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資料3

平成18年度文化審議会著作権分科会国際小委員会報告書骨子(案)

第1章  アジア地域等における海賊版対策施策の在り方について
 −より効果的な事業実施のために、新たな段階へのステップアップ−

第1節  はじめに(現在の状況と課題)

我が国の目指す姿は、文化、伝統、自然、歴史を大切にする「美しい国、日本」である。我が国が21世紀において「美しい国」として繁栄を続けていくためには安定した経済成長が続くことが不可欠である。人口減少の局面でも、これはグローバル化に対応して開かれた姿勢でアジアなど海外の成長や活力を日本に取り込むことにより可能である。

このため、アニメや音楽などのコンテンツ等について、国際競争力や世界への情報発信力を強化すること及びヒト・モノ・カネ・文化・情報の流れにおいて、日本がアジアと世界の架け橋になることは、現在、政府の最重要課題として位置づけられている。

しかしコンテンツのアジアでの流通には、言語等の文化的背景が異なることと、知的財産の保護レベルが低いことという二つの大きな障害がある。前者は所与の問題として対策を立てることは難しく、またそもそも文化に多様性があるということは文化発展の原動力でもあるので、その均質化は施策として目指すべきことではない。

他方で制度的理由で文化発信ができないことについては政府や我が国の企業の働きかけによって改善する必要がある。

政府は2003年に知的財産推進計画を定めてから海賊版対策事業に注力してきており、その後政府の海賊版対策事業は漸進的に充実し、中国等において音楽CD市場における海賊版が占める割合が減少したり、香港等において海賊版販売店舗の閉店が相次ぐなど一定の成果も上がってきた。

また、中国を筆頭にアジアの多くの国では著作権関係法令の整備が進んできており、多くの国は国際条約が要求するレベルの著作権保護法制を備えつつある。

しかしながら依然として海賊版の流通量は多く、十分な成果が上がっていないことも事実である。

法令の整備だけでは現実の海賊版は十分に減少しないことが示すように、現場で成果を挙げるという観点からは、現在の海賊版対策が最も効果的な手法となっているとは必ずしも言えない。

我が国の海賊版対策事業は、スローガンとして海賊版対策の看板を掲げる目的で施策を行う時期は過ぎ、本格的に具体的な成果を刈り取る新たな段階にステップアップすべき時期に入ったと考えられる。

海賊版が十分に減少しない状況を漫然と続けないためには、これまで行ってきた海賊版対策事業の在り方の全面的な点検調査を行い、より効果的な事業実施のために必要な改善点を洗い出す必要がある。

こうした観点からこれまでの我が国の海賊版対策事業を見直すべく、検討を行う。

まず事業分野ごとの検討、次にそれらの連携や相互関係の検討を行い、最後に海賊版問題を取り巻くその他の周辺的状況の分析を行う。

第2節  事業分野ごとの分析

(1) 政府間協議
  交渉手段の戦略的な選択
現在、侵害発生国との政府間協議が相手国による十分な行動の変化につながっていない場合がある。

そこで、対話と圧力、バイとマルチ、トップレベルと実務レベルを使い分け、戦略的に効果的な協議を行うべきである。

十分な情報収集に支えられた政府間協議
また侵害発生国自身の海賊版対策の状況が把握しきれていないために要請すべき事項が明確でない場合や、侵害の規模や発生理由が把握できていないために侵害をなくすための具体的提案ができていないという問題もある。

これらについては、状況に応じてより効果的に個別化された要望が行われるように、情報収集体制を強化すべきである。

(2) 能力構築支援
  戦略的な対象国選別
海賊版が存在する国、また著作権保護レベルが十分でないアジアの国は多く、それぞれの国の施策ニーズや我が国にとっての重要度は異なるが、現在の能力構築支援はそれらに応じた戦略的な対象国選別ができていない。

また事業の実施方法も、各国間での差別化が不十分であり、どの国に対しても似通った内容となっている恐れがある。

そこでまず以下の項目に基づき各国を分類し、優先して資源を投じるべきグループを選定する。
    日本のコンテンツ産業の進出状況
日本のコンテンツの海賊版被害状況
コンテンツ産業振興施策、日本文化の海外発信施策の実施状況

