二 高等教育会議等

高等教育会議の設置

 森文相によってわが国近代教育制度の基本計画が設定された後、教育制度の補完・整備が進められたのであるが、この間教育制度の改革についての基本的な方策を審議するため中央教育議会あるいは教育高等会議の設置などが要望されるようになった。

 このような要請に応えて二十五年、河野文相の時に「教育高等会議規程案」が作成され、二十六年、井上文相によって「高等教育会及地方教育会規則案」が作成されたのであるが、これらはいずれも実施に至らなかった。その後、「教育高等会議及び地方教育会議」設置に関する議会の建議などもあって、二十九年十二月、蜂須賀文相当時に、勅令をもって「高等教育会議規則」を公布し、ここにわが国で最初の教育に関する文部大臣の諮問機関が設置されたのである。

高等教育会議の構成と機能

 明治二十九年の高等教育会議規則によれば、高等教育会議は文部大臣の監督をうけ、教育に関する事項について文部大臣の諮詢に応じて意見を開申し、または教育に関する事項についてその意見を文部大臣に具申するものとされた。また、その議員は帝国大学総長および各分科大学長・文部省各局長・高等師範学校長および女子高等師範学校長・高等商業学校長・東京工業学校長・東京美術学校長・高等学校長一人・学識ある者または教育事業に閲歴ある者七人以内とし、職務上当然に議員となるものを除き、文部大臣の奏請によって内閣がこれを任命した。また、議長および議員の任期は三か年をもって一期とした。

 その後、三十年十二月、規則が改正され、議員の範囲が拡大された。すなわち、1)東京帝国大学総長・各分科大学長および京都帝国大学総長・分科大学長二人、2)文部省各局長および視学官二人、3)高等師範学校長および女子高等師範学校長、4)高等商業学校長・東京工業学校長・東京美術学校長および高等師範学校付属音楽学校主事、5)高等学校長および専門学部主事各一人、6)帝国図書館長、7)尋常師範学校長二人、8)尋常中学校長二人、9)高等女学校長一人、10)高等師範学校附属尋常中学校主事および女子高等師範学校附属高等女学校主事、11)学識ある者または教育事業に閲歴ある者一〇人以内とし、ほかに臨時の必要があるときには臨時議員を置きうるとし、また同会議に文部省高等官の中から幹事二人を置いて事務をつかさどらせることとした。

 三十一年六月にはさらにまた規則を改正して議員の範囲を拡大し、従来の議員のほかに新たに、1)学習院長・華族女学校長・帝国博物館長、2)陸軍および海軍教育主任将校各一人、3)商船学校長、4)私立学校長二人、5)東京学士会院会長、6)文部省学校衛生顧門会議議長を加えた。また、文部大臣諮詢事項が定められて、1)帝国大学および文部省直轄諸学校・図書館の設置廃止に関する事項、2)文部省直轄諸学校公立・私立学校の教育の目的ならびにその学科課程設備および管理に関する事項、3)学齢児童の就学義務および小学校授業料に関する事項、4)学事監督に関する事項、5)教科用図書に関する事項、6)文部省直轄学校ならびに公立・私立学校職員の資格に関する事項、7)文部大臣において必要と認める事項が列挙された。

 三十四年九月、さらに規則が改正されて、委員の範囲が拡大され、1)内務省地方局長、2)農商務省農務局長および商工局長、3)札幌農学校・東京外国語学校長、4)道庁府県視学官二人、5)公立実業学校長三人、6)私立学校長二人(合わせて四人)が増加された。

 高等教育会議は、三十年七月、第一回会議を文部省修文館に置いて開いたが、その後大正二年六月に教育調査会が設置されるまで継続し、この間、臨時会一回を含めて合計一一回の会議を重ね、専門学校・高等中学校の新設など高等教育制度の改革に関する事項のほか、初等・中等・高等教育のほとんどの学校種類にわたる諸般の事項についての七〇件の諮問事項に対して答申し、一六事項の建議を行なった。

教育調査会の設置と構成

 大正二年三月十九日の貴族院における「教育調査機関設置の建議」に基づき、六月十三日奥田文相の時に「教育調査会官制」が公布され、高等教育会議に代えて、新たに文部大臣の諮問機関として教育調査会が設置された。教育調査会官制の当初の規定では、委員の数が二五人以内と定められていたが、三年七月に三〇人と改められた。委員には実業界、教育界、政界、元文相など各方面の学識経験者が加えられた。総裁には最初前文相樺山資紀が就任したが、後に加藤弘之が代わり、さらに蜂須賀茂韻がそのあとを継いだ。副総裁にはその時々の文部大臣が当たることとされた。教育調査会は、教育制度、特に高等教育制度の根本的改革のために調査を進めたが、いまだじゅうぶんに調査を終えて結論に達することができないでいるうちに、大正六年九月、新たに臨時教育会議が設置されて、教育制度全般にわたる改善のための根本方策について審議することとなった。

各種委員会の設置

 以上のように、教育全体に関する文部大臣の諮詢機関が設けられたことと並行して、教育行政のいろいろな分野についても、右の表にみるような各種の委員会が設置され、それぞれの官制が公布された。

表22 各種委員会の設置状況

表22 各種委員会の設置状況

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