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4. ネットコム判決
  Religious Technology Center v. Netcom, 51 PTCJ 115 (N.D. Cal. 1995)

【事案】
 原告は、サイエントロジー協会の創設者であるロン・ハバードの著作物について著作権を保有している。
 被告エーリッヒは、被告クレムスラッドが運営するBBSに、サイエントロジー協会を批判するメッセージを掲載した。被告ネットコムは、インターネット・アクセス・プロバイダーであるが、被告クレムスラッドが運営するBBSへの接続サービスを提供した。
 原告は、被告エーリッヒがそのメッセージにロン・ハバードの著作物に複製したこと、被告クレムスラッドがそのBBSのコンピュータに当該メッセージを3日間蓄積したこと、被告ネットコムがそのコンピュータに当該メッセージを3日間蓄積したことをもって、著作権侵害を主張し、訴訟を提起した。
カリフォルニア北部地区連邦地方裁判所は、被告エーリッヒおよび被告ネットコムに対する予備的差止命令の申立を退けた。

【争点】
1.BBS運営者やインターネット・アクセス・プロバイダーは、直接侵害責任を負うか、寄与侵害責任を負うか、代位責任を負うか。
2.フェア・ユースの成否

【判旨】
1.直接侵害侵害について
  直接侵害責任の成立に主観的要件は不要である。
  RAMへの蓄積は「複製」であるから、被告エーリックおよび被告ネットコムのコンピュータ上に複製物が作成された。
  「MAI事件の事案と異なり、ネットコムのシステムが偶発的に原告の著作物の一時的複製物を作ったというだけの事実は、ネットコムが当該複製物を生じさせたということを意味するものではない。当裁判所の判断においては、ネットコムが送られてきたすべてのデータについて一時的複製物を自動的かつ一律に作成するシステムを設計・実施した行為は、公衆に複製物の作成をさせる複写機を保有する者の行為と異なるところがない。その複写機を使用する者が著作権を直接に侵害することがあるにしても、当該複写機の所有者の責任は直接侵害責任の理論ではなく寄与責任の理論によって分析されるべきである。」

2.寄与侵害責任について
  寄与侵害責任は、著作権侵害を知りまたは知るべきでありながら、他人による侵害を教唆・幇助またはその他実質的な関与を行った場合に生ずる。
  「ネットコムは、原告が主観的要件を立証したときは、直ちにエーリッヒの侵害メッセージを削除せず侵害物の全世界への頒布を中止させなかったことがエーリッヒによる当該メッセージの公衆への頒布行為への実質的関与を構成するので、寄与侵害について責任を負う。」
  「当裁判所は、少なくともフェア・ユースというもっともらしい主張がある場合には当該使用が侵害でないか否かを速やかにかつ公平に判断することはBBS運営者の能力を超えている、との議論がより説得力を持つと考える。BBS運営者が合理的に侵害の主張を確認できない場合には、その理由がフェア・ユースの抗弁の成立する可能性であれ、複製物に著作権表示を欠いていることであれ、著作権者が著作権侵害を疎明する必要書類を提出しないためであっても、BBS運営者における主観的要件の欠如は合理的なものと考えられ、そのシステムによって著作物の頒布を継続させたことについて寄与責任を負うものではない。」
  被告ネットコムは原告から警告を受けた後は著作権侵害を知りまたは知るべきであった可能性があり、その認定には事実審理を要する。

3.代位責任について
  代位責任は、被告が侵害行為を監督する権能を有し、かつ侵害行為から直接的な経済的利得を受けている場合に成立する。
  被告ネットコムは、加入者に対して著作権侵害を禁止し、これが生じた場合には対応策を採る権限を留保していたので、第1の要件を満足する。
  しかし、被告ネットコムが侵害行為から直接的な経済的利得を受けていたとの証拠はないので、第2の要件を欠く。

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