二 高等学校職業教育学科の多様化

職業教育の改善・拡充

 占領下に発足した新教育は、まず学習指導要領の改訂から着手された。第三節「中等教育」に記述されているように、中学校・高等学校とも、現在までに三回の改訂が行なわれた。職業教育に関しては、中学校の「職業・家庭科」は、昭和三十三年「技術・家庭科」と改称されその内容は、「男子向き」と「女子向き」の二系列に分かれ、前者は技術的内容、後者は家庭的内容を中心とするものとされ、授業時数は、週当たり三~四時間から三時間になった。また、高等学校については、生徒の進路・特性に応じ、かつ各学科の特性を生かした教育がしやすいように教科口が編成された結果、職業各教科の科目数は増加したが、単位数の幅は縮小された。また内容は、技術の進歩は即応させるとともにそれが精選され、改善された。

 高等学校の工業教育については、三十年前後からの科学技術の振興、三十年の経済自立五か年計画、三十五年の国民所得倍増計画などに基づき、中堅産業人の教育が拡充され、特に、機械・電気・工業・化学・建築・土木等の学科の新・増設を図り、国は財政的援助を行なって、積極的な拡充方策をとった。

 農業教育については、三十六年の「農業基本法」の制定を契機として、農業教育近代化促進費が計上され、実験・実習に必要な施設・設備は充実された。さらに三十九年度からは、農業自営者の養成・確保のために、「自営者養成農業高等学校拡充整備補助金」が支出され、四十六年度までに三一校が対象とされている。

 水産教育については、二十七年度から四十六年度までの二十年間に、実習船の大型六四隻、中型二三隻、小型五隻、計九二隻の建造費について補助金が支出された。また多くの学校で共同で利用する「共同実習所」の施設・設備についても補助金が支出され、教育の効率化が図られている。これらの職業教育の拡充はいずれも産業教育振興法に基づく国の助成によるものである。

 なお、技能教育施設と定時制または通信制の課程との連携制度が、三十六年の学校教育法の一部改正によって創設されたが、これも産業界における勤労青年の教育に資するところが大きい。(「第三節三高等学校の拡充と多様化」参照)

職業教育の多様化

 中央教育審議会は、昭和四十一年十月「後期中等教育の拡充整備について」答申し、その中で、「学科等のあり方について教育内容・方法の両面から再検討を加え、生徒の適性・能力・進路に対応するとともに、職種の専門的分化と新しい分野の人材需要とに即応するよう改善し、教育内容の多様化を図る。」ことの必要を述べた。これに基づき、理科教育および産業教育審議会は、四十二年八月、十月、四十三年十一月の三次にわたって「高等学校における職業教育等の多様化について」答申した。

 職業教育の多様化のための新しい学科としては、森林土木科、金属加工科・電気工作科・衛生工学科・建築施工科、事務科・経理科・営業科・貿易科・秘書科、漁業経営科、調理科・和裁科・洋裁科・手芸科・商業家庭科・服飾デザイン科の一七学科が、また、「理科・数学に関する学科」として理数科が新たに学科として登場し、これらの学科は、地域社会の必要に応じて逐次設置されていった。その後、さらに情報技術科や情報処理科が設けられてきた。またこれより先、三十九年度から、準看護婦養成のための衛生看護科が設けられ、年々増加の傾向を示している。かくて学科の多様化の結果は、現在、約二五〇種類の多きに及んでいる。

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