五 へき地教育の振興

へき地教育振興法の制定

 へき地学校の教育水準の向上を図るため、昭和二十九年に「へき地教育振興法」が制定された。へき地学校は、交通条件および自然的・経済的・文化的諸条件に恵まれない山間地、離島等のへき地に所在しているため、へき地における教育は、教員の確保、施設・設備の整備、学習の指導方法等各種の面について多くの困難な条件を背負っている。「へき地教育振興法」は、へき地におけるこのような困難な条件に基づく教育の地域的格差を是正し、その水準の向上を図るため、国および地方公共団体が協力し、総合的な施策を進めようとするものである。国は、へき地教育についての調査研究を行ない、教員住宅およびへき地集会室の建築費ならびにへき地学校勤務教員の養成施設の運営費についての国庫補助を行なうなどが規定された。

 「へき地教育振興法」は、その後、三十三年に一部改正が行なわれ、国庫補助率の引き上げのほか、へき地学校の保健管理費および通学の便を図るためのスクールバス・ボートの購入費が国庫補助の対象に加えられるとともに、へき地手当の支給基準、割合等が明確にされた。特に、へき地手当については、四十五年に法律の一部改正が行なわれ、支給対象がへき地学校に準ずる学校にまで拡大されるとともに、へき地学校等に勤務する教職員のうち、一定条件をそなえた者には一定期間赴任手当に準ずる手当が支給されることとなった。

へき地教育の振興方策

 へき地教育の振興については、この法律による施策のほか、予算補助および他の法律による各種の施策が講ぜられている。すなわち、1)教職員については、へき地勤務教職員の特別昇給制度、多学年学級担当手当の支給、へき地学校勤務教職員の子弟等のための高等学校寄宿舎建築費補助。2)教育環境の整備については、学校自家発電設置費補助、テレビ受像機、録音機購入費補助、給食施設設備整備費補助、小・中学校寄宿舎建築費補助、給水施設、学校ぶろ整備費補助、ジープ購入費補助、携帯用歯科ユニット・歯科用巡回指導車購入費補助、保健室整備費補助。3)児童・生徒については、小・中学校寄宿舎居住費補助、遠距離児童・生徒通学費補助、高度へき地パン・ミルク給食費補助。4)教育内容については、へき地教育研究校の指定、複式教育課程の作成、へき地教育資料の編集刊行、複式学級用教科書の調査研究、へき地学校複式指導者講座の開催、シート式録音器購入費補助。5)学級編制については、複式学級の編制基準の改善(単級学校および小学校の四、五個学年複式学級の解消等)等の措置である。

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-- 登録:平成21年以前 --