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著作権分科会 国際小委員会(第3回)議事録・配付資料

1. 日時
  平成18年10月27日(金曜日)14時〜16時

2. 場所
  パレスビル3階3−C会議室

3. 議事
 
(1) 第15回SCCR及び第42回WIPO一般総会結果概要
(2) アジア地域等における著作権分野の国際協力の在り方について
(3) その他

4. 配付資料
 
資料1   第15回SCCR(著作権等常設委員会)結果概要
資料2 第42回WIPO一般総会結果概要(放送条約に関する事項)
資料3 平成18年度文化審議会著作権分科会国際小委員会報告書骨子(案)

参考資料1   文化審議会著作権分科会国際小委員会(第2回)議事録
(※(第2回)議事録・配付資料へリンク)
参考資料2 文化審議会著作権分科会国際小委員会審議予定
(※(第2回)議事録・配付資料へリンク)

午後2時開会
道垣内主査 遅れていらっしゃる委員の方もいるかもしれませんけれども、ただいまから文化審議会著作権分科会国際小委員会の今期第3回を開催いたします。本日はご多忙の中ご出席いただきまして、まことにありがとうございます。
 議事の内容の公開を一層進めるという今期の著作権分科会の方針に基づきまして、本日も公開で議論すべく、既に傍聴の方には入場していただいておりますけれども、そのような扱いでよろしゅうございますでしょうか。
(「異議なし」の声あり)

道垣内主査 それでは、本日の議事は公開ということにし、傍聴の方にはそのまま傍聴していただくことにいたします。
 事務局から配付資料の確認をしていただけますでしょうか。

事務局 それでは、配付資料を確認させていただきます。
 議事次第の紙の配付資料一覧というところにございますように、今回いずれも薄い資料でございますけれども、資料1、SCCR結果概要、資料2、一般総会結果概要、資料3、平成18年度国際小委員会報告書骨子(案)でございます。これが本日の主にご議論をお願いする案件でございます。さらに、参考資料として前回の議事録と今後の予定をつけさていただいております。
 以上でございます。

道垣内主査 ありがとうございました。
 それでは、その2つの大きな議題の中の1つ目であります放送条約につきまして、9月に開催された第15回SCCRと第42回WIPO一般総会の結果を事務局から報告していただき、質疑応答の時間を持ちたいと思います。予定としては、それに引き続きまして海賊版対策ということに移りたいと思います。大体時間的には、前半部分が30分弱ぐらいを予定しておりますので、よろしくお願いいたします。
 それでは、事務局から放送条約についてご説明いただけますでしょうか。

事務局 それでは、放送条約の方、資料1と資料2についてご説明させていただきます。
 9月に2つの大きな会議がございまして、9月11日から13日にSCCR、著作権等常設委員会、それからその次に9月25日から10月3日に一般総会がございました。いずれも放送条約の今後の方向に非常に大きな決定がなされましたのでご報告させていただきます。
 まず、資料1の方の著作権等常設委員会の方でございます。こちらは秋葉課長と私、それから出席の委員の皆様、関係者の方々ほかご出席いただきまして、ジュネーブで開催されました。この放送条約のこれまでの流れは、関係の方々は既にご承知のことかと思いますけれども、おおむね放送条約の中身の議論というのは従来から何年も詰まってそう変わってきておりません。ここ2年ぐらいはどういう手続で進めるかというところが議論されております。
 会合の概要でございます、昨年の一般総会にもWIPOの事務局からは外交会議の開催を提案されたんですが、まだ議論が熟していないという異論があったものですから、外交会議の開催の最終決定には至りませんでした。そのかわりに、2回SCCRを開催して、そこでベーシックプロポーザルを固めて、今年9月の一般総会に外交会議の開催を提案するという合意が昨年なされたという状態でございました。
 その2回のSCCRというのは既に、昨年の11月と今年の5月に開催されておりましたが、こそでは、今年の一般総会への提案が決まらなかったものですから、追加にもう1回SCCRを開催するということになったということでございます。
 文章の中にございますように、ベーシックプロポーザルを完成させるということが本会合の目的であったわけですけれども、ただベーシックプロポーザルといっても実際の放送条約の条文の議論は、外交会議、実際に条約を採択する会議で議論すればいいわけでございまして、外交会議に行けばいろいろ新しい提案が何でもできるので、内容について事前に完全にコンセンサスをつくっておく必要はないんだということを議長が強調しました。要するに内容について多少納得いかない部分があっても外交会議に行くことについて合意をしようということが目的であるということを説明いたしました。
 さらに、べーシックプロポーザルのつくり方として、包括性の原則、すなわち、一つに国でも提案したらもうその内容の是非を問わずに全部ベーシックプロポーザルに入れて、条文の議論は外交会議でやるんだという合意もあったということですから、もはやベーシックプロポーザルをつくるために何かを議論するという必要は論理的にはないという状態でありました。従って、普通であれば何も議論なく終わるはずなんですが、下の2行目の「しかし」というところにございますように、またベーシックプロポーザルの内容のよしあしということが蒸し返されまして、結果議長がいろいろ反論がある中まとめたという形にはなったんですけれども、ちょっと波乱含みの結末となりました。
 その異論の内容というのが、次のページの「以下のとおり」というところにございますように、インドと米国がそのベーシックプロポーザルに不支持でございまして、それぞれの内容を申し上げますと、インドの方はそもそも放送条約の反対に等しいような不支持理由でございました。1つが、放送条約というのはインターネット対応条約ということで、インターネットで海賊版を流すことを防止するための条約であります。ところがインドはコンピューターネットワークでの再送信ということに対する許諾権の条文があるというのがだめだという、非常にコアな部分に反対しました。さらに放送機関が隣接権のような権利者だということも認めず、著作権との関係で保護するというものだけ保護すればいいんだという、相当原理主義的な反対を強くしました。
 それから、米国の反対というのはこの1年の中の動きによるものなんですけれども、昨年来、ブラジルとかラテンアメリカの国々が放送条約に対して、一般公益であるとか文化多様性の観点から権利制限ができるような条文を提案してきました。こういう条文がもし知財のWIPOの条約に入るということになると、非常に簡単に権利が制限されるようにもなりかねないということで非常に警戒いたしまして、そういう条文が入ったようなベーシックプロポーザルでは外交会議に行けないと。
 2つの国の抵抗が非常に強くて、さらに潜在的にはブラジルとかラテンアメリカの国々も消極的な立場であったということで、ともすれば空中分解しかねない状態でありました。しかし、少なくとも去年一般総会で外交会議の開催のスケジュールの目標を定めたわけでございますので、それを反故にするということになると条約自身いつできるのか、本当に死に体になりかねないということでございました。
 そういう状況でございましたが、最後は議長がもともと出してきたベーシックプロポーザル案のままベーシックプロポーザルとして外交会議の開催を決めることになりました。一番最後の提案の骨子のところでございますけれども、2007年7月から8月に外交会議を開催するという提案をまとめたということで終わりました。
 ただし、インドが決定を止めはしませんでしたけれども、非常に不満の意思を表明したという形で終わったという状態でございます。
 その2週間後、一般総会、これはWIPOの意思決定主体でございまして、すべての政策課題を採択する機関でございますけれども、そちらに放送条約の外交会議の開催決定が提案されました。資料2の概要の方にございますように、最後結論としては条件づきで、2007年11月から12月に外交会議の開催を決定したという結末になりました。
 こちらの方は吉田審議官と私、それから委員の方の中でも上原委員にご参加いただきましたSCCRでいろいろ異論があったように、一般総会でもすんなりと採択というわけにはまいりませんでした。27日の午前中に放送条約について審議されましたが、その場で40カ国以上と非常に多くの国々が発言いたしまして、もちろん外交会議開催を支持というのが多数でございました。他方で時期尚早という異論も結構あったという状態でございました。
 コンセンサスルールで、多数が指示していてもそれで強引に決めるというわけにはまいりませんので、外で非公式会合をやってコンセンサスができてから一般総会にもう一回戻してくださいという議長の指揮で、日本とEUで不支持の国を納得させられるかという調整を行いました。一番影響の大きいアメリカとインドをどうすることで主要五、六カ国で何度か話をし、また文書も何度かやり取りした結果、多少の修正の上、最終的には合意に至ることができました。
 最終的に、外交会議の時期を7月と決めていたのを11月にずらすということと、1月と6月にさらに2回SCCRを開催するということ、そこでベーシックプロポーザルをもう一回議論し直して、それが合意できた場合だけ開催するということで何とか、外交会議の開催にオーケーするがでたという結論には至ることができました。
 以上でございます。

