第5節 魅力ある高等学校づくりと中高一貫教育

3.職業教育の活性化

(1)専門高校における職業教育の現状

 高等学校における職業教育は,農業,工業,商業,水産,家庭,看護,情報,福祉の専門高校を中心に行われており,企業における中堅技術者など我が国の産業経済の発展を担う人材を育成する上で,大きな役割を果たしています。
 平成18年5月現在,専門高校の数は1,864校,生徒数は約71万人であり,高等学校の生徒数全体の20.5パーセントを占めています。
 また,専門高校を卒業した生徒の進路状況を見ると,平成18年3月卒業者のうち,大学などへの進学者約19.8パーセント,専門学校などへの進学者約24.5パーセント,就職者約48.9パーセントとなっており,生徒の進路は多様な状況にあります。

(2)将来の地域を担う専門的職業人の育成に向けて

 フリーターやニートの存在が大きな社会問題となるだけでなく,今後,団塊の世代の退職に伴う技能継承の重要性が高まる中,地域社会を担う技術・技能を持った専門的職業人を育成する専門高校に対する期待は,より一層大きくなっています。工業高等学校などの専門高校においては,ものづくりなどの専門性の基礎的・基本的な知識や技術の確実な習得を目指すとともに,地域産業を担う人材を育成するために,これまで以上にそれぞれの学科の特性を生かした教育の展開や,地域社会と連携した地域ぐるみの教育が求められています。
 このため,文部科学省では「若者の自立・挑戦のためのアクションプラン」(平成18年1月17日改訂)なども踏まえ,先端技術や伝統技能の習得などの特色ある教育を行う専門高校を支援する「目指せスペシャリスト(「スーパー専門高校」)」事業や,企業と連携して実践的な技術の習得を図る「日本版デュアルシステム」の推進などを通じ,専門高校の一層の活性化に努めているところです。

▲農業科の実習風景

1関係事業

(ア)目指せスペシャリスト(「スーパー専門高校」)

 バイオテクノロジーやメカトロニクスなど先端的な技術・技能などを取り入れた教育や伝統的な産業に関する学習活動を重点的に行っている専門高校を指定し,技能の習得方法や技術の開発法,学校設定科目などカリキュラムの開発を行う「目指せスペシャリスト」事業を平成15年度から実施し,18年度現在,計36校を指定しています。

(イ)専門高校等における「日本版デュアルシステム」推進事業(実務・教育連結型人材育成システム)

 実践技術力を習得させ,勤労観・職業観の育成を図るため,学校での教育と企業での実習を組み合わせて実践的な職業教育を行う専門高校等における「日本版デュアルシステム」推進事業を,平成16年度から実施し,20地域を指定しています。

(ウ)みんなの専門高校プロジェクト

 専門高校と小・中学校との連携による農林水産業体験や,ものづくりなどに関する教育の推進,地域との連携による地域産業の活性化の支援など専門高校が有する人的・物的資源の活用方策について実践研究を行う「みんなの専門高校プロジェクト」を平成15年度から実施しています。

(エ)全国産業教育フェアの開催

 全国産業教育フェアは,専門高校を中心とした生徒たちが日ごろの学習の成果を発表し,中学生や企業関係者をはじめ広く一般の方々の産業教育に対する理解を深めるとともに,全国の専門高校等の生徒が広く交流する場として開催されています。平成18年度は第16回大会が11月10日〜12日に埼玉県において開催され,全国の専門高校等の作品展示や,高校生ロボット相撲全国大会,各種コンテスト,発表大会,学校生産物の販売などが行われました。

▲全国産業教育フェア

2教員研修の充実

 教員研修センターでは,産業教育を担当する教員などを対象として,新産業技術の進ちょくや学習指導要領に対応した必要な知識・技術を習得させる研修や,3か月〜1年の長期間にわたって大学その他産業教育にふさわしい施設に留学させる研修などを行っています。

3施設・設備の補助

 産業教育の振興を図るため,産業教育施設・設備基準に基づき,私立高等学校に対しては,産業教育の実験・実習に必要な施設・設備の整備に関する経費の一部を補助し,公立高等学校に対しては,施設(設備は,平成17年度から一般財源化)の整備に関する経費を交付金により措置しています。

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