四 学校給食の充実

食事内容等の改善

 学校給食は、児童生徒の心身の健全な発達に資し、国民の食生活の改善に寄与することを目的として実施されており、昭和四十七年五月現在、幼児・児童・生徒数で小学校九八・七%、中学校八三・四%、特殊教育諸学校七九・四%、夜間定時制高等学校九一・四%の実施率であったが、平成二年五月には小学校九九・四%、中学校八二・五%、特殊教育諸学校八三・八%、夜間定時制高等学校八二・六%となっている。なお、中学校と夜間定時制高等学校で実施率が低下しているが、これは中学校ではミルク給食が、夜間定時制高等学校では補食給食が大幅に減少したためであり、完全給食は中学校では五〇・六%から六一・三%へ、夜間定時制高等学校では四五・五%から五九・二%へとそれぞれ大幅に増加している。

 学校給食の食事内容については、昭和四十六年四月の体育局長通知により示していたが、五十九年の厚生省の「日本人の栄養所要量」の第三次改訂を踏まえ、文部省においても、六十一年三月、学校給食における平均所要栄養量の基準の見直しを行い、一日の栄養所要量に対する学校給食による平均所要栄養量の比率を若干減らす一方、成長期における摂取の必要性等から、新たに鉄の平均所要栄養量の基準を定めることとした。なお、五十年に問題となったリジンについては、必須アミノ酸の一つであり、しかも人間の体内では作ることのできない重要な栄養素であることから、一部地域を除いて全国的に学校給食用小麦粉に添加していたが、一部に安全性を疑問視する向きがあったので、現場での混乱を避けるため、五十年八月、体育局長通知を発し、添加するか否かは都道府県の自主的判断にゆだねることとした。

 さらに、食事内容の多様化を図り、栄養に配慮した米飯の正しい食習慣を身に付けさせる見地から、五十一年に米飯給食を導入した。米飯給食は、その後順調に増加しており、五十一年五月現在における平均実施回数は週○・六回であったが、平成二年五月には週二・五回に達している。また、学校給食をより豊かにするため、近年、各学校では郷土食や姉妹都市の食事等を研究して給食に供したり、バイキング給食、複数献立や招待給食などの様々な取組がなされるようになった。なお、社団法人全国学校栄養士協議会は、昭和五十七年以降、郷土食等の献立集を作成し、食事内容の改善を図っている。

食事環境と物資、運営合理化

 昭和六十二年五月に実施した使用食器の材質の調査によると、小・中学校合わせてアルマイト五四・八%、ポリプロピレン四〇・九%、メラミン一七・四%、ステンレス一三・七%等となっているが、陶磁器の使用校が○・四%あることが注目される。また、米飯給食の導入もあり、はし使用校が増え、五十六年十月、小・中学校合わせて六九・○%であったのが、六十二年五月には九〇・三%の学校で使用されるようになった。食堂(空き教室を改造したランチルームを含む)を保有している学校は、五十四年には小学校三・四%、中学校二・○%であったが、六十二年にはそれぞれ一三・六%、七・二%とかなりの伸びを示している。なお、文部省では、四十七年度から食堂設置に対し国庫補助を開始するとともに、六十三年度からはランチルームへの国庫補助を開始した。

 学校給食で使用される物資は、献立の多様化等に伴い、年々その種類は多岐にわたってきているが、学校現場等における物資の購入状況を見ると、日本体育・学校健康センターから供給されるもの、都道府県学校給食会から供給されるもの、直接業者等から購入するものに区分される。このうち、日本体育・学校健康センターは、学校給食の基幹的な物資(文部大臣が取り扱うことを指定した物資)と一般物資(文部大臣の承認を得て取り扱っている物資)を取り扱っている。基幹的な物資は、当初「脱脂粉乳」のみであったが、その後「小麦粉および小麦粉製品」、「米および米加工品」、「牛肉および牛肉製品」が加わり、四品目となっている。一方、一般物資は、従来から学校現場の需要にこたえながら取り扱ってきたが、四十八年末から四十九年にかけての第一次石油危機により物価が騰貴したため、安定的供給の観点から取扱い品目を増やし、最も多い五十二年度には二八品目となった。しかし、物価の安定化等を背景に、民間活力導入の一環として、五十八年三月の臨時行政調査会の第五次答申において「段階的に縮小」することが求められたこと等により、逐次削減し、平成二年度現在は「チーズ」「砂糖」等十品目を取り扱っている。なお、学校給食用の物資のうち、小麦粉については、低廉かつ安定的供給を、また牛乳については、酪農振興等を図る観点から、それぞれ国庫補助を行ってきたが、学校給食用米穀及びみかん果汁についても農業振興等の観点から、それぞれ昭和五十一年度及び五十三年度から農林水産省が値引き措置及び国庫補助を開始した。この結果、国庫補助額(米穀の値引き措置に必要な経費を含む。)は、平成三年度には約二八○億円となっている。

 国、地方を通じての厳しい財政状況を改善するため、昭和五十六年七月、臨時行政調査会から第一次答申が出されたが、その中で学校給食の運営の合理化についても言及された。この答申等を踏まえ、六十年一月の体育局長通知により、学校給食の質の低下を招くことのないよう十分配慮しつつ、地域の実情等に応じ、パートタイム職員の活用、共同調理場方式、民間委託等の方法により、人件費等の経常経費の適正化を図ることを求めた。

学校栄養職員の拡充

 学校栄養職員は、昭和四十九年に学校給食法、公立義務教育諸学校の学級編制及び教職員定数の標準に関する法律及び市町村立学校職員給与負担法に位置付けられ、県費負担教職員となった。その後、第四次定数改善計画及び第五次定数改善計画で改善が図られ、現在、児童生徒数七〇〇人以上の学校に一人、対象児童生徒数三、○〇一人以上の共同調理場に二人、三、○○○人以下に一人の配置を行っている。また、学校栄養職員の職務内容を明確化するため、六十一年の体育局長通知「学校栄養職員の職務内容について」で、学校給食に関する基本計画への参画や栄養管理、学校給食指導、衛生管理等を職務内容として示した。なお、平成二年度から初任者研修を実施しているところである。

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