道垣内主査 ありがとうございました。一応原則として、来年の11月には外交会議を開催するということになったとのことですね。せっかく季節のよい7月から11月になって、行かれる方は大変だと思いますけれども、よろしくお願いします。
 この会議には政府とは別の立場で行かれた方もいらっしゃいますでしょうし、その他関係の団体の方もいらっしゃいますので、何かございましたら補足をしていただきたいと思います。いかがでしょうか。
 上原委員、お願いします。

上原委員 私もSCCRの15と一般総会と続けて行っておりましたが、基本的には今千代専門官の方からご説明いただいたとおりの流れでございました。ただ、基本的にインドとアメリカの抵抗はかなり強いものがありまして、一応総会では決定事項の一番最初のところに11月19日から12月7日まで外交会議を開くということが出てきているわけですが、その総会の4番目のところに一応2回のSCCRで範囲等をやりましょうと。そこで一定の合意に達したら外交会議を開きましょう。確認的にではあるんですが、基本的には合意がなければ外交会議は開かれませんから、確認的といえば確認的なんですが、そういう言葉が入っておりまして、これについて現地でいろいろな人たちと話をしたところでは、単純に確認的な言葉ということ以上に、これはアメリカの提案で入った言葉なんですが、合意がなされれば外交会議を開きましょうというのは、逆に言えば、合意がなされなければ外交会議は開かれませんということで、そちらの意味の方が本音ですよというところがございました。
 一応SCCRのスケジュールが決まり、なおかつ2回目のSCCRは準備会合と一緒にやるということになっていますので、準備会合まで開いた後でどうするんだということもあるので、事務局あるいは議長を含めたサイドとしては、何としても外交会議まで持っていくという非常に強い意志を持っておりますが、アメリカあるいはインドの不満もかなり大きなところがありますので、今後2回のSCCRで合意がうまくいかなかったときには、また来年の総会で少し一生懸命やらなければいけないところがあります。今年の総会も日本政府は頑張っていただきましたが、もう一頑張りしていただかなければいけない部分が出てくるのかなというふうな状況です。
 感想といたしましては、SCCRの15のときには比較的消極的反対であったアメリカが、総会ではかなり強い反対という形にはっきりと態度を変えてきているというところが、変化としては非常に際立った部分であろうと思います。インドにつきましては、一貫して強硬ですので、そこは全然変わるところはないんですが、非常に厄介なところはやはりインドの主張です。ウェッブキャスティングは範囲から外すということになっており、今回ウェッブキャストも客体に入っていないんですが、放送をウェッブキャスティングで利用されること、ウェッブキャスティング上に流すことについて放送事業者に権利を与えるということについて、要するにここにウェッブキャスティングといいますか、インターネット上の送信が入っている、そうすると、本来ウェッブキャスティングが入らないはずなのにおかしいじゃないかということで強く抵抗しているわけです。もともと放送条約自体がWIPOのインターネットトリーティーズの一環としてつくられようとしているので、放送がインターネットに窃取されることを止められなければ、何のために放送条約をつくるんだろうかというもとの議論に戻る問題を非常に強くインドは話をしておりまして、その辺をどのように1年間で解決できるのかというのが我々の難しいところであろうと思いますし、また今まで推進してこられた日本政府としてはもう一肌頑張っていただきたいと思っているところであります。
 総会では40カ国のうち過半数が賛成、反対を言った人たちもかなりあったんですが、SCCRでは数の比率はもっと賛成の方が多かったという事実があります。総会での発言数が40弱でしたので、賛成の比率が下がったということです。特徴としてはやはり南米の国はブラジルを中心としたまとまりの中で消極的なんですが、アフリカを中心としてアジア等、いわゆる途上国がもうやろうよというところに声をかなり出すようになってきたというところで、この機会を捕まえられないと本当に条約まで行けないんじゃないかというところで、この1年重大な局面であろうかと思っております。

道垣内主査 ありがとうございました。先ほど私は先走って申しましたが、外交会議を開くとすれば来年11月から12月であって、もしかするともう一難あるかもしれないということですね。

上原委員 最終的には来年の総会次第だと思います。

道垣内主査 総会で決まるということですね。わかりました。
 私から質問させていただきますが、アメリカの反対の実質的な理由というのは、あるいはこの委員会で既にご紹介があったところかもしれませんが、もう一度ご説明いただけますか。また、その反対はどれくらいの強さなのか、妥協の余地があるのかどうかという点についての見通しを少しご紹介いただけますでしょうか。

事務局 この話はこの1年間で出てきた話でございまして、もともとアメリカは日本とほぼ同じくらいのトーンでの推進派だったんですけれども、この1年の間にブラジルその他の国々が一般公益条項ですとか、あるいは文化多様性への配慮という理由で権利制限などをできるような提案を出してきたんですね。それで、一つの原則として包括性の原則というのをSCCRで採用しておりまして、それは要するに提案をした国が1カ国でもあればそれがいい提案か悪い提案かということ関係なく、とりあえず全部ベーシックプロポーザルに入れるということを合意してあるんです。それからすると、どんな荒唐無稽な提案であっても一応それは入れざるを得ないということを我々はアグリーしたことになっているんですね。だけれども、そういった条項が正式なWIPOの提案に入ったものが外交会議に行ってしまうと、WIPOだけでなくてユネスコなんかを中心に、アメリカは途上国の多数決の中で余り望まないような条約、特に知的財産の制限を加えられるような条約を結ばれるという経験、今回は知的財産の話なんですが、そういう経験をしてきていることから、孤立させられるリスクがあるくらいならむしろ前に進まない方がいいという判断で、非常に強く反対しているということでございます。

道垣内主査 ありがとうございました。ほかに何かご意見ございますか。
 どうぞ、石井委員。

石井委員 今回の総会で、条件つきとはいえ外交会議が具体的な日程として決められたということは、私としては大きな進歩だと思っております。改めて感謝申し上げたいと思います。
 例えば、私どもが放送番組の国際的なマーケットに行きましても、やはりそこでは放送権の売買と同時にネット権というものを切り離してはなかなか考えられなくなっているということがあります。一方で、影の面としては例えばユーチューブなんかが今問題になっていますけれども、否応なくネットに流れてしまうと、こういう状況がどんどん起きていると思うんです。日本では近々、放送の同時再送信に限ったところでありますけれども、通信と放送に関する法改正が予定されていることもありますので、今後このような国際的な秩序をいかにつくっていくか、これは放送事業者だけではなくて、放送番組に含まれるほかの権利者の皆様方の利益、経済的な権益といったものを含めて非常に大きな問題になってくるんじゃないかと思います。ぜひ、今後とも皆様方のご理解とご協力をいただきまして、ぜひ国際的にこのようなルールづくりが早期につくられるということを期待しておりますので、改めてよろしくお願いいたします。

道垣内主査 ありがとうございました。ほかの方から何かございますでしょうか。よろしゅうございますか。
 今年は放送条約についてはこれ以上の会議は予定されていないようでございますので、今期の国際小委員会としてはこの場がこの条約については最後の議論の機会ということになります。今石井委員からもお話がありましたように、条約の早期採択に向けて日本政府としてはWIPOの場で議論を進めていっていただきたいと思います。 それでは、2つ目の議題に移らせていただきます。 先ほど海賊版対策という言い方をしましたけれども、それを含む報告書の骨子についての議論ということでございます。報告書の骨子についてはこれから内容をご説明いただきますけれども、アジア地域における国際協力に関する部分と、先ほどの放送条約の部分とに大きく分かれているという構成でございます。
 それでは、報告書の骨子案について、事務局からご説明いただけますでしょうか。事務局からのご説明の後、委員の方からご議論いただきたいと思います。場合によっては、前にもお願いしましたように、全員の方からご意見を伺うということもあり得るかと思います。よろしくお願いいたします。
 それでは、資料の説明をお願いします。

