コラム

2.日本からの文化芸術の発信について(財団法人文化財保護・芸術研究助成財団理事長 平山 郁夫)

 文化は,民族や宗教,国境を越えて交流し,優れたものは人類共通の財産となり,時空を超えて私たちに感銘を与えてくれます。我が国においても,千数百年に及ぶ時の積み重ねの中で今日の我が国の文化が形づくられきたのであり,今後も息の長い取組により,優れた文化を創造かつ継承し,世界に誇れる品格ある国づくりを進めていくことが求められます。
 ここ数年来,文化庁では国内外の文化交流を積極的に推進しており,海外における展覧会や文化芸術の専門家の人物交流などを行っています。また,海外の文化財の保護については,文化庁や外務省が中心となって支援が行われてきました。大学や国立の研究機関では,調査研究をそれぞれの立場で行ってきましたが,文化財の保存修復については,歴史,考古学,自然科学,美術家,修復の専門家と各分野が総合して行っていくことが必要です。
 平成18年6月,長年の経験を生かし,文化庁,外務省などの行政機関,大学や研究機関などが連携協力し,文化遺産国際協力コンソーシアムが発足し,西アジア,東南アジアなどの地域について,情報を収集して総合的な文化遺産修復の体制が構築されました。
 また,文化による国際貢献の理念をうたった「海外の文化遺産の保護に関する国際的な協力の推進に関する法律」が,第164回通常国会において,超党派の有志による国会議員の尽力によって成立しました。本法律は日本が文化遺産の保護を通じて世界の文化の発展に貢献することなどを目的とする初めての法律です。
 今後,本法律の成立を契機に,関係機関が一致協力して文化を通じた国際協力・交流などが推進され,我が国の一層の文化発信につながることを期待しています。

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