第2章 Society 5.0の実現に向けた科学技術・イノベーション政策

第1節 国民の安全と安心を確保する持続可能で強靱(きょうじん)な社会への変革

 我が国の社会を再設計し、世界に先駆けた地球規模課題の解決や国民の安全・安心を確保することにより、国民一人ひとりが多様な幸せ(well-being)を得られる社会への変革を目指しており、そのために行っている取組を報告する。

1 サイバー空間とフィジカル空間の融合による新たな価値の創出

 第6期基本計画では、Society 5.0の実現に向け、サイバー空間とフィジカル空間を融合し、新たな価値を創出できることを目指している。具体的には質の高い多種多様なデータによるデジタルツインをサイバー空間に構築し、それを基にAIを積極的に用いながらフィジカル空間を変化させ、その結果をサイバー空間へ再現するという、常に変化し続けるダイナミックな好循環を生み出す社会へと変革することを目指すこととしている。

❶ サイバー空間を構築するための戦略、組織

 デジタル庁では、進展目覚ましい技術の価値を最大限活用できるよう、現場で人の目に頼る規制等、アナログ的な手法を前提とした古い規制の見直しを推進している。2022年12月及び2023年5月に策定した工程表等に基づき実施してきた国のアナログ規制の見直しについては、2026年5月15日時点で約99%の条項で予定された見直しが完了し、残る約1%についても引き続き着実な見直しを実施していくとともに、この「制度の見直し」を「技術の実装」との好循環につなげていくことを目指している。また、地方の条例等に係る見直しを促進するため、国の知見の還元を含め、地方への取組支援を実施している。具体的には、一般的な支援・情報発信に加え、見直しに前向きな団体に固有の課題等に寄り添った支援を提供する「個別型支援」や見直し作業プロセスへの生成AIの活用余地の研究など、各団体の取組フェーズに応じた総合的な支援メニューを提供することで、デジタル規制改革の面から地方創生を強力に後押ししていく。さらに、規制所管府省庁や企業等と協力し、アナログ規制の見直し等に活用可能な技術の対応関係を整理、可視化した「テクノロジーマップ」の初版を2023年10月に公表し、今後も技術の進展等を踏まえ随時更新していくこととしている。

 また、デジタルの活用により、一人ひとりのニーズに合ったサービスを選ぶことができ、多様な幸せが実現できる社会を目指し、デジタルにより政府が取り組むべき喫緊の課題と対応の方向性を示す「デジタル社会の実現に向けた重点計画」を策定している。

❷ データプラットフォームの整備と利便性の高いデータ活用サービスの提供

 デジタル庁は、教育、防災等の準公共・相互連携分野において、デジタル化、データ連携を推進し、ユーザーに個別化したサービスを提供するため、府省庁横断的な体制の下、それぞれの分野での調査・実証等を進めている。

 経済産業省では、情報処理推進機構等とともに、企業や業界、国境をまたいだデータ連携に関する官民協調の取組であるウラノス・エコシステムを推進し、ユースケース拡大や海外への展開を進めている。一般社団法人自動車・蓄電池トレーサビリティ推進センターが2024年に蓄電池サプライチェーンでのカーボンフットプリント算出に向けたデータ連携システムの運用を開始したほか、自動車1台分のライフサイクル全体での二酸化炭素排出量可視化、製品含有化学物質情報管理のためのシステム開発、電池パスポートの実現に向けた検討が進んでいる。

 内閣府では、SIP第2期課題「ビッグデータ・AIを活用したサイバー空間基盤技術」において、分野を越えたデータ連携を実現する「分野間データ連携基盤技術」を2022年度までに開発した。同技術は一般社団法人データ社会推進協議会のDATA-EX(※1)に活用され、社会実装が進められている。

 文部科学省では、「AI等の活用を推進する研究データエコシステム構築事業」を通じて、全国的な研究データ基盤の高度化及び利活用に向けた環境整備支援、大学の研究データマネジメントに係る体制・ルール整備支援等を実施している。

 国土技術政策総合研究所は、デジタル社会の実現を見据え、人流ビッグデータを利用して建物用途ごとの来訪客数や交通手段の利用者の交通特性を推計する手法の開発に関する研究を実施している。

❸ データガバナンスルールなど信頼性のあるデータ流通環境の構築

 信頼性のあるデータ流通の基盤となるトラストの確保に向け、デジタル庁は、「本人確認ガイドラインの改定に向けた有識者会議」において、本人確認とデジタルアイデンティティを取り巻く環境の変化等を踏まえ、政府機関による本人確認手法の具体的な在り方について議論してきた。2025年9月には、議論の結果を踏まえ、デジタル社会推進標準ガイドラインの一つである「DS-500 行政手続におけるオンラインによる本人確認の手法に関するガイドライン」を全面改定した「DS-511 行政手続等での本人確認におけるデジタルアイデンティティの取扱いに関するガイドライン」を公開した。

コラム2-2 Society 5.0の実現に向けたデータガバナンス

 Society 5.0の実現には、企業が国境を越えてデータを最大限に利活用することが不可欠です。そして、利活用のためには、データの適切な管理、ガバナンスが欠かせません。2025年6月にデジタル庁が公表した「データガバナンス・ガイドライン」は、主に経営者を対象に、データの適切な管理のために、以下の4つの柱を示しています。
 ①越境データの現実に即した業務プロセス:国内外の法令等の持続的な更新を前提に、データのライフサイクルにわたって相互運用性を確保すること。②データセキュリティ:データそのものに焦点を当て、ルール・技術・プロセスをライフサイクルの各フェーズに応じて実装し、データに付随する権利を保護すること。③データマチュリティ:データによる価値の最大化とリスクの最小化を実現する能力を継続的に改善し、取組を積極的に発信すること。④先端技術の利活用に関する行動指針:自社の経営戦略にとって機微なデータを見定め、法令等に基づきその利用に関する指針を定め、随時見直すこと。
 これらを実践することは、自企業でのデータ活用だけでなく、他企業とのデータ共有にも有用であり、社会全体に寄与するものです。

❹ デジタル社会に対応した次世代インフラやデータ・AI利活用技術の整備・研究開発

1.デジタル社会に対応した次世代インフラの整備・研究開発

 総務省は、Society 5.0の実現に向けたデジタル化の進展による通信量の急増、サービス要件の多様化やネットワークの複雑化に対応するため、1運用単位当たり10Tbps(※2)を超える光伝送システムの実用化を目指した研究開発及びAIを活用した通信ネットワーク運用の自動化等を実現するための研究開発を実施した。

 さらに、2030年代のあらゆる産業・社会活動の基盤になると想定される次世代の情報通信基盤Beyond 5Gの実現に向け、2023年3月に情報通信研究機構に設置した基金を活用し、社会実装・海外展開を目指した研究開発・国際標準化を推進している。

 情報通信研究機構は、テラヘルツ波を利用した100Gbps級の無線通信システムの実現を目指したデバイス技術や集積化技術、信号源や検出器等に関する基盤技術の研究開発を行った。また、ICT利活用に伴う通信量及び消費電力の急激な増大に対処するため、ネットワーク全体の超高速化と低消費電力化を同時に実現する光ネットワークに関する研究開発を推進した。

 文部科学省及び科学技術振興機構は、Society 5.0以降の未来社会における大きな社会変革を可能とする革新的なICTの創出と、革新的な構想力を有した高度研究人材の育成に向け、「情報通信科学・イノベーション基盤創出(CRONOS)」を推進している。

 経済産業省では、更に超低遅延や多数同時接続といった機能が強化された5G(以下「ポスト5G」という。)について、今後、スマート工場や自動運転といった多様な産業用途への活用が見込まれているため、ポスト5Gに対応した情報通信システムや当該システムで用いられる半導体等の関連技術を開発するとともに、ポスト5Gで必要となる先端的な半導体の製造技術の開発に取り組んだ。また、産業のIoT(※3)化や電動化が進展し、それを支える半導体関連技術の重要性が高まる中、我が国が保有する高水準の要素技術等を活用し、エレクトロニクス製品の飛躍的な省エネルギー化を実現するため、次世代パワー半導体や半導体製造装置の高度化に向けた研究開発に取り組んでいる。

2.AI利活用技術の研究開発

 政府においては、AIのイノベーションを促進しつつ、リスクに対応するため、「人工知能関連技術の研究開発及び活用の推進に関する法律(以下「AI法」という。)案」を第217回通常国会に提出し、令和7年5月28日に成立、同年6月4日に一部施行(令和7年法律第53号)され、同年9月1日にはAI戦略本部の設置に係る規定等も含め、全面施行された。同年12月19日には、同法第13条に基づき、信頼できるAIの実現に向けて、国際的な規範の趣旨に即した「人工知能関連技術の研究開発及び活用の適正性確保に関する指針」を策定した。また、同年12月23日には、AIの利活用や開発に関する政府の方針をまとめた初の国家戦略として、AI法に基づく「人工知能基本計画」を閣議決定した。加えて、AIセーフティ・インスティテュート(AISI)においては、AI安全性評価に関するワーキンググループ(事業実証WG)を設置し、AIシステム特有のセキュリティに関するレポートを公開する等の取組を進めている他、AISI国際ネットワーク等を通じて他国のAI安全性関連機関との国際的な協力を進めている。さらには、AI(フロンティアAIモデル、AIエージェント、フィジカルAI等)の安全性やセキュリティ等の評価に向けた検討を進める等、AISIの機能強化も進めている。

 関係府省庁における取組として、総務省は、情報通信研究機構において、脳活動計測・分析技術を用い、人の感性を客観的に評価するシステムの開発などを実施するとともに、脳活動等に現れる無意識での価値判断等を応用した効率的な情報処理プロセスの開発や脳情報通信技術を活用したAIの普及によって生じる倫理的・法的・社会的課題(ELSI(※4))に関する取組等を実施し、社会実装に向けた取組を進めている。また、誰もが分かり合えるユニバーサルコミュニケーションの実現を目指して、音声、テキスト、センサーデータ等の膨大なデータを用いた深層学習技術等の先端技術により、多言語翻訳、行動支援等の研究開発・実証を実施している。さらに、我が国における大規模言語モデル(LLM(※5))の基盤的な開発力を国内に醸成するため、LLMの開発に必要となる大量・高品質な日本語を中心とする学習用言語データを整備・拡充し、民間企業等へ提供する取組やAIの信頼性を評価する基盤の構築に向けた研究開発を行っている。

 文部科学省は、理化学研究所に設置した革新知能統合研究センターにおいて、①深層学習の原理解明や汎用的な機械学習の基盤技術の構築、②我が国が強みを持つ分野の科学研究の加速や我が国の社会的課題の解決のためのAI基盤技術等の研究開発、③AI技術の普及に伴って生じるELSIに関する研究などを実施するとともに、科学技術振興機構を通じて、AI等の分野における若手研究者の独創的な発想や、新たなイノベーションを切り拓(ひら)く挑戦的な研究課題に対する支援(AIP(※6)ネットワークラボ)を一体的に推進することで、AI基盤技術に関する政府全体での総合的な取組に貢献している。また、情報・システム研究機構国立情報学研究所に設置した大規模言語モデル研究開発センターにおいて、アカデミアを中心として、産学官の多様なプレーヤーが参画する生成AIモデルの研究開発に関するオープンなコミュニティを形成し、生成AIモデルに関する研究力・開発力の醸成及び生成AIモデルの学習・生成機構の解明等による透明性・信頼性の確保に資する研究開発に取り組んでいる。さらに、文部科学省では「AI for Science の推進に向けた基本的な戦略方針」(令和8年3月31日策定)の下、AIを科学研究に組み込み、研究の生産性・効率性を向上させて研究者の創造性を最大化する「AI for Scienceによる科学研究革新プログラム」において、重点領域への集中投資により世界を先導する研究成果の創出を目指す「AI for Science革新的研究推進事業(ARiSE)」と、あらゆる分野におけるAI for Scienceの波及・振興による科学研究力の底上げを目指す「AI for Science萌芽的挑戦研究創出事業(SPReAD)」を両輪として実施する。加えて、計算基盤(「富岳(ふがく)」、「富岳(ふがく)」の次世代となる新たなフラッグシップシステム、HPCI(※7))、研究データ基盤(NII RDC(※8)等)、情報流通基盤(SINET(※9))、先端研究施設・設備・機器、自動・自律・遠隔化された研究環境等の研究インフラの一体的な構築を通じて、AI for Scienceを推進する。このほか、理化学研究所において「科学研究向けAI基盤モデルの開発・共用」事業により、我が国が強みを有する分野の科学研究の加速等に取り組んでいる。

 また、「国家戦略分野の若手研究者及び博士後期課程学生の育成事業(BOOST(※10))次世代AI人材育成プログラム」において、緊急性の高い国家戦略分野として設定した次世代AI分野(AI分野及びAI分野における新興・融合領域)への挑戦を志す若手研究者に対し、研究費の支援を通じて、自由に独立して研究に従事し、ステップアップできる環境の構築及び処遇向上に取り組んでいる。

 経済産業省は、2015年5月、産業技術総合研究所に設置した「人工知能研究センター」に優れた研究者・技術を結集し、AI技術が実世界に溶け込んだ製品・サービスを実現し、生産性向上に寄与するための研究開発を行っている。具体的には、画像・音響・言語・3次元点群等のモダリティや、その組合せによるフィジカル領域のAI基盤モデルを構築している。また、産業技術総合研究所において、大規模で省電力のAI学習向け計算インフラ「AI橋渡しクラウド(ABCI(※11))」を構築し運用している。国内の開発需要の増加を踏まえ、2023年度補正予算により、本計算インフラの計算能力を7倍以上拡充し、研究機関等の生成AIの研究開発を支援するために計算資源を優先配分している。

 また、IoT社会の到来により増加した膨大な量の情報を効率的に活用するため、ネットワークのエッジ側で動作する超低消費電力の革新的AIチップに係るコンピューティング技術、新原理により高速化と低消費電力化を両立する次世代コンピューティング技術(脳型コンピュータ、量子コンピュータ、光分散コンピュータ等)の開発に取り組んだ。

コラム2-3 AI国家戦略最前線
~AI法施行、AI戦略本部始動、AI基本計画閣議決定~

 令和7年9月、「AI法」(人工知能関連技術の研究開発及び活用の推進に関する法律)が施行されました。イノベーションの促進とリスク対応の両立を理念とし、我が国を世界で最もAIを開発・活用しやすい国とすることを目指しています。
 AIは急速に進化しており、生成AIの登場によって文章・画像・動画を非常に簡単に作れるようになりました。こうしたものだけでなく、大きなゴールを人間が設定すれば自律的にタスクをこなす「AIエージェント」や、AIとロボットを組み合わせた「フィジカルAI」など、多様な技術も進展しています。
 AIはあらゆる分野に関係し、研究開発から利活用まで一体的に政策を講じる必要があると考えられることから、内閣総理大臣をヘッドとし、全閣僚をメンバーとする「AI戦略本部」を設置するとともに、同年12月には、政府のAIに関する国家戦略である「AI基本計画」を初めて策定しました。AI基本計画では、「AIを使う」「AIを創る」「AIの信頼性を高める」「AIと協働する」という四つの方針を掲げています。これらの方針に沿って、AIの利活用と研究開発を推進し、我が国が抱える社会課題の解決や国民生活の質の向上をもたらし、安全保障や平和構築に貢献しようとしています。
 また、リスクへの対応として、AIの適正性の確保に関する「AI指針」を策定しました。これは、事業者、国民等の全ての主体におけるAIの研究開発及び活用の適正な実施に係る自主的かつ能動的な取組を促すものです。そのほか、AIの研究開発、活用の実態把握を行い、国民の権利利益を侵害するおそれのある事案があれば分析して対策を検討し、必要に応じて、事業者等への指導・助言・情報提供を実施することとしています。
 このように、新しく制定されたAI法の下、我が国でイノベーションの促進とリスク対応を両立させるための枠組みが整いました。ただし、これらの枠組みには罰則規定はなく、既存の法律に違反する個別の事案については、それに基づいて罰せられることになります。
 AIの技術発展のスピードはすさまじく、世界各国でも開発競争や投資が進み、各国で法律や政府計画が打ち出されています。我が国は、国内はもちろん、世界情勢の変化に柔軟かつ迅速に向き合いながら、AI政策を一体的に進めていきます。

コラム2-4 AI for Scienceを支えるGPU活用支援
~HAIRDESCの挑戦~

 近年、ムーアの法則の限界や消費電力当たりの半導体性能向上の鈍化に伴い、GPUが演算加速デバイスとして重要性を増しています。GPUは高並列処理と高帯域幅メモリとの親和性から大規模科学技術計算で有効ですが、高精度浮動小数点演算中心の従来手法には限界があり、AIを組み合わせた「AI for Science」が注目されています。AIはデータ科学の活用、推測による演算補完、低精度演算の導入やコード開発支援などを通じて計算科学を進化させ、GPUはその両立に不可欠な役割を果たします。
 しかし我が国では従来CPU中心の開発が主であったため、GPU対応アプリケーションや人材育成が遅れているのが現状です。これに対応するため、2025年10月に一般財団法人高度情報科学技術研究機構(RIST)内に次世代HPC・AI研究開発支援センター(HAIRDESC)が設立されました。HAIRDESCはRISTを中心に筑波大学・東京大学・東京科学大学、理化学研究所や複数の大学スーパーコンピューティングセンター、AMD社・NVIDIA社などの協力の下、以下の取組を推進します。

 <主な取組>
 ・GPU教育の標準コースと教育教材の整備
 ・アプリケーション開発者コミュニティの形成
 ・重要GPUアプリケーションへの直接支援
 ・先進的GPUコンピューティングの研究開発
 ・GPU技術における国際連携と産業界への普及促進

 これらを通じて、2030年頃を見据えた次世代フラッグシップシステム(コード名:富岳(ふがく)NEXT)やHPCIのGPU化に必要な人材育成とアプリケーション対応を加速し、我が国のGPU技術発展を図ります。

❺ デジタル社会を担う人材育成

 我が国の社会・産業構造の大きな変化が見込まれる中、分野によらずAIやロボットを適切に活用できる人材の需要が高まっている。

 文部科学省では、「AI戦略2019」(2019年6月11日統合イノベーション戦略推進会議決定)で掲げられた2025年度までの目標である「文理を問わず全ての大学・高専生(約50万人卒/年)が初級レベルの能力を習得すること(以下、リテラシーレベル)」、「大学・高専生(約25万人卒/年)が自らの専門分野への応用基礎力を習得すること(以下、応用基礎レベル)」の実現のため、数理・データサイエンス・AI教育の基本的考え方、学修目標・スキルセット、教育方法などを体系化したモデルカリキュラムを策定・活用するとともに、教材等の開発や、教育に活用可能な社会の実課題・実データの収集・整備等を通じて全国の大学などへの普及・展開を推進している。また、大学・高等専門学校が実施する数理・データサイエンス・AI教育のうち、優れた教育プログラムを政府として認定している(2026年2月時点でリテラシーレベル612件、応用基礎レベル388件の教育プログラムを認定し、「AI戦略2019」における目標を達成)。各大学等の取組について、政府だけでなく産業界をはじめとした社会全体として積極的に評価する環境を醸成することで、技術の進展の著しいデジタル社会で活躍するための基本的な素養を身に付ける教育を目指している。

 さらに、デジタル等の成長分野をけん引(いん)する高度専門人材の育成に向けて、大規模大学を含めて意欲ある大学・高等専門学校が成長分野への学部等転換・重点分野の人材育成に予見可能性を持って踏み切れるよう、機動的かつ継続的な支援を行っている。

 また、高度な統計学のスキルを有する人材の育成及び統計人材育成エコシステムの構築を目的とした「統計エキスパート人材育成プロジェクト」に2021年度より取り組んでいる。

 経済産業省は、情報処理推進機構を通じて、AIに限らずITを駆使してイノベーションを創出することのできる独創的なアイディアと技術を有するとともに、これらを活用していく能力を有する優れた個人(ITクリエータ)を発掘・育成する「未踏事業」を実施している。