事務局 それではご説明させていただきます。
 この骨子案はこれまで2回にわたって委員の皆様からいただきましたさまざまなご意見を踏まえて事務局の方で取りまとめた骨子の案でございます。本日はこれをたたき台としましてご議論いただければと思います。本日この骨子について皆様からご意見をちょうだいしまして、11月に開催されます次回では報告書本文の案を示させていただき、ご審議いただきたいと思います。その次、12月に開催されます次の委員会でこの報告書を取りまとめられればと考えております。
 それでは骨子案の中身についてご説明いたします。
 平成18年度文化審議会著作権分科会国際小委員会報告書骨子(案)。第1章、「アジア地域等における海賊版対策施策のあり方について-より効果的な事業実施のために、新たな段階へのステップアップ-」と題しております。
 第1節、はじめに。ここでは、現状の分析と課題の抽出を行います。我が国の目指す姿は、文化、伝統、自然、歴史を大切にする「美しい国、日本」ということでございます。我が国が21世紀において「美しい国」として繁栄を続けていくためには、安定した経済成長が必要であり、また人口減少の局面でも、これはグローバル化に対応して開かれた姿勢でアジアなど海外の成長や活力を日本に取り込むことによって可能となるものと考えます。このため、アニメや音楽などのコンテンツ等について、国際競争力や世界への情報発信力を強化すること、そしてヒト・モノ・カネ・文化・情報の流れにおいて日本がアジアと世界の架け橋になることが政府の最重要課題の1つとして位置づけられております。
 しかしながら、コンテンツのアジアでの流通には言語等の文化的背景が異なること、そして知的財産の保護レベルがいまだ低いということの2つの大きな障害があります。前者は所与の問題として対策をなかなか立てにくいものでございます。また、そもそも文化に多様性があるということは文化発展の原動力ということでもございます。その均質化を目指していくということではなかろうかと思います。
 他方、知財保護レベルのことですけれども、制度的理由で文化の発信ができないということについては、政府や我が国の企業などの働きかけによって改善していくことが必要です。政府は2003年に知的財産推進計画を定めてから海賊版対策事業により一層注力してきており、その後政府の海賊版対策事業は漸進的に充実してきております。その結果として、中国などにおいて音楽市場における海賊版が占める割合が幾らか減少したり、また香港等において海賊版販売店舗の閉店が相次ぐなどの一定の成果も上がってきております。また、中国を筆頭としまして、アジアの多くの国々では著作権関係法令の整備が進んできており、多くの国は国際条約が要求するレベルの著作権保護法制を備えつつあります。
 しかしながら、皆様ご案内のとおり、以前として海賊版の流通量は多く十分な成果が上がっていないということも事実です。法令の整備を行うということだけでは現実の海賊版が十分に減少しないというとが示しておりますように、これからは現場できちんと成果を上げていくということを行っていかなければならない。そのためには、現在の海賊版対策が最も効果的な手法となっているかということに対しての反省が必要だろうと考えます。
 我が国の海賊版対策事業はスローガンとして海賊版対策の看板を掲げる目的で施策を行う時期は過ぎ、本格的に具体的な成果を刈りとる新たな段階にステップアップすべき時期であると考えます。海賊版が十分に減少しない状況を漫然と続けないためには、これまで行ってきた海賊版対策事業のあり方の点検調査を行い、より効果的な事業実施を目指していくことが必要である。そのための改善点を洗い出すことが必要です。
 こうした観点から、これまでの我が国の海賊版対策事業を見直すべく検討を行います。まず、事業分野ごとの検討、そしてそれらの連携や相互関係の検討を行い、最後に海賊版問題を取り巻くその他の周辺的状況の分析を行います。
 第2節としまして、事業分野ごとの分析を行います。
 1つ目の事業分野は政府間協議でございます。まずは、交渉手段の戦略的な選択ということ。現在、侵害発生国との政府間協議が行われておりますが、これが相手国による十分な行動の変化につながっていないということがあります。そこで対話と圧力、バイとマルチ、トップレベルと実務レベルなどさまざまなことを使い分けまして、戦略的に効果的な協議が行われていくべきであると考えます。
 2つ目に、十分な情報収集に支えられた政府間協議ということでございます。侵害発生国自身の海賊版対策の状況がどのようなものであるかということが十分に把握し切れていないということのために、きちんと要請するべき事項が明確となっていない場合や、また侵害の規模や発生理由が十分に把握できていないために、侵害をなくすための具体的な提案ができていないという問題があろうかと考えます。これらについては、各国の状況に応じてより効果的に個別化された要請が行われていくように、情報収集の体制を強化すべきだと考えます。
 事業分野の2つ目は、能力構築支援でございます。最初に戦略的な対象国の選別ということです。海賊版が存在する国、また著作権保護レベルが十分でないというのはアジアのすべての国にわたって言えることですが、それぞれの国の施策ニーズや我が国にとっての重要度には違いがあります。現在の能力構築支援はそれらに応じた戦略的な対象国選別ということができていない嫌いがあります。また、事業の実施方法につきましても、各国間での差別化が不十分であり、どの国に対しても似通った内容となっているおそれがあります。
 そこで、まず以下の項目に基づき各国を分類し優先して資源を投じるべきグループを選定するということが考えられます。その項目とは、1つ目に日本のコンテテンツ産業の進出状況、2つ目に日本のコンテンツの海賊版被害状況、3つ目にコンテンツ産業振興施策、日本文化の海外発信施策の実施状況ということ、これらに基づいて各国を分類するということです。
 さらに、それぞれのグループ内でも以下の諸項目の状況を勘案して優先的に実施すべき施策を決定することが必要かと考えます。その項目とは、1つ目が著作権関係条約の締結状況、2つ目が著作権関係法令の整備状況、3つ目が集中管理団体整備状況。4つ目が海賊版の流通状況ということです。
 さらに、キャパシティ・ビルディングからキャパシティ・デベロップメントへの展開ということがあります。これまでこの分野での途上国への能力構築支援については、個々の事業が参加者のその場での能力構築にしか結びついておらず、事業終了後の相手国全体の自主的・持続的な能力構築に十分に結びついていかなかったのではないかということが考えられます。また、このキャパシティ・ビルディングが法令整備支援やエンフォースメント支援と十分に連携がされていなかった嫌いがあります。
 そのため、点を面へつなげて事業の射程範囲を相手国の自立的な著作権保護施策の展開まで波及させるべく、「キャパシティ・ビルディング」から「キャパシティ・デベロップメント」への転換を図るべきです。
 ここで注でございますが、「キャパシティ・ビルディング」とは研修等の現場における個々の職員の能力行動を中心に構成されるもの。これに対して「キャパシティ・デベロップメント」とは、これらを含め、その職員が出身国に帰った後に施策や実務に影響を及ぼしていき、最終的には途上国自身が自立的に政策を向上させていくようになる過程を包括的にとらえ、そのための環境づくりを含めた総合的な途上国の能力向上を目指すという概念でございます。
 具体的には、研修終了後に相手国政府内部において、政策的に影響を及ぼし得る地位にある者を研修参加者として適切に選別すること。また、研修参加者の研修終了後の動向をモニターし、適切なフィードバックを受けて、さらなる支援事業に結びつけること。研修参加者が今後も両政府間の情報交換、要望のパイプとして機能し続けるよう定期的にコンタクトをとり続けることなどを行っていくべきと考えます。
 そして、相手国の利害関心に応じたセミナー等。これまでの能力構築支援におけるセミナーなどは、ともすると日本の考え方ややり方、国際的ルールを一方的に主張するだけで、相手方の利害関心やインセンティブへの配慮に欠けていた嫌いがあります。そのことによって相手方の自発的な行動や協力を促しにくいという面がありました。
 そこで、このような場では海賊版対策や著作権保護体制の整備がいかに相手国自身のコンテンツ産業、そして文化発展に役立つか、いかに相手国の権利者の利益となるかという点を前面にアピールしながら事業を実施していくべきであると考えます。また、相手国政府が行うコンテンツ産業振興政策や文化振興施策と連携して実施する可能性も検討していくべきと考えます。なお、海賊版対策や著作権保護体制の整備が相手国自身の発展に役立つということを効果的に説得していくためにも、このほど開設されましたWIPO東京事務所を舞台としまして、それらを実証する研究を進めていくということも考えていきたいと思います。
 事業分野ごとの3つ目でございますが、権利行使です。まずは関係省庁や権利者団体との連携ということです。権利行使においては、関係省庁と権利者団体等との連携が重要となります。国は企業等が積極的に海外展開し、権利侵害について迅速に権利執行できるように民間による共同執行体制構築の支援を行っていくべきと考えます。さらに、能力構築支援等に当たっての日本国内の人材不足を解消するため、人材の幅を広げていくために国内の大学、研究所、団体、企業等とのネットワークづくりをさらに進めていくことが必要であると考えます。
 第3節としまして、事業分野間の連携・相互関係の分析ということです。
 政府間協議と能力構築支援との連携。「対話と協力」というこれまでの海賊版対策の路線がより効果を上げ、キャパシティ・デベロップメントにもつながっていくよう政府間協議での要請事項の実現に必要な人材が相手国で育成されていくための能力構築支援ということを行っていくべきであると考えます。なお、能力構築支援のみならず、政府間協議におきましてもできるだけ海賊版対策や著作権保護施策は相手国の発展に貢献するという視点から行っていくべきと考えます。
 2つ目に、能力構築支援と権利執行との連携です。権利者によるエンフォースメント活動の結果、判明した新たな問題点などを踏まえた能力構築支援を実施していくべきであります。これは能力構築支援の組み立てにおいてエンフォースメント活動のフィードバックが行われるべきであるということです。
 3つ目が政府間協議と権利執行との連携。権利者によるエンフォースメント活動の結果、判明した問題点などを踏まえた事項を政府間協議などで要請していくべきであるということです。
 第4節は海賊版問題を取り巻くその他の周辺状況です。
 正規版流通システムの不在の問題。海外の消費者が海賊版を購入し続けるのは、そもそも日本製コンテンツの需要があるにもかかわらず、その需要に十分対応できる正規版流通のシステムが存在していないということが大きな原因の1つであると考えられます。手軽に適正な価格で正規版の購入ができれば、多くの消費者にとって海賊版の購入をするのではなくて、正規版を購入するということが合理的な行動となるでしょうから、このような正規版流通システムの確立のための環境整備は大きな効果が期待されると考えます。そのためにも、政府は各省庁が連携をして、コンテンツ産業が国際的に展開可能なビジネスモデルに転換するための必要な支援を要していくべきと考えます。
 ここまでで、第1章の第4節まででございますが、この後に第1章としてのまとめを何らか書くつもりでございます。そして、その後に第2章として国際的ルールづくりへの参画のあり方についてということで、放送条約の交渉条件などについての記述がなされて、これで全体の国際小委員会報告書の流れということになります。
 事務局からは以上です。

