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資料7−4

国際裁判管轄及び準拠法にかかる最近の動向


1. 国際裁判管轄
 
(1) 国際的な検討状況
ヘーグ国際私法会議「民事及び商事に関する裁判管轄及び外国判決に関する条約」(参考1
平成13年6月に条約採択のための外交会議が行われて以降、数回の非公式作業部会を開催したところ。当初のような民事及び商事に関する包括的な裁判管轄ルールを策定することは困難との認識のもと、合意管轄に特化した条約を策定することを前提とした条文案が3月の非公式作業部会で策定されている。著作権の有効性に関する訴訟について、管轄合意の有効性を認めるか否かが今後の論点となる。

(2) 国内的な検討状況
文化審議会著作権分科会報告書(平成15年1月)
「・・・権利者と利用者の合意による裁判管轄による裁判管轄の決定は、管轄合意以外の管轄原因に基づく他の裁判管轄ルールよりも法的予測可能性が高いため、権利者、利用者双方が契約等の中にこのような合意管轄条項を予め盛り込んでいくことは、裁判管轄についての不確実性を除去する観点から有効とであると考えられる。」と指摘する一方で、「契約の一方の当事者が弱い立場にある場合、当該当事者が不利な立場に置かれ得ることについて懸念」が表明されている。

法制審議会国際裁判管轄制度部会
ヘーグ国際私法会議における議論が停滞していたため、過去1年議論が行われていなかったが、本年3月に条約案が提示されたことに伴い、5月27日に議論が再開されたところ。

(3) その他
MGM Inc., et al., v. Grokster, Ltd., et al.(平成15年1月)
P2Pのファイル交換ソフトである“Kazaa”をインターネット上で頒布していたバヌアツの法人であるシャーマン社等を、米国のMGM等の著作権団体がカリフォルニア連邦地裁に著作権侵害訴訟を提起したケース。被告のシャーマン社は、カリフォルニア連邦地裁には管轄権がないとして争ったが、シャーマン社は,1“Kazaa”の頒布が相当数のカリフォルニア住民に対してなされており、それにより広告収入を得ていたこと、2“Kazaa”の頒布により原告の著作権侵害に寄与し、またその多くがカリフォルニア州での被害になることを知っていたこと、また、3“Kazaa”の頒布と今回の訴訟提起の間には重大な関連があること等の理由によりカリフォルニア連邦地裁の管轄権を是認する判決が出されている。

2. 準拠法
 
(1) 国際的な検討状況
WIPO著作権等常設委員会
平成14年11月に開催された第8回WIPO著作権等常設委員会において、今後の検討が必要な課題の一つとして、「準拠法」の問題が事務局より提示されたところ。

(2) 国内的な検討状況
文化審議会著作権分科会報告書(平成15年1月)
「・・・当面は問題の所在を見極めつつ、ベルヌ条約の「保護国主義」の明確化等の国際的な働きかけを積極的に行っていくべきである。」



(参考1)

ヘーグ国際私法会議における「民事及び商事における国際裁判管轄及び外国判決の効果に関する条約」の検討状況

1999年10月: 特別委員会
   条約準備草案を採択
2000年5月: 一般問題特別委員会
    条約の採択を目的とする外交会議を二回に分け、第一回目の会議を2001年6月に、第2回目の会議を2001年末又は2002年初頭に開催して、最終的に内容を確定し、採択することを決定。
2001年2月: 知的所有権に関する専門家会合(ジュネーブ)
2001年2月: 非公式会合(オタワ)
   電子取引・知的所有権の観点からの問題を含めて具体的に検討。
2001年4月: 非公式会合(エジンバラ)
2001年6月: 外交会議第一部
   コンセンサスは形成されず。
2002年5月: 第一委員会
    条約に関する今後の作業の進め方等について審議を行ったが、各国間の考え方の差異は埋まらなかった。
  EU、豪、日:包括的な条約を支持
米: 小さい条約(企業間における合意管轄及びphysical injury tortに関する管轄に限定した条約)を支持
 
    また、専門家からなる非公式の作業グループを設け、第一委員会で指摘されたコアエリア(企業間の合意管轄、応訴管轄、被告住所地管轄等)を核として、追加可能な管轄原因を加えていく作業を行うことが決定された。(日本からは道垣内委員が選任された)
2002年10月: 第1回非公式作業部会
   非公式作業部会による条文草案の再ドラフティング作業開始。
2003年1月: 第2回非公式作業部会
    合意管轄以外の管轄原因を含む条約作成はほぼ不可能との見通しに達した。
2003年3月: 第3回非公式作業部会
    第2回会合における見通しに基づき、条文案を「裁判所の選択合意に関する条約案」として、合意管轄のみを対象とする条約を検討し、一応の草案を完成した。
本条約草案の特徴として、
1裁判管轄に関する条項は、B2Bの合意管轄に関するもののみを対象。
2特許権、商標権の有効性についての訴訟は、条約の適用対象外。
3その他の知的財産権の有効性についての訴訟の取扱いについては、今後検討。
2003年4月: ヘーグ国際私法会議一般問題特別委員会
    非公式作業グループにおいて作成した条文案を審議し、以下の事項を決定した。

2003年4月の一般問題委員会の結論
1 非公式会合において作成されたtextを各国に配布の上、7月末を目途に「本条文案をベースとして特別委員会を開催すること」についての各国の意見を求める。
2 意見の大多数が特別委員会を開催することについて賛成である場合には,本年12月ころ、特別委員会を開催し、2004年に外交会議を開催することとする。
3 他方、本年中に特別委員会を開催することにつき、各国の賛成が得られない場合には、来年の一般問題特別委員会において、今後の取扱い等について審議を行う。

 

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