❻ デジタル社会の在り方に関する国際社会への貢献

 デジタル庁は、信頼できるAIの構築のためにも重要である、信頼性のある自由なデータ流通(DFFT(※12))の推進に向け、経済協力開発機構(OECD(※13))の下に設立した国際的な枠組み(IAP(※14))等と連携し、規制の透明性、プライバシー、データセキュリティ等、越境データ流通に関する課題の解決に取り組んでいる。

 総務省は、「グローバルコミュニケーション計画2025」(2020年3月策定)に基づき情報通信研究機構の多言語翻訳技術の更なる高度化により、ビジネスや国際会議における議論等を想定したAIによる「同時通訳」を実現するための研究開発を実施し、2025年日本国際博覧会(大阪・関西万博)にも活用した。

 外務省及び国際協力機構は、政府開発援助事業において開発途上国のデジタル社会構築に資する協力を推進するため、開発の各分野でのデジタルの利活用、その基盤となるデジタル化を担う人材・産業の育成、サイバーセキュリティの能力強化等に取り組んでいる。

❼ 新たな政策的課題

 デジタル庁は、「デジタル社会の実現に向けた重点計画」等を通じて、各府省庁における新たな政策的な課題への対応等を推進した。

2 地球規模課題の克服に向けた社会変革と非連続なイノベーションの推進

 政府は、令和5年2月の「GX実現に向けた基本方針」閣議決定以降、エネルギー安定供給・経済成長・脱炭素の同時実現を目指すグリーントランスフォーメーション(GX)に向けた取組を進めている。

 令和7年2月には、「脱炭素成長型経済構造移行推進戦略」(以下「GX推進戦略」という。)を改訂した「GX2040ビジョン」を閣議決定し、5月には「脱炭素成長型経済構造への円滑な移行の推進に関する法律」(令和5年法律第32号)の改正法案が成立した。

 また、2050年までに、温室効果ガスの排出を全体としてゼロにする、2050年カーボンニュートラルの実現に向け、2030年から先の新たな温室効果ガス削減目標及びその実現に向けた対策・施策を含む「地球温暖化対策計画」を2025年2月に閣議決定した。

 こうした、2050年カーボンニュートラルの実現に向けた取組に加え、健全で効率的な廃棄物処理及び高度な循環経済(サーキュラーエコノミー)の実現に向けた対応を進めていくことで、グリーン産業の発展を通じた経済成長へとつなげ、経済と環境の好循環が生み出されるような社会の構築を目指している。

❶ 革新的環境イノベーション技術の研究開発・低コスト化の促進

1.カーボンニュートラルに向けた研究開発の推進

 「2050年カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略」(2021年6月策定)やGX推進戦略及びこれを改訂したGX2040ビジョンに基づき、革新的な技術開発に対する継続的な支援を行う「グリーンイノベーション基金事業」等を活用し、革新的技術の研究開発・実証とその社会実装を推進している。

 文部科学省及び科学技術振興機構は、2050年カーボンニュートラルの実現等への貢献を目指し、従来の延長線上にない非連続なイノベーションをもたらす革新的技術を創出するため、「革新的GX技術創出事業(GteX(※15))」及び「戦略的創造研究推進事業 先端的カーボンニュートラル技術開発(ALCA-Next(※16))」を推進している。GteXでは「蓄電池」、「水素」、「バイオものづくり」の三つの重点領域におけるオールジャパンのチーム型研究開発を、ALCA-Nextでは幅広い領域におけるチャレンジングな基礎研究により様々な技術シーズを育成する探索型の研究開発を実施している。また、「未来社会創造事業『地球規模課題である低炭素社会の実現』領域」において、2050年の社会実装を目指し、温室効果ガスの大幅削減に資する革新的技術の研究開発を実施している。

 経済産業省は、二酸化炭素を資源として捉え、これを回収し、燃料、化学品、コンクリート等に再利用することで、大気中への二酸化炭素排出を抑制するカーボンリサイクルの取組を推進している(第2-2-1図)。そして従来の技術開発に加えて、カーボンリサイクルの定義・意義、現状、課題、今後の見通しを取りまとめた「カーボンリサイクルロードマップ」を2023年6月に策定し、広島県の大崎上島における実証研究拠点の整備・運営や、コスト高や反応効率性等の課題に対応するためグリーンイノベーション基金も活用しながら技術の社会実装を進めている。今後、社会実装に向けては、二酸化炭素の排出者と利用者を連携させる産業間連携の取組が重要であり、新エネルギー・産業技術総合開発機構を通じて、様々な二酸化炭素の集約・利活用の構想についての実現可能性調査を実施している。

 また、二酸化炭素回収・有効利用・貯留(CCUS(※17))技術の実用化を目指し、二酸化炭素大規模発生源から分離・回収・輸送した二酸化炭素を利用し、地中(地下1,000m以深)に貯留する一連のトータルシステムの実証を行ったことに加え、現在は、コストの大幅低減や安全性向上に向けた技術開発を進めている。鉄鋼製造においては、水素還元等プロセス技術の開発事業(COURSE50(※18))の成果を踏まえ、「グリーンイノベーション基金/製鉄プロセスにおける水素活用」において、大幅な二酸化炭素排出削減を目指し、水素を用いて鉄鉱石を還元する技術の開発を行っている。

 環境省は、火力発電所の排ガスから二酸化炭素の大半を分離・回収する場合のコストや環境影響等の評価のための実用規模の二酸化炭素分離・回収設備による実証や、いまだ実用化されていない浮体式洋上圧入による二酸化炭素回収・貯留(CCS(※19))技術の実現に向けて輸送及びモニタリング等の技術の確立を進めている。また、2018年度からは二酸化炭素回収・有効利用(CCU(※20))に関する実証事業を行っており、人工光合成等による二酸化炭素からの化学原料生成といった取組及びこれらのライフサイクルを通じた二酸化炭素削減効果の検証・評価を行っており、人工光合成技術の早期の社会実装に向け、2025年9月に「人工光合成の社会実装ロードマップ」を策定した。

 加えて、「地域共創・セクター横断型カーボンニュートラル技術開発・実証事業」において、地球温暖化対策の強化につながる二酸化炭素排出削減効果の高い技術の開発・実証を行っている。例えば、中小規模の廃棄物発電施設においても自立可能な、小規模かつ環境負荷の小さい二酸化炭素分離回収技術の開発や、既存の都市ガスインフラを活用したメタン熱分解により水素と高付加価値カーボンの製造を図る技術の開発・実証等を実施している。2023年度からはスタートアップ企業の事業化検討に必要な実現可能性調査や概念実証を支援するスタートアップ枠を新設し、あらゆる分野で更なる二酸化炭素削減が可能なイノベーションを創出し、革新的技術の早期社会実装に取り組んでいる。

 経済産業省は、航空分野における脱炭素化の取組に寄与する持続可能な航空燃料(SAF(※21))の安定的・効率的な生産と供給を目指し、ガス化・FT合成、合成燃料、コプロセッシング等のSAF製造技術や原料の多様化に資する開発支援等を実施している。

 また、「グリーンイノベーション基金/CO2等を用いた燃料製造技術開発」事業において、SAFの大量生産が可能となる技術(ATJ技術)開発を支援している。

 メタネーションについては、大量供給を可能とする、合成メタンの大規模かつ高効率な生産技術の確立が必要である。このため、サバティエ反応によるメタネーション設備大型化に向けた技術開発・実証を実施している。さらに、「グリーンイノベーション基金/CO2等を用いた燃料製造技術開発」事業により、生産効率を飛躍的に高める革新的メタネーション技術の開発を進めている。

 バイオものづくりについては、カーボンニュートラルの実現に向けた有力な選択肢の一つとなっている。「グリーンイノベーション基金/バイオものづくり技術によるCO2を直接原料としたカーボンリサイクルの推進」において、バイオものづくりの中核を担う微生物等改変プラットフォーム事業者と二酸化炭素を直接原料にして大規模発酵生産等を担う事業会社等の育成・強化を図るとともに、微生物等が持つ二酸化炭素固定能力を最大限に引き出し、二酸化炭素を原料としたバイオものづくりによるカーボンリサイクルを推進する取組を開始している。さらに、「バイオものづくり革命推進基金」により、未利用資源の収集・資源化、微生物等の改変技術、生産・分離・精製・加工技術、社会実装に必要な制度や標準化等のバイオものづくりのバリューチェーン構築に必要となる技術開発及び実証を一貫して支援し、二酸化炭素の排出量を抑えながら燃料や素材を生産する技術を開発している。

 理化学研究所は、石油化学製品として消費され続けている炭素等の資源を循環的に利活用することを目指し、植物科学、ケミカルバイオロジー、触媒化学、バイオマス工学等を礎とした異分野融合研究を実施している。また、バイオマスを原料とした新材料の創成を実現するための革新的で一貫したバイオプロセスの確立に必要な研究開発を実施している。

コラム2-5 微生物が拓く海洋プラスチックごみ問題のない未来

 海洋へ流出したごみは、海洋生態系や人への影響など、深刻な国際問題となっています。
 海洋流出が避けられないプラスチック製品には、海洋中の微生物により生分解されるプラスチックを使用することも対策のひとつであり、製品評価技術基盤機構は、「微生物」の専門性を生かしてこの分野に取り組んでいます。
 我々はこれまでに、岩手大学、広島大学、島根大学、鹿児島大学の協力の下、日本沿岸の複数海域に浸漬した生分解性プラスチックの表面に形成される微生物群集や分解挙動を解析しました(※22)。
 その中で、分解活性が報告されていなかった新規の微生物を含む、多様な微生物の収集に成功し、提供を開始しています(※23)。

 また、海洋における生分解のモデルとなる微生物の混合物(カクテル)を海水に添加することにより、一か月程度で生分解性を確認できる試験法を開発しました。この試験法は、新素材開発の生分解性スクリーニングなどへの活用が期待されます。
 さらに、東京大学を中心とした、海洋研究開発機構、群馬大学、製品評価技術基盤機構、産業技術総合研究所、一般社団法人日本バイオプラスチック協会の研究チームでは、プラスチックごみが最終的に行き着くと考えられている深海においても、生分解性プラスチックが微生物により分解されることを世界で初めて実証しました(※24)。

 我々は、「微生物」と関連データ・技術を通して、生分解性プラスチックの新素材開発・普及を支援し、海洋プラスチックごみ問題のない未来の実現に貢献しています。

2.ムーンショット型研究開発制度における取組

 ムーンショット型研究開発制度(第1章第2節 2 ❹参照)の目標4においては「2050年までに、地球環境再生に向けた持続可能な資源循環を実現」という目標を掲げ、地球環境再生のために持続可能な資源循環の実現による地球温暖化問題の解決(Cool Earth)と環境汚染問題の解決(Clean Earth)を目指している。また、目標5においては「2050年までに、未利用の生物機能等のフル活用により、地球規模でムリ・ムダのない持続的な食料供給産業を創出」という目標を掲げ、食料生産と地球環境保全の両立を目指している。

3.ゼロエミッション国際共同研究センターについて

 2020年1月に産業技術総合研究所はゼロエミッション国際共同研究センターを設置した。同センターにおいては、国際連携の下、温室効果ガス削減技術と制度・評価の融合を通じて、カーボンニュートラル実現に貢献する研究開発を実施しているほか、G20各国・地域の研究機関のクリーンエネルギー技術に関する国際連携を通じて脱炭素社会の実現を目指すイニシアティブ「RD20」や、東京湾岸エリアの企業、大学、研究機関、行政機関等と連携してゼロエミッション技術に係る研究開発・実証、成果普及・活用等に取り組む「東京湾岸ゼロエミッションイノベーション協議会」(ゼロエミべイ)の事務局を担う等、イノベーションハブとしての活動を推進している。

4.農林水産業に関する取組

 持続可能な開発目標(SDGs(※25))や環境を重視する国内外の動きが加速する中、我が国としても持続可能な食料システムを構築し、国内外を主導していくことが急務となっている。このため、農林水産省では、2021年5月に、我が国の食料・農林水産業の生産力向上と持続性の両立をイノベーションで実現する「みどりの食料システム戦略」(以下「みどり戦略」という。)を策定し、2050年までに目指す姿として、14の数値目標(KPI(※26))を掲げて取組を推進している。みどり戦略の実現に向け、2022年7月に施行された「環境と調和のとれた食料システムの確立のための環境負荷低減事業活動の促進等に関する法律(みどりの食料システム法)」(令和4年法律第37号)に基づき、2026年3月末時点で105事業者の計画を認定し、税制・金融措置等により、化学肥料の使用量の低減に寄与する可変(かへん)施肥(せひ)田植機や農業用ドローン、化学農薬の使用量の低減に寄与する水田用除草機など、環境負荷の低減に資する新技術の開発・普及を促進している。また、2023年10月の日ASEAN(※27)農林大臣会合で採択され、2025年10月に改定された「日ASEANみどり協力プラン」に基づいて、我が国で得られた新技術やイノベーションを活かした協力プロジェクトをASEAN各国との間で実施している。2025年5月には、「農林水産分野GHG排出削減技術海外展開パッケージ(通称:ミドリ・インフィニティ)」を策定し、我が国が有する食料安全保障に資する温室効果ガス(GHG)排出削減技術の海外展開を後押ししている。同年6月には、ミドリ・インフィニティの実行ツールとして「みどり脱炭素海外展開コンソーシアム」を設立し、同年11月の国連気候変動枠組条約第30回締約国会議(COP30)において、同コンソーシアム構成員民間企業有志連合から、アグリ・フードシステムへの脱炭素投資の呼び込み等を目的とした声明が発表された。

コラム2-6 農業の未来を創る科学技術の力①
~鳥獣害対策ドローンと赤色レーザーダイオードでの植物の成長促進~

 株式会社NTT e-Drone Technology、一般社団法人地域総研は、新しい鳥獣害対策としてレーザー照射装置を搭載したドローンを開発し、2025年10月から販売を開始しました。ドローンから赤・緑レーザーを照射し、視覚的に強い違和感を与えることで、鳥獣を追い払うことができます。イノシシやシカ、カラスなど幅広い動物に対して効果が確認されており、また、設定した経路を自動で飛ぶので、畑はもちろん鶏舎の屋根など高い場所も鳥獣害対策が行えます。鳥獣を追い払うことで、農作物の被害を減らすことに貢献できるほか、鳥インフルエンザなどの病気を広げる鳥獣を近づけないことで、家畜を守る対策にも役立ちます。

 東京大学は、赤色レーザーダイオード(LD)を光源として用いることで、従来の赤色発光ダイオード(LED)と比較して、植物の成長が促進されることを、世界で初めて確認しました。レタス、シロイヌナズナ、タバコの3種の植物を対象とした比較実験では、いずれの植物においてもLD照射によって光合成効率及び成長指標が向上しました。また、実験期間中、LED照射では葉の黄化や光阻害が生じたのに対し、LD照射ではこれらのストレス症状はほとんど認められませんでした。赤色LDは光合成に最適な波長を高精度に照射できる「次世代型光源」として、植物工場や宇宙などの閉鎖空間における栽培効率の向上が期待されます。

 さらに、2025年6月には、食料・農業・農村基本計画に基づき、スマート農業技術や革新的新品種、環境負荷低減に資する技術の開発などを重点事項として定める「農林水産研究イノベーション戦略2025」を策定した。本戦略も踏まえ、イノベーションの創出に向け、関係省庁と連携した政府全体の取組により、中長期的な視点で取り組むべき研究開発や、生産現場が直面する課題を解決するための研究開発を総合的に推進している。

 スマート農業技術は、農業者の減少下においても生産水準が維持できる生産性の高い食料供給体制を確立するために重要である。

 政府は、「農業の生産性の向上のためのスマート農業技術の活用の促進に関する法律」を、2024年10月に施行(令和6年法律第63号)し、「生産方式革新実施計画」と「開発供給実施計画」の二つの計画認定制度を設け、これらの計画の認定を受けた農業者や事業者に対し、税制措置や金融等の支援措置を講じている。生産方式革新実施計画は、従来の生産方式のままスマート農業技術を導入するだけでは、効果が十分に発揮されないという課題に対応するため、同技術の活用と新たな生産の方式の導入を併せて行う農業者の取組を後押ししている。また、開発供給実施計画においては、同法に基づき2024年9月に策定した「生産方式革新事業活動及び開発供給事業の促進に関する基本的な方針」の中で、水田作や畑作、野菜作、果樹・茶作、畜産・酪農等の営農類型ごとに省力化又は高度化の必要性が特に高いと認められるスマート農業技術等について「開発供給事業の促進の目標(重点開発目標)」として明示し、本目標の達成に資するスマート農業技術等の開発から供給までを行う事業者等の取組を後押ししている。

 農業分野におけるAI研究の事例として、「研究開発とSociety 5.0との橋渡しプログラム(BRIDGE(※28))」の活用により、生育・収量予測等を行う基本AIモデルを開発し、スタートアップを含む民間企業等が地域・品種に応じた高精度なAIを迅速かつ低コストに開発できる環境の整備を進めたほか、普及指導員向けの農業特化型生成AIの開発・実証を行った。

 加えて、農業現場におけるデータ活用の促進に向けて、これまでのオープンAPI(※29)の整備に加え、サービス事業者の育成・機能強化を目的とした、オープンAPIを活用した新たなサービス開発と実証を実施した。

 このほか、様々なデータの連携・提供が可能なデータプラットフォーム「農業データ連携基盤(WAGRI(※30))」を活用した農業者向けのICTサービスが展開されているほか、生産から加工・流通・販売・消費までのデータの相互活用が可能なスマートフードチェーンプラットフォーム(ukabis)を活用し、農業データの川下とのデータ連携実証を実施した。

 また、福島国際研究教育機構(F-REI(※31))において、福島浜通り地域等被災地域における深刻な担い手不足等の課題解決に向け、複数ほ場を安全・効率的に移動・作業する完全無人自動走行システム等を活用した超省力的なスマート稲作体系の研究開発・実証に取り組んでいるほか、営農再開に向け、トラクタ搭載型放射性物質計測ロボットにより農地の放射性物質の分布実態を可視化する技術の確立等に取り組んでいる。

 内閣府は、SIP第3期課題「豊かな食が提供される持続可能なフードチェーンの構築」において、食料やその生産に必要となる肥料等、海外依存度の高い現状のフードチェーンを、持続可能な形で国内に再構築することを目的とした研究開発を2023年度より開始した。

 土木研究所は、農業の成長産業化や強靱(きょうじん)化に資する積雪寒冷地の農業生産基盤の整備・保全管理技術の開発、水産資源の生産力向上に資する寒冷海域の水産基盤の整備・保全に関する研究開発を実施している。

 農林水産省は、農林水産分野における気候変動緩和技術として、水田・畑作・園芸施設等の現場における温室効果ガス排出削減と生産性向上を両立する気候変動緩和技術の開発、炭素貯留能力に優れた造林樹種の育種期間を大幅に短縮する技術の開発に取り組んでいる。また、牛の消化管内発酵由来メタン排出削減技術や、次世代バイオマスアップサイクル技術等の開発とともに、土壌中の窒素の硝化を抑制するBNI(※32)強化作物の開発を推進している。さらに、気候変動適応技術として、温暖化に適応した生産技術の開発、農業・水資源の被害予測システムと水管理等の適応技術の開発のほか、5年、10年先の適地適作・収量予測等のデータベース・マップ化に取り組むとともに、病害虫や侵略的外来種の管理技術の開発に取り組んでいる。

 また、農業者の減少や高齢化、気候変動等の問題に対応するため、多収性、スマート農業技術適性、高温耐性、病害虫抵抗性等を有する新品種の開発を推進するとともに、品種開発の迅速化・効率化に向けた基盤技術として、AIやゲノム情報等のビッグデータ等を活用した育種技術の開発を進めている。さらに、民間企業等における海外の有用な植物遺伝資源を用いた新品種開発を支援するため、アジア地域の各国との二国間共同研究により、海外植物遺伝資源の調査・収集と評価を進め、遺伝資源の特性情報をまとめたデータベースの拡充を行った。

コラム2-7 農業の未来を創る科学技術の力②
~海水からの肥料原料確保とぶどう新品種サニーハート~

 産業技術総合研究所は、海水から肥料原料となるカリウムを選択的に回収する技術を開発しました。プルシアンブルー型錯体(※33)を塗布した電極を用いて、電気化学的にカリウムイオン(K)を吸着・離脱させることで、海水中のナトリウムイオン(Na)を99%以上除去し、カリウムイオンを10倍以上に濃縮できます。今後、更にカリウム濃度を高めることで、海外からの輸入に依存しているカリウム資源を、国内で安定的に生産する技術へと発展できると期待されます。