道垣内主査 ありがとうございました。今日は第1章の部分につきまして、細かな文言というよりは、コンテンツをどうしていくかということでご議論いただきたいと思います。第1章は4節に分かれておりますので、それぞれの項目に分けて議論していただいた方が整理がしやすいのではないかと思います。その後時間があれば、また全体について特にご発言をいただいていない方からご発言をいただくという機会を設けたいと思います。
 まずは、第1節の現状と課題という部分につきまして、これまでも皆さん方からご発言いただいてきたわけですので、それがきちんと盛り込まれているかどうか、適切に盛り込まれているか、そういったこともあろうかと思いますので、何でも結構です。何かございますでしょうか。
 どうぞ。

菅原委員 二つ目の丸でございます。2行目に「ヒト・モノ・カネ・文化・情報の流れにおいて」というふうに書いてありますが、ここに文化が入るのは非常に違和感があるんですね。それらの前提とすべきところに文化の交流であるとか共有であるとかがあって、その上で、ヒト・モノ・カネ・情報の流れというふうに、特に文化審議会でございますので、そのようにご検討いただければと思います。

道垣内主査 あとはよろしゅうございますか。そのほか、何かご質問があれば。
 どうぞ、上原委員。

上原委員 全く同じではないんですけれども、その辺の文章のつながりというか、その関係のところで、2つ目の丸から3つ目の丸のところですが、「ヒト・モノ・カネ・文化・情報の流れ」についてお話がありましたが、「日本がアジアと世界の架け橋になることは、現在、政府の最重要課題として位置づけられている」。それについて言うことはないんですが、その後の部分が、「しかしコンテンツのアジアとの流通には、言語等の文化的な……」ということで、アジアでの流通の問題が書いてあるんですが、アジアと世界の架け橋になることと、コンテンツのアジアでの流通ということが必ずしもイコールではないので、ここは何か一つかましてやらないと話のつながりがおかしいんじゃないだろうかというふうにちょっと思います。

道垣内主査 流れのことですね。どうぞ。

浜野委員 細かい点を申し上げます。今と同じことなんですけれども、欧米よりアジアの方が文化的親和性が高いので海賊版が多いと思うんですね。欧米での日本の海賊版よりもアジアで蔓延しているので。ですから、文化的背景が異なると断定してしまうと、何となく架け橋になる全体もつぶれてしまうと思うので、親和性は高いんだけれども、なんだかんだクッションがあった方が、欧米よりは大変おなじみな文化とかが共通していると思うので、ちょっと配慮があった方がいいかな。ちょっと細かいんですけれども。

道垣内主査 私もちょっと今お聞きしようと思ったのですが、言語と文化的な背景が異なるので、マーケティングがしにくいということをおっしゃっているのですか。

事務局 ここをこのように書いた1つは、地域としてとらえたときに、ヨーロッパも言語的にそれぞれ異なりますけれども、まあECというような形で一つ英語圏、英語での流通ということがアジアに比べるとあります。それで北米圏、南米圏でも言語的、文化的に何となく地域としてのつながりがまだ持ちやすいんですけれども、アジアはそういった意味では言語的にも非常に異なって、なかなか流通がしづらいと。アジアという形での幅広い流通ということが難しいということを書いているんです。
 確かに今おっしゃいますとおり、そう言っていてもしようがなくて、逆にアジアだからこそ親和性があるので、物の需要があるということはおっしゃるとおりですので、ちょっとそこは書き直すように考えたいと思います。

事務局 この2番目の丸と3番目の丸、文章の流れは工夫させていただければとは思います。この架け橋の前に情報発信力の強化の方もございまして、これは恐らく結構ずっと言われていること、文化発信をやるべきだ、コンテンツを海外に出すべきだというのはかなり言われていると思うんですけれども、それに対して言われる反論というか、コンテンツ側の方からは文化的にもそんなに簡単には出ていけないですという話があると思うので。要するに、これは海外への文化侵略みたいな話ではなくて、それぞれの国の独自性は生かした前提ではあるけれどもというニュアンスを多少込めさせていただいたと。ただ、著作権の保護が足りないということで出ていけないとか、そういう障害というのはなくしていくべきではないかと。無理やり出すということではなくて、そういうことだというニュアンスをちょっと入れさせていただいているということでございます。

道垣内主査 例に挙がっているのは、アニメーションとか音楽ですね。そういったものについても余り小さい市場では、その言語に直すのは大変だというのはいかんともしがたいと思います。わかりました。
 その他の点でいかがでしょうか。この第1節につきまして。どうぞ。

上原委員 どこでお聞きしたらいいのかわからなかったので、今出てきた話につながるかと思ったんですけれども、第1章の全体自体がアジア地域等におけるというふうに大きく枠組みに入ってしまっていますので、今回はアジアをどうするかというのが問題ですよということになるんだと思うんですが、ここの委員会の中では前回ですか、久保田委員の方からご報告があったときには、例えば欧米が少ないかというと、先進国も実はものすごく多いんだという報告もあって、それへの対応というお話もあったと思うんです。
 飛んじゃうといけないのかもしれませんが、最後の第4節のところで、「十分対応できる正規版システム」の問題が出ていますが、これは欧米とアジアでは状況が違っているようなところも一方ではありますので、この辺のところを盛り込むのか盛り込まないのかというのは、せっかく1回やったのでちょっとうまくどこかにはめ込まれるのか、あるいは本来はアジアが中心なので一応この中の論議としては勉強はしたけれども、まとめには入れないのか、その辺のところのお考えをちょっとお聞かせいただければと思います。

道垣内主査 いかがでしょうか。

事務局 それは多分ウエートのレベルの話で何とでもできると思うので、書き方とかそのあたりで。

道垣内主査 そうですね。「アジア地域等」の「等」にはヨーロッパも入っているのでしょうか。等が入っている理由は、それ以外の理由はないですね。

事務局 現状認識として、これまでのこの分野を考えるときにはすぐにアジアということが出てきていたのでここではアジア等においてという形になっていますけれども、この委員会を開いた中でアジア以外にもあるという話がせっかく出てきているわけですから、そこは何らかの形でアジア以外にも実はあるということはきちんと書いた方がいいかと考えております。

