第4節 信頼される学校づくりを目指して

1.自律的な学校運営に向けて−地域の参画を通して−

 地域に開かれ信頼される学校を実現するため,学校には,保護者や地域住民の意見や要望を的確に反映させ,家庭や地域社会と連携協力していくことが求められています。それと同時に,保護者や地域住民が,学校と共に地域の教育に責任を負うとの認識の下,学校運営に積極的に協力していくことも重要です。
 そのため,学校が,地域や子どもたちの実情に応じて主体的に創意工夫のある教育活動を展開し,自主的・自律的な学校運営ができるよう,教育課程,予算などについての学校の裁量を拡大することが求められています。
 また,保護者や地域住民の参画しやすい環境を整え,開かれた学校づくりを促進していくために,学校評議員制度や,平成16年度に導入された学校運営協議会制度を活用していくことが重要です。
 さらに,学校評価を通じて学校は,自律的・継続的に教育活動の改善を行うとともに,開かれた学校として保護者や地域住民に対して説明責任を果たし,また,学校設置者等による支援や条件整備等の改善を通じて,教育の質の保証・向上を図ることが期待されています。
 これらの活動を通じて,保護者や地域住民に信頼される学校づくりを進めていくことが求められています。

(1)学校の裁量拡大

 地域に開かれた特色ある学校づくりを実現するためには,各学校において,それぞれの教育理念や教育方針に基づき,地域の状況などに応じて,自主的・自律的な学校運営を行うことが必要です。このような観点から,各教育委員会において,学校の裁量を拡大するため次のような取組が進んでいます。

  • 1学校と教育委員会の関係を定めている学校管理規則について,これまで教育委員会の承認が必要であったものを届出に改めるなど,教育委員会の関与を縮減
  • 2校長裁量経費を措置するなど,学校予算における学校の裁量を拡大

 例えば,これまで教育委員会が一律に定めていた長期休業期間について,届出があれば校長が学校の実情に応じて夏休みを縮減したり,2学期制を導入できるようにした教育委員会も増える傾向にあります。また,従来細かな費目ごとに配当していた学校予算の仕組みを見直し,一定総額の中での学校独自の予算編成を可能とする仕組みを取り入れた教育委員会もあります。

(2)学校評議員制度

 学校評議員制度は,教育委員会に学校評議員として委嘱された保護者や地域住民などが,校長の求めに応じて学校運営に関する意見を述べるものです。この制度を活用することにより,学校は

  • 1学校運営に関する保護者や地域住民等の意向を把握し反映すること
  • 2学校運営に保護者や地域住民の協力を得ること
  • 3学校運営の状況等を周知するなど学校としての説明責任を果たしていくこと

が期待されています。
 公立学校における学校評議員の設置状況は,年々増加傾向にあります。平成18年度において学校評議員(類似制度を含む。)を設置している公立学校は82.3パーセント,国立学校は100パーセントとなっています。また,その活動内容も学校の教育目標や教育課程について意見を述べるだけでなく,地域との連携協力といった面からの寄与など,活躍の場が広がっているところです。
 さらに,学校評議員類似の制度を導入し学校評価を行うことなどを通して地域住民・保護者の参画を図っている地方自治体も増えています。
 学校評議員をはじめとして,地域住民や保護者が学校へ参画する仕組みの充実が引き続き求められています(図表2-2-20)。

図表●2-2-20 国公立学校における学校評議員等の設置状況(平成18年8月1日現在)

(3)学校運営協議会制度(「コミュニティ・スクール」)の活用

 公立学校に対する国民の多様な期待にこたえ,地域に開かれた信頼される学校づくりをより一層進めるためには,保護者や地域住民の様々な意見や要望が学校運営に的確に反映されることが重要です。このため,平成16年6月に「地方教育行政の組織及び運営に関する法律」が改正され(同年9月に施行),「学校運営協議会制度(「コミュニティ・スクール」)」が創設されました。
 学校運営協議会は,全国すべての地域の公立学校に設置することが可能です。設置については,保護者や地域住民の意向や要望等を踏まえて,学校を設置する教育委員会が判断することとなります。
 学校運営協議会が設置された「コミュニティ・スクール」では,一般の公立学校と違い,学校運営協議会を通じて,保護者や地域住民が一定の権限と責任を持って,学校運営に参画することが可能となっています(図表2-2-21)。

図表●2-2-21 コミュニティ・スクールのイメージ(市町村立小・中学校の例)

 平成16年9月の制度試行から18年12月15日現在で,「コミュニティ・スクール」として教育委員会の指定を受けている学校は,全国で124校となっています。さらに,現在,159校で「コミュニティ・スクール」の指定が予定されていたり,指定に向けた検討が進められたりしています(図表2-2-22)。
 文部科学省は,学校運営協議会を活用することで,学校・家庭・地域社会が一体となり,地域に開かれた信頼される学校づくりに向けた取組の一層の展開が図られるよう,積極的に支援していきます。

図表●2-2-22 公立学校における学校運営協議会制度(「コミュニティ・スクール」)の指定(予定)状況

(4)学校評価と情報提供の推進

 「小学校設置基準」(文部科学省令)などに基づき,平成14年4月より,小学校,中学校,高等学校,幼稚園等は,自己評価を実施して結果を公表する努力義務が課されています。また,学校運営の状況に関する情報を積極的に提供することが義務付けられています。
 平成17年度間において,自己評価を実施した公立学校は97.9パーセント,外部評価・外部アンケート等を実施した公立学校は83.7パーセント,アンケートや懇談会での意見聴取のみならず,学校評議員,保護者等による外部評価を実施した公立学校は51.5パーセントです。また自己評価実施校のうち,自己評価結果を公表している公立学校は58.3パーセント,外部評価・外部アンケート等実施校のうち結果を公表した公立学校は87.0パーセント,外部評価実施校のうち評価結果を公表した公立学校は69.7パーセントとなりました(図表2-2-23)。
 このように,自己評価はほぼすべての学校で実施されていますが,一方で,自己評価結果の公表率は58.3パーセントにとどまっている,自己評価結果を踏まえるかたちで外部評価を行う学校がまだ少ない,などといった課題も見られます。
 これらの状況も踏まえ,文部科学省としては,学校評価システムの一層の定着と改善を図るため平成18年3月末に,学校評価の目的,方法,評価項目,評価指標,結果の公表方法等を示した「義務教育諸学校における学校評価ガイドライン」を策定し,都道府県教育委員会等へ通知しました。
 また,平成18年度には,外部の有識者,教育委員会関係者等の協力を得て「学校評価の推進に関する調査研究協力者会議」を開催し,学校評価の推進のために必要な方策等に関し,総合的な調査研究を行っています。さらに,「義務教育の質の保証に資する学校評価システムの構築事業」として,各都道府県・政令指定都市における「学校評価ガイドラインに基づく評価実践研究」,研究機関に委嘱して実施する「第三者評価等に関する調査委嘱研究」を行っています。また,教職員による自己評価や,保護者や地域住民などによる外部評価に加え,客観的・専門的な視点から行う第三者評価について,その在り方を検討することが指摘されています。このため,18年度より,全国124校の公立小中学校において学校の第三者評価を試行的に行っています。

図表●2-2-23 学校評価の実施とその公表状況(平成17年度間)

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