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資料7−1

「放送機関に関する新条約」の検討状況について


1. 検討の経緯
   「放送機関に関する新条約」については、1998年以降、WIPO著作権等常設委員会(SCCR)の場で検討が進められている。我が国は、2001年5月に開催された第5回委員会において条約形式の提案を行っている。その後、EC及び米国も条約形式の提案を、それぞれ2001年11月開催の第6回委員会、2002年開催11月開催の第8回委員会において提出しており、これにより主要国からの提案が出揃うこととなった。

2. 著作権等常設委員会における主な論点
1) インターネット放送の取扱い
ローマ条約の保護の対象であった(伝統的)放送に加え、インターネット放送を新たに保護の対象に加えるべきか否か、が論点となっている。

日本 今回条約の保護の対象とはせず、交渉とは切り離して別途WIPOで検討を実施。
米国 保護の対象とする(定義、付与する権利については更に検討)。
EC 保護の対象とする(定義、付与する権利については更に検討)。
放送事業者 今回条約の保護の対象とはせず、交渉とは切り離して別途WIPOで検討を実施。

(個別の論点)
●   保護の対象とするインターネット放送についてはリアルタイムストリーミングに限定すべきか(インタラクティブ性を除外するか否か。)
個人の行うインターネット放送まで対象にすべきか。
レコード製作者等他の権利者への影響。(放送機関が享受している特権をインターネット放送機関にも付与すべきか。)

2) 放送前信号の取扱
スポーツ中継におけるスタジアムからテレビ局間の放送信号の送信等のポイントツーポイント送信について、新たに権利を付与するか否か、が論点となっている。

日本 国際的な議論を踏まえて検討。
米国 適切な保護を付与(具体的な保護の方法については各国に一任)。
EC 適切な保護を付与(具体的な保護の方法については各国に一任)。
放送事業者 排他的許諾権による保護。

(個別の論点)
●    保護すべき「放送前信号」の範囲
排他的許諾権による保護か、それ以外の方法による保護(通信法制等による保護)も認めるか。

(参考)国内における議論(平成13年12月文化審議会著作権分科会審議経過の概要)
   放送前信号において送信されるものについても放送事業者の権利の対象としてほしいとの要望がある。・・・従来「放送行為」を対象として付与されていた放送事業者の著作隣接権の範囲をまだ放送されていないものまで拡大することは、放送事業者の著作隣接権の本質そのものの重大な変更をもたらすため、慎重な検討が必要であるとの意見や、「放送前送信」の範囲をどのように画定するかさらに検討すべきとの意見が出されている。

3) 暗号解除行為の規制
スクランブル放送等の暗号を無許諾で解除することについて、新たに規定を設けるべきか否か、が論点となっている。

日本 国際的な議論を踏まえて検討。
米国 「技術的手段に関する義務」において当該行為についての適切な救済策を規定する。(「暗号解除権」等の排他的許諾権は付与しない。)
EC 不要。
放送事業者 排他的許諾権(暗号解除権)の付与による保護。

(個別の論点)
●    排他的許諾権(暗号解除権)を付与し、「技術的手段に関する義務」のもとで保護するのか、権利を付与することなく特例的に「技術的手段に関する義務」のもとで保護するのか。
排他的許諾権(暗号解除権)を付与することについての著作者等他の権利者への影響。

(参考)国内における議論(平成13年12月文化審議会著作権分科会審議経過の概要)
   “・・・・暗号化された放送について暗号を解除して「視聴」する行為を技術的保護手段の回避として規制の対象として欲しいとの要望がある。
・・・・・現行の条約や著作権法における技術的保護手段の回避に対する規制は、既に法定されている権利を守るために導入されたものであり、権利の対象でない放送の視聴行為に係る暗号等についても規制の対象とすることについては、著作物等一般の知覚行為等との関係も含め、慎重に検討する必要がある等の意見が出されている。”

3.各国間で概ね合意が得られている事項
1) 有線放送事業者の取扱
保護の受益者として、「有線放送事業者」を新たに追加することについては概ねの合意が得られている。

2) 権利のインターネット対応
放送事業者の権利として、新たに利用可能化権、技術的手段に関する義務、権利管理情報に関する義務を規定することについては概ねの合意が得られている。

3) 放送の2次利用についての権利付与
ローマ条約では、付与されていない「放送」の固定物を活用した2次利用(再放送、公衆への伝達、利用可能化等)について新たに権利を付与すべきことについては概ねの合意が得られている。

4) 遡及効
ベルヌ条約18条を準用することにより、遡及的保護を行うことについては概ねの合意が得られている。

4.今後の考えられるスケジュール

平成15年6月23日〜27日         第9回SCCR
                        ↓
         ○ 国内における検討
                        ↓
平成15年9月 第38回WIPO一般総会(外交会議等今後の日程の確定)
                        ↓
         ○ 国内における検討
                        ↓
平成15年11月   第10回SCCR(我が国の基本的立場を説明)
                        ↓
         ○ 我が国の交渉に臨む対処方針の確定
                        ↓
平成16年最初の四半期   外交会議の準備会合
                        ↓
平成16年 外交会議の開催(?)

         
:外交日程

 

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