二 社会教育指導者の養成

社会教育主事の設置と養成・研修

 昭和三十四年の社会教育法改正によって、市町村の社会教育主事は義務設置とされ、経過規定によって人口段階別に猶予期間が設けられたが、三十八年三月で、人口一万人未満の町村を除いては、猶予期間が満了した。社会教育主事は、都道府県および市町村にあって社会教育行政推進の中心的存在であることから、文部省はその設置を勧奨してきたが、四十六年現在、市町村での設置率はまだ七三%にすぎない。設置人員数も一市町村に一人というところが多く、その増加が望まれている。その設置状況の推移は表69のとおりである。

表69 社会教育主事の年度別設置数

表69 社会主義の年度別設置数

 社会教育主事の専門性を確保するため、その任用資格は社会教育法に定められ、大学で社会教育に関する所定の単位を修得した者以外は、社会教育主事講習を修了しなければならないこととなっている。この講習は、二十六年度に第一回が実施されて以来、文部大臣の委嘱する全国各地の大学で毎年実施されているが、四十六年度までに修了者数は一万三、〇〇〇人を数えている。

 市町村で、財政上の問題あるいは適格者が得にくいという事情から、社会教育主事の設置が困難な場合、府県がその市町村に社会教育主事を派遣するいわゆる派遣社会教育主事の方式が、四十一、二年度ごろから若干の府県で始められ、四十六年度には一二府県に及んだ。この場合、派遣職員はほとんどが学校教職員であるが、このような方式をくふうすることによって、学校教育と社会教育との連携を図ることができるのではないかと、四十六年の社会教育審議会答申では注目している。

 三十四年の社会教育法の改正は、社会教育主事の研修を任命権者が行なうほか、文部大臣および都道府県教育委員会が行なうものとしたが、このころから全国的にも都道府県単位にも活発に研修が行なわれるようになった。さらに、社会教育主事以外の社会教育指導者についても、社会教育の内容の多様化、高度化に応じて、その養成と研修の必要性はいよいよ高まり、各分野ごとに、講習会、研究協議会、大会などの名称で、養成・研修が盛んに行なわれるようになった。

国立社会教育研修所の創設

 社会教育指導者について、その資質の向上が要請されるに至ったことは前に述べたが、短期の研修ではすでにじゅうぶんでなく、文部省では昭和三十七年度から二週間にわたる社会教育主事長期研修の実施に踏み切った。しかし、時代の進展に即した社会教育研修事業を実施するためには、それに専念する独立の機関を設置して、専門的・計画的にこれを行なう必要があるという視点から、四十年七月、国立社会教育研修所を設置することとなった。この設置により、社会教育主事長期研修、公民館主事研修、青少年団体指導者研修など、文部省がこれまで主催してきた研修事業も同研修所に移されたが、同研修所はその後、研修対象の範囲の拡大、研修内容の焦点化、対象別研修から内容的研修への発展など、研修体兎を築き上げるための努力を重ねてきている。団体指導者の研修を除いては、ほとんどが二週間ないし一か月の長期研修である。なお、東京上野公園内の旧図書館職員養成所の施設を転用して発足した同研修所は、四十六年度に全面改築をみ、四十七年度からは、拡充された施設で新しい構想の下に踏み出そうとしている。

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