 農業・食品産業技術総合研究機構は果肉や果皮に渋みが無く、皮ごと食べられる赤色ぶどうの新品種「サニーハート」を開発し、2025年3月に品種登録されました。糖度は約20%と高く、歯切れの良い食感が特徴です。果粒は、「シャインマスカット」や「巨峰」等の主要品種と異なるハート型を連想させる特徴的な形で、マスカットのような香りが混じるフローラルな香りも魅力です。開花期にジベレリン処理(※34)を2回行うことで、種のない果実が生産できます。「サニーハート」は全国のぶどう産地で栽培可能で、主要品種とは果皮色や形が異なるため、皮ごと食べられるぶどう品種の新たな選択肢として期待されます。

5.社会インフラ設備の省エネ化・ゼロエミッション化に向けた取組

 国土交通省は、海運の2050年カーボンニュートラルの実現に向けて、水素・アンモニアを燃料とするゼロエミッション船の技術開発を進めるとともに、内航海運の生産性向上等に資するDXやGX等の社会ニーズに貢献するための技術開発・実証事業への支援を行った。また、環境省は国土交通省と連携し、LNG(※35)・メタノール燃料システム及び省二酸化炭素機器を組み合わせた先進的な推進システムの普及を図るためのLNG・メタノール燃料船の導入支援及びゼロエミッション船等の建造に必要となるエンジン、燃料タンク、燃料供給システム等の生産設備及びそれらの機器等を船舶に搭載するための設備等の整備への支援を行った。

 海上・港湾・航空技術研究所は、国内外に広く適用可能なブルーカーボンの計測手法を確立することを目的に、大気と海水間のガス交換速度や海水と底生系間の炭素フロー等の定量化など、沿岸域における現地調査や実験を推進している。これらのほか、海中での施工に係る研究開発、海洋再生可能エネルギー開発に係る関連システムの安全性評価・最適化に関する研究開発及びゼロエミッション燃料等を用いた船舶の運航時における環境負荷低減に関する研究開発を行っている。

 土木研究所は、社会構造の変化に対応した資源・資材活用・環境負荷低減技術の開発を実施している。

 国土技術政策総合研究所は、省エネ住宅の高性能化を踏まえたエネルギー消費性能の合理的な評価手法の開発、省二酸化炭素に資するコンクリート系新材料の建築物への適用のための性能指標に関する研究や、まちづくりGXによる良好な都市環境の形成を推進するため、地方公共団体等のニーズに対応して都市の緑の調査をAI等の新技術によって効率化し、緑の心理的効果の定量的評価と目標値の検討を技術的に支援するためのツール及び評価方法に関する研究を実施している。

 また、地方公共団体におけるより精緻かつ戦略的な住宅セーフティネット政策の推進のため、地域間連携及び民間賃貸住宅ストック活用との連携を考慮した公営住宅の供給目標量の設定手法に関する研究を実施している。

6.地球環境の観測技術の開発と継続的観測

(1)地球観測等の推進

 地球環境の状況を把握するため、世界中で様々な地球観測が実施されている。「全球地球観測システム(GEOSS(※36))」は、地球観測データ及び科学的知見へのアクセスを容易にするための、複数システムから成る国際的なシステムであり、その構築を推進する国際的な枠組みとして、地球観測に関する政府間会合(GEO(※37))(第2章第1節 6 ❺参照)が設立され、我が国はGEOの執行委員国の一つとして主導的な役割を果たしている。また、2026年以降のGEO戦略(Post-2025 GEO Strategy)では、地球観測データをはじめとする多様なデータを統合し、それをモデルや予測、シナリオ分析等と組み合わせ、課題解決に向けた政策判断や行動に必要な知識や洞察を提供する「地球インテリジェンス」の創出が、新たなテーマとして位置付けられている。

 環境省は、「環境研究総合推進費」における戦略的研究課題の一つとして、気候変動適応の社会実装に必要な科学的知見の創出を目的とする「気候変動適応の社会実装に向けた総合的研究(S-24)」を実施している。これらの戦略的研究をはじめとして、気候変動及びその影響の観測・監視並びに予測・評価及びその対策に関する研究を環境研究総合推進費等により総合的に推進している。

(2)人工衛星等による観測

 宇宙航空研究開発機構は、気候変動観測衛星「しきさい」(GCOM-C(※38))、水循環変動観測衛星「しずく」(GCOM-W(※39))、陸域観測技術衛星2号「だいち2号」(ALOS-2(※40))、先進レーダ衛星「だいち4号」(ALOS-4(※41))等の運用や、降水レーダ衛星(PMM(※42))等の研究開発などを行い、人工衛星を活用した地球観測の推進に取り組んでいる(第2章第1節 3 ❺参照)。

 環境省は、気候変動とその影響の解明に役立てるため、関係府省庁及び国内外の関係機関と連携して、温室効果ガス観測技術衛星「いぶき」(GOSAT(※43))、「いぶき2号」(GOSAT-2)、さらには、2025年6月に打ち上げた温室効果ガス・水循環観測技術衛星「いぶきGW」(GOSAT-GW(※44))による全球の二酸化炭素及びメタン等の観測技術の開発及び観測を進めている。また、航空機・船舶・地上からの観測についても継続的に実施している。GOSATは、気候変動対策の一層の推進に貢献することを目指して、二酸化炭素及びメタンの全球の濃度分布、月別及び地域別の排出・吸収量の推定を実現するとともに、2009年の観測開始から二酸化炭素及びメタンの濃度がそれぞれ季節変動を経ながら年々上昇し続けている傾向を明らかにするなどの成果を上げている。また、人間活動により発生した温室効果ガスの排出源と排出量を特定できる可能性を示した。後継機であるGOSAT-2はGOSATの観測対象である二酸化炭素やメタンの観測精度を高めるとともに、新たに一酸化炭素を観測対象として追加した。二酸化炭素は、工業活動や燃料消費等の人間活動だけでなく、森林や生物の活動によっても排出されている。一方、一酸化炭素は、人間の活動から排出されるものの、森林や生物活動からは排出されない(自然火災を除く。)。そのため二酸化炭素と一酸化炭素を組み合わせて観測して解析することにより、「人為起源」の二酸化炭素の排出量の推定を目指している。GOSAT-2は、2018年10月に打ち上げられ、GOSATのミッションである全球の温室効果ガス濃度の観測を継承するほか、人為起源排出源の特定と排出量推計精度を向上するための新たな機能により、各国・地域のパリ協定に基づく排出量報告の透明性向上への貢献を目指している。さらに、水循環観測と温室効果ガス観測のミッションの継続と観測能力の更なる強化を目指してGCOM-Wの後継センサである高性能マイクロ波放射計3(AMSR3(※45))とGOSAT-2の後継センサである温室効果ガス観測センサ3型(TANSO-3(※46))を開発した。これら両センサを相乗り搭載したGOSAT-GWを2025年6月に打ち上げ、現在、データ提供を進めている。

 また、パリ協定に基づく世界各国・地域が実施する気候変動対策の透明性向上に貢献するために、GOSATシリーズの観測データによる排出量推計技術等の国際標準化に向けた海外での検証と展開を推進している。環境省では、2018年度より、モンゴル国政府の協力の下で本技術の高度化に取り組み、GOSAT観測データから推計した二酸化炭素の排出量が、統計データ等から同国が算出した排出量の算定値と高い精度で一致するまで技術を高めることに成功した。同国は、このGOSATによる二酸化炭素排出量推計値を検証として組み込んだ世界初の報告事例となる第二回隔年更新報告書(BUR2)を2023年11月15日に国連気候変動枠組条約(UNFCCC(※47))に提出した。2021年度よりモンゴル国以外の各国への展開を推進しており、2025年度までに中央アジアの5か国に対して排出量推計技術の展開に係る協力関係を構築した。

(3)海洋・極域観測等の推進

 近年、北極域の海氷の減少、世界的な海水温の上昇や海洋酸性化の進行、プラスチックごみによる海洋の汚染など、海洋環境が急速に変化している。海洋環境の変化を理解し、海洋や海洋資源の保全・持続可能な利用、地球環境変動の解明を実現するため、海洋研究開発機構は、漂流フロート、係留ブイや船舶による観測等を組み合わせ、統合的な海洋の観測網の構築を推進している。

 海洋研究開発機構と気象庁は、文部科学省等の関係機関と連携し、世界の海洋内部の詳細な変化を把握し、気候変動予測の精度向上につなげる高度海洋監視システム(アルゴ計画(※48))に参画している。アルゴ計画は、アルゴフロート(※49)を全世界の海洋に展開することによって、常時全海洋を観測するシステムを構築するものである。

 文部科学省は、地球環境変動を顕著に捉えることが可能な南極地域及び北極域における研究諸分野の調査・観測等を推進している。「南極地域観測事業」では、南極地域観測第Ⅹ期6か年計画(2022~2027年度)に基づき、南極氷床融解メカニズムと物質循環の実態解明など、南極地域における調査・観測等を実施しているほか、宇宙天気予報、気象予報、全球測位衛星システム(GNSS)など、我々の日常生活に不可欠な基礎データとなる観測を日々継続し、公開している。

 北極域は、様々なメカニズムにより温暖化が最も顕著に進行している場所として知られている。一方で、夏季海氷融解により、我が国を含め様々な利用可能性が期待されている。これら全球的な気候変動への対応や北極域の持続的利用への貢献の両面において、基盤となる科学的知見の充実は不可欠である。

 このため、2025年度に開始した「北極域研究強化プロジェクト(ArCSⅢ(※50))」においては、これまでの関連プロジェクトで整備された国際連携拠点や北極域を観測する研究船、北極域シミュレーションシステム及び北極域データアーカイブシステム(ADS)などの研究基盤を駆使し、北極域の環境変化の実態把握とプロセスの解明、その影響についての定量的な予測と対応策等の検討を進めている。さらに、優れた若手研究者を雇用し、将来の北極域研究をリードする人材の育成を行うとともに、人文・社会・自然科学の垣根を超えた分野横断的な総合知の創出に資する取組を実施している。研究船による取組として、2025年度は、海洋地球研究船「みらい」の23回目となる太平洋側北極海の観測を実施した。

 1997年10月の就航以来、世界中の海洋を調査してきた「みらい」は、2025年12月で任務を終え退役し、後継船となる北極域研究船「みらいⅡ」の2026年度就航に向けて、建造及び運用体制の構築を着実に進めている。

 海洋研究開発機構は、「みらいⅡ」の国際研究プラットフォームとしての運用に向けた取組として、2025年10月に9か国81名の参加の下で第2回北極域研究船国際ワークショップを開催した。

 気象庁は、地球温暖化をはじめとする気候変動等の監視に資するため、国内及び南極昭和基地において大気中の温室効果ガスの観測を行っているほか、海洋気象観測船により北西太平洋の洋上大気や海水中の温室効果ガスの観測を行っている。また、エアロゾル、日射放射、オゾン層・紫外線の観測や解析も実施しており、温室効果ガスを含め、これらのデータを公開している。気象庁が観測したデータに加え、世界中から収集した船舶・アルゴフロート・衛星等の観測データも活用して地球環境に関連した海洋変動を解析し、現状と今後の見通しを「海洋の健康診断表(※51)」として取りまとめ、公開している。

コラム2-8 海洋地球研究船「みらい」退役~そして北極域研究船「みらいⅡ」へ~

 海洋研究開発機構の海洋地球研究船「みらい」は、2025年12月をもって全ての観測航海を終了し、退役いたしました。
 「みらい」は、我が国初の原子力船「むつ」を改造して誕生した高い航行性能と長期にわたる観測航海を可能とする、世界屈指の大型かつ耐氷性能を有する研究船であり、1997~2025年まで28年間にわたって、海氷域を除く北極海から熱帯域、大西洋やインド洋など地球上のあらゆる海域において観測航海を行いました。その航行距離は実に2,305,795km(地球約58周分)に及び、「みらい」の観測によって得られたデータは、北極海の海氷減少の把握、エルニーニョ現象の解明、深海の昇温や海洋酸性化の検出など、地球環境の変化に関する多くの研究成果の創出に寄与し、国際的にも大きく貢献してきました。また、「みらい」の観測航海を通じて確立し、洗練されてきた安全かつ効率的な観測機器の整備・観測作業、高精度な海水分析手法、データのリアルタイム処理などは、今日の我が国の海洋研究にとって極めて重要な礎となっています。
 「みらい」は、科学的な貢献と同時に、大型の海洋研究船による長期航海という貴重な機会の提供を通して、次代を担う人材の育成にも大きく貢献しました。「みらい」には28年間で、のべ8,328名(うち外国人501名、女性比率19.3%)が乗船しましたが、「みらい」の航海によって育まれた人材は、現在国内外の多くの研究機関や大学、民間企業等で活躍しています。

 現在海洋研究開発機構では、「みらい」の後継船として、砕氷機能を有する北極域研究船「みらいⅡ」の建造が進められています。「みらい」の北極海における観測範囲は、海氷が最も少ない夏季の北緯79度が最北でしたが、「みらいⅡ」は、性能上は夏季であれば北緯90度付近、つまり北極点付近まで到達できる能力を備えています。
 「みらいⅡ」は2026年秋頃の就航が予定されております。「みらいⅡ」は「みらい」が築いてきた地球規模の海洋観測の歴史を引き継ぎ、その観測範囲を「みらい」では到達できなかった海氷域にまで拡大することで、さらなる地球の未来への貢献を目指します。

(参考)
○「みらい」の歩んだ歴史が分かる退役記念ウェブサイトと記念誌もぜひご覧ください。
・ウェブサイト https://www.jamstec.go.jp/mirai1997-2025/
・記念誌のQRコード

(4)スーパーコンピュータ等を活用した気候変動の予測技術等の高度化

 文部科学省は、「気候変動予測先端研究プログラム」において、地球シミュレータ等のスーパーコンピュータを活用し、気候モデル等の開発を通じて、気候変動研究や気候予測データの創出等の研究開発を実施している。創出された気候予測データは、国内外の気候変動対策や、気候変動に関する政府間パネル(IPCC(※52))における報告書の作成において、基盤的な科学的根拠として活用されている。文部科学省と気象庁は、猛暑や大雨などの極端な気象現象に対する地球温暖化の影響を定量的に評価する研究手法により、2025年夏の記録的な高温は地球温暖化の影響がなければ起こりえなかったこと、8月上旬頃の熊本県を中心とした大雨は地球温暖化の影響で総雨量が増加していたことなどを明らかにした。

 また、「地球環境データ統合・解析プラットフォーム事業」において、地球環境データ(地球観測データ、気候予測データ等)を蓄積・統合・解析・提供するデータ統合・解析システム(DIAS(※53))を活用し、地球環境データを利活用した気候変動、防災等の地球規模課題の解決に貢献する研究開発を推進している。

 気象研究所は、エアロゾルが雲に与える効果、オゾンの変化や炭素循環なども表現できる温暖化予測地球システムモデルを構築し、気候変動に関する10年程度の近未来予測及びIPCCの排出シナリオに基づく長期予測を行っている。また、我が国特有の局地的な現象を表現できる分解能を持った精緻な雲解像地域気候モデルを開発して、領域温暖化予測を行っている。

 海洋研究開発機構は、大型計算機システムを駆使した最先端の予測モデルやシミュレーション技術の開発により、地球規模の環境変動が我が国に及ぼす影響を把握するとともに、気候変動問題の解決に海洋分野から貢献している。

❷ 多様なエネルギー源の活用等のための研究開発・実証等の推進

 政府は、令和7年2月18日に「第7次エネルギー基本計画」を閣議決定した。その中で、2050年カーボンニュートラルの実現に向け、「非連続なイノベーションにより、社会実装可能な技術のコストを可能な限り早期に低減させ、経済合理性のあるビジネスとして成立させていくことが、世界全体の温室効果ガスの排出削減に決定的に重要となる」としており、技術開発・イノベーションの重要性について明記している。また、2050年カーボンニュートラル実現に向けて、使える技術は全て活用するとの方針の下、あらゆる選択肢を追求していく必要があるとしている。

1.太陽光発電システムに係る発電技術

 経済産業省は、軽量・柔軟な特徴を生かして地理的制約や地域との共生の課題を克服できるペロブスカイト太陽電池(※54)等の革新的な次世代型太陽電池の実用化へ向けた要素技術、量産化技術の確立、ユーザー企業と連携した実証等を行っている。

 科学技術振興機構は、ALCA-Next及び「未来社会創造事業『地球規模課題である低炭素社会の実現』領域」において、革新的な太陽光利用に係る研究開発を実施している。

2.浮体式洋上風力発電システムに係る発電技術

 経済産業省は、浮体式洋上風力発電システムの導入拡大と、アジア市場への展開も見据えた浮体式洋上風力発電のコスト低減に向け、グリーンイノベーション基金による要素技術開発及び浮体式洋上風力実証・共通基盤技術開発の支援を実施している。

 環境省は、我が国で初となる2MW(メガワット)浮体式洋上風力発電機の開発・実証を行い、関連技術等を確立した。本技術開発・実証の成果として、2016年より国内初の洋上風力発電の商用運転が開始されており、風車周辺に新たな漁場が形成されるなどの副次効果も生じている。また、浮体式洋上風力発電の本格的な普及拡大に向け、低炭素化・高効率化させる新たな施工手法等の確立を目指す取組を行った。2024年度からは、脱炭素化ビジネスが促進されるよう、地域が浮体式洋上風力発電によるエネルギーの地産地消を目指すに当たって必要な各種調査や関係者への理解醸成等の実施及び実施した上での導入計画の策定に対する支援を行っている。

3.地熱発電に係る技術開発

 経済産業省は、地熱発電について、資源探査の段階における高いリスクやコスト、発電段階における運転の効率化や出力の安定化といった課題を解決するため、探査精度を向上させる技術開発や、開発・運転を効率化、出力を安定化させる技術開発を行っている。また、発電能力が高く開発が期待されている次世代の地熱発電(超臨界地熱発電)に関する資源量評価等の検討を行っている。

4.高効率石炭火力発電及び二酸化炭素の分離回収・有効利用技術開発

 経済産業省は、火力発電の低炭素化を目指し、次世代の高効率石炭火力発電技術として開発してきたIGCC(※55)について、2025年度から再生可能エネルギーの出力変動や電力取引価格の変動に対応可能な二酸化炭素分離・回収付IGCCの技術確立に向けた実証を実施。2023年度からは、石炭とバイオマスの混合燃料によるガス化技術の実証に着手した。また、火力発電から発生する二酸化炭素回収・有効利用(CCU/カーボンリサイクル(※56))技術の開発を行っている。

5.天然水素に関する調査・基盤技術開発

 経済産業省は、天然水素を、第7次エネルギー基本計画で2050年を見据えた中長期の水素等の利活用の拡大に向けた次世代エネルギーとして明記し、地下を反応場として水素生成反応を促進し回収する「増進水素」については、集中的な育成を進めるため、重点フロンティア領域の一つとしても位置付けた。2026年度以降のフロンティア育成事業において、増進水素の開発を念頭に置いた有望地の探索・選定及び実用化に必要な基盤技術の開発に取り組む。

6.石油精製に係る技術開発

 経済産業省は、国内製油所のグリーン化に向けて、重質油の組成を分子レベルで解明し、反応シミュレーションモデル等を組み合わせたペトロリオミクス技術を活用して、重質油等の成分と反応性を事前に評価することにより、二次装置の稼働を適切に組み合わせ、製油所装置群の非効率な操業を抑制し、二酸化炭素排出量の削減に寄与する革新的な石油精製技術の開発等を進めている。

