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資料2

「視聴覚的実演の保護」についてのWIPOにおける検討状況について

1. 経緯
1996年12月に開催されたWIPOの外交会議において、WIPO著作権条約、WIPO実演・レコード条約が採択されたが、WPPTは音の実演を対象とし、視聴覚的実演の保護が含まれていなかった。このため、外交会議では、1998年までに視聴覚的実演に関する議定書を作成することを求める決議が採択され、以降WIPO著作権等常設委員会で検討が行われていた。2000年12月には、視聴覚的実演の保護に関する外交会議が開催されたものの、実質規定全20条中19の条文について暫定合意ができたものの一つの条項について合意が得られず、結果として条約の採択が見送られている。

2. 第37回WIPO総会における議論
平成14年9月に開催された第37回WIPO総会においては、我が国より、事務局より提案のあった関係者による非公式会合の開催について、これを支持する旨の発言を行った。また、著作者、レコード製作者等他の権利者の権利が適切に更新されていることを踏まえると視聴覚的実演家の権利のインターネット対応を早急に行う必要があること、今後の検討を進めるにあたっては、外交会議において既に合意された事項についての議論を再開しないことが重要である旨併せて指摘した。

3. 第37回WIPO総会における結論
WIPO事務局と地域コーディネーターによる「非公式会合」の開催に向けての事前折衝を来年度第1四半期に実施
アドホックな非公式会合を来年度前半に開催
次回総会においても議論継続

4. 主な論点
1) 第12条  "Transfer"  (移転)

「準拠法選択のルール」の適用対象
「契約」(EC)
「契約」及び「法令の実施による権利の移転」(米国)

「準拠法」の適用
「強行法規」>>ルールにより選択された法令(EC)
「強行法規」<<ルールにより選択された法令(米国)

2) 第4条    "National Treatment"  (内国民待遇)
「録音録画補償金等」の取扱

外交会議における議長宣言 [1]
「締約国は、他の締約国の国民に対し報酬の分配が行われない限り、その国の国民の実演に関して報酬の徴収を認めるものではない。」

EC提出文書 [2]
「第1委員会議長によってなされた第4条に関連する宣言は、一方的な性質のものであり、第1委員会のメンバー、本条約に将来加入する締約国を一切拘束するものではない。」

5. 今後の見込み
2003年第1四半期  事務局と地域コーディネーターの協議
2003年前半非公式会合
2003年WIPO総会


[1] IAVP/DC/37  パラ423
[2] IAVP/DC/39



「視聴覚的実演の保護に関する外交会議」において合意されなかった事項(第12条実演家の権利の移転)について


1.当初段階における米国とEUの立場

  米国においては、ハリウッド映画に象徴される映画産業が重要な輸出産業になっており、映画が国際的に流通する際のビジネスの予見可能性及び取引の安定性を高めることを重視し、当初、権利移転に関する統一ルールを策定することを主張した。しかしながら、EUにおいては、加盟国内に移転をしない実演家の権利を設定している国が存在しており、このような国への配慮から権利移転のルール化に反対の立場であった。
  このため、両者の妥協を図るため、権利移転の統一ルールを策定することに代えて、「準拠法選択のルール」の統一を行うことが検討されることとなった。


2.「準拠法選択のルール」の検討における米国とEUの立場

  「準拠法選択のルール」の検討にあたっても米国とEU意見は、(a)検討の対象とする「準拠法」のタイプ(b)「準拠法」の適用の2点について立場が異なり、結果として合意には至らず、最終的には、EUは米国のルールが域内において適用されることを受け入れず、「準拠法の選択ルール」を条文に一切規定しないとの立場に後戻りすることとなった。

