三 学校給食の振興

学校給食の普及と指導

 昭和二十九年六月、長年の要望であった「学校給食法」が制定され、児童の心身の健全な発達と国民の食生活の改善に寄与する学校給食に明確な法的根拠が与えられた。すなわち、同法によって学校給食の目標、経費の負担区分、学校給食の開設に必要な施設・設備に対する国の補助等が明文化され、学校給食実施の基礎と将来への推進の土台がつくられた。三十一年三月同法の一部改正によって学校給食は、小学校から義務教育諸学校全域に拡大された。さらに、同年六月「夜間課程を置く高等学校における学校給食に関する法律」が、翌年五月「盲学校、聾学校及び養護学校の幼稚部及び高等部における学校給食に関する法律」がそれぞれ制定され、学校給食の範囲の拡大が図られた。なお、学校給食法の一部改正によって準要保護児童・生徒の給食費補助の規定も設けられた。

 このようにして、実施人員も三十年七〇〇万人から三十三年には九〇〇万人へ増加した。しかし、ある程度普及した段階に達した三十五、六年ごろから、やや伸び悩みの状況を示すようになり、学校給食制度そのものの再検討が必要となった。そこで、三十六年七月「学校給食制度調査会」を設け、国の栄養・食糧政策との関連において、学校給食制度のあり方を調査・審議し、同年八月末文部大臣に答申した。この答申では、小学校は五年、中学校は十年の年次計画で学校給食の完全実施を図るべきであるとしている。

 次いで、三十六年度から夜間定時制高等学校生徒に対する夜食を設置者が無償給与するための経費に対する国の補助、三十八年度から脱脂粉乳に対する国の補助、四十一年度から三級以上の高度へき地学校児童・生徒のパン・ミルク給食費の全額国庫補助などの措置によって、一段と学校給食の普及が推進され、四十六年五月一日現在の実施人員一、三八五万人、実施率八五%(義務教育諸学校九三%)に達している。

 次に、学校給食の指導については、三十三年に改訂された小・中学校の学習指導要領において、学校給食ははじめて学校行事等の領域に含められ、教育課程における位置づけが明らかにされた。さらに、四十三年および四十四年に改訂された小・中学校学習指導要領においては、学校給食は特別活動の中の「学級指導」の内容の一つとなり、食事の正しいあり方の体得、好ましい人間関係の育成などによって心身の健全な発達に資する指導方針が明示された。なお、小学校については、四十六年二月「学校給食指導の手びき」を作成し、「楽しい給食」を目ざしての指導内容と方法を示唆した。

学校給食の充実

 学校給食関係法に基づいて学校給食の適正な実施を図るため「学校給食基準」および「夜間学校給食基準」が定められ、その中には給食の実施回数、食物の栄養内容、施設・設備等の具体的基準が規定されている。時代の進展に伴い、これらの基準も数次にわたって改正され、食事内容や施設・設備の改善・充実が図られている。

 まず、学校給食の所要栄養量の基準は、昭和三十七年、四十六年と改正され、これに基づいて食事内容の充実・向上が図られている。また、この所要栄養量の基準に基づいて献立の作成や調理の指導に当たる学校栄養職員の設置費補助が三十九年度から実施され、その対象人員は四十七年度三、四三八人に達している。

 次に、学校給食用物資についてみると、小麦粉に対する補助は、昭和二十七年度以降、この補助金を食糧管理特別会計へ繰り入れることによって補助金相当額だけ安い価格で食糧庁から供給されるしくみをとっていたが、四十六年度以降は、日本学校給食会に対する補助に切り替え、同会が補助金相当額だけ安い価格で供給するように改正された。また、三十八年度から脱脂粉乳に対する国庫補助が実施されるようになったことは前述のとおりである。一方、学校給食用国内産牛乳に対する国庫補助は三十二年度から実施され、三十九年度からは酪農振興の趣旨から通年的に供給されるようになり、逐次脱脂粉乳は国内産牛乳に切り替えられ、四十七年度には牛乳九七、脱脂粉乳三の割合になっている。なお、四十五、六年度においては国内産の米利用の給食の実験研究も進められた。

 また、学校給食用物質の需給体制についてみると、三十年八月「日本学校給食会法」が制定され、学校給食用物資の適正・円滑な供給と学校給食の普及・充実の事業を行なう特殊法人日本学校給食会が設立され、主として脱脂粉乳の需給業務を中心に運営されてきたが、前述のように四十六年度からは小麦粉の業務も行なうようになった。したがって、小麦粉と脱脂粉乳については、日本学校給食会と都道府県学校給食会の業務として円滑な需給体制が確立している。しかし、その他の物資(牛乳を除く。)については必ずしも円滑な総合的な需給体制は整備されていない。そこで、四十五年二月「義務教育諸学校等における学校給食の改善充実方策について」の保健体育審議会の答申においては、今後の食品流通の近代化に呼応して、良質な物資を計画的・合理的かつ経済的に確保するための総合的・一元的な需給体制を整備し、食事内容の向上と給食費の軽減を図るため、国は必要な指導援助を積極的に講ずることの必要を指摘している。この趣旨に基づき、市町村段階における共同購入、産地直接取引を推進するよう指導し、また、四十五年度に「学校給食用物資の流通に関する調査」を実施するとともに、四十六年度から、都道府県学校給食会等が行なう安定価格での物資供給を目的とする「調整基金」の設置や、物資の供給を広く行なうほか、物資流通情報の提供、食品検査等の品質管理、調理技術指導等の諸活動を総合的に実施する「都道府県学校給食センター」の整備に対する補助を実施するなど、国、都道府県、市町村を通じた一元的な学校給食用物資の需給体制の整備を推進することとなった。また、これに先だち、四十二年度から学校給食用物資低温流通機構(コールドチェーン)設置に対する国の補助も実施されている。

 なお、学校給食の施設・設備の整備は食事内容の充実・向上と完全給食の普及の推進に役だっているが、三十九年度からは共同調理場の整理費補助が行なわれ、その数は四十六年五月現在一、五六一か所に達している。さらに、四十七年度から小・中学校の老朽給食施設・設備の更新、既設施設の設備の改善、炊飯施設・設備の設置に対しても国の補助が行なわれるようになり、施設・設備の改善・充実が図られている。

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