一 学校体育

学校体育の充実

 昭和二十八年以降、数次にわたり、学習指導要領の改訂が行なわれたが、体育科および保健体育科についても必要な改善・充実が図られた。

 まず、二十八年十一月、学習指導要領一般編(二十六年版)に基づいた小学校学習指導要領体育科編(試案)が編成された。この指導要領では、体育の目標を発達と生活の両面からとらえ、学習内容を運動技能、協力的態度、施設用具の活用、運動に関連した健康安全、進歩の評価、知識理解の六項目について示している。この考え方は、以後の学習指導要領においても基本的には受け継がれている。次いで、三十一年一月、高等学校学習指導要領保健体育科編によって、高等学校の保健体育科の内容が、また、同年三月、「中学校保健体育科のうち保健の学習の目標および内容について」の通達によって中学校の保健の目標・内容が改められた。三十三年十月、小学校および中学校の学習指導要領が、三十五年十月高等学校学習指導要領が、それぞれ全面改訂され、告示された。これらの改訂では、小学校・中学校および高等学校の体育および保健体育の目標・内容の一貫性が図られ、小・中学校では、はじめて学年別に内容が明示された。また、小学校第五、第六学年の内容に保健の知識が加えられた。

 さらに、四十三年七月小学校学習指導要領が、四十四年四月中学校学習指導要領が、四十五年十月高等学校学習指導要領がそれぞれ全面改訂され、告示された。これらの新しい学習指導要領では、総則に「体育」の項が設けられ、望ましい人間形成のうえから調和と統一のある教育課程の実現を図るため、学校の教育活動全体を通じて体育に関する指導の充実を図ることの必要が強調された。また、体育科および保健体育科の改訂の要点は、1)目標において健康の増進と体力の向上を明示したこと、2)体育の内容では、従前の徒手体操の内容に歩・走・跳・投・捕等の全身的運動を加えた「体操」の領域を設け、充実した体力づくりができるよう配慮したこと、3)中学校・高等学校の格技の指導時数を増加したこと、4)保健の内容は、小学校では中学校への発展を考え系統化し、中学校、高等学校では生活との関連を図るとともに公害、性、安全等現代生活における健康に関する問題を処理できるよう内容の現代化を図ったことなどである。

 また、小学校、中学校および高等学校の体育担当教員の実技指導力を高めるため、三十四年から体育実技指導者講習会が毎年中央と各都道府県で開催されている。このほか、格技・水泳等の指導者講習会も毎年開催されている。さらに、四十年から教員のスポーツ指導力向上のため教員養成大学の競技会開催費の一部を補助している。次に、学校における体育館・水泳プール等の体育施設は近年著しく整備されてきている。(表74参照)特に水泳プールは全国の小・中学校および高等学校で二十三年にはわずか一、六九一校に設置されているにすぎなかったが、三十六年から国の積極的助成に伴い急速に整備が促進され、四十六年には一万四、四八九か所に達している。また、夜間定時制高等学校屋外運動場照明施設、高等学校柔剣道場の整備についても国の助成が行なわれている。

表74 体育館・水泳プールの設置率(昭和46年)

表74 体育館・水泳プールの設置率(昭和46年)

 二十四年、大学に正課体育が取り入れられたが、そのあり方を再検討するため、二十九年、大学基準協会に「一般体育研究委員会」が設置され、三十四年にその報告「大学における保健体育のあり方」が発表された。この間三十一年に授業科目の名称が「一般体育科目」から「保健体育科目」に改められた。一方、二十七年大学体育関係者の自主的研究連絡組織として大学体育協議会(現在の全国大学保健体育協議会)が設けられ、大学体育の改善に貢献してきている。さらに、四十六年度から大学体育について抜本的な改善充実を図るため大学体育指導者研修会を実施している。

対外競技

 昭和二十三年の「学徒の対外試合について」の通牒による対外競技の基準は、時代の推移に伴い、数次の改訂が行なわれ、今日に至っている。

 まず、二十九年、水泳・フィギュアスケート等の競技では中学生で世界的水準に達する者が多いので、その特殊性を考慮し、個人競技で特にすぐれた中学生を全日本選手権大会や国際競技に参加できるように基準を改めた。また、三十二年、高等学校の対外競技会は、伝統的に新聞社等の協力を得て始められた大会が多いため、教育関係団体の主体性をそこなわない限り教育関係以外の団体、たとえば新聞社等を協力者として主催者に加えることができるように基準を改正した。さらに、三十六年にはオリンピック東京大会をひかえた選手強化対策と水泳競技の特殊性にかんがみ、一定の水準に達した者を選抜して行なう中学生だけの水泳の全国大会の開催を認めることとした。

 オリンピック東京大会後、学校以外の地域のスポーツ活動が活発になり、また、初めて基準が制定された当時に比べ児童・生徒の健康や体力が向上し、交通事情も著しく変化していることなどから基準改訂の要望が高まってきたので、四十二年七月保健体育審議会に基準の改善について諮問し、四十四年七月同審議会の答申を得ておおよそ次のように基準を改めた。すなわち、今後は学校教育活動以外の体育・スポーツを活発にし、その適正な実施を図るという見地から、児童・生徒の参加する競技会を「学校教育活動としての対外競技」と「学校教育活動以外の運動競技会」とに分け、前者については、ほぼ従前どおりの基準とし、後者については、国は一般的留意事項を定め、これに基づいて、関係者が協議し、主催者、規模、経費、参加回数等の具体的基準を設けて運営実施するようにした。この改正により、青少年運動競技中央連絡協議会が関係団体の代表者によって組織され、同協議会で「学校教育活動外の運動競技会の基準」が定められ、特にすぐれた小・中学生を選抜して行なう全国大会が同協議会の承認を得て開催されることとなった。

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