(a) 「準拠法選択のルール」の適用対象のタイプ
  EUは、検討の対象とする「準拠法」のタイプについて、実演家と製作者の合意(agreement)による権利の移転(いわゆる「契約タイプ」)についてのみ準拠法選択ルールの統一を主張したが、これに対して米国は、「契約タイプ」に加えて「法令の実施による権利の移転」1(「法例の実施タイプ」)についての準拠法選択ルールの統一を主張した。米国においては、国内著作権法において映画を「職務著作物」として取扱い、映画製作者が著作権を構成する全ての権利を有する旨を規定している。米国の主張の背景には、このような国内法の規定を映画の輸出先国においても適用できるようにしたい意図があると考えられる。

(b) 「準拠法」の適用
  EUは、準拠法選択ルールに基づき選択された「契約」の準拠法が利用地における強行法規をオーバーライドできないことを主張した。例えば、国内法で実演家の権利の譲渡不可や放棄不可等の強行法規が存在する場合、これを害する契約は無効であることを明確にするものであり、係る強行法規を有する国が加盟国に存在することに配慮したものである。これに対して米国は、映画製作者がビジネスを行う上での予見可能性を確保するために、「契約」(及び「法例の実施による権利の移転」)の準拠法が強行法規をオーバーライドさせることを主張した。



EU修正提案(IAVP/DC/12)

移転
  締約国は、本条約に規定する排他的許諾権が、当該視聴覚固定物に関し、実演家から当該固定物の製作者へ移転することを定めることができる。

合意による移転の準拠法に関する合意声明
  国際的義務を害さない限りにおいて、また、保護が要求される国の法令における、権利の譲渡不可及び権利の放棄不可を含む、いかなる強行法規をも害することなく、本条や国より与えられた排他的許諾権の合意による移転は、両当事者により選択された国の法例、又は、その契約に適用される準拠法が選択されていない限りにおいて、その契約と最も密接に関連した国の法令の定めるところによるという理解を確認する。

米国修正提案(IAVP/DC/22)

排他的許諾権の行使の準拠法
(1) 準拠法に関し、実演家による反対の合意がない限り、排他的許諾権を行使する権原(entitlement)の付与は、当該視聴覚固定物に最も密接に関係する国の法令に定めるところによる
(2) 「当該視聴覚固定物に最も密接に関係する国」を決定するに当たって考慮されうる要素は、固定物の製作者又はその製作者を所有若しくは管理する自然人若しくは法人が主たる事務所又は常居所を有する締約国、実演家の過半数が国民である締約国、及び、撮影の大部分が行われている締約国を含む。


1 実演家の権利の移転についての規定を有している国内法が存在する場合、その法律についても準拠法選択ルールの適用対象とするもの。



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DIPLOMATIC CONFERENCE
ON THE PROTECTION OF AUDIOVISUAL PERFORMANCES


Geneva, December 7 to 20, 2000



DECLARATION CONCERNING ARTICLE 4

made by the European Community and its member States

The European Community and its member States have taken note of the declaration of the Chairman of Main Committee I regarding Article 4.

In reaction to this, the European Community and its member States submit the following declaration for inclusion in the proceedings of the Conference:

"The declaration made by the Chairman of Main Committee I in relation to Article 4 is of a unilateral nature and in no way implies a commitment for the members of Main Committee I or for the future Contracting Parties to the Treaty."


[End of document]



WIPO視聴覚的実演に関する条約(仮称)について


(1) 実演家の人格権の創設
氏名表示権(実演の実演家であることを主張する権利)

同一性保持権(実演の改変等で、自己の声望を害するものに対して異議を申し立てる権利)



(2) 実演家の財産的権利の充実

固定されていない実演に係る固定権、放送・公衆への伝達権

複製権

譲渡権

商業的貸与権

利用可能にする権利(アップロードに関する権利)

放送・公衆への伝達権(排他的許諾権又は報酬請求権。ただし、全部又は一部留保可能)


(3) 技術的保護手段及び権利管理情報に関する法的保護

技術的保護手段の回避、権利管理情報の除去又は改変を防ぐための効果的法的救済


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