三 学校安全の充実

安全教育と安全管理

 学校安全は、安全な生活に必要な知識や能力の育成を目指して特別活動や各教科、道徳など学校の教育活動全体を通して行う安全教育と、施設・設備の安全点検などの安全管理とに分けられる。

 このうち、安全教育については、昭和四十年代前半には、交通事故の急増を背景に交通安全を中心としたものであったが、学校生活における安全の確保の重要性にかんがみ、四十七年三月には小学校安全指導の手引を、五十年七月には中学校安全指導の手引を作成し、生活安全と交通安全にわたり指導の充実を図った。なお、これらの手引については、それぞれ五十八年、五十九年に改訂版を刊行した。また、特殊法人日本学校安全会(六十一年三月、日本体育・学校健康センターに改組)では、三十九年度から機関紙「学校安全」等を出版しているが、四十七年度からは更に災害事例集を刊行するなど、学校安全の普及充実を図っている。

 一方、安全管理については、五十三年、日本学校安全会の災害共済給付制度の改革の一環として、学校保健法に学校における安全管理の根拠規定を置き、学校安全計画の策定とその実施、安全点検と事後措置、日常における環境の安全について規定を設けた。

交通安全教育の充実

 モータリゼーションが一層進展する中、児童生徒を交通事故から守ることは、重要な課題である。道路交通事故死者数は、昭和五十年代にはいったん減少したが、近年増加傾向に転じ、年間一万人を突破する状態が続いている。このような中にあって、小・中学校の児童生徒の死者数はおおむね減少傾向にあり、平成二年の小学生の死者は一八三人、中学生は八八人となっている。しかし、高校生については五四〇人と依然として多く、うち七〇・九%が二輪車乗車中である。

 高校生の二輪車乗車中の事故はかなり以前から問題とされており、そのため「免許を取らない」、「二輪車を買わない」、「二輪車に乗らない」のいわゆる三ない運動が、昭和四十年代半ばごろから地域や学校において行われてきた。文部省においては、このような三ない運動の実施の有無にかかわらず、各高等学校において計画的に交通安全教育を行うよう、各種研修会等を通じて指導してきており、近年、地域や学校においては、その実情に応じ、二輪車事故防止のための総合的な方策が検討されるようになってきた。このような中で、文部省では、二輪車に乗車する高校生に対する交通安全教育の効果的な在り方を実技指導を含めて検討する「高校生の二輪車運転に関する指導の在り方についての調査研究」を平成二年度から開始した。

災害共済給付の改善

 学校の管理下における児童生徒の災害については、保護者、学校の設置者及び国の互助共済として、昭和三十五年に日本学校安全会による災害共済給付制度が設けられ、逐次給付水準の改善がなされてきたが、学校事故に関連する訴訟が増加し、学校教育活動が消極的になる傾向が見られたことや学校関係者からの給付水準改善の強い要望などを背景に、五十二年、衆議院文教委員会に「学校災害に関する小委員会」が設けられ、学校災害の救済制度の充実について審議がなされた。文部省では、小委員長の報告の趣旨を踏まえ、翌五十三年三月、日本学校安全会法を改正し、災害共済給付制度の抜本的改善を行った。その内容は、死亡見舞金及び廃疾見舞金(五十七年から障害見舞金と改称)の大幅引上げ(死亡見舞金三〇〇万円から一、二〇〇万円、廃疾見舞金の最高額四〇〇万円から一、五〇〇万円)、給付経費への国庫補助金の導入、学校の設置者の損害賠償責任の軽減のための免責の特約制度の新設等である。なお、給付水準は、その後も数次にわたり改善しており、平成四年度から、死亡見舞金は一、七〇〇万円、障害見舞金の最高額は二、二九〇万円となった。

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