7.原子力に関する研究開発等

 内閣府 原子力委員会は、原子力利用全体を見渡し、専門的見地や国際的教訓等を踏まえた独自の視点から、今後の原子力政策について政府としての長期的な方向性を示す羅針盤となる「原子力利用に関する基本的考え方」(以下「基本的考え方」という。)を2017年に策定し、2023年2月に改定を行った。基本的考え方では、エネルギーに関する原子力利用のみならず、東京電力ホールディングス株式会社(以下「東電」という。)福島第一原子力発電所事故の反省と教訓、国際協力、核不拡散・核セキュリティの確保、国民からの信頼回復、廃止措置及び放射性廃棄物の対応、放射線・ラジオアイソトープ(放射性同位元素:RI(※57))利用、研究開発、人材育成といった幅広い分野に関する理念・基本目標を示している。基本的考え方は、原子力委員会で改定された後、閣議にて尊重する旨、決定されている。

 文部科学省は、2024年8月に科学技術・学術審議会 研究計画・評価分科会原子力科学技術委員会において検討を行い、「今後の原子力科学技術に関する政策の方向性(中間まとめ)」を取りまとめた。本中間まとめでは、新試験研究炉の開発・整備の推進、次世代革新炉の開発及び安全性向上に資する技術基盤の整備・強化、廃止措置を含むバックエンド対策の抜本的強化、原子力科学技術に関する研究・人材基盤の強化、東京電力福島第一原子力発電所事故への対応の五つの柱を重点施策として位置付けている。

 経済産業省は、第7次エネルギー基本計画において、原子力を活用していくため、原子力の安全性向上を目指し、新たな安全メカニズムを組み込んだ次世代革新炉の開発・設置に取り組むこと、次世代革新炉の研究開発等を進めること、サプライチェーン・人材の維持・強化に取り組むことなどを示した。

(1)原子力利用に係る安全性・核セキュリティ向上技術

 経済産業省は、「原子力の安全性向上に資する技術開発事業」において、東電福島第一原子力発電所の事故で得られた教訓を踏まえ、過酷事故時に損傷しにくい事故耐性燃料の部材開発や高経年化対策に必要な実機試験片を用いた強度試験など、既存軽水炉の更なる安全対策高度化に資する技術開発を行っている。また、我が国は、国際原子力機関(IAEA(※58))、米国等と協力し、核不拡散及び核セキュリティに関する技術開発や人材育成における国際協力を先導している。日本原子力研究開発機構は「原子力人材育成・核不拡散・核セキュリティ総合支援センター」を設立し、核不拡散及び核セキュリティに関する研修等を行うとともに、IAEAとの核セキュリティ分野における協働センターとして研修の共同開催やカリキュラムの共同開発、講師の相互派遣、人材育成支援に関する情報交換等を行っている。また、中性子を利用した核燃料物質の非破壊測定、不法な取引による核物質の起源が特定可能な核鑑識の技術開発等を行うとともに、包括的核実験禁止条約機関(CTBTO(※59))との放射性希ガス共同観測プロジェクトに基づく北海道幌延(ほろのべ)町及び青森県むつ市での観測を通して核実験検知能力の向上に貢献している。

(2)原子力基礎・基盤研究開発

 文部科学省は、「原子力システム研究開発事業」において、原子力イノベーション創出につながる新たな知見の獲得や課題解決を目指して取り組む戦略的なテーマを設定し、経済産業省と連携して我が国の原子力技術を支える基礎・基盤研究を推進している。日本原子力研究開発機構は、核工学・炉工学、燃料・材料工学、原子力化学、環境・放射線科学、分離変換、計算科学、先端原子力科学、中性子・放射光利用等の基礎・基盤研究を行うとともに、ウラン蓄電池の開発など、新たな価値を創造しつつ技術の社会実装を加速させる取組を行っている。

 また、RIについては、医療分野や工業・農業分野等における活用が進められている。特に医療分野では、RIを用いた診断・治療の普及を通じ、我が国の医療を充実させ、もって国民の福祉向上に貢献することが重要であることに鑑み、現在は多くを輸入に依存している重要RIの国産化を実現することが求められている。このため、「医療用等ラジオアイソトープ製造・利用推進アクションプラン」(2022年5月原子力委員会決定)に従い、試験研究炉や加速器を用いた研究開発から実用化、普及に至るまでの取組を一体的に推進している。

(3)次世代革新炉の開発

 経済産業省はエネルギー安全保障に寄与し、脱炭素効果の高い次世代革新炉の実用化に向け、炉型ごとの用途や開発段階の相違、社会のニーズ等の要素も考慮して、研究開発、技術実装の円滑化、規制当局との共通理解の醸成・改善への協働等について、国際連携も活用しつつ産学官で取り組んでいる。

 革新軽水炉では、設計段階から安全メカニズムを組み込むことにより、事故の発生リスクを抑制し、万が一の事故があった場合にも放射性廃棄物の放出を回避・抑制するための機能を強化したより安全なものとなる実用化開発を進めている。また、原子力規制庁は、SRZ-1200を題材とする「建替原子炉の設計に関する事業者との実務レベルの技術的意見交換会」での原子力事業者等からの聴衆結果を踏まえ、建替原子炉の設計に関する規制上の対応方針を原子力規制委員会に諮り、2026年3月25日に了承された。

 小型軽水炉(SMR)では、小出力を生かした自然循環により、冷却ポンプ、外部電源なしで炉心冷却を可能とするシステムが目指されており、米国やカナダはじめ国外では、データーセンター等をはじめとする電力多消費設備への脱炭素電源・安定電源としてのニーズが高まっている。我が国の技術を活かした日本企業の海外プロジェクトの参画や技術開発が進められている。

 高速炉は高レベル放射性廃棄物の減容化・有害度低減や資源の有効利用等に資する核燃料サイクルの効果をより高めることが期待されており、実用化の一段階前の実証炉開発を進めている(第2章第1節 2 ❷7.(6)参照)。

 高温ガス炉は、高温熱を活かした準国産のカーボンフリーの水素や熱の供給により、製鉄や化学などの素材産業の脱炭素化への貢献が期待される。実用化の一段落前の実証炉開発を進めるとともに、2024年3月に安全性実証試験を成功したHTTR(高温工学試験研究炉)を活用した水素製造試験に向けて設計や研究開発を進める。日本原子力研究開発機構は、HTTRに熱利用施設(水素製造施設)を接続するための原子炉設置変更許可を申請し、2025年3月から原子力規制審査に入っている。2025年9月には、原子炉設置変更許可の補正申請を行った。

 また、文部科学省の原子力研究開発・基盤・人材作業部会において高速実験炉「常陽」の運転再開後の照射利用に関する議論を実施する等、革新的な原子力技術の開発に必要な研究開発基盤の維持・発展を図った。

 経済産業省は、次世代革新炉を取り巻く状況変化を踏まえ、総合資源エネルギー調査会電力・ガス事業分科会原子力小委員会革新炉ワーキンググループにおいて、技術や開発の進展、実装に向けた課題なども考慮した、次世代革新炉の開発の道筋の具体化に向けた検討を行い、「次世代革新炉の開発ロードマップ」を策定した。

コラム2-9 作業時間を99%削減 全自動分析で廃炉を加速

 放射性廃棄物を合理的かつ安全に処理・処分するには、どんな放射性物質がどれだけ含まれているかを、化学分析によって正確に知ることが出発点になります。中でも「ネプツニウム」は、使用済み核燃料に含まれる放射性物質で、半減期が長く、微量でも健康や環境への影響が大きいため、優先して調べることが重要です。しかし従来の分析方法では、熟練者の経験に頼った手作業が必要なうえ、ネプツニウムの測定を妨げるウランなどを取り除く前処理が複雑で、結果が出るまでに4日ほどかかるという課題がありました。東京電力福島第一原子力発電所の廃炉が進む中、分析すべき廃棄物が増えており、より迅速で確実な分析方法の必要性が高まっています。
 こうした課題を解決するため、日本原子力研究開発機構は、試料をセットするだけで前処理から測定までを一気に行える全自動の分析システムを開発しました。これにより、作業時間は4日から25分へと約100分の1(99%削減)まで短縮されました。
 このシステムでは、特定の成分だけを選び取る「フィルター」のような工程(電解還元、固相抽出)と、高感度の質量分析装置(ICP-MS/MS)を組み合わせています。大量のウランが含まれる試料であっても、1リットル当たり0.1ナノグラムという、ごくわずかなネプツニウムを検出できます。また、コンピュータ制御による全自動システムのため、熟練者でなくても同じ品質で測定でき、作業員の被ばくリスク低減にもつながります。
 本研究では、実際の放射性廃液を分析する実証試験にも成功しており、特許出願と併せて廃炉現場への導入の準備を進めています。放射性廃棄物の分析が速く正確に行えるようになれば、廃炉作業全体の判断が迅速になり、コスト削減にも寄与します。今後、廃炉現場の安全と効率を両立する、基盤的な技術としての展開が期待されます。

(4)原子力人材の育成・確保

 原子力人材の育成・確保は、原子力分野の基盤を支え、高度な安全性を追求し、原子力施設の安全確保や古い原子力施設の廃止措置を円滑に進めていく上で必要であるとともに、次世代革新炉の開発、整備に向けても重要である。

 文部科学省は、「国際原子力人材育成イニシアティブ事業」により、産学官の関係機関が連携した、効果的・効率的・戦略的な人材育成の取組を支援している。2021年度には、大学や研究機関等の複数機関が連携して一体的に人材育成を行う体制として「未来社会に向けた先進的原子力教育コンソーシアム(ANEC(※60))」を創設し、原子力人材育成の体系的な教育基盤の整備を進めている。また、2016年12月の原子力関係閣僚会議において、高速増殖原型炉もんじゅを廃止措置に移行する旨の政府方針を決定した際、将来的に「もんじゅ」サイトを活用して新たな試験研究炉を設置するとした。試験研究炉は研究開発、人材育成基盤として重要であり、2023年3月より日本原子力研究開発機構を実施主体として詳細設計段階に移行し、地質調査や原子炉の設計等を実施している。

 経済産業省は、「原子力産業基盤強化事業」により、原子力利用の安全性・信頼性を支えている原子力産業全体の強化のため、世界トップクラスの優れた技術を有するサプライヤの支援、技術開発・再稼働・廃炉等の現場を担う人材の育成等を実施している。

 また、経済産業省は、原子力人材確保・育成・強化に係る課題解決に向け、省庁/関係機関に横断的な課題への実効的なアプローチのため、関係者が定期的に一同に会し、情報共有(各所掌の状況・各国事例の調査)、政策立案に向けた議論を行う場として、原子力人材育成・強化に係る協議会を設置した。2025年度に3回開催し、産学官横断的な司令塔機能の創出などの、今後の方向性を取りまとめた。

(5)東電福島第一原子力発電所の廃止措置技術等の研究開発

 経済産業省、文部科学省及び関係省庁等は、東電福島第一原子力発電所の廃止措置等に向けて、「東京電力ホールディングス(株)福島第一原子力発電所の廃止措置等に向けた中長期ロードマップ」(2019年12月27日改訂)に基づき、連携・協力しながら対策を講じている。この対策のうち、経済産業省は、燃料デブリの取出し技術の開発や原子炉格納容器内部の調査技術の開発、フィジカルAI等も活用した遠隔操作技術の開発等の技術的難易度が高く、国も前面に立って取り組む必要がある研究開発への支援を行っている。

 文部科学省は、国内外の英知を結集し、安全かつ着実に廃止措置等を実施するため、「英知を結集した原子力科学技術・人材育成推進事業」など、「日本原子力研究開発機構 廃炉環境国際共同研究センター」(福島県双葉郡富岡町)を中核とし、中長期的な廃炉現場のニーズに対応する研究開発及び人材育成の取組を推進している。

 また、東電福島第一原子力発電所の廃炉に関する技術基盤を確立するために、日本原子力研究開発機構の拠点の整備を進めている。楢葉(ならは)町において2016年4月から本格運用を開始した「楢葉(ならは)遠隔技術開発センター」では、遠隔操作技術の開発や実証試験に取り組んでいる。

 富岡町において2017年4月から運用を開始した「廃炉国際共同研究センター(現:廃炉環境国際共同研究センター)国際共同研究棟」では、国内外の英知を結集する場として、廃炉に係る基礎的・基盤的な研究開発等に取り組んでいる。

 大熊町において2018年3月から燃料デブリや放射性廃棄物等の分析手法、性状把握、処理・処分技術の開発等を行う「大熊分析・研究センター」の一部施設の運用を開始している。さらに、2022年6月には、放射性廃棄物等の分析を行う第1棟が竣工し、現在は、燃料デブリ等の分析を行う第2棟の建設工事を進めている。また、大熊町で2025年3月に開設した「ANALYSiS LAB.」では、分析をテーマとした情報発信の場として、研究開発の取組の紹介等を行っている。

(6)核燃料サイクル技術

 我が国は、資源の有効利用、高レベル放射性廃棄物の減容化・有害度低減などの観点から、核燃料サイクルの推進を基本的方針としている。核燃料サイクルの技術開発に向けた具体的な取組として、「使用済MOX燃料の再処理技術等に係る研究開発事業」において、使用済MOX(※61)燃料を安全かつ安定的に処理するための技術の実用化に向けた研究開発を実施した。さらに、再処理工場・MOX燃料工場の安定的な運転に向けた技術開発等を支援した。

 また、高速炉については、核燃料サイクルの効果をより高めることが期待されている。実証炉開発については、開発工程や体制について具体化を図るため、改定された高速炉開発に係る「戦略ロードマップ」(2022年12月原子力関係閣僚会議決定)に従い、概念設計対象となる炉概念仕様と将来的にはその製造・建設を担う事業者(中核企業)として三菱重工業株式会社が2023年7月に選定され、高速炉実証炉開発事業が開始された。第7次エネルギー基本計画においても今後、日本原子力研究開発機構、原子力事業者及び中核企業の技術者が集結する研究開発統合組織の統括の下、国際連携での技術的知見も活用しつつ、炉と燃料サイクル全体の集中的な研究開発に取り組むことや、中長期を見据えた課題への対応を産学官で進めていくこととしている。

 また、高速炉開発の基盤である高速実験炉「常陽」について、日本原子力研究開発機構は、「常陽」の運転再開に向けて、原子炉設置変更許可を2023年に取得し、茨城県及び大洗町より、原子力施設周辺の安全確保及び環境保全に関する協定書に基づく新増設等に対する了解を2024年9月に得て、新規制基準に対応した安全対策工事等を進めている。

(7)放射性廃棄物処理・処分に向けた技術開発等

 高レベル放射性廃棄物の減容化や有害度の低減に資する可能性のある研究開発として、高速炉や加速器を用いた核変換技術や群分離技術に係る基礎・基盤研究を進めている。

 高レベル放射性廃棄物の地層処分に関しては、『地層処分研究開発に関する全体計画(2023~2027年度)』(2023年3月地層処分研究開発調整会議)に基づき、国、高レベル放射性廃棄物の地層処分に関わる機関(NUMO)、日本原子力研究開発機構(JAEA)等が連携して地質環境特性の把握や長期安全性評価に係る研究開発を進め、幌延深地層研究センター等の成果を活用して最新知見の反映を図っている。

 また、研究施設や医療機関などから発生する低レベル放射性廃棄物の処分に向けては、「埋設処分業務の実施に関する基本方針」(2008年12月文部科学大臣及び経済産業大臣決定)に即して日本原子力研究開発機構が定めた「埋設処分業務の実施に関する計画」(2009年11月認可、2025年1月変更認可)に従い、「低レベル放射性廃棄物等の処理・処分に関する考え方について(見解)」(2021年12月原子力委員会)を踏まえつつ必要な取組を進めている。

(8)日本原子力研究開発機構が保有する施設の廃止措置

 日本原子力研究開発機構は、総合的な原子力の研究開発機関として重要な役割を担っており、その役割を果たすためにも、研究の役割を終えた施設については、国民の理解を得ながら安全確保を最優先に、着実に廃止措置を進めることが必要である。このため、日本原子力研究開発機構は、保有する施設全体の廃止措置等に係る長期方針である「バックエンドロードマップ」を2018年12月に公表した。文部科学省では、日本原子力研究開発機構が保有する原子力関連施設のうち、廃棄物発生量の少ない比較的規模の小さい施設の廃止措置を促進し、廃止措置対象施設の安全面の確保や維持管理費の削減を図り、これにより原子力の研究、開発及び利用の促進に寄与することを目的として、新たな原子力施設廃止措置促進事業を2024年度より実施するなど、日本原子力研究開発機構が保有する施設の廃止措置の取組を支援している。

 高速増殖原型炉もんじゅについては、廃止措置計画に基づいて2018年度よりおおむね30年間の廃止措置が進められている。2023年度からは廃止措置計画の第二段階に移行し、水・蒸気系等発電設備の解体作業等を進めている。今後も、立地地域の声に向き合いつつ、安全、着実かつ計画的に進めていくこととしている。

 新型転換炉原型炉ふげんについては、廃止措置計画に基づき、原子炉周辺機器等の解体撤去を進めるとともに、2031年度の使用済燃料搬出完了に向けたフランス事業者との契約に基づく準備を進めている。また、今後の原子炉本体の解体撤去に向けて、解体時の更なる安全性向上を図るための新たな技術開発などを進めている。

 東海再処理施設については、廃止措置計画に基づき、保有する高放射性廃液の早期のリスク低減を最優先課題とし、高放射性廃液のガラス固化に取り組むとともに、再処理施設の解体・撤去に向けた系統除染、施設の高経年化対策及び安全性向上対策を着実に進めている。

(9)国民の理解と共生に向けた取組

 文部科学省は、立地地域をはじめとする国民の理解と共生のための取組として、立地地域の持続的発展に向けた取組、原子力やその他のエネルギーに関する教育への取組に対する支援などを行っている。

(10)国際原子力協力

 外務省は、IAEAによる原子力科学技術の平和的利用の促進と核不拡散のための活動を支援している。例えば、「原子力科学技術に関する研究、開発及び訓練のための地域協力協定(RCA(※62))」に基づくアジア太平洋における技術協力、平和的利用イニシアティブ(PUI(※63))拠出金、核不拡散基金等によるIAEAに対する財政的支援、専門的知見・技術を有する国内の大学、研究機関、企業とIAEAの連携強化等を通じた開発途上国の能力構築の推進、さらには、我が国の優れた人材・技術の国際展開を支援している。

 また、外務省はIAEAと協力し、福島県に指定されたIAEAの緊急時対応援助ネットワーク(RANET)の能力研修センター(CBC)を通じて、国内外の関係者を対象として、緊急事態の準備及び対応分野での能力強化のための支援を実施している。

 文部科学省は、IAEAや経済協力開発機構原子力機関(OECD/NEA(※64))などの国際機関の取組への貢献を通じて、原子力平和的利用と核不拡散の推進をリードするとともに、内閣府が主導しているアジア原子力協力フォーラム(FNCA(※65))の枠組みの下、アジア地域を中心とした参加国に対して放射線利用・研究炉利用等の分野における研究開発・基盤整備等の協力を実施している。

 経済産業省は、日仏、日米協力をはじめとする国際協力の枠組みを活用して、放射性廃棄物の有害度の低減及び減容化等に資する高速炉の実証技術の確立に向けた研究開発を進めた。

 また、米国やフランスをはじめとする原子力先進国との間で、第4世代原子力システム国際フォーラム(GIF(※66))等の活動を通じ、原子力システムの研究開発等、多岐にわたる協力を行っている。2025年1月29日、OECD日本政府代表部特命全権大使が、GIFにおける研究及び開発に関する協力の枠組みを規定する枠組協定に署名、同協定は、3月1日付で発効した。

(11)原子力の平和的利用に係る取組

 我が国は、IAEAとの間で1977年に締結した日・IAEA保障措置協定及び1999年に締結した同協定の追加議定書に基づき、核物質が平和目的に限り利用され、核兵器などに転用されていないことをIAEAが確認する「保障措置」を受け入れている。これを受け、我が国は「核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律(原子炉等規制法)」(昭和32年法律第166号)に基づき、国内の核物質を計量及び管理し、国としてIAEAに報告したり、IAEAの査察を受け入れたりするなどの所要の措置を講じている。

8.フュージョンエネルギー(核融合エネルギー)実現に向けた研究開発

 フュージョンエネルギーは、次世代のクリーンエネルギーとして、環境・エネルギー問題の解決策としての期待に加え、政府主導の取組の科学的・技術的進展もあり、諸外国における民間投資が増加している。世界各国が大規模投資を実施し、国策として自国への技術・人材の囲い込みを強める中、我が国の技術・人材の海外流出を防ぎ、我が国のエネルギーを含めた安全保障政策に資するため、政府では「フュージョンエネルギー・イノベーション戦略(※67)」(2025年6月統合イノベーション戦略推進会議改定)に基づく取組を加速している。

