四 就学奨励

就学奨励制度の沿革

 就学奨励制度は、児童・生徒の保護者に就学義務を課していることの裏づけとして法律で定められたものであり、学校教育法には、「経済的理由によって就学困難と認められる学齢児童の保護者に対しては、市町村は、必要な援助を与えなければならない。」と規定し、中学校にもこの規定は準用されている。貧困家庭の児童に対する就学奨励は、すでに昭和三年から「学齢児童就学奨励規程」により行なわれていたが、戦後は二十一年に制定された生活保護法による生活保護費に吸収された。(ただし、盲・聾学校の就学奨励費は特に教育的見地に立つものとしてそのまま存続し、二十九年以降は法律に基づく制度として今日に至っている。)

 以上のように、経済的理由によって就学困難な児童・生徒に対する措置は、主として生活保護法によって行なわれたが、教科書等の購入に耐えない、いわゆるボーダーライン層にある保護者に対しては、別途市町村やPTA等が援助を行なう例が少なくなかった。

 就学困難な児童および生徒に係る就学奨励についての国の援助に閲する法律の制定と就学奨励費の充実

 このような事態に対してまず、昭和三十一年に「就学困難な児童のための教科用図書の給与に対する国の補助に関する法律」が制定・施行された。これは、市町村が保護者に対して教科書費を給与する場合に、国が当該市町村に対して補助を行なおうとするもので、三十一年度は小学校だけに行なわれたが翌三十二年度からは中学校にも拡充された。なお、「新たに入学する児童に対する教科用図書の給与に関する法律」は、新入児童のすべてに対してその前途を祝して教科書を給与するという趣旨で二十七年に制定されたものであるが、就学奨励制度の充実が当面の急務であるために、就学奨励による教科書費の給与制度の発足と同時にこの法律は廃止された。

 その後、同法の名称と内容の改正により三十四年度には修学旅行費、三十六年度には学用品費および通学費の補助が新設され、現行の「就学困難な児童及び生徒に係る就学奨励についての国の援助に関する法律」に至っている。なお、教科書費については、「義務教育諸学校の教科用図書の無償措置に関する法律」の施行により、三十九年度から無償措置が段階的に実施され、四十四年度に義務教育教科書の完全無償が完成したことにより補助制度は廃止された。

 学校給食費の補助については、三十一年に「学校給食法」の一部改正が行なわれ、またトラホーム等の学校病に対する医療費の補助については、三十三年の「学校保健法」の制定・施行により実施されている。また、日本学校安全会の共済掛金の保護者支出分の充当にかかる学校安全会に対する補助は、三十四年度から実施されている。

 このほか、予算補助による措置としては、三十七年度に寄宿舎居住費(ただし、四十二年度に公立小・中学校寄宿舎居住費補助金による補助に吸収された。)が、四十二年度には通学用品費が、四十四年度には校外活動費が新設され、補助対象費目が拡充されて、就学困難者に対する経済援助の措置は格段の充実をみている。

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