道垣内主査 わかりました。どうぞ。

浜野委員 これまでの海賊版というのはDVDが出た後にコピーしたり、放送した後にコピーしたんですが、それからさかのぼってニーズができた途端に映画館で撮影したりしていたんですけれども、今はもっと悪質になって、編集段階のマスターのソースをどこかから盗んできて売るんですね。それも、前は映画が公開された後に売っていたんですけれども、今は公開1週間前に売るんです。ですから、中国で大問題になったのは、スピルバーグの「宇宙戦争」というのは公開1週間前にカミングスーンと宣伝を打っている前で1週間前から売り始めて、興業は完全に失敗したということで、それはアメリカ映画だからいいといったらいいんですけれども。
 我々は実害はなかったんですけれども、大変なことになっていて、日本映画も必ずそれをやられるというので、今ポストプロダクションにものすごいセキュリティーを大事にしろと。どんどんソースの方に近づいていって、ビジネスの根っこから倒してしまうということが起こっていますので、悪質化しているということです。余りきつく書くとまずいですけれども、認識として本当にビジネスが成立する直前に全部をだめにしてしまいますので、それはちょっと現状認識として触れておいていただくとありがたいと思います。

道垣内主査 今おっしゃったケースは原因がはっきりしなかったのですか。

浜野委員 編集のときから。

道垣内主査 内部に悪い人がいるとどうしようもないですね。

浜野委員 組織的に犯罪として成立していますので、必ず出てしまうんですね。

道垣内主査 映画産業が始まったときからテープは大切にしていたと思いますけれども、それが出るようなのは中の問題ですか。

浜野委員 それでも犯罪を誘発する、組織犯罪はもう成立してしまっていますので、次は日本でしょうということで。

道垣内主査 わかりました。セキュリティーをきちんとしないといけないということにはつながりますね。
 そのほかどうでしょうか。どうぞ。

後藤委員 真ん中からやや下の成果のところですが、「中国等において音楽CD市場における海賊版が占める割合が減少したり、香港等において海賊版店舗の閉店が相次ぐなど一定の成果も上がってきた」。これのもとネタはどうするのかということと、どこまで書くのかどうかということが1つ。
 それと、さっきから出ている2つ目のところですが、コンテンツの特定でアニメと音楽と2つなんですが、いいのかなと単純に思ったんですが。

道垣内主査 2つのご質疑ですが、1つ目の方は何かデータがあるんでしょうか。この裏付けになるような数字が。

事務局 ここは最初のCDの減少というのはIFPAのデータに基づいております。2つ目については、どのくらい書いていいのかところはちょっとご相談させていただいて。ただ、実際に閉店していることは確かです。その後に開店しているのかもしれませんが、ただ一斉にいなくなるということはあると聞いていますので、その裏付けをもうちょっと持って良い形にしたいと思います。

道垣内主査 2つ目の点で、アニメーション、音楽、ゲームとか金額ベースでは順位を出せるのではないかと思いますが、それはどうなんでしょうか。

事務局 例示はあってもなくてもどちらでもいいとは思いますが。

道垣内主査 カテゴリーの分け方として、アニメーションと音楽とは何か分け方の基準が違う感じがしますけれども、いかがでしょうか。アニメーションというのは、映画という伝統的な分類とはちがいますね。

事務局 これは安倍総理の発言、所信表明演説の中で「アニメ、音楽などのコンテンツ」と使われているのを引用しているのですが、このとりあつかいについては、逆にご意見をいただければと思います。

道垣内主査 後藤委員からご意見があれば。

後藤委員 今までの括りですとアニメ、映画、ゲームソフト、音楽とかいろいろありますね。今のお話で「アニメ、音楽」というのが特定されたというのはわかってたんですけれども、今後これでいいのかなという。今までは広く書いていたので、広い方がいいんじゃないかなという気がします。

道垣内主査 そこは少しご修正ください。
 そのほかいかがでしょうか。また、コンテンツについては後でまた戻ることがあるとしても、次の第2節の事業分野ごとの分析に移りたいと思います。その中で、事業分野ということで、政府間の協議と能力構築支援と権利行使という3つを挙げられています。第2節の中でどの点でも結構でございますし、この区分についてでも結構ですが、何かご意見いただけますでしょうか。
 事業分野という言葉ですが、局面とかアスペクトごとの問題という方が分かりやすくないでしょうか。事業分野というと何かアニメと映画と順番に出てきそうですけれども、そうじゃないですよね。そこはちょっと工夫していただきたいと思います。中身についてですが、政府間の協議の2番目は私はちょっと引っかかります。「対話と圧力」というのはどこかで聞いたことがあるような言葉ですが、こういう分野でもやるんですか。外交の中では相当強い言葉ですよね。特殊な場面では使われていますけれども、それ以外ではなかなか圧力なんか言わないのではないですか。

事務局 WTOの対抗措置とかそういうニュアンスなんですが、確かに言葉としてきついかなとは思わなくもないです。

道垣内主査 内容的にはこわもての部分もあってよいと思いますけれども、いかがでしょうか。どうぞ。

佐藤委員 能力構築支援の対象国選別の3つ目の丸のところなんですが、これは日本の産業が無防衛ということとか、日本がどう被害を受けているか、日本が中心に考えられているように書かれていますけれども、それもさることながら例えば現地産業の中で特にコンテンツ産業に力を入れようとしている国はいずれコンテンツがなくなるという事態に直面すると、どこかの権利を持ってこようという話になりますので、それも選定基準に入れた方がよろしいんじゃないかと思います。
 あともう1つ、細かい点かもしれませんが、全編を通じて海賊版ということについての定義がないままでよろしいか、わざと書かないというにしたらそれはそれでいいかと思いますが、海賊版というのは何となく物理的なCD、DVDというイメージが強くなりますけれども、最近はむしろネットの方が被害が大きい。ベトナムとか中国でネットの配信がされると、それを受けるのは日本のユーザーだったりするわけですから、その視点をもう少しはっきり入れてはどうかということです。

道垣内主査 ありがとうございました。日本語として、海賊版の「版」はあるときから漢字が変わったんですか。レコード、CDの頃は円盤の「盤」だったような気がしますが。これは今おっしゃった点を踏まえてこういう言葉になっているのですか。

高杉委員 かなり前からこっちを使っていると思います、どちらかというと。

道垣内主査 そうですか。今の1の点は、どういうふうに書けば正確になるのでしょうか。ご意見の方をまず確認したいのですが、いかがでしょうか。

佐藤委員 現地のコンテンツ産業の、すみません、適当な言葉が浮かびませんが、現実コンテンツ産業の伸びが著しいとか、国の施策でコンテンツ産業を重視しようという国があれば、そこは日本がそんなに出なくても重視していると。

道垣内主査 この点、日本を中心に考えているのは、予算をつけるという観点があるのかなと私は思っていたのですが、そういうことでしょうか。今の点を含めると、そこはややあいまい、世界的に見て重要かという話に一般化しなければいけなくなってしまいますが。並べて書いていいものかどうか。

事務局 そこは少し異論があろうかと思います。もちろん日本での海賊版対策施策としては、日本のものが出ているというところをまずたたくということが大切にされるかと思います。ただ、国の選別の1つのクライテリアとして、これから文化産業に力を入れようとしている国もあるということは、佐藤先生がおっしゃるとおりだと思いますので、同じ並びで書けるものかどうかはちょっと検討が必要かと思いますけれども、その点も何らかの形で、能力構築を行う国を選ぶときの1つの基準にはなるのかなと思います。

事務局 基本は、やっぱり日本のタックスペイヤーズマネーを使うという観点では、日本にとってどうかということを見るということだとは思うんですけれども、片や政策効果ということとかそういう意味を見れば、もちろん現地でコンテンツ産業にどう力を入れているかというのは政策としての効果ということで大きく変わってくると思いますので、これは考えられ得るとは思います。

道垣内主査 今の3番目の前半の「コンテンツ産業振興施策」と書いてあるのは、これは佐藤委員からのご指摘とはやや違うことでしょうか、それとも一部重なっているのでしょうか。言葉からすると余り違わないのかなとは思うんですが。

