第3節 魅力ある優れた教員の確保

2.教職員定数の改善及び学級編制の弾力化

(1)これまでの経緯

 文部科学省では,児童生徒の学習活動や学校生活の基本的単位である学級について,その規模の適正化を図るとともに,教育活動を円滑に行うために必要な教職員を確保するため,法律で公立の小・中・高等学校・中等教育学校と盲・聾・養護学校の学級編制・教職員定数の標準を定め,計画的に改善しています。

(2)公立義務教育諸学校教職員定数改善計画と公立高等学校教職員定数改善計画

 教育の成否は教員に負うところが大きく,教職に優れた人材を必要数確保することは極めて重要です。このため,公立義務教育諸学校の教職員定数については,これまで7次にわたり,計画的な改善を行い,40人学級の実現や基礎学力の向上のための定数改善を実施してきました。平成13年〜17年度までの5か年計画で実施した第7次公立義務教育諸学校教職員定数改善計画では,基礎学力の向上ときめ細かな指導を目指し,算数,理科などの教科に応じ,20人程度の少人数指導や習熟度別学習指導などのきめ細かな指導を行う学校の取組に対する支援等を行うため,2万6,900人の教職員定数の改善を行いました。この結果,初等教育の教員1人当たり児童生徒数はOECD調査で比較すると,日本は20.6人(2001年)から19.9人(2003年)に改善しました。一方で,OECD諸国の平均は16.5人(2003年)となっており,まだ,日本の数値が上回っている状況です(図表2-2-17)。

図表●2-2-17 教員1人当たり児童生徒数

 第7次公立義務教育諸学校教職員定数改善計画の完成を受けて,平成17年5月,中央教育審議会の義務教育特別部会での審議において,新たな改善計画を策定すべきとの意見が多く出され,文部科学省において具体的・専門的に検討することとなり,同月,「教職員配置等の在り方に関する調査研究協力者会議」を設けました。8月には,同会議から,少人数教育に対するニーズが高いことや,今日的な教育上の課題に対応するため,18年度から新しい教職員定数改善計画を策定することが適当との報告がなされました(「今後の学級編制及び教職員配置について」)。
 これらを受け,文部科学省は,平成18年度から5年間の新しい教職員定数改善計画を作成し,18年度の概算要求を行いました。しかしながら,公務員人件費の縮減などを図る総人件費改革という行政改革の方針が政府全体の方針として出されたことから,同計画の策定は見送られました。一方で,特別支援教育や食育の充実は,喫緊の今日的教育課題であることから,既存の教職員配置の見直しを行った上で,329人の定数改善を図りました。
 公立高等学校の教職員定数についても,これまで6次にわたり,計画的な改善を行い,40人学級の実現や多様な高校教育の展開のための定数改善を実施してきました。平成13年〜17年度までの5か年計画で実施した第6次公立高等学校教職員定数改善計画では,多様な高校教育の展開に対応するため,学科や教科の特性に応じた指導等の充実(習熟度別授業,少人数による授業,中高一貫校,総合学科,単位制校への加配の拡充)などのため,7,008人の教職員定数の改善を行いました。

(3)学級編制の弾力化

 公立義務教育諸学校の学級編制については,現在,法律の定めにより,1学級40人を上限とすることを標準として,各都道府県教育委員会が基準を定めることとなっています。
 以前は国の標準(40人)を下回る学級編制基準を定めることは認められていませんでしたが,地域の実情や児童生徒の実態に応じた学校教育にも対応できるよう,平成13年度から,特に必要と認められる場合には,各都道府県教育委員会の判断により,特例的に国の標準を下回る少人数の学級編制基準を設けることを可能にしました。
 これに加えて,平成15年度から,各都道府県教育委員会の判断により,例えば学年などを限定する特例的な場合に限らず,40人を下回る一般的な基準(例えば県内一律の38人学級編制)を定めることも可能となるよう弾力化を図るとともに,個別の学校ごとの事情に応じて,児童生徒に対する教育的配慮の観点から,柔軟な学級編制が可能であることを改めて周知し,学級編制の一層の弾力化を図りました。
 さらに,平成16年度からは,義務教育費国庫負担制度の改革(総額裁量制の導入)に伴い,各都道府県教育委員会の判断で少人数学級編制を行う場合,教育指導の改善に関する特別な研究が行われているものについては,国庫負担対象となる教職員定数を活用することが可能になるよう,教職員定数の運用についても弾力化を図りました。
 これにより,平成18年度は,小学校低学年を中心に46道府県において少人数学級が実施されています。

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