一 臨時教育会議における改善の方針

中学校の改善方針

 臨時教育会議において決定をみた中学校改善の方針は、高等普通教育の改善に関する答申の中で示されており、同答申は大正七年一月十七日と五月二日の二回にわたって行なわれた。第一回の答申は主として高等学校制度に関するものであり、第二回の答申は主として高等学校、中学校の教育目的・内容・方法にわたるものであった。

 第一回の答申は、高等学校を高等普通教育を授ける所とするとして、男子の高等普通教育は中学校において施してきたが、国家の中堅たるべき中流階級に対する教育としては国運の進歩にかんがみ、さらに精深な高等普通教育を必要とするに至っているとその理由を述べた。答申の中で中学校は下位の段階の高等普通教育をになうものとしたが、修業年限は現行どおり五か年とすることとした。しかし、高等学校高等科の入学資格を中学校第四学年修了者とすることとしたが、これは修業年限短縮の要望を満たすためと英才教育への配慮による方策であった。中学校、高等学校尋常科に予科を置くことができることとしたが、これは初等教育の時期から将来高等教育への進学を希望するものに対して一貫教育のみちを開くためのものであった。

 第二回の答申は高等普通教育にたずさわる教員の精神的・物質的優遇のみちを講じ、資質向上のため研修の方法等工夫(くふう)を要すること。高等普通教育においては勅語の趣旨を体し、国体の観念を強固にし、中堅たるべき人物の陶冶(や)に力を注ぐべきこと。各学科の連絡統一を図り、理解力と独創力との啓発に努め、上級学校入学準備に汲(きゅう)々たる弊風を改め高等普通教育の本旨の実現を図ること。中学校の学科課程を整理按(あん)配し、上級における学科目の選択範囲を広くし、分科の制度を設け、生徒の実際生活に適切な教育の効果をあげること。中学校の教授要目を改定して教科書の編集に工夫を施す余地を与え、また当局で模範教科書を編纂する方途を講ずること。高等学校の外国語と一貫性を図るため中学校の外国語は英語のほかに独語、仏語の採用を奨励すること。英才のために中学校早期入学をさせるみちを開くこと。家庭および社会は青年に及ぼす影響が大きいので、学校と家庭の協力、国民思想の源泉たる学術・文化を振興すること。高等普通教育改善のため教員養成の方法、視学制度を攻究することなどについての答申がなされた。

高等女学校の改善方針

 高等女学校の改善方針はほとんどそのまま女子教育に関する答申の中において示されている。女子教育に関する答申は大正七年十月二十四日に行なわれた。

 高等女学校においては教育勅語の趣旨を体得させ国体の観念を強固にし、淑徳節操を重んじ、家族制度に適する素養を与えること。実際生活に適切な知識・能力の養成に努め、経済・衛生の思想を涵(かん)養し、家事の基礎としての理科の教授にいっそう重きを置くこと。高等女学校および実科高等女学校の入学年齢・修業年限・学科課程等に関する規程を改正し、いっそう地方の実情に適切ならしめること。卒業後さらに高等の教育を受けようとする者のために専攻科の

 充実、高等科を新設できるようにすること。高等女学校の教科目は選択の範囲を広くし、また女子に適切な実業教育を奨励すること。高等女学校長や教員の待遇を高め優良な人物を招致すること。その他希望事項として女学校長や視学委員に女子の任用のみちを講じることなどが答申の中に述べられていた。

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