 我が国は、世界7極の協力により、国際約束に基づき、実験炉の建設・運転を通じてフュージョンエネルギーの科学的・技術的実現可能性を実証するITER(イーター)計画(※68)に参画している。建設地のフランスでは、ITERの建設作業が本格化しており、主要機器である超伝導トロイダル磁場コイルの全機納入や、2026年1月には四つ目のセクターモジュールの設置が完了するなど、各極及びITER機構において、機器の製造や組立・据付等が進展している。あわせて、我が国は、ITER計画を補完・支援し、原型炉に必要な技術基盤を確立するための日欧協力による先進的研究開発である幅広いアプローチ(BA(※69))活動を推進している。BA活動では、2025年10月、茨城県那珂(なか)市にある世界最大のトカマク型超伝導プラズマ実験装置「JT-60SA」に、米国プリンストン・プラズマ物理研究所及びゼネラル・アトミクス社が参画を開始した。

 また、フュージョンエネルギーの早期実現を目指し、BA活動の実績を踏まえ、フュージョンプラント等の構造材料の開発に必要となる中性子照射試験を実施するため、2025年5月に、「日本・文部科学省とスペイン・科学・イノベーション・大学省との間のDONES(※70)(核融合中性子源)計画の共同開発に関する協力覚書」を締結し、スペイン(グラナダ)で建設中である欧州のDONES計画に参画した。そのほか、原型炉を見据えた基盤整備に加え、核融合科学研究所における大型ヘリカル装置(LHD(※71))等を活用した多様な学術研究や、ムーンショット型研究開発制度(第1章第2節 2 ❹参照)等を活用した独創的な新興技術の支援を推進している。

 フュージョンエネルギーの早期実現に向け、国際協力の面では、2025年6月には文部科学省が英国エネルギー安全保障・ネットゼロ省(DESNZ)と、フュージョンエネルギーに関する日英間の連携を強化するため、「フュージョンエネルギーに関する日英間の連携強化のための協力覚書」を締結した。また、同年10月に内閣府と米国大統領府科学技術政策局(OSTP)との間で締結された「日米間の技術繁栄ディールについての協力に関する覚書」にもフュージョンエネルギーが位置付けられた。

コラム2-10 フュージョンエネルギーの実現に向けた多様な研究開発の広がり

 フュージョンエネルギーは、太陽と同じ原理でエネルギーを生み出す次世代のエネルギー源として期待されています。重水素、トリチウム(いずれも水素の同位体)などの軽い原子核同士を融合させることで大きなエネルギーを取り出すことができ、発電時に二酸化炭素を排出しないことや、燃料資源が豊富であることから、将来の脱炭素社会を支える技術として世界各国で研究開発が進められています。
 1960年代以降、フュージョンエネルギーの研究は、ドーナツ型の装置の中で高温のプラズマを磁場によって閉じ込める「トカマク方式」を中心に進められてきました。日本、欧州、米国などが参加する国際プロジェクトであるITER計画では、フランスにおいてこの方式を用いた大型実験装置の建設が進められており、我が国でもJT-60SAにおいて加熱運転に向けた開発が進められています。
 一方で、近年は、フュージョンエネルギーへの期待の高まりとともに、民間企業や大学・研究機関等の参入が広がり、トカマク方式以外にも様々な炉型や技術コンセプトの研究が活発になっています。例えば、核融合科学研究所のヘリカル装置(LHD/CHD(※72))のように、複雑な磁場によってプラズマを安定して閉じ込める研究が進められています。また、大阪大学レーザー科学研究所や米国のローレンス・リバモア国立研究所などでは、強力なレーザーで燃料を瞬間的に圧縮する慣性閉じ込め方式の研究が行われ、核融合反応の実証に向けた成果が報告されています。さらに、米国のHelion Energy社やTAE Technologies社などの民間企業では、よりコンパクトな装置によるフュージョンエネルギーの実現を目指した新しい磁場構造の研究が進められています。
 このように、フュージョンエネルギーの研究開発は、従来の大型装置による研究に加えて、多様な技術や新しい発想を取り入れながら広がりを見せています。このほか、低エネルギー環境で核反応が起こる可能性を探る研究についても、一部の大学・研究機関等において行われており、これらがそもそもフュージョンエネルギーに分類されるのかといった反応機構の解明から、将来のエネルギー源への応用可能性までも含め、さらなる成果の創出が期待されています。

9.その他長期的なエネルギー技術の開発

 経済産業省では、宇宙太陽光発電の実現に必要な発電と送電を一つのパネルで行う発送電一体型パネルを開発するとともに、その軽量化や、マイクロ波による無線送電技術の効率の改善に資する送電部の高効率化のための技術開発等を行っている。

 宇宙航空研究開発機構では、宇宙太陽光発電の実用化を目指した要素技術の研究開発を行っている。

❸ 経済社会の再設計(リデザイン)の推進

1.「脱炭素社会」への移行に向けた取組

 環境省では、住宅・建築物の高断熱化改修等の省エネルギー性能の向上、ネット・ゼロ・エネルギー化(ZEH(※73)・ZEB)及びZEH基準の水準を大きく上回るエネルギー性能を有する住宅に対する支援を行っており、HEMS(※74)やBEMS(※75)の導入による太陽光発電と家電等の需要側設備のエネルギー管理や、充放電設備の導入によるEV(※76)・PHEV(※77)との組合せ利用を促進している。加えて、運輸部門等の二酸化炭素排出量削減のため、トラック等の商用車や建設機械の電動化(EV・PHEV・FCV(※78)等)を推進している。

 環境省は、気候変動への適応について、「気候変動適応法」(平成30年法律第50号)(以下「適応法」という。)の規定に基づき、2026年2月に最新の気候変動影響評価報告書を公表した。同報告書を踏まえ、関係省庁により構成される「気候変動適応推進会議」において、気候変動適応計画改定に向けた検討を開始した。

 2018年12月の適応法施行に伴い、国立環境研究所に気候変動適応センターが設立され、「気候変動適応情報プラットフォーム(A-PLAT(※79))」等を通じて、関係府省庁及び関係研究機関との連携の下、気候変動影響や適応に関する最新の情報を提供している。また、気候変動適応センターでは、気候変動影響予測研究等を行っているほか、地方公共団体等に対する情報提供や助言等の支援を行っている。2023年3月には「気候変動適応広域協議会」(全国7ブロック)の活動の一環として気候変動適応に係る広域アクションプランが策定され、それに基づき、地域の関係者による取組が進められている。

 文部科学省は、地域の脱炭素化を加速し、その地域モデルを世界に展開するための大学等のネットワーク構築に取り組んだ。また、国立環境研究所気候変動適応センターのA-PLATを通じて、ニーズを踏まえた気候変動予測情報等の研究開発成果を地方公共団体等に提供している。

2.地球温暖化対策に向けた研究開発

(1)水素・蓄電池等の蓄エネルギー技術を活用したエネルギー利用の安定化

 経済産業省は、蓄電池や燃料電池に関する技術開発・実証等を実施している。具体的には、再生可能エネルギーの導入拡大に伴い、系統安定化を図るために必要となる系統用の大型蓄電池について、最適な制御・管理手法の技術の確立のための実証試験を実施した。また、蓄電池の導入支援により、蓄電池の導入コスト低減等を通じた蓄電池ビジネスモデルの確立に向けた取組等を行っている。また、電気自動車やプラグインハイブリッド車など、次世代自動車用の蓄電池(※80)について、性能向上とコスト低減を目指した技術開発を実施した。燃料電池自動車や家庭用などの定置用が主な用途である燃料電池については、耐久性・効率性向上、低コスト化のための技術開発を行うとともに、新たな用途への展開を目指した実証も行った。さらに、燃料電池自動車の更なる普及拡大に向けて、2025年3月末時点で161か所(整備中を含む)の水素ステーションの整備を行った。

 環境省は、地域資源を活用した水素の製造、貯蔵、運搬、利活用の各設備とそれらをつなぐインフラネットワークの整備を通じた地域水素サプライチェーン構築を地域特性に応じて、様々な需要を組み合わせた実証モデルの構築を進めている。あわせて、地域の再エネ等由来水素の導入拡大に向けて、水素利活用機器の導入支援も行っている。

 文部科学省及び科学技術振興機構は、GteX(※81)の蓄電池領域及び水素領域において、材料等の開発やエンジニアリング、評価・解析等を統合的に行うオールジャパンのチーム型研究開発を実施している。さらに、「共創の場形成支援プログラム(COI-NEXT)」の先進蓄電池研究開発拠点において、産学共創の研究開発を実施している。また、「未来社会創造事業 大規模プロジェクト型」において、水素発電、余剰電力の貯蔵、輸送手段等の水素利用の拡大に貢献する高効率・低コスト・小型長寿命な革新的水素液化技術の研究開発を実施している。

(2)新規技術によるエネルギー利用効率の向上と消費の削減

 内閣府は、SIP第3期課題「スマートエネルギーマネジメントシステムの構築」において、再生可能エネルギーを主力エネルギー源とするため、従来の一つの建物や一つの地域における電力マネジメントの枠を超えて、熱・水素・合成燃料なども包含するエネルギーマネジメントシステムを構築して次世代の社会インフラを確立することを目指し、社会実装に向けた研究開発を2023年度より進めている。

 経済産業省は、ディマンドリスポンス(DR)に活用できる小規模エネルギーリソースを安全且つ効率的に制御することを目的として、次世代スマートメーターを活用したDR実証事業を行っている。

 環境省は、地球温暖化の防止に向け、革新技術の高度化・社会実装を図り、必要な技術イノベーションを推進するため、再生可能エネルギーの利用、エネルギー使用の合理化だけでなく、窒化ガリウム(GaN)やセルロースナノファイバー(CNF)といった省二酸化炭素性能の高い革新的な部材・素材の活用によるエネルギー消費の大幅削減、希少金属依存を低減した高性能かつ比較的安価な革新的触媒、燃料電池や水素エネルギー、蓄電池、潮流発電、CCUS、殺菌力が強い深紫外線を発するLED等による安全・安心な衛生環境の創出等に関連する技術の開発・実証、普及を促進している。

 環境省は、公共施設等に再生可能エネルギーや自営線等を活用した自立・分散型エネルギーシステムを導入し、地域の再生可能エネルギー比率を高めるためのエネルギー需給の最適化を行うことにより、地域全体で費用対効果の高い二酸化炭素排出削減対策を実現する先進的モデルを確立するための事業を実施している。

 科学技術振興機構は、「未来社会創造事業 大規模プロジェクト型」において、環境中の熱源(排熱や体温等)をセンサ用独立電源として活用可能とする革新的熱電変換技術の研究開発を推進している。

 理化学研究所は、強相関物理、超分子機能化学、量子情報エレクトロニクスの3分野の有機的な連携により、新物質や新原理を開拓することで、発電・送電・蓄電をはじめとするエネルギー利用技術の革新を可能にする全く新しい物性科学を創成し、エネルギー変換の高効率化やデバイスの消費電力の革新的低減を実現するための研究開発を実施している。

 文部科学省は、科学技術・学術審議会 研究計画・評価分科会 航空科学技術委員会において、航空機の二酸化炭素排出低減に資する研究開発の方策等を研究開発ビジョンとして取りまとめ、これを反映した分野別研究開発プランの実施を推進している。あわせて、当該ビジョンの改訂に向け、2025年度末に中間取りまとめを行い、研究設備更新等を含めた改訂ビジョンを2026年度発出予定である。

 宇宙航空研究開発機構は、航空機の燃費向上・環境負荷低減等に係る研究開発として航空機の電動化技術や機体の抵抗低減・軽量化技術等の研究開発に取り組んでおり、さらに、産業界等との連携により成果の社会実装を見据えながら、国際競争力強化のための取組を加速させている。

 新エネルギー・産業技術総合開発機構は、省エネルギー技術の研究開発や普及を効果的に推進するため、「省エネルギー・非化石エネルギー転換技術戦略2024」に掲げる重要技術を軸に、提案公募型事業である「脱炭素社会実現に向けた省エネルギー技術の研究開発・社会実装促進プログラム」を実施している。

 建築研究所は、住宅・建築・都市分野において環境と調和した資源・エネルギーの効率的利用のための研究開発等を行っている。

(3)革新的な材料・デバイス等の幅広い分野への適用

 文部科学省は、「革新的パワーエレクトロニクス創出基盤技術研究開発事業」において、我が国が強みを有する窒化ガリウム(GaN)等の次世代パワー半導体の研究開発と、その特性を最大限活用したパワーエレクトロニクス技術等の実用化に向けて、回路システムや受動素子等のトータルシステムとして一体的な研究開発を推進している。また、「次世代X-nics半導体創生拠点形成事業」において、2035~2040年頃の社会で求められる半導体集積回路の創生に向けた新たな切り口による研究開発と将来の半導体産業をけん引する人材の育成を推進するため、アカデミアにおける中核的な拠点の形成を進めている。

 科学技術振興機構は、ALCA-Next及び「未来社会創造事業『地球規模課題である低炭素社会の実現』領域」において、革新的な材料開発・応用及び化学プロセス等の研究開発を実施している。

 物質・材料研究機構では、多様なエネルギー利用を促進するネットワークシステムの構築に向け、高効率太陽電池や蓄電池の研究開発、エネルギーを有効利用するためのエネルギー変換・貯蔵用材料の研究開発、省エネルギーのための高出力半導体や高輝度発光材料等におけるブレークスルーに向けた研究開発、低環境負荷社会に資する高効率・高性能な輸送機器材料やエネルギーインフラ材料の研究開発等、エネルギーの安定的な確保とエネルギー利用の効率化に向けて、革新的な材料技術の研究開発を実施している。

 経済産業省は、廃プラスチック・廃ゴムからプラスチック原料を製造するケミカルリサイクル技術等に加えて、二酸化炭素から機能性化学品を製造する技術等の開発、機能性化学品の製造手法を従来のバッチ法からフロー法へ置き換える技術の開発、全固体リチウムイオン電池材料の性能・特性を的確かつ迅速に評価できる材料評価技術の開発とともに、セルロースナノファイバーについて、安全性評価・LCA(※82)評価に必要な基盤情報の整備を行っている。

(4)地域の脱炭素化加速のための基盤的研究開発

 文部科学省は、カーボンニュートラル実現に向けて、「大学の力を結集した、地域の脱炭素化加速のための基盤研究開発」にて人文学・社会科学から自然科学までの幅広い知見を活用して、大学等と地域が連携して地域のカーボンニュートラルを推進するためのツール等に係る分野横断的な研究開発を推進している。あわせて、「カーボンニュートラル達成に貢献する大学等コアリション」を推進している。

 国土技術政策総合研究所は、カーボンニュートラル、脱炭素化社会実現のため、既存オフィスビル等のZEB化に向けた改修設計手法及び支援技術の開発、既存マンションにおける省エネ性能向上のための改修効果の定量化手法の開発、木造住宅の長寿命化に資する外壁内の乾燥性能の評価法の開発に関する研究を実施している。

3.「循環経済(サーキュラーエコノミー)」への移行に向けた取組

 循環経済(サーキュラーエコノミー)への移行に向けて、2022年4月に「プラスチックに係る資源循環の促進等に関する法律」(令和3年法律第60号)(以下「プラスチック資源循環促進法」という。)が施行され、プラスチックの資源循環を加速している。

 内閣府は、SIP第3期課題「サーキュラーエコノミーシステムの構築」において、素材・製品開発といった動脈産業とリサイクルを担う静脈産業が連携して素材、製品、回収、分別、リサイクルの各プレーヤーが循環に配慮した取組を通じてプラスチックのサーキュラーエコノミーバリューチェーンを構築することを目指し、社会実装に向けた研究開発を2023年度より進めている。

 プラスチックの資源循環に係る促進策として、経済産業省は、特定プラスチック使用製品の使用の合理化に関する施行状況の把握や、特定プラスチック使用製品提供事業者の取組状況等の調査分析等を行った。また、プラスチック資源循環促進法では、プラスチック廃棄物の排出抑制と再資源化を促進するために、特に優れた環境配慮設計を行うプラスチック使用製品の認定制度を設けており、清涼飲料用ペットボトル容器、文具・事務用品、家庭用化粧品容器、家庭用洗浄剤容器において制度を開始した。

 環境省は、化石資源由来プラスチックを代替する再生可能資源への転換及びプラスチックのリサイクルに関する技術的な課題解決や廃プラスチックのリサイクル体制の整備の支援を実施している。

 さらに、G20大阪サミットで我が国が提唱した「大阪ブルー・オーシャン・ビジョン」を踏まえ、第5回国連環境総会決議に基づき、プラスチック汚染に関する法的拘束力のある国際文書(条約)の策定に向けた政府間交渉委員会への参加や東南アジアを中心とした途上国支援、海洋を含む環境中のプラスチック汚染対策の基盤となる科学的知見の集積強化、発生抑制対策の検討などを実施し、国内外で積極的にプラスチック汚染対策に取り組んでいる。

4.「循環共生型社会」を構成する生物多様性への対応

 環境省は、「循環共生型社会」を構成する生物多様性への対応については、絶滅危惧種の保全や侵略的外来種の防除に関する技術、二次的自然を含む生態系のモニタリングや維持・回復技術、遺伝資源を含む生態系サービスと自然資本の経済・社会的価値の評価技術及び持続可能な管理・利用技術等の研究開発を推進し、「自然との共生」の実現に向けて取り組んでいる。

 「生物多様性及び生態系サービスに関する政府間科学─政策プラットフォーム(IPBES(※83))」は、生物多様性及び生態系サービスに関する科学と政策の連携強化を目的として、評価報告書の作成等を行っている。2024年3月には、IPBESの生物多様性等のシナリオ・モデルに関する専門的なグループである「シナリオ・モデルタスクフォース」の技術支援機関が公益財団法人地球環境戦略研究機関(IGES)に設置され、同タスクフォースの活動を支援している。また、IPBES総会第12回会合の結果報告会や、IPBESに関わる国内専門家及び関係省庁による国内連絡会を2026年2月に開催した。

 我が国では、生物多様性に関するデータを収集して全世界的に利用されることを目的とする地球規模生物多様性情報機構(GBIF(※84))に、我が国からのデータ提供拠点である国立遺伝学研究所、国立環境研究所及び国立科学博物館が連携しながら、生物多様性情報を提供した。GBIFで蓄積されたデータは、IPBESでの評価の際の重要な基盤データとなることが期待されている。

 製品評価技術基盤機構は、微生物遺伝資源の収集・保存・分譲を行うとともに、生物遺伝資源に関するデータを集約した横断的データベースとして「生物資源データプラットフォーム(DBRP(※85))」を構築し、生物遺伝資源とその関連情報へワンストップでアクセスできる環境を提供している。また、微生物遺伝資源の保存と持続可能な利用を目指した14か国・地域35機関のネットワーク活動を主導し、各国との協力関係を構築し、生物多様性条約を踏まえたアジア諸国における微生物遺伝資源の利用を積極的に支援している。

 食料生産や気候調整等で人間社会と密接に関わる海洋生態系は、近年、汚染・温暖化・乱獲等の環境ストレスにさらされており、これらを踏まえた海洋生態系の理解・保全・利用が課題となっている。このため、文部科学省は、「海洋資源利用促進技術開発プログラム」のうち「海洋生物ビッグデータ活用技術高度化」において、既存のデータやデータ取得技術を基にビッグデータから新たな知見を見いだすことで、複雑で多様な海洋生態系を理解し、保全・利用へと展開する研究開発を行っている。

❹ 国民の行動変容の喚起

 環境省はナッジ等の行動科学の知見とAI/IoT等の先端技術の組合せ(BI-Tech(※86))により、日常生活の様々な場面での自発的な脱炭素型アクションを後押しする行動変容モデルの構築・実証を進めている。

