん行われていること、それは私達としても非常に困ったものだなと思っています。ここでは、もちろん、そういったことに惑わされることなく、既定の3つの方針の基に専門家の方々に十分にお話いただきたい、と思っているわけです。実演家の立場から言わせていただきますと、映像の実演などは特にそうなのですけれども、権利というものにいろんな制限がかかって非常に狭められております。そういう実演家の弱い立場も、是非考慮していただきたい。現行の私的録音録画の見直しの中で取り上げられていたのですが、この現行の制度自体が大岡裁きといいますか、三方の利害、クリエーター、ビジネス、ユーザーという、三者の利害を絶妙な関係でバランスをとって制度化しているものだと私は思っております。それを見直して行くということですので、精神としては先人の知恵の出し方というものを、是非十分お考えいただいて進めていただきたいと思っております。その分発想自体が、アナログ的というふうに思われる方もいらっしゃるかと思いますが、もしそれならばなおさらのこと、これからデジタル化、ネットワーク化時代の文化振興という広い視野と洞察力を持ってやってくだされば、良い議論ができると思いますし、良い結論も出てくるのではないかということで、この一年間、専門家の方々、当事者の方々が議論される委員会に期待しているところでございます。
また、先程、佐藤委員からお話がありましたけれども、IPマルチキャストについては送信可能化、同時再送信といったものがからんでくるわけです。私達は実演家著作隣接権センターというのを持っておりますが、そこで、すでにワーキングチームを発足させてかなり密度の濃い議論と検討を続けておりますので、わたしどもの委員からも色々御協力できると思います。そして最後に一言だけ申し上げたいのは、毎度私が申し上げていて、またかと思われるかもしれませんが、実演家の権利保護の期間の問題でございます。実演家にとりましては、存命中に財産権の期限が切れるという、他の権利者の方々とは非常にバランスの悪い状況でございますので、是非これを法制問題小委員会で取り上げていただいて御検討いただきたいと思うわけであります。我々としてこれは緊急の課題、基本的な課題であると認識しておりますので、どうぞよろしくお願いいたします。以上でございます。
【野村分科会長】 他にどなたか。岡田委員どうぞ。
【岡田委員】 岡田でございます。今の佐藤委員と大林委員からのお話と重複するところがあるかと思いますが、このところの規制緩和の流れの様子を見ていますと、どうもユーザーの利益にウェイトがおかれているような気がしてなりません。国は知財立国を標榜しているわけですけれども、知財立国を標榜するなら、その創り手であるクリエーターの権益も重く見てもらわないと、文化の再生産というものができていかないわけで、ユーザーの喜ぶ顔を見たいだけではなくて、同時にクリエーターの喜ぶ顔も見たいと思って欲しい。それによって創り手側の創作へのインセンティブが高まれば、より高度な文化、世界に打って出ることができる文化を創るエネルギーも強まると考えます。是非IPマルチキャスト構想にしても、再販制度問題にしても、私的録音録画補償金制度問題にしても、クリエーターの顔も見ながら議論していただきたいと思います。
【野村分科会長】 どうもありがとうございました。他の方、御意見ございますか。佐藤委員。
【佐藤委員】 今、大林委員からの著作隣接権の保護期間延長のお話がありましたので、あわせて意見を述べさせていただきたいと思います。著作権の保護期間延長については、当分科会では平成19年度までに結論を出すテーマと位置づけられていることは理解しております。すでに欧米諸国の多くが、著作者の死後70年に延長しており、我が国においても速やかに法改正を実現すべきだと考えております。一方で、著作隣接権の保護期間の延長は法制問題小委員会では、現時点での検討は時期尚早という整理がなされております。しかしながら、レコードにおいて世界1位の市場であるアメリカは、発行後95年としており,今や50年を超える保護を与える国も少なくなくなってきております。したがって、著作権の保護期間延長とあわせて著作隣接権に関わる保護期間の延長についても速やかに検討を開始していただきたいと思います。お願いいたします。
【野村分科会長】 次にどなたかいかがでしょうか。はい。角川委員。
