一 諸審議会における改編方針

教育審議会と高等教育改善方策

 前章でみたように、数学刷新評議会の答申は高等教育をして著しく国体主義的・国粋主義的傾向を帯びさせる有力な契機をなすものであった。このような傾向は、教学刷新評議会の趣旨、精神を継承して学制全般の根本改革を試みた教育審議会の答申のうちにいっそう強く現われている。教育審議会の大学に関する答申は、「大学は国家に須要なる学問の理論及び応用を教授し並に其(そ)の薩(うん)奥を攻究し、常に皇国の道に基きて国家思想の涵(かん)養、人格の陶冶(や)に力(つと)むるを以て目的とすること。」を説き、この目的達成のため大学は特に次のごとき事項を重視すべきことを求めている。また、他の高等教育についても同じような要求を掲げている。

 一 国体の本義を体して真撃(し)なる学風を振作し学術を通して皇運を無窮に扶翼し奉(たてまつ)るの信念を掌固ならしむること。

 二 皇国の使命の自覚の下に独創的研究に力め広く東西の学術・文化を摂収醇化して我国学術・文化の創造発展を図ること。

 三 学の綜合的理解を旨として専門的研讃(さん)を遂げしめ識見を長ずると共に学徳一体の修練を積ましめ国家有為の指導的人材たらしむること。

 四 東亜及世界並に国防に関する認識を深からしむること。

 この教育審議会に相応じて昭和十五年八月に発表された「基本国策要綱」も、政治・経済・産業の新体制、強大な国防国家体制の基礎をなすものとして、国体の本義に透徹する数学刷新、国民道徳の確立を強くとりあげた。

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