一 社会教育行政の進展

社会教育法の改正

 昭和二十四年に制定された社会教育法は、戦後の社会教育の振興に大きな役割を果たしてきたが、その後の社会の変化、社会教育の進展に伴い、社会教育関係者の間にも法改正の要望が高まり、三十四年四月、社会教育法の一部改正が行なわれるに至った。改正の要点はおよそ四点で、第一は、社会教育主事に関する規定の整備であり、すでに都道府県では必置とされている社会教育主事を市町村でも義務設置とするとともに、社会教育主事講習実施者の範囲の拡大を図った。第二は、社会教育関係団体に対する補助金の支出禁止規定の削除であり、社会教育関係団体の活動の助長に資する道をひらいた。第三は、公民館の基準設定等に関する規定の整備であり、第四は、社会教育委員の職務の追加などであった。この法案が国会に提出された時、これらの各点が論議を呼んだ。なかでも、社会教育関係団体への補助金については、憲法第八十九条との関連で問題とされたが、社会教育関係団体に対する「教育の事業」以外の事業への補助金は憲法の禁ずるところではないとされた。なお、法案は一部修正をみ、団体への補助金は、その支出に当たって、国では社会教育審議会の、地方公共団体では社会教育委員の会議の意見をきくことによってその適正を期することとなった。

社会教育審議会の答申

 昭和三十年代の後半から、わが国では工業化、都市化の進行が著しく、出生率の低下、平均寿命の伸張、核家族の増加や学歴水準の向上、マスコミの発達などの諸条件と相まって、社会構造は急速に変化し、国民の日常生活にも大きな変貌が起こった。他方、社会の進展に伴って、国民の生涯教育への欲求が高まるとともに、経済的・時間的余裕が増大し、新しいコミュニケーションの技術が開発されて、社会教育を振興する条件はしだいに熟してきた。こうした情勢の中で、文部大臣は社会教育審議会に対し、四十三年七月「急激な社会構造の変化に対処する社会教育のあり方について」諮問を行ない、四十六年四月社会教育審議会から答申があった。答申は三部から成り、第一部では、社会的条件の変化を分析するとともに、社会教育の意義、特に乳幼児から高齢者まで生涯の各時期における社会教育の課題を再検討しているが、第二部では、この社会的条件の中で社会教育の内容、方法、団体、施設、指導者がそれぞれどうあったらよいかというその振興の方向を明らかにし、第三部では、そうした社会教育活動に対して社会教育行政の果たすべき役割と当面の重点施策を示している。全体として、学校教育・家庭教育・社会教育三者の有機的役割分担による生涯教育という視点に立っており、中央教育審議会が四十六年六月に答申した「今後における学校教育の総合的な拡充整備のための基本的施策について」と対応している。この答申を受けて、文部省では、新しい社会教育振興方策の具体化に着手している。

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