二 社会教育行政機構の整備

社会教育局の新設

 社会教育は、従来通俗教育として行政上文部省の普通学務局において統轄していた。臨時教育会議の答申に基づき、大正八年には文部省官制を改正して、普通学務局内に通俗教育・図書館および博物館・青年団体およびその他に関する事務をつかさどる新しい課を設け、次いで九年五月には、各地方庁学務課内に社会教育担当の主任吏員すなわち社会教育主事を特に任命するよう、各地方長官あてに通牒(ちょう)を発し、翌十年十月には、第一回社会教育主事協議会を開くまでになった。

 十年六月二十三日文部省官制の改正の際、従来用いられていた通俗教育という語を改めて社会教育とした。ここにおいて社会教育の名称が行政上にも使用されることとなったのであるが、この名称の変更は単なる改正でなく、これを機として社会教育行政の整備につき積極的な方法がとられることとなったのである。続いて十三年十二月二十五日文部省分課規程に改正が行なわれた時に、普通学務局内に社会教育課を置き、その事務分掌として1)図書館および博物館に関すること、2)青少年団体および処女会に関すること、3)成人教育に関すること、4)特殊教育に関すること、5)民衆娯楽の改善に関すること、6)通俗図書認定に関すること等を定めた。この中央における新しい社会教育行政機構の設置に応じて、地方行政機構内にも社会教育を担当する主任官を置くこととなり、十四年十二月十四日地方社会教育職員制を定めた。それにより社会教育主事専任六〇人以内と社会教育主事補専任一一〇人以内を置くこととなり、中央・地方において社会教育行政機構が整備されてきた。

 社会教育行政の発展は、行政機構の拡大を求め、新しく一つの局の構成を置くこととなった。昭和四年七月一日文部省社会教育局が創置されたが、その所掌事務は、1)青少年団体に関する事項、2)青年訓練所に関する事項、3)実業補習学校に関する事項、4)図書館に関する事項、5)博物館その他観覧施設に関する事項、6)成人教育に関する事項、7)社会教化団体に関する事項、8)図書の認定および推薦に関する事項、9)その他社会教育に関する事項と定められた。社会教育局はさらに青年教育課・成人教育課・庶務課に分かれ、それぞれ右の事項を分掌した。なお、従来、文部行政とともに内務行政からも関与していた青年団、教化団体に関する事務はすべて昭和三年十月に文部省に移管され、社会教育局の所掌事務となった。また、実業補習学校関係の事務も、社会教育局の新設とともに実業学務局から社会教育局に移管された。これらの措置によって、社会教育に関する事務はすべて文部省社会教育局において主管することとなり、その後の社会教育行政の遂行を円滑にした。

社会教育の充実

 臨時教育会議の通俗教育に関する答申や社会教育行政機構の整備などによって、社会教育の施策はいっそう進展した。大正十五年一月九日に図書認定規程を、また昭和五年九月一日に図書推薦規程を定め、これらの法規に基づいて、社会教育上有益と認める図書の認定・推薦を行なうこととなった。また映画等に関しては、大正十二年五月四日の活動写真「フィルム」幻燈映画および蓄音機「レコード」認定規程によって、健全なものを奨励して社会教育に資せしめようとし、さらに十四年五月二十六日活動写真「フィルム」検閲規則を定め、検閲を経なくては公開できぬようにした。一方、文部省みずから教育に資すべき映画を作り、昭和三年七月六日の文部省製作活動写真「フィルム」頒布規程および文部省製作活動写真貸与規程によって、これを頒布あるいは貸与することとした。

 全国の図書館および東京科学博物館もこの間その活動を続けていたが、昭和三年三月博物館協会が、五年十一月に社団法人大日本図書館協会が設立された。このような社会教育の拡充に貢献するのを目的とする民間施設として、大正十四年十月に財団法人社会教育会が、同年十一月に財団法人社会教育協会が設立された。

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