さらにそれぞれのグループ内でも、以下の諸項目の状況を勘案して優先的に実施すべき施策を決定する。
    著作権関係条約締結状況
著作権関係法令整備状況
集中管理団体整備状況
海賊版流通状況

キャパシティ・ビルディングからキャパシティ・デベロプメントへの展開
これまでの途上国支援は、能力構築支援については個々の事業が参加者のその場の能力構築にしか結びついておらず、事業終了後の相手国全体の自主的・持続的な能力構築に結びついていなかった。

また、法令整備支援やエンフォースメント支援との連携も不十分であった。

そのため、点を面へつなげて事業の射程範囲を相手国の自律的な著作権保護施策の展開まで波及させるべく、「キャパシティ・ビルディング」から「キャパシティ・デベロプメント」への転換を図るべきである。
注:「キャパシティ・ビルディング」は研修等の現場における個々の職員の能力向上を中心に構成される概念。これに対し「キャパシティ・デベロプメント」は、それを含め、その職員が出身国に帰った後に政策や実務に影響を及ぼしていき、最終的には途上国自身が自律的に政策を向上させていくようになる過程を包括的にとらえ、そのための環境作りを含めた総合的な途上国の能力向上を目指す概念。

具体的には、研修終了後に相手国政府内部において政策に影響を及ぼしうる地位にある者を研修参加者として適切に選別すること、研修参加者の研修終了後の動向をモニターし、適切なフィードバックを受けて更なる支援事業に結びつけること、研修参加者が今後も両政府間の情報交換・要望のパイプとして機能し続けるよう、定期的にコンタクトをとり続けること等を行うべきである。

相手国の利害関心に応じたセミナー等
これまでの能力構築支援におけるセミナー等は、ともすると日本の考え方や国際的ルールを一方的に主張するだけで、相手方の利害関心やインセンティブへの配慮に欠けていたため、相手方の自発的な行動や協力を促しにくい面があった。

そこでそのような場では、海賊版対策や著作権保護体制の整備がいかに相手国自身のコンテンツ産業と文化発展に役立つか、いかに相手国の権利者の利益となるかという点を前面にアピールしながら事業を実施すべきである。

また相手国政府が行うコンテンツ産業振興施策や文化振興施策と連携して実施する可能性も検討すべきである。

なお、海賊版対策や著作権保護体制の整備が相手国自身の発展に役立つということを効果的に説得するため、WIPO東京事務所においてそれを実証する研究を進めることも考えられる。

(3) 権利行使
  関係省庁・権利者団体との連携
権利行使においては、関係省庁と権利者団体等との間の連携が重要である。

国は民間が積極的に海外展開し、権利侵害について迅速に権利執行できるよう、民間の共同執行体制の構築の支援を行うべきである。

さらに、能力構築支援にあたっての日本国内の人材不足を解消するため、国内の大学、研究所、団体、企業等とのネットワーク作りが必要である。

第3節  事業分野間の連携・相互関係の分析

政府間協議と能力構築支援との連携
「対話と協力」というこれまでの路線がより効果を上げ、キャパシティ・デベロプメントにもつながるよう、政府間協議での要請事項の実現に必要な人材が相手国で育成されるための能力構築支援を行うべきである

なお能力構築支援のみならず政府間協議も、できるだけ海賊版対策や著作権保護施策は相手国の発展に貢献するという視点から、行うべきである。

能力構築支援と権利執行との連携
権利者によるエンフォースメント活動の結果判明した問題点などを踏まえた能力構築支援を実施すべきである。

政府間協議と権利執行との連携
権利者によるエンフォースメント活動の結果判明した問題点などを踏まえた事項を政府間協議で要請すべきである。

第4節  海賊版問題を取り巻くその他の周辺状況

正規版流通システムの不在の問題
消費者が海賊版を購入し続けるのは、そもそも日本製コンテンツの需要があるにも関わらず、その需要に十分対応できる正規版流通システムが存在しないためである。

手軽に適正な価格で正規版の購入ができれば、多くの消費者にとって海賊版の購入を止めることは合理的な行動となるであろうから、このような正規版流通システムの確立のための環境整備は大きな効果が期待される。

そのためにも、政府は各省庁が連携してコンテンツ産業が国際的に展開可能なビジネスモデルに転換するために必要な支援をするべきである。

まとめ



第2章  国際的ルール作りへの参画の在り方について
(必要に応じ放送条約の交渉状況について記述)


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