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国際的な検討状況 |
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ヘーグ国際私法会議「民事及び商事に関する裁判管轄及び外国判決に関する条約」(参考1)
平成13年6月に条約採択のための外交会議が行われて以降、数回の非公式作業部会を開催したところ。当初のような民事及び商事に関する包括的な裁判管轄ルールを策定することは困難との認識のもと、合意管轄に特化した条約を策定することを前提とした条文案が3月の非公式作業部会で策定されている。著作権の有効性に関する訴訟について、管轄合意の有効性を認めるか否かが今後の論点となる。
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(2) |
国内的な検討状況 |
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文化審議会著作権分科会報告書(平成15年1月)
「・・・権利者と利用者の合意による裁判管轄による裁判管轄の決定は、管轄合意以外の管轄原因に基づく他の裁判管轄ルールよりも法的予測可能性が高いため、権利者、利用者双方が契約等の中にこのような合意管轄条項を予め盛り込んでいくことは、裁判管轄についての不確実性を除去する観点から有効とであると考えられる。」と指摘する一方で、「契約の一方の当事者が弱い立場にある場合、当該当事者が不利な立場に置かれ得ることについて懸念」が表明されている。
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法制審議会国際裁判管轄制度部会
ヘーグ国際私法会議における議論が停滞していたため、過去1年議論が行われていなかったが、本年3月に条約案が提示されたことに伴い、5月27日に議論が再開されたところ。
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(3) |
その他
MGM Inc., et al., v. Grokster, Ltd., et al.(平成15年1月)
P2Pのファイル交換ソフトである“Kazaa”をインターネット上で頒布していたバヌアツの法人であるシャーマン社等を、米国のMGM等の著作権団体がカリフォルニア連邦地裁に著作権侵害訴訟を提起したケース。被告のシャーマン社は、カリフォルニア連邦地裁には管轄権がないとして争ったが、シャーマン社は, “Kazaa”の頒布が相当数のカリフォルニア住民に対してなされており、それにより広告収入を得ていたこと、 “Kazaa”の頒布により原告の著作権侵害に寄与し、またその多くがカリフォルニア州での被害になることを知っていたこと、また、 “Kazaa”の頒布と今回の訴訟提起の間には重大な関連があること等の理由によりカリフォルニア連邦地裁の管轄権を是認する判決が出されている。 |