 また、近年、再生可能エネルギーの導入拡大に伴い出力制御エリアは全国に広がり、春季・秋季の昼間を中心に出力制御量は増加傾向にある。この背景には、再生可能エネルギーの発電量が伸びる一方で、昼間の需要水準が相対的に低いことが挙げられる。こうした状況の下、デコ活では、市場連動型価格メニューを活用した「行動変容型DR」や、IoT機器等により機器を自動制御する「機器制御型DR」を通じ、昼の電力利用へのシフトがもたらす効果や消費者便益を検証する実証を2025年度も引き続き実施した。

 環境省は、国立環境研究所等と連携し、全国で約10万組の親子を対象とした大規模かつ長期の出生コホート調査「子どもの健康と環境に関する全国調査(エコチル調査(※87))」を2010年度から実施している。同調査においては、臍帯(さいたい)血、血液、尿、母乳、乳歯等の生体試料を採取保存・分析するとともに、質問票等によるフォローアップを行っている。

 これまでに発表された成果論文は、574本に上り(2025年12月末時点)、化学物質のばく露や生活環境といった環境要因が、妊娠・分娩(ぶんべん)時の異常や出生後の成長過程における子供の健康状態に与える影響等についての研究が着実に進められている。また、国立成育医療研究センターにおいては、エコチル調査参加者のデータは、妊婦の体重増加曲線や乳幼児の発達指標の作成等に活用されるとともに、研究結果は内閣府食品安全委員会における食品健康影響評価の参考文献としても活用されている。

 これまでの成果は、フォーラムの開催や論文の報道発表等を通じて発信されており、健康リスクを低減するための国民の行動変容を促進することに取り組んでいる。

3 レジリエントで安全・安心な社会の構築

 頻発化・激甚化する自然災害に対し、レジリエントな社会の構築を目指している。あわせて、サイバー空間等の新たな領域における攻撃や、新たな生物学的な脅威から、国民生活及び経済社会の安全・安心を確保するとともに、先端技術の研究開発を推進し、適切な技術流出対策の実施も行っていくこととしている。

❶ 頻発化、激甚化する自然災害への対応

 1.予防力の向上

 防災科学技術研究所では、将来起こり得る首都直下地震や南海トラフ地震等による大規模地震災害への備えとして、実大三次元震動破壊実験施設(Eーディフェンス)を活用し、都市空間内の構造物、地盤等の被害過程の解明、被害状況推定や被害リスク予測等の評価手法に関する研究開発、対策技術適用性の検討・実証に関する研究開発を実施している。

 国土交通省は、海上・港湾・航空技術研究所等との相互協力の下、全国港湾海洋波浪情報網(NOWPHAS(※88))の構築・運営を行っており、全国各地で観測された波浪・潮位観測データを収集し、ウェブサイトを通じてリアルタイムで広く公開している(※89)。

 土木研究所は、水災害の激甚化に対する流域治水の推進技術の開発、顕在化した土砂災害へのリスク低減技術の開発、極端化する雪氷災害に対応する防災・減災技術の開発を実施している。

 建築研究所は、自然災害による損傷や倒壊の防止等に資する建築物の構造安全性を確保するための技術開発や建築物の継続使用性を確保するための技術開発等を実施している。

 国土技術政策総合研究所は、管理不全空家や特定空家と判断する際の主な観点となる構造性能の効率的かつ的確な評価基準の開発や合理的な補強・改修法の適用に関する研究を実施している。

 海上・港湾・航空技術研究所は、地震災害の軽減及び地震後の早期復旧・復興のため、沿岸域における地震による構造物の変形・性能低下を予測し、沿岸域施設の安全性・信頼性の向上を図るための研究を実施している。

 気象研究所は、線状降水帯の発生等のメカニズム解明研究のため、大学や研究機関と協力した観測や解析を実施している。さらに、気象研究所は、局地的大雨をもたらす極端気象現象を、二重偏波レーダやフェーズドアレイレーダ、GPS等を用いてリアルタイムで検知する観測・監視技術の開発に取り組んでいる。また、局地的大雨を再現可能な高解像度の数値予報モデルの開発など、局地的な現象による被害軽減に寄与する気象情報の精度向上を目的とした研究を推進している。

 国土技術政策総合研究所は、地震により被災した係留施設の即時利用や容易な応急復旧を可能とする新たな耐震設計法の開発に加え、地震後の係留施設における耐力の定量的な評価方法の標準化に関する研究を実施している。

コラム2-11 ドローンで空中から地下を調べる技術の開発
磁気測定による地下の脆弱部の可視化

 産業技術総合研究所はこれまで、陸域や海域での地質調査に加え、ヘリコプターなどの航空機を用いた地質調査技術の開発に取り組んできました。その一環として、斜面災害に関わるリスク評価を目的に、無人航空機(ドローン)を用いた空中磁気探査技術の開発を進めています。
 豪雨や地震に伴う斜面災害は、しばしば大規模な人的被害・経済的損失をもたらすため、その発生しやすさを事前に評価し、災害に備える取り組みが重要になってきます。斜面災害の発生しやすさの要因の一つに、地下に存在する弱い部分があります。特に火山地域では、火山活動に伴う熱水やガスの影響により、岩石が化学的に変化して粘土化した熱水変質帯が形成されます。これらの熱水変質帯は、周囲の健全な岩体に比べて強度が低下した脆弱部となり、斜面災害の発生に関与すると考えられています。
 しかし、火山地域や斜面災害が発生しやすい急峻な地形では、人の立ち入りが難しく、地表から地下の様子を十分に把握する地質調査は困難でした。また、有人ヘリコプターによる空中探査は広域調査が可能である一方、詳細な地質構造を把握するために必要な低高度・高密度の観測は、安全面やコスト面で課題がありました。
 こうした課題を克服するため、産業技術総合研究所ではドローンに磁力計を搭載した空中磁気探査技術を導入し、熱水変質帯の分布把握を目的とした調査を実施しました。その結果、従来のヘリコプター調査と比べて4倍以上の空間解像度で磁気異常データを取得することに成功しました。さらに、取得した磁気データを解析することで、地下の岩石の磁化強度分布を3次元的に可視化しました。その結果、地表から深さ数十メートルにかけて連続する低磁化帯が確認され、これが熱水変質を受けた脆弱な岩体に対応することが明らかになりました。過去の地すべり地形や亀裂の分布とも良い一致がみられ、地下構造と斜面の不安定化との関係が示されました。
 本手法は、危険地帯に立ち入ることなく地下の地質を把握できる点が特長です。火山地域や急傾斜地が多い我が国において、斜面災害リスク評価の高度化に貢献するほか、将来的には資源調査やインフラ管理への応用も期待されます。

2.予測力の向上

 我が国の地震調査研究は、地震調査研究推進本部(本部長:文部科学大臣)(以下「地震本部」という。)の下、関係行政機関や大学等が密接に連携・協力しながら行われている。

 地震本部は、これまで地震の発生確率や規模等の将来予測(長期評価)を行っている。隣接する複数の領域を震源域とする東北地方太平洋沖地震や活断層を起因とする熊本地震、2024年能登半島地震の発生を踏まえ、長期評価の評価手法や公表方法を順次見直しつつ実施している。また、東北地方太平洋沖地震での津波による甚大な被害を踏まえ、様々な地震に伴う津波の評価を実施している。

 文部科学省は、海溝型巨大地震である南海トラフ地震等巨大地震災害に関して、「南海トラフ地震等巨大地震災害の被害最小化及び迅速な復旧・復興に資する地震防災研究プロジェクト」において、「南海トラフ地震の評価手法高度化と他地域への展開」及び「広域連鎖災害への事前対策の加速」を柱に、自然科学と人文・社会科学の知を結集した地震防災研究を実施している。あわせて、AIなどの情報科学分野と連携した「情報科学を活用した地震調査研究プロジェクト」の研究・開発事業を実施している。

 阪神・淡路大震災以降、陸域に地震観測網の整備が進められてきた一方、海域の観測網については、陸域の観測網に比べて観測点数が非常に少ない状況であった。このため、防災科学技術研究所では、南海トラフ地震の想定震源域のうち、熊野灘と紀伊水道沖において、地震計・津波計等を備えたリアルタイムで観測可能な高密度海底ネットワークシステムである「地震・津波観測監視システム(DONET(※90))」を運用している。また、今後も大きな余震や津波が発生するおそれがある東北地方太平洋沖において、地震・津波を直接検知し、災害情報の正確かつ迅速な伝達に貢献する「日本海溝海底地震津波観測網(S-net(※91))」を運用している。さらに、南海トラフ地震の想定震源域のうち、高知県沖から日向灘(ひゅうがなだ)において、「南海トラフ海底地震津波観測網(N-net(※92))」の構築を完了し、運用を開始した(第2-2-2図)

 火山分野においては、2014年の御嶽山(おんたけさん)の噴火等を踏まえ、「次世代火山研究・人材育成総合プロジェクト」を開始し、火山災害の軽減に貢献するため、従前の観測研究に加え、他分野との連携・融合を図り、「観測・予測・対策」の一体的な研究の推進及び広範な知識と高度な技術を有する火山研究者の育成を行っている。また、2024年度から「即戦力となる火山人材育成プログラム」により、火山研究者を目指す社会人等への学び直しの機会提供や地方公共団体・民間企業等における実務者への火山の専門知識・技能の取得支援等を行っている。

 さらに、「活動火山対策特別措置法」(昭和48年法律第61号)に基づき2024年4月に文部科学省に設置された火山調査研究推進本部(本部長:文部科学大臣)(以下「火山本部」という。)において、火山に関する観測、測量、調査及び研究の推進についての総合的かつ基本的な施策の立案及び火山に関する総合的な調査観測計画の策定についての検討を進めている。また、全国111の活火山の現状の評価を行うとともに、火山活動に変化が見られる火山等を優先して重点的に評価を行っている。加えて、火山本部の方針の下、迅速かつ効率的に機動的な調査観測を実施するための体制を構築するとともに、火山噴出物(火山灰・噴石・火山ガス等)の分析を一元的かつ継続的に実施する中核拠点の整備を進めている。

 防災科学技術研究所は、日本全国の陸域を均一かつ高密度に覆う約2,200点の高性能・高精度な地震計により、人体に感じない微弱な震動から大きな被害を及ぼす強震動に至る様々な「揺れ」の観測を行っている。海域においては約200点の地震計・津波計を運用しているほか、国内44火山の「基盤的火山観測網(V-net(※93))」を含む、全国の陸域と海域を網羅する地震・津波・火山観測網である「陸海統合地震津波火山観測網(MOWLAS(※94))」を2017年11月より運用している。MOWLASを用いた地震や津波の即時予測、火山活動の観測・予測の研究、実装を進めており、気象庁に観測データの提供を実施するほか、各研究機関や地方公共団体及び鉄道事業者をはじめとする民間での観測データの活用を推進した。

 また、マルチセンシング技術と数値シミュレーション技術、さらに、大型降雨実験施設及び雪氷防災実験施設等の先端的実験施設を活用し、風水害、土砂災害、雪氷災害等の気象災害の被害の軽減に資する研究等を実施している。例えば、AIを用いた積雪・冠水などの道路状況判別、過去の雨量統計情報に基づく大雨の「稀(まれ)さ」を踏まえた豪雨災害危険域の抽出、レーダと積雪変質モデル等を用いた高解像度面的降積雪情報など新しい情報の創出を進めている。さらに、「雪おろシグナル」の提供地域拡大、科学的根拠に基づくスキー場の安全管理を目指したニセコ吹きだまり情報サイトの構築、気象レーダ等を用いたゲリラ豪雨や突風・降雹(こうひょう)・雷等を伴う危険な積乱雲等の早期予測技術の開発等に取り組んでおり、開発された技術の社会実装や民間企業との協働によるイノベーション創出を進めている。

 気象庁は、文部科学省と協力して地震及び火山に関する調査観測結果を収集し、その解析結果等を防災情報等に活用するとともに地震調査研究推進本部地震調査委員会及び火山調査研究推進本部火山調査委員会等に提供している。地震分野では、自動震源決定処理手法(PF(※95)法)を開発して導入するとともに、緊急地震速報については、東北地方太平洋沖地震で課題となった同時多発地震及び巨大地震に対応するため、IPF法(※96)及びPLUM法(※97)を導入したほか、発表基準に長周期地震動階級を追加した。また、更なる高度化のための技術開発を防災科学技術研究所等と協力して進めている。津波については、沖合の津波観測波形から沿岸の津波の高さを精度良く予測する手法(tFISH(※98))を導入している。火山分野では、火山監視情報システム(VOIS(※99))を2024年に機能強化し、火山近傍の観測点にとどまらず、より広範囲の火山用観測機器や地震観測用機器等のデータを取り込み、噴火により火山近傍の観測点が使用不能となった場合でも火山活動の推移を予測し継続的に情報提供を行っている。

 気象研究所は、津波災害軽減のための津波地震などに対応した即時的規模推定や沖合の津波観測データを活用した津波予測の技術開発、南海トラフで発生する地震の規模、破壊領域やゆっくりすべりの即時把握に関する研究、火山活動評価・予測の高度化のための監視手法の開発などを実施している。

 産業技術総合研究所は、防災・減災等に資する地質情報整備のため、活断層・津波堆積物調査や活火山の地質調査を行い、その結果を公表している。全国の主要活断層に関しては、地震発生確率や最新活動時期が不明な活断層のうち5断層(津軽山地西縁、鴨川低地、木曽山脈西縁、屏風山(びょうぶやま)・恵那山(えなさん)─猿投山(さなげやま)、周防灘(すおうなだ))を、また、長大な活断層帯を震源とする連動型地震の発生可能性の評価手法を開発・高度化するために中央構造線断層帯を調査しているほか、都市の近郊に位置する活断層(福岡県の宇美(うみ)断層と西山断層帯、防予諸島周辺海域、燧灘(ひうちなだ)に分布する海底活断層)についても調査し、地震発生確率や規模の算出に必要なデータ等を着実に取得している。また、活断層データベースの活用を促進するため、調査地809地点及び活断層線22件に関する位置情報のデータ精度向上に関する作業や表示システム改善に係る作業を実施している。津波に関しては、これまでに北海道東部で取得した津波堆積物の情報から、17世紀と13~14世紀に発生した巨大津波の浸水範囲を推定した。その上で、津波の浸水計算を行い、これら二つの地震の断層モデルを構築した。そのほか、南海トラフ巨大地震の短期予測に資する地下水等総合観測点を運用し、地下水位(水圧)、地殻ひずみや地震波の常時観測を継続するとともに、新たに宮崎県延岡市に1地点を整備した。

 火山に関しては、活動火山対策のために観測、測量、調査及び研究の充実等が必要な51火山を中心に、現地調査や噴出物の解析等を行い、7火山(羅臼岳(らうすだけ)・知床(しれとこ)硫黄山(いおうざん)、雌阿寒岳(めあかんだけ)、岩木山(いわきさん)、浅間山(あさまやま)、箱根山(はこねやま)、伊豆東部火山群、伊豆大島)で過去の噴火の規模・様式等を解明し、今後の活動推移予測に資する情報を取得している。これら調査で得た結果を「日本の火山」データベースとして整備し、4火山(富士山、有珠、新潟焼山、桜島)の火口位置情報と噴火履歴をオンライン表示する噴火口図の公開を開始した。

 海洋研究開発機構は、南海トラフの想定震源域や日本周辺海域・西太平洋域において、研究船や各種観測機器等を用いて海域地震や火山に関わる調査・観測を大学等の関係機関と連携して実施している。さらに、これら観測によって得られるデータを解析する手法を高度化し、大規模かつ高精度な数値シミュレーションにより地震・火山活動の推移予測を行っている。

 国土地理院は、電子基準点(※100)等によるGNSS(※101)連続観測、超長基線電波干渉法(VLBI(※102))、干渉SAR(※103)等を用いた地殻変動やプレート運動の観測、解析及びその高度化のための研究開発を実施している。また、気象庁、防災科学技術研究所、神奈川県温泉地学研究所、京都大学防災研究所等による火山周辺のGNSS観測点のデータも含めた火山GNSS統合解析を実施し、干渉SAR時系列解析と組み合わせて火山周辺の地殻変動のより詳細な監視を行っている。

 海上保安庁は、GNSS測位と音響測距を組み合わせた海底地殻変動観測や海底地形等の調査を推進し、その結果を随時公表している。

 気象庁は、線状降水帯の予測精度向上等に向けた取組を強化している。2030年度に運用開始予定の次期静止気象衛星「ひまわり10号」の整備をはじめとする水蒸気観測等の強化を進めたほか、局地モデルの水平解像度を2kmから1kmに高解像度化する等、強化した気象庁スーパーコンピュータ及びスーパーコンピュータ「富岳(ふがく)」を活用した予測技術の開発等を進めた。

コラム2-12 下水道管内におけるドローン調査技術の開発・普及促進に向けた動向

 2025年1月、埼玉県八潮市で大規模な道路陥没事故が発生し、地域の生活にも大きな影響が出ました。この事故をきっかけに、普段目にすることがない地下の見えない下水道管をどう安全に点検していくかが、改めて注目されています。
 下水道管の中はドローンが自ら起こした風に巻き込まれたり、地上のように衛星電波が使えなかったりと、ドローンの飛行がとても難しい場所です。それでも、大量の下水が常時流れて足下が悪く、暗い危険な下水道管の中に人が入らずに調査できるという大きなメリットがあるため、近年、注目を集めており、下水道関連のドローン技術の開発も大きく進歩しています。八潮市の事故直後には、従来の技術では調査が困難だった箇所において、ドローンで管内の様子を鮮明に撮影するとともに、陥没に巻き込まれ行方不明となっていたトラックのキャビン(運転席)を発見しました。

 国土交通省国土技術政策総合研究所では、2022年に「下水道管路模擬施設」という実験施設を設置し、ドローンをはじめとする下水道管内を効率的に点検・調査するための機器の性能確認実験を行っています。
 この施設は民間企業の技術開発にも活用できるよう貸出を行っており、多くの企業が新たな技術の開発・検証に利用しています。また、さらなる技術の開発と普及を進めるため、国土交通省が2025年に設置した「下水道管路メンテナンス技術の高度化・実用化推進会議」(https://www.mlit.go.jp/mizukokudo/sewerage/mizukokudo_sewerage_tk_001033.html)では、ドローンに求められる技術開発目標や普及に向けた方策などが議論されています。
 全国の下水道管は直径20cm程度~数mにまで及ぶ様々な大きさを有し、その総延長は約50万kmに及び、今後、老朽化した管路の割合は急速に増えていくと見込まれています。事故を未然に防ぎ、安心して暮らせる社会を守るためには、安全で効率的な調査技術が欠かせません。これらの取組を通じて、より安全で使いやすいドローン技術が普及し、下水道管路の維持管理に広く活用されていくことが期待されています。

3.対応力の向上

 SIP第1期「レジリエントな防災・減災機能の強化」(2014~2018年度)において開発した、災害情報を電子地図上で集約し、関係機関での情報共有を可能とするシステムである「基盤的防災情報流通ネットワーク(SIP4D(※104))」や、SIP第2期課題「国家レジリエンス(防災・減災)の強化」(2018~2022年度)において開発した衛星データ即時一元化・共有システム「ワンストップシステム」等については、実災害への対応に活用されている。また、2023年度から開始したSIP第3期課題「スマート防災ネットワークの構築」においては、社会全体の被害軽減や早期復興の実現を目指し、巨大地震や頻発化・激甚化する風水害等に対し、企業・市町村の対応力の強化、国民一人ひとりの命を守る防災行動、関係機関による迅速かつ的確な災害対応に資する研究開発及び社会実装に向けた取組を実施している。例えば、リアルタイム津波浸水予測に関して、2025年7月30日に発生したカムチャツカ半島沖地震に起因する津波の追加検証を実施、地震情報入力から9分で我が国太平洋沿岸の津波浸水予測を完了した。津波高0.5~1.3mの観測値とおおむね整合した結果を導出しており、重点的に被害を把握すべきエリアを提示可能であることを確認した。

 また、準天頂衛星システム「みちびき」のサービスを2018年11月1日に開始し、みちびきを経由して防災気象情報の提供を行う災害・危機管理通報サービス及び避難所等における避難者の安否情報を収集する安否確認サービスの提供を行っている。

