第1節 文化芸術振興の意義と文化芸術振興施策の総合的な進展

6.文化芸術をめぐる国際的な状況の進展

 文化芸術振興基本法の成立後,国際的な動向については,文化芸術をめぐる国際的な枠組みづくりなども,大きな進展が見られます。
 不法な文化財取引を実効的に防止し,各国の文化財を不法な輸出入などの危険から保護することを目的として,我が国は,平成14年に,「文化財の不法な輸入,輸出及び所有権移転を禁止し及び防止する手段に関する条約」を締結し,あわせて「文化財の不法な輸出入等の規制等に関する法律」の制定と文化財保護法の改正を行いました。
 国際連合教育科学文化機関(ユネスコ)の世界遺産(文化遺産)については,2004年(平成16年)に「紀伊山地の霊場と参詣道」が世界遺産に登録され,我が国の文化遺産で登録されているものは10件になりました。また,2006年(平成18年)1月に「石見銀山遺跡」,2006年(平成18年)12月に「平泉の文化遺産」の推薦書を提出しました。このほか,世界遺産委員会の委員国(2003年〜2007年(平成15年〜19年))を務めるとともに,国際連合教育科学文化機関(ユネスコ)文化遺産保存日本信託基金などを通じ,世界における文化遺産の保全のための様々な支援を行っています。
 我が国は無形の文化遺産についてもユネスコを中心とした国際的な取組に協力しています。「人類の口承及び無形遺産に関する傑作」として,2001年(平成13年)に「能楽」が,2003年(平成15年)に「人形浄瑠璃文楽」が,2005年(平成17年)に「歌舞伎(伝統的な演技演出様式によって上演される歌舞伎)」が,宣言されました。さらに,2003年(平成15年)にユネスコ総会で採択された「無形文化遺産の保護に関する条約」が,2006年(平成18年)4月に発効しました。この条約の締約国(2006年8月9日現在60か国)の中で,我が国は政府間委員国に選出され,条約に関する重要事項を決定する際,主導的な役割を果たすこととなっています。
 また,2005年(平成17年)10月に,ユネスコ「文化的表現の多様性の保護及び促進に関する条約」(文化多様性条約)が採択され,平成18年6月に国会に報告書が提出されました。この条約は,異なる文化間の相互理解を深め,寛容,対話,協力を重んじる異文化交流を発展させ,世界の平和と安全に結び付けることを目的とするものです。

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