【角川委員】 先程、大林委員から従来の著作権については、クリエーターとビジネスとユーザーの微妙な整合性があった、ということで評価できるのではないかという話がありました。僕も同感です。その点で、今回「通信と放送の融合」というテーマでは、やはりデジタル化されていくという技術革新の時代に著作権はどうあるべきか、著作権保護はどうありうるのか、ということの問題意識をきちんと持たないと、最終的にはまた大きな問題の解決にならないのではないかなと思います。ここでデジタルコンテンツ、すべてのコンテンツがデジタル化されていくという中で、デジタル化に関わっているインターネット関連の技術開発会社の人達が、なるべくコンテンツはアライブ、IPマルチキャストのように、あらゆるデジタルコンテンツ、デジタル機器の中で流れるように希望しているわけですけれども、そうは簡単にいかないわけですけれど。それでは、どうしたら、そういう人たちの考え方にもそえて、そしてまたコンテンツを持っているクリエーターの人達の権利を保障できるかというところに、きちんと視点をおかないと、法制問題小委員会も私的録音録画小委員会も答えを出すことができないということになってしまうのではないかなと思うのです。私は必ず、その答えがどこかにあると信じておりますので、是非この委員会が形式的に流れないで、極力意見を戦わせる活性化をしていただきたい、ということを願っております。
【野村分科会長】 どうもありがとうございました。はい。瀬尾委員。
【瀬尾委員】 今期の法制問題小委員会のテーマというのが、まだ明確ではないのですが、実務、現場の流れの中でも大きく時間とともに変わっております環境があって、そういう中で法制問題小委員会の議論というのが、その分科会にフィードバックされてからまた小委員会戻しになるという事態を避けるためにも、法制問題小委員会の議論は現場とそれから関係者のコンセンサスをとった上で、よく審議していただきたいということをお願い申し上げます。以上です。
【野村分科会長】 他の委員の方、いかがでしょうか。まだ若干時間がございますので。はい。三田委員。
【三田委員】 保護期間の延長について、時間がありますので、ちょっとだけ私見を申させていただきたいと思います。私事になりますけれども、今年になって私は『星の王子さまの恋愛論』という文庫本を出しました。この親本の単行本を出したのは5年前ぐらいでありますけれども。『星の王子さま』はサンテグジュペリの作品についての本でありますけれども、5年前に単行本を出した時にはサンテグジュペリの著作権はまだ生きておりまして、私の本が一種の評論でありますので、サンテグジュペリの文章を引用していたのですけれども。その引用が、必要最小限度より少し多かったものですから、フランスのエージェントに申告をいたしまして、使用料を払って引用をするということをやりました。5年経って文庫本にする時には、サンテグジュペリの存続期間が切れているわけです。ですから、『星の王子さま』の本自体が岩波の元の本以外に、10種類ぐらい著作権フリーで出ている状況であります。御承知のように、フランスの場合は、著作権の存続期間が70年であります。しかし、日本の場合は50年でありまして、そうしますと日本で外国の作家の本を出す場合にも、50年で切れてしまうわけです。そうしますとフランスではまだ、フランスというか諸外国ではまだ著作権が生きている作家の本が、50年経ちますと日本ではフリーになってしまう。この状況というのは、世界的に見ると非常に恥ずかしい事態ではないかなと思います。日本で創られたさまざまな著作物が、アジアなどではかなりフリーに使われているということを、今、文化庁も国も問題にしているわけでありますけれども、実際に日本だけ50年ということをやっておりますと、世界から取り残されてしまう、という気がいたします。これについては、早急に検討をしていただきたいということが第一点であります。しかしながら、文芸著作物の場合には死後50年以上経って、まだ需要があるという文豪みたいな人は、比較的限られているのですね。今、インターネットの世界では青空文庫などに代表されるような、著作権の切れた著作物をボランティアの方々がネットに載せるということをやっておりまして、これは読む側からすれば大変便利な状況になっております。それから埋もれた、すでに出版界から忘れ去られた作家の作品を復刻すると。これは例えば大学の出版部とか、そういうところが復刻をするということも行われておりまして、これも存続期間が切れておりますとフリーでできるわけであります。ですから、そういうことを善意でやっていらっしゃる方々にとって、この50年を70年にするということに対しては大変な抵抗があると思いますので、この問題を何とか解決していかなければ、そういう善意の方々の善意を無にすることになるだろうと思います。私は一番問題なのは、著作者の遺族の所在がわからないような場合です。これを復刻したいけれどもできれば無償でやってほしいとか、インターネットに載せたいけれども、いくらか払うか払わないかは別にして許諾を得たいというような場合に、遺族の著作権継承者の居場所がわからないというケースが非常に多いだろうと思います。