 総務省は、情報通信等の耐災害性の強化や被災地の被災状況等を把握するためのICTの研究開発を行っている。また、これまで総務省が実施してきた災害時に被災地へ搬入して通信を迅速に応急復旧させることが可能な通信設備(移動式ICTユニット)等の研究成果の社会実装や国内外への展開を推進している。

 防災科学技術研究所は、各種自然災害の情報を共有・利活用するシステムの開発に関する研究を実施するとともに、必要となる実証と、指定公共機関としての役割に基づく行政における災害対応の情報支援を行っている。

 消防庁消防研究センターでは自然災害への対応として、2021年度からの5年計画で①ドローンなどを活用した土砂災害時の消防活動能力向上に係る研究開発、②地震発生時の市街地火災による被害を抑制するための研究開発、③危険物施設における地震災害を抑制するための研究等を進めている。

 情報通信研究機構は、天候等にかかわらず災害発生時における被災地の地表状況を随時・臨機に観測可能な航空機搭載合成開口レーダ(Pi-SAR(※105))に関する実証観測を実施している。また、通信途絶領域においてSIP4Dとのデータ連携を可能とする可搬型通信装置について、SIP第2期で開発した「ポータブルSIP4D」をベースにして、SIP第3期で機関横断情報通信システム「X-ICS(※106)(クロスイクス)」の研究開発や実動機関による有効性の検証を進めている。

 国土技術政策総合研究所は、災害時の継続利用の観点等からの住宅・建築物の性能評価技術の開発、事前防災対策による安全な市街地形成のための避難困難性評価手法の開発に関する研究や、建築火災時に階段を使って避難することが困難ないわゆる「避難弱者」を対象に、これまでの「建築基準法」(昭和25年法律第201号)にはない「避難弱者の存在を前提にして、安全性の確保を図ろうとする全く新しいアプローチの設計法」に関する研究を実施している。また、住民の避難行動等を支援するため、土石流の土砂災害警戒区域を対象とした相対的な危険度評価手法に関する研究を実施している。

 土木研究所は、大規模地震に対するインフラ施設の機能確保技術の開発を実施している。

 宇宙航空研究開発機構(JAXA)は、ALOS-2やALOS-4等の人工衛星を活用した様々な災害の監視や被災状況の把握に貢献している。

4.観測・予測データを統合した情報基盤の構築等

 文部科学省は、「地球環境データ統合・解析プラットフォーム事業」において、気候変動等の地球規模課題の解決に貢献するため、地球環境データ(地球観測データ、気候予測データ等)を蓄積・統合・解析・提供する「データ統合・解析システム(DIAS)」を長期的・安定的に運用するとともに、地球環境データを利活用する研究開発等を推進している。

 また、気候変動観測衛星「しきさい」(GCOM-C)をはじめとした地球環境観測データの独自の数理アルゴリズム解析を推進している。

 さらに、気象庁では、「ひまわり8号」及び「ひまわり9号」を運用し、熱帯低気圧や海面水温等を観測しており、我が国のみならずアジア太平洋地域の自然災害防止や気候変動監視等に貢献している。

❷ デジタル化等による効率的なインフラマネジメント

 内閣府は、SIP第3期課題「スマートインフラマネジメントシステムの構築」において、我が国の膨大なインフラ構造物・建築物の老朽化が進む中で、デジタル技術により、設計から施工、点検、補修まで一体的な管理を行い、持続可能で魅力的・強靱(きょうじん)な国土・都市・地域づくりの推進を可能とするインフラマネジメントを実現するための技術開発・研究開発に取り組んでいる。

 国土交通省は、i-Construction(※107)の取組を中核にインフラ分野のDXを推進しているが、2024年4月には、i-Constructionの取組を加速し、建設現場における省人化対策に取り組むため、国土交通省の新たな建設現場の生産性向上(省人化)の取組を「i-Construction2.0」として取りまとめた。i-Construction 2.0では、2040年度までに建設現場の省人化を少なくとも3割進めること、すなわち生産性を1.5倍に向上することを目標とし、「施工のオートメーション化」、「データ連携のオートメーション化」、「施工管理のオートメーション化」を3本の柱として、建設現場で働く一人ひとりが生み出す価値を向上し、少ない人数で、安全に、快適な環境で働く生産性の高い建設現場の実現を目指して、建設現場のオートメーション化の取組を推進する。また、2025年4月には、「インフラ分野のオープンデータの取組方針」を取りまとめ、更なるインフラ分野におけるデータ活用による施策の効率化・高度化を推進する。国土交通データプラットフォームに関して、同年11月に、専門的な知識や技術的な操作無しに「AIを用いて自然言語で検索・分析する」MCPサーバの提供を開始するなど、産学官連携によるイノベーションの創出に向けた取組を加速していく。

 さらに、フィジカルAIを活用しつつ、社会インフラの建設、維持管理及び災害対応の効果・効率の向上のためにロボットの活用を進めていく。

 国土地理院は、i-Constructionを推進し、インフラ分野のDXを加速させるため、調査・測量、設計、施工、検査、維持管理・更新の各工程で使用する位置情報の共通ルール「国家座標」を整備し、GNSS、VLBI、干渉SARを用いた観測や研究開発により、国家座標の維持・管理を行っている。さらに、デジタル空間に現実空間を再現するデジタルツインの基盤となる3次元地図作成のために、ベース・レジストリである「電子国土基本図」の3次元化に取り組んでいる。

 国土技術政策総合研究所では、BIM/CIM(※108)モデル等のデジタルデータの活用に向けたシステムの検討、新技術の活用・施工現場データの分析に基づく建設技能者の作業改善による労働生産性向上・安全性向上につながる技術開発を行う「建設事業各段階のDXによる抜本的な労働生産性向上に関する研究」を実施している。また、脱炭素社会の実現、在宅勤務の進展への対応、災害時の継続利用の観点からの住宅・建築物の性能評価技術の開発を行う「社会環境の変化に対応した住宅・建築物の性能評価技術の開発」を実施している。また、新技術等の活用により、地域防災力の向上や総合的な市街地の防災性能評価等に係る技術開発を行う「新技術等を用いた既成市街地の効果的な地震防災・減災技術の開発」を実施している。そのほか、国土交通省本省関連部局と連携し、既存の住宅・社会資本ストックの点検・補修・更新等を効率化・高度化して、安全に利用し続けるため、RC造マンションの既存住宅状況調査等の効率化に向けた、デジタル新技術の適合性評価基準の開発に関する研究を実施している。

 土木研究所は、社会インフラの長寿命・信頼性向上を目指した更新・新設に関する研究開発、構造物の予防保全型メンテナンスに資する技術の開発、積雪寒冷環境下のインフラの効率的な維持管理技術の開発、施工・管理分野の生産性向上に関する研究開発を実施している。

 海上・港湾・航空技術研究所は、我が国の経済・社会活動を支える沿岸域インフラの点検・モニタリングに関する技術開発や、維持管理の効率化及びライフサイクルコストの縮減に資する研究を実施している。

 物質・材料研究機構は、社会インフラの長寿命化・耐震化を推進するために、我が国が強みを持つ材料分野において、インフラの点検・診断技術、補修・更新技術、材料信頼性評価技術や新規構造材料の研究開発の取組を総合的に推進している。

 経済産業省は、産業保安分野においてテクノロジーの活用により保安面での安全性と効率性の向上を実現するスマート保安を推進している。

❸ 厳しさを増すサイバー空間を巡る情勢に対応したセキュリティの確保

 国家を背景とするものをはじめとした巧妙化・高度化されたサイバー攻撃は、我が国にとっても現に直面する安全保障上の脅威となっているほか、サイバー犯罪の巧妙化等により、サイバー空間における脅威は質・量両面で増大していくと考えられる。さらには、AI、量子技術等の新たな技術革新がサイバーセキュリティや安全保障等にもたらす効果・影響に対して、適時的確な対応を行っていかなければならない。

 「サイバーセキュリティ基本法」(平成26年法律第104号)に基づき、サイバーセキュリティに関する施策を総合的かつ効果的に推進するため、政府は、「サイバーセキュリティ戦略」を策定している。これまで、令和3年9月28日に閣議決定された「サイバーセキュリティ戦略」に基づき関連施策を推進していたところ、令和7年5月に成立したサイバー対処能力強化法等(※109)に基づく取組を含め、サイバー空間を巡る脅威に対応するための取組を一体的に推進するため、「サイバーセキュリティ戦略本部」(本部長:内閣総理大臣)での検討を経て、令和7年12月23日に新たな「サイバーセキュリティ戦略」を閣議決定した。こうした戦略に基づき、政府はサイバーセキュリティ関連技術の研究開発・開発支援等を推進している。

 内閣府は、2018~2022年度まで、SIP第2期課題「IoT社会に対応したサイバー・フィジカル・セキュリティ」としてセキュアなSociety 5.0の実現に向けた「サイバー・フィジカル・セキュリティ対策基盤技術」の開発及び実証を行った。これはIoTシステム・サービス及び中小企業を含む大規模サプライチェーン全体を守ることを可能とするものであり、その研究開発成果を活用した製品やサービスが民間企業から提供されている。

 また、経済産業省、文部科学省とともに、2022年9月に定めた「経済安全保障重要技術育成プログラム研究開発ビジョン(第一次)」の下、サプライチェーンセキュリティに関する不正機能検証技術(ファームウェア・ソフトウェア/ハードウェア)、AIセキュリティに係る知識・技術体系に関する研究開発を順次進めている。2023年8月には「経済安全保障重要技術育成プログラム研究開発ビジョン(第二次)」として新たに先進的サイバー防御機能・分析能力強化、偽情報分析に係る技術を支援対象とする技術とした上で、サイバー空間の状況把握力や防御力の向上に資する技術や、セキュアなデータ流通を支える暗号関連技術、偽情報分析等についての研究開発も順次進めている。

 総務省は、情報通信研究機構等を通じて、多様化するサイバー攻撃に対応した攻撃観測・分析・可視化・対策技術や大規模集約された多種多様なサイバー攻撃に関する情報の横断分析技術、新たなネットワーク環境等のセキュリティ向上のための検証技術の研究開発を推進している。また、当該研究開発等を通じて得た技術的知見を活用して、巧妙化・複雑化するサイバー攻撃に対し、実践的な対処能力を持つセキュリティ人材を育成するため、同機構に組織した「ナショナルサイバートレーニングセンター」において、国の機関、地方公共団体等を対象とした実践的サイバー防御演習(CYDER(※110))の実施や、若手セキュリティ人材の育成(SecHack365)、分野に応じた実践的演習を容易に開発・実施可能とする演習基盤(CYROP(※111))の提供に取り組んでいる。加えて、同機構が有する技術・ノウハウを中核として産学官連携を促進する取組(CYNEX(※112))を実施しており、サイバー脅威情報の収集・分析・共有や国産セキュリティ技術の開発支援に取り組んでいる。

 経済産業省は、IoTやAIによって実現されるSociety 5.0におけるサプライチェーン全体のサイバーセキュリティ確保を目的として、産業に求められる対策の全体像を整理した「サイバー・フィジカル・セキュリティ対策フレームワーク(CPSF)」を2019年4月に策定し、CPSFに基づく産業分野別(工場、電力、宇宙、半導体等)のガイドラインの作成等を進めている。そのうち半導体分野では、半導体デバイス工場において求められるセキュリティ対策について、国際的な枠組みとの整合も含め検討し、2025年10月に「半導体デバイス工場におけるOTセキュリティガイドライン」を公表した。また、2026年1月には「半導体デバイスメーカーに対するセキュリティ要求事項」を策定しており、経済産業省の投資促進関係施策の要件等との紐づけを順次進めていく。

 セキュアなソフトウェアやIoT製品の流通に向けた取組として、JC-STAR(IoT製品に対するセキュリティ適合性評価制度)の一部[あらゆる製品類型に共通的な最低限度の適合水準(★1)]運用を2025年3月に開始し、2025年5月より★1ラベルの「適合ラベル取得製品リスト」を公開している。さらに、2026年2月に通信機器・ネットワークカメラ★3[政府機関等や重要インフラ事業者、大企業の重要なシステムでの利用を想定したIoT製品類型ごとの汎用的なセキュリティ要件]のセキュリティ要件を公開し、当年度中の申請受付開始を予定している。また、我が国のIoT製品製造事業者による海外展開を後押しするため、諸外国の類似制度との相互承認を図るための議論を進めている(2026年1月より英国のPSTI法(Product Security and Telecommunications Infrastructure Act)との相互承認制度が開始された。2026年6月よりシンガポールのCLS(Cybersecurity Labelling Scheme)との相互承認制度が開始)。

 サイバーセキュリティ人材不足の課題に対応するために必要な施策の在り方について検討を進め、2025年5月に「サイバーセキュリティ人材の育成促進に向けた検討会最終とりまとめ」を公表した。最終とりまとめでは、施策の方向性として、「セキュリティ・キャンプの拡充」「登録セキスペの活用促進」「中小企業等における人材確保策の提示」を示し、各施策の継続的な改善に向けて取り組んでいる。サプライチェーンにおける重要性を踏まえた上で満たすべき各企業のセキュリティ対策を提示しつつ、その対策状況を可視化する仕組みの構築に向けて検討を進めた結果として、2026年3月に「サプライチェーン強化に向けたセキュリティ対策評価制度に関する制度構築方針」を公表した。また、同制度を活用する中小企業向けの支援策として、「サイバーセキュリティお助け隊サービス」の新たな類型を創設する方針や、取引関係にある企業間においてセキュリティ対策を要請する際の関係法令の整理も併せて提示した。

 中小企業のサイバーセキュリティ対策については、令和6年度補正予算事業において見直したIT導入補助金セキュリティ対策推進枠の要件を維持し、サイバーセキュリティお助け隊サービスの導入支援を引き続き実施した。

❹ 新たな生物学的な脅威への対応

 喫緊であった新型コロナウイルス感染症への対応として、日本医療研究開発機構は1,515億円を超える研究開発支援を行い、4件のワクチン、23件の医療用検査薬、2件の医療機器の承認につなげてきた。また、「ワクチン開発・生産体制強化戦略」(令和3年6月1日閣議決定)を踏まえて、2022年3月には、組織内に先進的研究開発戦略センター(SCARDA)を設置し、ワクチン開発におけるリーダーシップを取るとともに、関係府省庁と連携し、世界トップレベル研究開発拠点の形成や、ワクチン開発に資する新規モダリティの開発、「ワクチン開発・生産体制強化戦略」における重点感染症に対するワクチン開発等、次なる感染症有事に備えた研究開発や人材育成等に取り組んでいる。さらに、mRNAワクチンを含む次世代型ワクチンの製造に対応可能な設備の整備、製造技術の高度化、原材料供給体制の強化等、国内におけるワクチン製造能力を強化するとともに、感染症有事に迅速かつ安定的にワクチンを供給できる体制の構築を推進している。(「ワクチン生産体制等緊急整備事業」(厚生労働省所管))これまで先進的研究開発戦略センターの取組においては、世界トップレベルの研究開発拠点から継続的に新たなシーズが関連事業に導出されたほか、新たにワクチン開発経験のない異分野(理学、工学、情報科学等)の研究者からの研究提案の採択、国内の有望なシーズを掘り起こすための相談対応の実施等、革新的なワクチンの研究開発を推進している。

 また、2025年度には、感染症等に関する科学的知見の基盤・拠点として国立健康危機管理研究機構(JIHS)を設立するとともに、「ワクチン開発・生産体制強化戦略」を全面改定し、ワクチンのみならず治療薬及び診断薬等の研究開発やサプライチェーンの強化等を行うために、「感染症危機対応医薬品等(ワクチン、治療薬、診断薬等)開発・生産体制強化戦略」(令和8年3月24日閣議決定)を策定するとともに、令和7年度補正予算において「感染症危機対応医薬品等の研究開発プラットフォーム」を立ち上げ、感染症有事に備え政府一体となった対応を一層推進することとした。

 また、新型コロナウイルス感染症の対応を踏まえ、スーパーコンピュータ「富岳(ふがく)」を用いたエアロゾルシミュレーションをはじめとする感染防止対策の感染リスク低減効果の評価等を実施した。

 そのほか、新型コロナウイルス感染症の流行により、グローバルな対応体制の必要性が改めて明らかになったことを踏まえ、日本医療研究開発機構を通じた支援により、国内外の感染症研究基盤の強化や基礎的研究を推進(「新興・再興感染症研究基盤創生事業」(文部科学省所管))するとともに、感染症有事対応の抜本的強化として、感染症危機対応医薬品等の実用化に向けた開発研究まで一貫して推進している(「新興・再興感染症に対する革新的医薬品等開発推進研究事業」(厚生労働省所管))。また、国内やアジア地域における治験・臨床試験を進めるための基盤構築を進めているところである(「感染症臨床研究ネットワーク事業」、「アジア地域における治験・臨床試験ネットワークの構築事業」(厚生労働省所管))。

❺ 宇宙・海洋分野等の安全・安心への脅威への対応

1.宇宙分野の研究開発の推進

 測位・通信・観測等の宇宙システムは、我が国の安全保障や経済・社会活動を支えるとともに、Society 5.0の実現に向けた基盤としても、重要性が高まっている。こうした中、宇宙活動は官民共創の時代を迎え、広範な分野で宇宙利用による産業の活性化が図られてきている。また、宇宙探査の進展により、人類の活動領域が地球軌道を超えて月面、深宇宙へと拡大しつつある。宇宙は科学技術のフロンティア及び経済成長の推進力として、更にその重要性を増しており、我が国におけるイノベーションの創出の面でも大きな推進力になり得る。

 こうした認識の下、政府は「宇宙基本計画」(令和5年6月13日閣議決定)に基づき、「宇宙技術戦略」を策定し、我が国の宇宙開発利用を国家戦略として、総合的かつ計画的に強力に推進している。

(1)宇宙戦略基金

 2023年度に宇宙航空研究開発機構に創設された宇宙戦略基金は、第1期及び第2期の公募・採択が着実に進むとともに、12月に成立した2025年度補正予算と合わせ、総額8,000億円の規模となった。引き続き、宇宙分野の継続的な発展に向けた、民間投資や宇宙実証の加速、地域やスタートアップ等の国際競争力につながる特色ある技術の獲得・活用や産業の集積等を促進する観点から、企業や大学等の技術開発実証への支援を強化・加速していく。

(2)宇宙輸送システム

 宇宙輸送システムは、人工衛星等の打上げを担う宇宙開発利用の重要な柱であり、希望する時期や軌道に人工衛星を打ち上げる能力は自立性確保の観点から不可欠な技術基盤といえる。文部科学省及び宇宙航空研究開発機構は、自立的に宇宙活動を行う能力を維持・発展させるとともに、国際競争力を確保するため、H3ロケットやイプシロンロケットといった基幹ロケットの開発・高度化を進めている。加えて、文部科学省は、スタートアップ企業等が有する先端技術の社会実装の促進のため、中小企業イノベーション創出推進事業(SBIRフェーズ3基金事業)において、「民間ロケットの開発・実証」の実施者に対する支援を行っている。

 また、産業発展を目指した将来の国益確保と新たな宇宙輸送市場の形成・獲得に向け、抜本的低コスト化等も含めて革新的技術による将来宇宙輸送システムの実現に必要な要素技術開発を官民共同で実施している。あわせて、宇宙航空研究開発機構は、宇宙戦略基金を用いて、射場設備や打上げ運用等に必要な技術開発やロケット部品の製造に係る技術開発のテーマについて公募・採択し、支援を行っている。

 なお、2025年12月22日にH3ロケット8号機の打上げが失敗し、搭載したみちびき5号機を喪失した。文部科学省では対策本部を設置するとともに、有識者会合において専門的見地からの調査検討を行い、原因究明等を進めている。

(3)衛星測位システム

 内閣府は、準天頂衛星システム「みちびき」について、2018年11月1日に4機体制による高精度測位サービスを開始するとともに、7機体制構築に向けて、2025年2月2日に6号機を打ち上げ、2026年8月7日に7号機を打上げ予定である。(2025年12月22日、H3ロケット打ち上げ失敗により、5号機を喪失)さらに、準天頂衛星システムの機能性や信頼性を高め、衛星測位機能を強化するため、7機体制から11機体制に向け、2024年度より3号機の後継機及び8号機、2026年度より2号機及び4号機の後継機の本格的な開発に着手している。また、「みちびき」の利用拡大に向けて関係府省が連携し、自動車や農業機械の自動走行、物流や防災分野など様々な実証実験を進めている。