事務局 この3つ目の丸の3ポツのところですか。

道垣内主査 そうです。

事務局 確かにこれはちょっと、何のことだかよくわからないですが、佐藤先生がおっしゃるようなことも含まれていると思います。

佐藤委員 でも、続いてあるのが「日本文化の海外発信施策の実施状況」、やはり日本からとありますから、日本のコンテンツ産業の中で特定の国へ出ていくのに資金をつけようとか、そういう話のように僕には見えるんですが。現状でどうかというのは確かにそのとおり、日本重視というのはわかるんですが、どこに重点を置くかという国を選ぶ段階では、現状よりもむしろその先どうなるかとういことを見通す方が大事ではないか。それと、ほかのところが今現在日本がどうかというところを比較的抑え目に書く文調になっていると思いますので、ここだけすごく突出しているように僕には見えるんですが。

道垣内主査 そこはちょっとまたドラフトをご検討下さい。

事務局 ここの記述の問題というだけではなく、今これはまだ骨子の段階でございますので、余り所与のものとして、この構成が絶対的なものという前提でコメントいただかず、「てにをは」だけでなく、全体の構成とか流れとか論理あるいは哲学とかそういったところも全般的にご議論いただければと思いますので。

道垣内主査 今のご指摘は「てにをは」ではなくて、3つ並べるという、それだけでよいのかということだと思います。1番目と2番目のポツは数値化できそうな話ですよね。日本の知財のマーケットはどれくらいで、そのうち何パーセントが偽物なのか。3番目になると数値化は難しくて、先ほどおっしゃった点も数値化じゃないのかもしれないので、ちょっと項目を分けるなりして工夫していただけますか。数値化というのはわかりやすくていいと思うんですけれども、数値化できない将来の伸びといったものは並べて書くとわかりにくいと思います。それでよろしいですか。表現等を工夫いただくということでお願いします。
 どうぞ。

上原委員 今のところとちょっと絡んでくるんだろうと思うんですが、(2)の一番最初の丸のところ、「我が国にとっての重要度は異なるが」と書いてしまって、それでその重要度との関係で資源を投じるべきグループの選定など、どうしてもそういう流れになるのかなというふうに考えるんですが。これは重要度という点をもう少し広げまして、関係性みたいな感じの言葉、言葉がそれがいいかどうかは別なんですけれども、それで分類してそれに応じた施策をするというような持っていき方の方がいいのではないかと思います。
 重要度と言ってしまいますと、今の佐藤委員の話の中にもあった話もあるでしょうし、極端なことを言うと、現在日本のものは余り出ていないところがあって、日本のものが出ていて海賊版の多いところをたたいたら、隣の国に海賊版が逃げていくということは十分あるわけです。そうすると、今余り対応を行っていないところで、しかも制度がきちんとできていないところは早めにちゃんと防御策をつくっておかないとそっちに流れてしまいますよ、特に組織犯罪などの場合には、ということもあると思うので、関係性に基づいてとか、相手の状況に応じて対策をうまく組み合わせていくとか変えていくとか、そういう流れでおつくりいただいた方がいいかと思ったんですが、いかがでしょうか。

道垣内主査 その点も含めてやってください。そのほか何かございますでしょうか。
 「キャパシティ・デベロプメント」というのは新しい言葉ですか、それとももう既にいろいろなところで使われている言葉なのですか。

事務局 実はこの言葉は先日第1回目にJICA(ジャイカ)の方においでいただいてお話を伺いましたけれども、我々としてもJICA(ジャイカ)の人から聞いたのが初めてということで、こういった言われ方はこれまでは余りされていなんだろうな、ただJICA(ジャイカ)では既にこういう言い方で使っているということですので、使い始められているのかなと思います。

道垣内主査 わかりました。これは公務員制度というか、キャリアシステムでずっと上がっていく国であればともかく、そうでない国とだとうまく対応できないかもしれませんね。政府機関で同じ仕事を長くしているような国についてでなければ、なかなかうまくいかないように思いますが、相手次第ということでしょうか。
 そのほかどうでしょう。どうぞ、浜野委員。

浜野委員 「対話と圧力」ということが出たのですが、具体的にもこういう文章に載るのですか。

事務局 肉付けの段階でできれば入れたいと。

浜野委員 先ほど指摘があったように、言葉として、強いのではないかという気がします。圧力という言葉で具体的に何を意味するのか心配になったのですが。

事務局 ご指示を踏まえて、また文章を。

道垣内主査 不当な圧力ではないということで、宜しくお願いします。

事務局 今WTOルールを使うということもなかなか難しいという現状ですので、実際にはお願いと上げっぱなしというぐらい。

道垣内主査 浜野委員、どうぞ。

浜野委員 完成した作品のことだけではなくて、今後のことも重要だと思います。韓国は人口が5,000万人ですから、日本市場と組み込んだ共同製作に熱心です。「冬のソナタ」の後継シリーズは舞台が北海道になっています。合作とか、ロケーションとしても日本にたくさん来ているんですけれども、海賊版が二の足を踏む原因になっています。あそことやっても日本で放送する前にどうせ海賊版が出てしまうのでは、ビジネスが成立しません。だから、その国の権利者意識を高めていくとか、官と権利者が強調するだけでなくて、同じ問題を抱えている権利者同士、民と民が強調するようなことがあってもいいのではないでしょうか。

道垣内主査 そこの部分なのかどこになるのかちょっとわからないのですが、ここは政府レベルの間でのことですね。セミナーというのも政府間の問題の中の項目ですね。権利行使の際、要するに投資意欲を損なわないようにするということですよね。それはもともとこの問題の根本だと思いますけれども、そこを民間の方に対して政府として何ができるか。今おっしゃった点は具体的に何をすれば安心して投資できるのですか。海賊版が出ないようにすればいいということでしょうが、そのためにどうすればいいかを今ここで取り上げているわけですので、いかがでしょうか。

浜野委員 作家はどの国でも発言力があります。中国でもチャ・イーモウ監督などはカリスマ的なので、彼らの発言なら耳を傾ける。各国の作家の方々との関係を維持しながら、一緒に声を上げていくというのが、私は個人的には一番効果があると思います。

道垣内主査 この委員会でもお話が出たかと思いますが、現地の権利者側の団体、あるいはそういう方々の意識が上がってくればおのずと話がうまく回っていくと思うので、おっしゃるようにセミナーではそういう人にぜひ発言してもらうという方策もあるのかもしれません。
 権利行使のところもよろしゅうございますでしょうか。どうぞ。

佐藤委員 これもちょっと細かくなって恐縮なんですが、ここは裁判所で判決が通ってその後エンフォースメント、そのエンフォースメントのところに中心がある話だと思いますが、現実は判決を書く能力を持っている裁判官の育成というのがかなり遅れているのがアジア諸国の傾向だと思いますので、そういうところのまさにキャパシティ、これはビルディングになるのかもしれませんけれども、そこへの配慮ということも注文いただければと思います。
 それから、仲裁の仕組みを持ってくることが可能であれば、先進国の専門家がある程度力を貸すことがしやすくなりますので、その点もご検討いただければと思います。

道垣内主査 よろしゅうございますか。ただ、なかなか侵害事件の仲裁は難しいですね。侵害者が仲裁に合意してくれないではないでしょうか。よろしゅうございますか。
 では、第3節ですが、第4節も一緒にと思いますけれども、事業分野間の連携・相互関係の分析と、海賊版問題を取り巻くその他の周辺状況。このあたりについていかがでしょうか。

菅原委員 第4節まで入ってしまっていいですか。

道垣内主査 結構です。

菅原委員 最初の丸の最後に、「正規版流通システムが存在しないため」と言い切ってしまうのは違うのではないかと思います。実際流通システムがあるところもあると思いますので、その辺は整理をいただければと思います。

道垣内主査 そうですね。これは「その他」ということではなく、どこかにうまく入れられるのかというのは全体をお考えいただきたいと思います。もっとも、正規版流通システムをつくるべきだ言われても市場が小さければビジネス上できないですよね。なかなか難しい問題ではないかと思いますが。
 浜野委員。

