一 通俗教育の改善

通俗教育に関する答申

 臨時教育会議は通俗教育の改善に関し、大正七年十二月二十四日、左の一一項にわたる答申をしている。

 (一)朝野関係各方面の連絡を保って通俗教育に関する事項を審議するため文部省に調査会を設置すること。

 (二)通俗教育に関する施設の計画および実行の任に当たるため文部省に主任官を置くこと。

 (三)地方団体および教育会その他の公益団体の協力を促し、なるべく各地方には通俗教育に関する主任者を置かしむること。

 (四)通俗教育に当たるべき者を養成するため相当の施設をなすこと。

 (五)善良なる読物の供給を豊かにするため積極的施設をなし、合わせて出版物の取り締まりに関しいっそうの注意を加えること。

 (六)通俗図書館・博物館等の発達を促し、これに備え付けるべき図書および陳列品に関し、必要な注意を怠らないこと。

 (七)通俗講演会を奨励し、いっそう適切にすること。

 (八)活動写真その他の興行物の取り締まりに関し全国に及ぼすべき準則を設けること。

 (九)健全な和洋の音楽を奨励し、ことに俗謡の改善を図ること

 (十)劇場寄席等の改善を図ること。

 (十一)学校外における体育上の施設を改善し、その普及を図るとともに、競技に伴う弊害を除くこと。

 以上のうち第一項から第四項までは通俗教育の行政に関するものであった。すなわち第一項は、通俗教育は広く学校以外において施設すべきものであり、諸官庁・民間諸団体と深い関係をもっているため、その改善を図り、実効を収めるためには、各方面の人材からなる調査会を組織する必要を述べたものである。また第二項以下では、中央・地方に通俗教育に当たる主任官を置き、かつ通俗教育にあたる人物の養成を行なう必要を説き、これによって従来普通学務局の一部において取り扱われるのみであった通俗教育を、文教行政の主要な部分として、学校とひきはなして独自の運営を行なう組織とさせようとしたのである。第五項以下は、当時通俗教育の内容と考えられたものの一つ一つについての改善方針を答申したのである。そして、なおそれらの実行に当たって必要な経費の支出の方法について、当局の考慮を求めたものである。

 大正七年以後通俗教育は大いに振興され、その情勢に基づいて社会教育の制度ならびに行政を整備したのであるが、その際に臨時教育会議の答申は、これらを促進するため重要な意義をもったものである。

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