二 臨時教育会議その他の審議機関

臨時教育会議の設置

 すでに述べたように、大正二年以降教育調査会が設けられていたのであるが、さらに第一次世界大戦後における教育制度の根本的改革について審議するため、六年公布の「臨時教育会議官制」により臨時教育会議が設置された。この会議は、第一次世界大戦後の新しい情勢を背景として、多年にわたり論議されてきた学制改革のすべての問題を改めて検討し、なが年の懸案を一挙に解決することを目ざしたものであった。

 この会議は、文部大臣・内務大臣・関係各省次官・文部省直轄学校長・私立学校長・陸海軍関係者・貴衆両院議員・枢密顧問官・財界人など、多彩な顔ぶれによって構成され、これまでに類例のない有力な構成であった。この臨時教育会議に対して内閣総理大臣から諮問された事項は、小学教育・男子の高等普通教育・大学教育および専門教育・師範教育・視学制度・女子教育・実業教育・通俗教育・学位制度の九事項の改善方策についてであって、同会議は六年十月一日から八年三月に至る間それらについて慎重に審議を重ね、理由書を付して改革要綱を答申した。

協時教育委員会・教育評議会

 臨時教育会議は、大正八年五月二十二日廃止されたが、さらに同会議の答申を実施に移すための細案について審議するため同日、「臨時教育委員会官制」を公布し、新たに臨時教育委員会を設置した。同委員会は、文部大臣の監督に属し、その諮問に応じて教育に関する重要事項を調査・審議し、意見を開申し、または教育に関する重要事項について大臣に建議しうるものとした。同委員会は会長一人、副会長一人、委員一五人以内をもって構成し、会長には久保田譲、副会長には一木喜徳郎を任命した。

 臨時教育委員会は、高等教育諸学校の創設・拡張計画、私立大学設置認可など六つの事項に関する諮問について審議した後、十年七月九日廃止した。これに引き続いて同日新たに「教育評議会官制」を公布した。この教育評議会は前の臨時教育委員会と同様のもので、会長一人、委員二五人以内をもって構成し、特別の必要あるときは臨時委員を置くことをうるものとし、初代会長には岡野敬次郎を任命したが、その後は鎌田栄吉が代わった。同評議会は、五単科大学の設置、実業専門学校専攻科の新設など八件の答申を行ない、十三年四月十八日をもってこれを廃止した。

臨時教育行政調査会

 教育評議会と並行して、内閣の諮問機関として大正十年七月二十三日公布の「臨時教育行政調査会官制」によって臨時教育行政調査会が設置された。同調査会は、内閣総理大臣の監督に属し、普通教育に関する施設および教育費その他の教育行政に関する事項を調査審議し、内閣総理大臣の諮問に応じて意見を開申し、関係各大臣に建議することができるものとし、会長一人、副会長一人、委員三五人以内をもって構成し、特別の事項を調査審議するために必要あるときは、臨時委員を置くことができるとした。当初、首相原敬が会長、横田千之助が副会長になったが、その後首相高橋是清、のちさらに首相加藤友三郎が会長となった。同調査会は小学校の学級の整理その他経費の節約に関する七件の答申を行なったのち、十一年九月十八日に廃止された。

交政審議会

 大正十三年四月には内閣総理大臣の諮問機関として文政審議会が設置された。四月十五日公布の「文政審議会官制」によれば、文政審議会は、内閣総理大臣の監督に属し、その諮問に応じて、国民精神の作興、教育の方針、その他文政に関する重要事項を調査審議し、またこれらの事項について、内閣総理大臣に建議することをうるものとした。また総裁一人、副総裁二人、委員五〇人以内をもって構成し、特別の事項を調査審議するため必要あるときは臨時委員を置くことができるとした。総裁は内閣総理大臣清浦奎吾、副総裁は文部大臣江木千之と一木喜徳郎、幹事長は文部次官松浦鎮次郎をもって発足したが、その後昭和十年に廃止されるまでに一一人の首相が交替して総裁となった。

 文政審議会は師範学校の年限延長、中等学校配属将校の設置、幼稚園令の制定、青年訓練所および青年学校制度の創始など重要な教育改革案件一四件の審議を行ない一二件について答申したが、十年五月十一日内閣審議会が設置され、文教施策に関する重要事項も内閣審議会において審議することとなったのに伴い、十二月二十九日に廃止された。

教学刷新評議会

 以上四つの審議機関は、いずれも教育の制度的改革について審議することを重要な任務とするものであったが、昭和十年十一月十八日公布の「教学刷新評議会官制」により設置された教学刷新評議会は、特に昭和初期にはいって重大化してきた思想問題を背景として、「国体観念、日本精神を根本として学問、教育刷新の方途を議し」、教学の基本的な理念・内容について審議することを目的とするものであった。

 教学刷新評議会は文部大臣の諮問機関として、会長(文部大臣)ほか委員六〇人以内をもって構成し、翌十一年十月二十九日、教学刷新のための具体的方策として教学刷新のための中心機関の設置、教学刷新の実施上必要な方針および教学刷新上必要な実施事項について答申した。さらに教学の指導ならびに文政の改善に関する重要事項を審議するため、内閣に有力な諮問機関を設置することを建議した。これに基づき、翌十二年、教学局を設置し、また内閣に同年五月二十六日に文教審議会が設置され、次いで十二月十日に教育審議会が設置されたが、これらについては後述する。

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