浜野委員 ある映画会社の社長とたくさん映画をつくっている出版会社の重役がおっしゃったんですが、正規版流通が整備されてないような国なら、海賊版を駆逐するために正規版を無料で国に使ってもらうような協力ならいくらでもするおっしゃってました。個人的な意見だというおっしゃってましたが、海賊版に困って、それくらいの心づもりはあるということではないせしょうか。

道垣内主査 先ほどの言葉の点でいうと、イタリア語版をつくらなければなりませんよね。ばらまくためには。

浜野委員 それはその国の方で負担して。

道垣内主査 それを誰かがやってくれればということですか。

浜野委員 ただ、そういった国に関しては、ライセンスを国に預けてもいいとおっしゃっていました。

道垣内主査 そういうことですか。わかりました。

事務局 今のおっしゃるのは、施策レベルではまだ精査できていないというのと、また施策はもうちょっと先に具体的なものを検討していくという意味では、そういうアイデアをいただければそれを前提にまた政策レベルで何ができるかということを検討していくということも可能かと思いますので、そういう面で詰めていろいろいただければと思います。

道垣内主査 どうぞ。

里中委員 細かい数字とか具体的な事例を細かく知らないので、ちょっとあいまいな言い方で申しわけないんですけれども、全体を通じて国別に対応するということになっておりますが、アジア地域のかなりの国民が、確かに国は別なんですけれども、私が知っている範囲だと出版業ですね、それを抑えているのは中国系の人たちの横のネットワークということがとても重要で、インドネシアであれマレーシアであれシンガポールであれ、実は大もとは何グループかの華僑系の方々、そういうこともありますので。アジア全体を見たときに、私たちはつい国別に見てしまうんですけれども、文化圏として見た場合にはかなり緩やかな国境線で情報と物が流れているんじゃないかと考えます。
 そんな中で、さかのぼって申しわけないんですけれども、日本がアジアと世界の架け橋になるという部分が、多くに関しては架け橋になれるものかどうかというのがあるんですね。著作権認識と著作権事業の展開、そういうノウハウということでの欧米的な物の考え方を知らしめるという意味ではそうかもしれませんが、文化ということになりますと、何も日本が架け橋になってくれなくても、何だか知らないけれども、著作権のことをあれこれ日本が口出ししてきて教育して、挙げ句の果てもしかしたら日本がマネジメントフィーをとって欧米に売り込むのかまで思われかねない。人が親切に何かを教えてくれるのは下心があるからだというような、そういう考え方がベースになっているところがあります。ですから、日本という、ついつい相手国の文化のため、相手国の民族のためと思ってこちらがお金を出して一生懸命頑張って人を派遣して、あなたたちのためですよと本気でそう思っていたとしても、そこに見返りなくやっているという余りにも素直な態度が出過ぎますと、かえって疑われかねないんですね。人がただで動くはずがないということで何千年もやってきている国がありますので、そういう方たちにとっては、なぜこんな親切にするのか怪しい、本音は何だ。文化侵略から始まって、経済を抑えてアジアネットワークで日本が窓口となって日本が文化事業を欧米に売り込むのかと思われますので、先ほど対話と圧力とありましたけれども、圧力というよりも正当な自己主張ということで、我が国はこれだけ損をしているんだ、わかってくれと、損はしなくないし、みんなとつき合いたいから覚えてほしいんだというような、自己主張の部分をやっぱり強調した方が後々つき合いやすいかなと思っております。圧力をかけるのも対話だけもだめで、誇りを持って自己主張するところで相手の心でつき合うということで、アジア的感性でうまく育てていければなと思います。
 あっちこっち見境なく申し上げておりますけれども、この中で例えば特定の国を選んでどなたか能力のある方に将来をかけていろいろ覚えていただく、それはいいんですけれども、実際著作権とはどういうものかというのはかなり皆さんご存じなんですね。知っていて守るかどうか。行使するかどうか。そこにはやっぱり金銭的な裏付けということがないと動けない人たちもいますので、能力の構築、支援ということはいいことだと思いますけれども、その後くれぐれも監視しているのねという雰囲気にならないように、ビジネスとして日本はコンテンツから正当な利益を得ることができるとすればかなりの金額になると思いますので、損をしているんだという、被害者面をしろということではないですけれども、それを強調して、お互いにもうけようじゃないか。そのためには、あなたの国の著作権事業をきちんと理解した方がもうけられるかもしれないということで上手につきあっていければと思っています。

道垣内主査 どうもありがとうございました。アジアでは刑事罰をちゃんと執行している国とそうでない国で差があるのでしょうね。中国でも時々ニュースになるほどたくさんのCD等をつぶしたりしていますよね。それは多分象徴的にやっているだけで、本当に地道にやっているかというのは国によって違うのでしょうけれども。特定の犯罪集団が幾つあるというのならばそこを対象に徹底的に刑事訴追をするというのが一番効果的な圧力だろうと思いますが、それをこっちからイニシアチブをとることはできるのでしょうか。日本国からその国の当局にお願いするということしかできないんでしょうか。

事務局 お願いといってもいろいろなお願いの仕方があるんですが、日中を例にとると、もちろんハイレベルからいろいろなバイの協議もありますし、それだけじゃなくWTOとかいろいろなマルチの場で、中国がWTOの義務を果たしているかどうかレビューメカニズムとか、それは多分お願いするといっても弱いお願いからかなり強いお願いまでいろいろあるんで、そこはやり方はいろいろございます。

道垣内主査 そういうことも、現実的に動けるようなことを具体的に書いていただくというのが今の里中委員のご発言のご指示かと思います。

事務局 ご参考までに、今中国の例をおっしゃったのでご紹介させていただきますと、中国は侵害額の基準がございまして、それ以下の場は行政罰、それを超えれば刑事罰という2段階の仕組みを持っていまして、その基準が高いものですから、なかなか刑事罰になりにくいということで、その基準の閾値を下げるようにという要望はさまざまな協議の場で行っているという状況でございます。

道垣内主査 そのお話は知りませんでしたが、一団体の侵害額を基準にするのですか、それとも個々の製品の侵害額を基準にするのでしょうか。要するに、団体を小分けにすれば1つ当たりの侵害額は幾らでも下げられますよね。

事務局 一侵害者なり、一侵害団体の総額ということだと思います。

道垣内主査 そうすると、小分けにすれば行政罰で終わるということですね。

事務局 あと、その閾値の問題も、むしろ後藤委員とかの方が詳しいと思いますけれども、現地価格でやるのか日本価格でやるのかといった、そういう1つ1つの要請レベルではいろいろございます。

道垣内主査 それがWTO統一協定に違反するかどうかが問題ですね。

事務局 それはまた今進行中の。

道垣内主査 わかりました。
 大体第4節まで一応終わりましたけれども、改めて全体を見て、どなたでも結構なのですが、特にご発言いただけなかった方、いかがでしょうか。上原委員、どうぞ。

上原委員 第4節のところ、先ほど菅原さんがおっしゃっていたところ、正規版流通システムは存在しないというか、存在しないと言い切られては困りますという話が1つありましたが、それと同時に十分対応できるというところの内容が2種類あると思うんです。つまり、ちゃんとたくさん供給されていませんよという、例えばこの前出たイタリアなんかだと海賊版も正規版も同じくらいの料金であるということであれば、海賊版に食われないようにうまくできれば、市場として成立しますねというのあるんですが、アジアのある国に行きますと、物すごい安い現地海賊版があって、海賊版と同じ値段で売ってくれないと幾ら流通したって意味がないよというところがある。その国に対して十分対応できる正規版流通と言われてもなかなか難しいところがありますので、ここのところはちょっと書き分けていただいたらと思います。そこら辺のバリエーションをつくっていただいた方がいいと思います。

道垣内主査 そのほか何かございますでしょうか。どうぞ、里中委員。

里中委員 ちょっとお伺いしたいんですけれども、先ほど損害額の算定というのがございましたが、その額だけでしか決められていないんでしょうか。例えば、点数ですね。何点以上違法コピーを見つけた場合はというようなやり方はあるんでしょうか。もしないとしたら、点数という考え方の方が日本にとってみると、あらとちょっと思ったものですから。

道垣内主査 おわかりであれば。

事務局 単価かける数量なので、物すごく安ければ水準以下になってしまいます。

里中委員 例えば、侵害額となっていますと、単価をどう設定されているかによって変わりますよね。点数、個数が把握できてその個数を基準に話し合うということをやった方がもしかしてユージュアルかなと思ったりするんです。つまり、日本の問題であるかあちらの問題であるかとかに関係なく点数だけで話ができるので、どうなのかと思ったんですが。