今、法律が、どんどん厳しくなりまして作家の住所録みたいなものを、人に勝手に渡すということはできなくなっております。個人情報を保護しなければならないということになっておりますので、ますます著作権者の居場所をつきとめるというのは大変難しくなっておりますので、許諾を求めるということが困難になっております。現在、居場所のわからない人については裁定制度というものが設けられているのですけれども、ここに登録するためには、一件につき1万円以上お金が必要になってきます。それを使って、お金が儲かるというものについては、そういう制度を利用することができますけれども、善意の方々が、ほとんど著作権フリーに近いようなものを世の中に情報を伝達したいというような時に、現在の制度というものは使いづらいものになっていると考えられます。この裁定制度を、もう少し簡略化すると言いますか、世の中の善意を持って、文芸作品等を後世に残したいと考えている人達が、もっと使いやすい制度を構築しない限り、この存続期間の延長というのは困難になってくる。特にネットの社会では、著作権フリーで何か使うということが非常に広まっておりますので、それを例えば50年を70年にするぞというふうに権利者が主張しますと、ネット全体で大反対ということになろうかと思います。
文化庁は最近、法律を変えるとき、ネットでユーザーの御意見を伺うということをやっておりますので、そのようなことをやりますと、ものすごい大反対の嵐ということになってしまうだろうと思います。そのためにも、ユーザーの方々に対してこれだけのことはするのだ、ということをやっていかないと、難しいのではないのかなと思います。その点について、ここにいらっしゃる皆様及び文化庁の方々に、将来に向けて何かアイディアを出していただければと考えます。以上です。
【野村分科会長】 今の御意見に対して事務局から何かございますか。
【甲野著作権課長】 ここでいただきました御意見につきましては、それぞれ関係の小委員会でよく検討することになろうかと思います。どういうものを取り上げるかは、また小委員会で決めていただくことでございますけれども、十分それを踏まえた形で運営できるよう事務局としても考えていきたいと思っております。
【野村分科会長】 他の方、御意見いかがでしょう。はい。どうぞ。
【後藤委員】 先程の瀬尾委員の御意見に関連するのですが、以前の法制問題小委員会には関係団体からも委員として参加させていただいたかと思いますけれども、現在は公正中立の立場からということで、関係諸団体の委員を抜きにした構成になっていると思います。ただ、現状が、非常に多様化している中で、例えば今期御検討いただくかどうか、優先順位の確か4位か5位かになっておりましたけれども、映画の場合も製作委員会方式で、著作権者が複数になっている場合の許諾等をどうしていくか、という課題もあったと思いますけれども、現状は非常に複雑で多様でわかりにくくなっておりますので、そういうようなケースに委員という形でなくとも何らかの形で実情を小委員会で反映していただけるような、措置をとっていただくということも御検討いただければと思います。要望ということで、御検討いただければと思います。
【野村分科会長】 著作権審議会時代には、第一小委員会というものがありまして、そこはほぼ中立的な委員で構成されておりまして、ある意味で言いますと法制問題小委員会がその頃の構成に戻ったという形になっておりますけれども、もちろん権利者や利用者の意見を聴く機会というのは、十分事務局のほうで用意していただくということにしたいと思っております。
【後藤委員】 我々は決して自分達の利益だけを、その場で云々ということではなくて、基本的には著作権法の基本理念にしたがって検討していくということですので、我々の利益を保護してもらうためにということでは必ずしもありませんので、その点は誤解のないようにお願いしたいと思いますけれども。
【野村分科会長】 他にどなたか御意見ございますか。特に御発言よろしいでしょうか。特に御発言がなければ、本日の審議はこの程度にしたいと思いますが、各小委員会におきましては本日、御意見がいろいろ出ましたので、それも踏まえて検討を行っていただきたいと思います。最後に、事務局から連絡事項をもって終わります。
【甲野著作権課長】 本日はありがとうございました。次回の文化審議会著作権分科会につきましては、各小委員会における検討状況等を踏まえつつ、改めて日程の調整をさせていただきたいと思っております。どうぞよろしくお願いいたします。
【野村分科会長】 それでは、これで文化審議会著作権分科会を終わらせていただきます。本日はありがとうございました。
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