近年,生命を大切にする心や思いやりの心などの倫理観や規範意識,社会性の育成などが十分ではないとの指摘がなされています。このため,学校,家庭,地域が十分連携を図りながら,子どもたちの豊かな人間性や社会性などをはぐくむ道徳教育の充実がますます重要になっています。
学校教育においては,人間として調和のとれた育成を目指して,子どもの発達段階に応じた心に響く道徳教育を展開することとしています。
幼稚園では,各領域を通して総合的な指導を行い,道徳性の芽生えを培うこととしています。小・中学校では,「道徳」の時間(週当たり1単位時間)をはじめとして,各教科,特別活動,「総合的な学習の時間」それぞれの特質に応じて適切な指導を行い,学校の教育活動全体を通じて道徳教育を行うこととしています。高等学校では,人間としての在り方・生き方に関する教育を,学校の教育活動全体を通じて行うことにより,その充実を図ることとしています。
小・中学校の学習指導要領における道徳の内容は,児童生徒の道徳性を次の四つの視点から分類・整理し,内容の全体構成や相互の関連性・発展性を明確にして,児童生徒の内面に根ざした道徳性の育成を図ることとしています。
現行学習指導要領では,各学校において道徳教育の一層の充実が図られるよう,善悪の判断や郷土を愛することなどについての内容を充実するとともに,体験活動を生かした道徳教育の指導の工夫,魅力的な教材の開発や活用,校長や教頭の参加,地域の人々の積極的な参加や協力などの取組を促すなどの改善を図っています。
近年,生命の大切さや他人を思いやる心,善悪の判断などの規範意識や公共心の低下が指摘されています。このような中,子どもたちの豊かな人間性や社会性などをはぐくむために,子どもたちの発達段階に応じた心に響く道徳教育の充実がますます重要になってきています。文部科学省では,学校における道徳教育の一層の充実を図るため,様々な施策を進めています。主なものは次のとおりです。
全国の小・中学生に配付している「心のノート」は,道徳の内容を分かりやすく表し,道徳的価値について自ら考えるきっかけとなることをねらいとして作成した,道徳教育のための教材です。「心のノート」は,道徳の時間をはじめ,学校の教育活動の様々な場面で使用したりするとともに,児童生徒が自らページを開いて書き込んだり,家庭において話題にしたりするなど,生活の様々な場面において活用することができるものです。
「命を大切にする」ことへの自覚を深めるなど児童生徒の道徳性を育成するため,教育委員会・学校の創意工夫を生かして,指導内容,指導方法及び教材開発等についての実践研究を行っています。また,教員の指導力向上のための「道徳教育を推進するための中核となる指導者の養成を目的とした研修」の開催などの取組を進めています。
平成18年度より新たに,学校の道徳教育を中核に,地域の様々な団体や機関,有志などの積極的な支援の下で,全国のモデルとなる子どもたちの豊かな心を育てる幅広い教育活動の展開を行い,その成果を普及することとしています。
児童生徒が互いの考えや気持ちを伝え合う力を高め,生活上の問題を言葉で解決する力を育てるとともに,相互理解や望ましい人間関係づくりを進めるためのカリキュラムなどの在り方について実践調査研究を行っています。
近年,都市化や少子化,地域社会における人間関係の希薄化などが進む中で,児童生徒の豊かな人間性や社会性などをはぐくむためには,成長段階に応じて,ボランティア活動など社会奉仕体験活動や自然体験活動をはじめ,様々な体験活動を行うことが大切です。
文部科学省では,平成14年度から「豊かな体験活動推進事業」を実施し,各都道府県に「体験活動推進地域・推進校」(14年度〜),「地域間交流推進校」(15年度〜),「長期宿泊体験推進校」(16年度〜)を指定して,他校のモデルとなる体験活動の推進を図っています。また,17年度からは,命の大切さを学ぶのに有効な体験活動について調査研究を実施しています。これらの取組の成果は全国を6ブロックに分けた交流会の実施や,事例集の作成・配付を通じて普及を図っています。