事務局 国際ルール、条約の世界でいうと、効果的な措置ということで、どういうものに刑事罰、どういうものに民事罰をというはっきりしたものがなくて、あとは中国の国内でどういう制度にしているかということが効果的かどうかという。効果的というのは主観的なあれなので、日本の権利者団体あるいは政府からすると、このあたりが抑止できないということであれば効果的でないという議論をし、中国がちゃんとこういうふうにやっていますということを言うので、ある程度中国側の制度を所与に議論しているという面はあるんでございますけれども。

道垣内主査 おっしゃるところも、余りに低い額で掛け算するのであればそれはおかしいという議論はできるかもしれませんね。
 この報告書の骨子につきましてはこれくらいでよろしゅうございますでしょうか。
 どうぞ、佐藤委員。

佐藤委員 質問なんですが、一番最初のところでアジア等という地域の括りをしていましたけれども、ODA事業一般では、常任理事国との関係で、アフリカの方にどんどんシフトするという傾向が見られるようですが、殊著作権が海賊版対策についてアフリカにシフトするという話はあるんでしょうか。

事務局 これまでの考え方としては、そういったことが示されたことはないと思います。アジア中心ということは常にこれまで言われてきたと思いますが、私の知る限りではないです。

道垣内主査 先ほどの日本からの進出状況と被害状況がアフリカの国で大きくなればターゲットに入ってくるというのがあるのかもしれませんが、今のところ余りないということですね。

佐藤委員 逆に、アフリカにシフトされた結果、アジアに対するお金、施策費が減っていくというのがODAのすべての現状なので、それをここに当てはめられては困るでしょうという。

道垣内主査 ほかの点、何かございますでしょうか。

池田委員 全体的に私は、この規律の具体的にどうなるかにもよるんですけれども、基本的な柱という意味では、1枚目にありますスローガンだけじゃなくて、新たな段階に入ったステップだとするべきだという趣旨で書かれていることに大変賛成なんですが、1点、2枚目の政府間協議のところで「十分な情報収集を支えられた政府間協議」とあるんですが、政府間協議のためだけの情報収集では困るなと。やはり情報収集を本格的にやった上で、それをどういうふうに活用するかというのは、政府間協議だけじゃないだろうなということで、情報収集は全体にかかわる話かなという気がしました。
 最後に出ていました制度の支援の話ですけれども、正直言いますと、文化庁さんにとってはやや他人事的に書かれているような気がちょっとします。やはり、ビジネスモデルを転換するためには継続的な支援が必要だろというふうに思います。海賊版が出ては、たたけば一瞬なくなるんですけれども、また出てくる再開するというようなことで、一瞬だけで終わらない、やっぱり継続的に対応しないといけないということで、支援の継続性みたいなことは必要だろう。そこのところは文化庁さんでどこまで踏み込んでやられる、可能なのかどうかというところがやや他人事的にちょっと見えたという感想です。

道垣内主査 お書きいただける限度では突っ込んで書いていただきたいと思います。よろしいでしょうか。
 それでは今いただきましたご議論を参考にしていただきまして、次回には報告書の具体的な形をつくって審議の対象にしていただきたいと思います。
 それでは、事務局からその他のお知らせ等ございますでしょうか。

事務局 本日の議題には特段書いてございませんけれども、先日8月に開かれました著作権分科会におきまして、著作権の存続期間、保護期間に関する戦時加算の問題で若干意見がございました。これは今後の著作権の保護期間の延長に関連した話として出てきたわけでございますけれども、現状がどうなっているのかということを、情報を共有する意味でご説明させていただきたいと思います。
 この著作権の存続期間に関する戦時加算は、サンフランシスコ平和条約の第15条の義務を履行するために、連合国及び連合国民の著作権の特例に関する法律で規定されているものでございます。仮に、今後我が国の著作権の保護期間を、著作権者の死後50年から70年に延長したという場合に、戦時加算の期間が延長分、この20年の延長した部分の期間に含めて解消できるかできないかという問題でございます。
 これは現行法が1970年に制定された時点でも実は議論されております。当時、外務当局との協議の結果といたしまして、平和条約の規定というのは著作物の保護が要求されるその時点での国内法の定める通常の保護期間に戦時加算を行うということを求めているもので、新しい法における保護期間にさらに戦時加算を行うということが必要とされたところでございます。したがいまして、ほかの事情の変更がない以上、仮に50年から70年に延長する場合でも、少なくともサンフランシスコ平和条約の規定の解釈との関係では、延長後の70年に対してさらに戦時加算を行う必要があるというふうに解釈できると思います。
 一方、保護期間を70年に延長することの条件として、平和条約の戦時加算の義務を日本に対して免除することを連合国に交渉するということは、別の措置として理論上は考えられるわけでございますけれども、しかしながら諸般の情勢を勘案しますと、総合的な外交政策上の判断からそういう交渉を行うということについて、外務当局は否定的な考え方をとっているという現状にあるというふうに理解しております。

道垣内主査 ありがとうございました。今の点何かございますか。平和条約の規定について、今さらどうしようもないということですね。よろしいでしょうか。どうぞ。

福王寺委員 そういう著作権問題を考える創作者団体協議会というものがたちあがりましたけれども、今年の春から何回か出しまして、9月22日に記者発表したんですけれども、それはこの著作権保護期間の延長、50年から70年にしていただきたいということを含めて、戦時加算の問題について話し合っていただきたいということを、要望書として文化庁に提出したと思うんです。外務当局で否定的というふうにおっしゃっていましたけれども、それについては話し合ってみる価値はあると思うんです。それがどうなるかということはまた別ですが、外務省の方でそういうふうにおっしゃるのであれば、文化庁の方でどういうふうに反論を出していくか。それを含めて文化審議会でも、あるいはこの国際小委員会でも話し合う必要はあると思うんです。最初からそれは否定的だということだけで済まされてしまってはいかがなものかなというふうに思うので、ぜひともこの国際小委員会でも話し合っていただいて、ある程度の話し合いの結果というものを文化審議会の方に審議の内容として提出していただきたなと思います。以上です。

道垣内主査 どうでしょうか。

事務局 今日秋葉の方から戦時加算の問題についてご説明しましたのは、前回著作権分科会の場で何人かの委員から問題提起がございましたので、この言葉についてこの委員会におきましても共通理解をしていただくということで提示したものでございます。
 先ほど秋葉が申し上げたとおり、平和条約そのものを今から改正するというのはほとんど無理だと思いますが、その取り決めを別の取り決めという形でするのは理論上は可能だろうと思います。でも、そういったことをするのかどうかということについて、やはり日本としてどうするかという議論はまた必要でございます。今の時点での外務当局としては極めて消極的ではありますけれども、しかしながらやはりそういうこともちゃんとすべきではないかといった議論が高まってくれば、それはまたそれで文化庁として取り組んでいくということにはなってくると思います。そういう意味で、今の段階で私どもとして、戦時加算の問題について何もやらないということを言っているわけではありませんで、この問題、法律案の延長問題は戦時加算の問題だけではなく、それ以外のさまざまな要素も勘案しなければならない非常に重要な問題でございますから、今の段階でどの視点から検討を始めるかというのは申し上げられませけれども、いずれにしても権利者団体15団体という形で問題提起もされておりますし、今社会的な関心も高まっておりますので、適切な時期に著作権分科会、法制問題小委員会あるいはこの国際小委員会、場合によっては一緒に、適切な形で議論を進めていきたいと思っております。

道垣内主査 今の点は特にここで議論するという、おっしゃるように状況のご説明ということでご理解いただきたいと思います。
 それでは今日の中身はこれでおしまいということで、今後のスケジュールにつきまして事務局からご説明いただけますでしょうか。

事務局 田中の方の説明のときにございましたように、参考資料2の方に審議予定がございますけれども、次回本日ご議論いただいた骨子を肉付けいたしまして文書の形でご提示させていただければと思います。それについてまたご議論いただきまして、12月、年内に報告書としてまとめさせていただければなと考えております。以上でございます。

道垣内主査 それでは、これで文化審議会著作権分科会国際小委員会の第3回会合を終わらせていただきます。
 ご協力ありがとうございました。

午後4時閉会

(文化庁長官官房国際課)


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