(4)衛星通信・放送システム

 2020年代に国際競争力を持つ次世代静止通信衛星を実現する観点から、総務省と文部科学省が連携し、電気推進技術や大電力発電、フルデジタル通信ペイロード技術等の技術実証のため、技術試験衛星9号機(ETS-9)の打上げに向け開発を行っている。

(5)衛星地球観測システム

 環境省は、2009年1月に打ち上げた温室効果ガス観測技術衛星「いぶき」(GOSAT)及び2018年10月に打ち上げた温室効果ガス観測技術衛星2号「いぶき2号」(GOSAT-2)により、全球の二酸化炭素とメタンの濃度が地球規模で年々上昇している状況を明らかにしてきた。このミッションを発展的に継承し、脱炭素社会に向けた施策効果の把握を目指し、後継機となる温室効果ガス・水循環観測技術衛星「いぶきGW」(GOSAT-GW)が2025年6月、H-ⅡAロケットの最終号機となる50号機で打ち上げられた。「いぶきGW」には、温室効果ガスを観測する「温室効果ガス観測センサ3型:TANSO-3」に加え、海面水温など水循環に関する「高性能マイクロ波放射計3:AMSR3」(JAXAが開発)が搭載されている。

 宇宙航空研究開発機構は、地球規模での水循環・気候変動メカニズムの解明を目的に2012年5月に打ち上げた水循環変動観測衛星「しずく」(GCOM-W)及び2017年12月に打ち上げた気候変動観測衛星「しきさい」(GCOM-C)の運用を行っている。「しずく」は、2014年2月に米国航空宇宙局(NASA(※113))との国際協力プロジェクトとして打ち上げた全球降水観測計画(GPM(※114))主衛星のデータとともに気象庁において利用され、降水予測精度向上に貢献するなど、気象予報や漁場把握等の幅広い分野で活用されるとともに、「しきさい」は、海外の大規模な森林火災の把握にも活用されている。2024年5月には、JAXAと欧州宇宙機関(ESA)が協力して開発した、雲エアロゾル放射ミッション衛星「はくりゅう」(EarthCARE衛星)が打ち上げられ、雲、エアロゾルの全地球的な観測を行い、気候変動予測の精度向上に貢献することが期待されている。

 また、2014年5月に打ち上げられた陸域観測技術衛星2号「だいち2号」(ALOS-2)及び2024年7月に打ち上げられた先進レーダ衛星「だいち4号」(ALOS-4)は、様々な災害の監視や被災状況の把握、森林や極域の氷の観測等を通じ、防災・災害対策や地球温暖化対策などの地球規模課題の解決に貢献している。災害発生前の対策としては、気候変動による世界の雨雪の時空間変化を把握し、頻発化・激甚化する水災害の人間社会への影響を低減することを目的に、米国、仏国との協力の下、GPMを発展・継承した降水レーダ衛星(PMM(※115))の開発も進めている。従来の課題であった人工電波による観測欠損を克服し、天候や昼夜を問わず観測できる、超広帯域電波デジタル干渉計衛星(SAMRAI衛星)の開発を進めており、気象防災、船舶検知、漁場探索、洋上風力発電など多様な分野での活用を目指している。

 さらに、2023年3月の「だいち3号」の喪失等を受けて、光学観測の今後の方向性について検討を加速し、「官民連携による光学観測事業」として、災害時の被災状況把握や国土・森林管理等での活用を目指し、民間主体で国際競争力ある小型光学衛星による観測システムを開発するとともに、JAXA主体でこれと協調観測する我が国初の高度計ライダー衛星の技術検討を進めている。

 加えて、JAXA第5期中長期計画において、地球観測分野として貢献すべき、宇宙安全保障の確保、国土強靱(きょうじん)化、地球規模課題への対応、イノベーションの創出といった領域において、目指す便益(リターン)を着実に具現化するため、特に重点的に推進すべきテーマを定め、各テーマの推進に必要な新規技術開発等を実施している。

 なお、我が国の人工衛星の安定的な運用に向けて、文部科学省及び宇宙航空研究開発機構は、2002年度から宇宙状況把握システム(SSA(※116)システム)を構築・運用し、地上からスペースデブリ(宇宙ゴミ)等の把握を行ってきており、2022年度末からは防衛省が運用するシステムに観測データを提供すること等により、宇宙空間の持続的かつ安定的な利用の確保に貢献している。

(6)宇宙科学・探査

 宇宙科学の分野においては、宇宙航空研究開発機構が中心となり、宇宙の構造と進化に係る数々の謎の解明に挑むX線分光撮像衛星「XRISM(※117)」をはじめとする科学衛星の開発・運用や、世界初の月面ピンポイント着陸に成功した小型月着陸実証機「SLIM(※118)」をはじめとする探査機による技術実証など、X線・赤外線天文観測や月・惑星探査などの分野で世界トップレベルの業績を上げている。

 さらに、欧州宇宙機関との国際協力による水星探査計画「BepiColombo」の水星磁気圏探査機「みお」(2018年10月打上げ)の水星周回軌道突入による水星観測の本格化や世界初の火星衛星からサンプルリターンを行い太陽系の起源や進化の過程に迫る火星衛星探査計画「MMX(※121)」による、新たな科学的成果の創出が期待されている。このほか、小惑星フェートンへ向かう深宇宙探査技術実証機「DESTINY+(※122)」や、太陽高温プラズマの形成や太陽が地球や太陽系に及ぼす影響を探る高感度太陽紫外線分光観測衛星「SOLAR-C」、将来のプラネタリーディフェンス活動を見据えた地球接近小惑星アポフィス探査計画「RAMSES(※123)」への参画など、国際的な地位の確立や人類のフロンティア拡大に資する宇宙科学分野の研究開発を推進している。

 また、後述の国際宇宙探査計画「アルテミス計画」へ我が国が参画を決定したことを踏まえ、宇宙戦略基金において、月面における水等の資源が所在する有望箇所の推定につなげることを目指し、効率的な月面水資源探査に向けた小型軽量なセンサを搭載した小型衛星の開発・実証を進めている。

(7)有人宇宙活動

 国際宇宙ステーション(ISS(※124))計画(※125)は、日本・米国・欧州・カナダ・ロシアの5極(15か国)共同の国際協力プロジェクトである。我が国は、「きぼう」日本実験棟、宇宙ステーション補給機「こうのとり」(HTV(※126))及び新型宇宙ステーション補給機(HTV-X)の開発・運用や日本人宇宙飛行士のISS長期滞在により本計画に参加している。2022年1月、NASAが米国としてISSの運用期間を2030年まで延長することを発表し、我が国も、同年11月、米国以外の参加極の中で最初に運用延長への参加を表明した。

 我が国では、これまでに、有人・無人宇宙技術の獲得、国際的地位の確立、宇宙産業の振興、宇宙環境利用による社会的利益及び青少年育成等の多様な成果を上げてきている。HTVは、2009年の初号機から2020年の9号機までの全てにおいてミッションを成功させており、ISSの利用・運用を支えてきた。現在は、HTVで培った経験を生かし、輸送能力の増強や運用性向上を目指し、後継機である新型宇宙ステーション補給機(HTV-X)の開発を進めており、2025年10月にHTV-X1号機の打上げを成功させた。

 また、ISSへの日本人宇宙飛行士の搭乗については、大西卓哉宇宙飛行士が2025年3月から8月まで、油井亀美也宇宙飛行士が2025年8月から2026年1月までISS長期滞在を行った。大西宇宙飛行士は日本人として3人目となるISS船長を務め、油井宇宙飛行士はHTV-X1号機の把持を成功させるなど、国際協力によって運用されるISSにおいて我が国としての貢献を果たしている。

(8)国際宇宙探査計画

 アルテミス計画は、月周回有人拠点「ゲートウェイ」の建設や将来の火星有人探査に向けた技術実証、月面での持続的な有人活動などを民間企業の参画を得ながら国際協力により進めていく、米国が主導する計画である。我が国は、2019年10月にアルテミス計画への参画を決定し、欧州及びカナダ等も参画を表明している。上記決定を踏まえ、2020年には、文部科学省とNASAとの間で、「月探査協力に関する共同宣言」に署名し、その後、日本政府とNASAとの間で、「ゲートウェイのための協力に関する了解覚書」(以下「了解覚書」という。)が締結され、2022年には了解覚書の協力内容を具体化するため、文部科学省とNASAとの間で、了解覚書に基づく「ゲートウェイのための協力に関する実施取決め」に署名し、我が国がゲートウェイ居住棟への機器提供や物資補給を行い、NASAが日本人宇宙飛行士のゲートウェイへの搭乗機会を1回提供することが規定された。

 2023年には、宇宙の探査及び利用をはじめとする日米宇宙協力を一層円滑にするための新たな法的枠組みである、「日・米宇宙協力に関する枠組協定」(以下「枠組協定」という。)が発効した。2024年には、文部科学省とNASAの間で、枠組協定に基づく「与圧ローバによる月面探査の実施取決め(ローバ実施取決め)」が署名され、我が国が与圧ローバを開発・運用し、NASAが将来のアルテミス計画において日本人宇宙飛行士による月面着陸の機会を2回提供することが規定された。さらに、同年に発出された日米首脳共同声明において、ローバ実施取決めの署名を歓迎するとともに、日本人宇宙飛行士が米国人以外で初めて月面に着陸するという共通の目標が発表された。

 また、2025年2月の日米首脳会談で発出された日米首脳共同声明において、両国の宇宙飛行士が参加するISSへのクルー10ミッションや、アルテミス計画の将来のミッションでの月面探査を含む有人探査に係る強力なパートナーシップを継続する旨が盛り込まれた。ほかにも、2025年10月の内閣府とOSTPとの「日米間の技術繁栄ディールについての協力に関する覚書」の中でも、アルテミス計画やISS計画など宇宙分野について取り上げられた。

(9)宇宙の利用を促進するための取組

 文部科学省は、宇宙航空分野における新たな可能性の開拓や、宇宙利用の裾野の拡大を目的とした「宇宙航空科学技術推進委託費」により宇宙航空利用を新たな分野で進めるに当たって端緒となる技術的課題にチャレンジする研究開発、宇宙航空開発利用の発展を支える人材育成等の取組等を引き続き行っている。

 経済産業省は、石油資源の遠隔探知能力の向上等を可能とするハイパースペクトルセンサ(HISUI(※127))を開発し、2019年12月に国際宇宙ステーションの「きぼう」日本実験棟に搭載後、2025年度まで運用し、観測を行った。また、量産・コンステレーション化を見据えた低価格・高性能な小型衛星汎用バス開発・実証等を行っている。

コラム2-13 APRSAFを通じた我が国主導のアジア・太平洋地域の宇宙協力

 APRSAF(アジア・太平洋地域宇宙機関会議)は、1993年に設立されたアジア・太平洋地域最大の宇宙協力プラットフォームであり、宇宙利用の促進を目的として発展してきました。メンバーシップ制を設けない開かれた枠組みで、政府機関、大学、研究機関、国際機関、そして近年増加する民間企業まで幅広い主体が参加しています。参加規模は設立当初の14か国60名から、現在は40か国・地域、約600名へと拡大し、地域の宇宙協力を主導する存在となっています。
 2025年11月には、フィリピン・セブでAPRSAF-31が開催されました。会合では各国の宇宙活動報告に加え、衛星利用、能力構築、宇宙教育、宇宙フロンティア、宇宙法政策など多様な分科会が開かれ、災害対応、農業、環境、教育、人材育成、法制度整備など幅広いテーマで成果共有と実践的な議論が行われました。
 APRSAFの大きな特徴は、宇宙技術を地域課題の解決に結びつける具体的な協力プロジェクトを継続的に生み出している点です。災害時に衛星データを提供する「センチネル・アジア」(※128)、稲作モニタリングやメタン排出評価を行う「SAFE」(※129)、我が国の「きぼう」実験棟を活用した教育プログラム「Kibo-ABC」(※130)、宇宙法政策の国際調和を進める「NSLI」(※131)など、実践的な取組が各国の課題解決に貢献しています。また、民間企業の参加も増え、BtoBマッチング「Space Industry Connect」など産業振興の場としての役割も拡大しています。
 今回の会合では、APRSAF史上初めて国家元首であるフィリピンのマルコス大統領が出席し、APRSAFを「地域協力の中核」と評価しました。気候変動、防災、持続可能な開発など、宇宙技術が不可欠な分野への期待が改めて示されました。
 さらに、大西卓哉JAXA宇宙飛行士や若田光一アクシオム・スペース宇宙飛行士らによる人材育成をテーマとしたパネルディスカッションも実施され、「APRSAF名古屋ビジョン(※132)」を踏まえ、宇宙工学、科学研究、ビジネス、法制度など多様な分野での人材育成の重要性が確認されました。大西宇宙飛行士からは、2025年4月から8月に国際宇宙ステーション(ISS)船長として「きぼう」で行った活動報告もあり、我が国の宇宙飛行士の存在感も示されました。
 このようにAPRSAFは、単なる会議体ではなく、地域の宇宙協力を実質的に前進させる“行動するプラットフォーム”として機能しています。

 次々回のAPRSAF-33(2027年)は日本・福岡で開催されます。主催国である我が国がホスト国も務めることで、APRSAFにおける我が国への期待は一段と高まっています。国内外と連携し、アジア・太平洋地域の宇宙協力を引き続きリードしていきます。

2.海洋分野の研究開発の推進

 四方を海に囲まれ、世界有数の広大な管轄海域を有する我が国は、海洋科学技術を国家戦略上重要な科学技術として捉え、科学技術の多義性を踏まえつつ、長期的視野に立って継続的に取組を強化していく必要がある。また、海洋の生物資源や生態系の保全、エネルギー・鉱物資源確保、地球温暖化や海洋プラスチックごみなどの地球規模課題への対応、地震・津波・火山等の脅威への対策、北極域の持続的な利活用、海洋産業の競争力強化等において、海洋に関する科学的知見の収集・活用に取り組むことは重要である。

 内閣府は、総合海洋政策本部と一体となって、「第4期海洋基本計画」(令和5年4月28日閣議決定)の下、海洋に関する技術開発課題等の解決に向けた取組を推進するとともに、我が国の総合的な国力の向上その他の国益の観点から特に重要であって、府省横断で取り組むべき重要ミッションを示した、「海洋開発等重点戦略」(2024年4月26日総合海洋政策本部決定)を策定した。

 文部科学省は、第4期海洋基本計画、海洋開発等重点戦略等を踏まえ、気候変動などの地球規模課題の解決のほか、経済安全保障にも貢献する海洋科学技術分野の研究開発を推進している。

 海洋研究開発機構は、船舶や探査機、観測機器等を用いて深海底・氷海域等のアクセス困難な場所を含めた海洋における調査・研究を行い、得られたデータを用いたシミュレーションやデータのアーカイブ・発信を行っている。また、これらの技術を活用し、いまだ十分に解明されていない領域の実態を解明するための基礎研究を推進している。

(1)海洋の調査・観測技術

 海洋研究開発機構は、海底下に広がる微生物生命圏や海溝型地震及び津波の発生メカニズム、海底資源の成因や存在の可能性等を解明するため、地球深部探査船「ちきゅう」の掘削技術や海底観測ネットワーク等を用いたリアルタイム観測技術等の開発を進めるとともに、それらの技術を活用した調査・研究・技術開発を実施している。また、大きな災害をもたらす巨大地震や津波等、深海底から生じる諸現象の実態を理解するため、研究船や有人潜水調査船「しんかい6500」、無人探査機等を用いた地殻構造探査等により、日本列島周辺海域から太平洋全域を対象に調査研究を行っている。

(2)海洋の持続的な開発・利用等に資する技術

 海洋研究開発機構は、我が国の海洋の産業利用の促進に貢献するため、生物・非生物の両面から海洋における物質循環と有用資源の成因の理解を進め、得られた科学的知見、データ、技術及びサンプルを関連産業に展開している。

 内閣府は、2023年度よりSIP第3期課題「海洋安全保障プラットフォームの構築」として、世界に先駆け、我が国の排他的経済水域(EEZ)である南鳥島周辺の海底に賦存するレアアース泥を回収する技術の開発を進めている。2025年度には、これまで開発してきた採鉱システムを用いて、水深約6,000mの海底よりレアアース泥を船上に引き揚げることに世界で初めて成功した。

(3)海洋の安全確保と環境保全に資する技術

 食料生産や気候調整等で人間社会と密接に関わる海洋生態系は、近年、汚染・温暖化・乱獲等の環境ストレスにさらされており、これらを踏まえた海洋生態系の理解・保全・利用が課題となっている。このため、文部科学省は、「海洋資源利用促進技術開発プログラム」のうち「海洋生物ビッグデータ活用技術高度化」において、既存のデータやデータ取得技術を基にビッグデータから新たな知見を見いだすことで、複雑で多様な海洋生態系を理解し、保全・利用へと展開する研究開発を行っている。

 また、文部科学省では、市民参加型研究を実施し、海洋分野における総合知を創出するための手法を構築する研究開発を「市民参加による海洋総合知創出手法構築プロジェクト」において実施している。

 海上・港湾・航空技術研究所は、マリンオペレーション技術の最適化・安全性評価に関する研究開発、温室効果ガス削減技術の高度化及び安全・環境対策に関する研究開発を行っている。

 海上保安庁は、海上交通の安全確保の向上のため、新たな海上データ通信方式であるVHFデータ交換システム(VDES(※133))の国際標準化に関する議論を主導している。

コラム2-14 AUV「うらしま」8,000m級への改造完了
~水深8,000mでの詳細地形と海底下構造探査を実施~

 我が国は四つのプレート境界に位置することから、日本海溝、伊豆・小笠原海溝・南海トラフといった海洋の中でも特に深い海域が列島に沿うように広がり、水深5,000m以深の体積は世界1位です。このような深海域の調査は、海溝型巨大地震・津波に関する研究の進展や新種の生物の発見等、社会課題の解決や人々の探求心を湧きたてる可能性を秘めています。しかし、現在は海溝軸周辺の6,000mを超える深海へ潜航可能な無人探査機を我が国は保有していません。
 そこで、超深海の探査を可能とするため、これまで深度3,500mまでの潜航が可能であった航行型AUV(Autonomous Underwater Vehicle)「うらしま」で深度8,000mまで潜航可能となるよう、2022年度から改造を進めてきました。改造に際しては、超深海への潜入・浮上のための時間を極力短くするため、機体を急角度にして潜入させても研究船との通信・測位を安定させる等の工夫がされています。2024年度下半期からは水深約1,000mの海域において試験航海を開始、2025年度には超深海での試験航海を2度実施しました。
 1回目となる7月の試験航海では、伊豆・小笠原海溝において深度8,015.8mへ到達し、機体の健全性を確認しました。その後、日本海溝の東北地方太平洋沖地震震源域近傍、水深約7,400mの海域で潜航し、あらかじめ指定した測線を25時間34分間航行しました。この潜航では、「うらしま8000」を海底から約100mの高度で航行させ、約41km2の詳細海底地形データを取得しました。この潜航により、船上からの観測では見えなかった複数の尾根が南北方向に枝分かれや合流しながら連続する地形を捉えることに成功しました。
 2回目となる11月の試験航海では、日本海溝において、IODP第405次研究航海「JTRACK」(2024年度実施)の掘削地点付近を潜航しました。この潜航では、海底の固さ等を識別できるサイドスキャンソナーにより、「JTRACK」で掘削孔に設置した海底面から2~5m程度の高さがある孔口装置を捉えることに成功しました。さらに、このソナーによる観測結果は、JAMSTECで開発した高速音響通信・測位装置を用いて「うらしま8000」が潜航中に伝送され、船上ではこの特徴的な結果をほぼリアルタイムで確認しました。
 このように、「うらしま8000」は長時間潜航に加え、潜航中に海底の状態を確認できるため、特異点発見時の追加調査に必要な船上からの測線変更指示や、サンプル採取等の次の段階の調査計画の速やかな立案が可能となり、海底調査の大幅な迅速化への寄与が期待されます。

3.防衛分野の研究開発の推進

 防衛省では、防衛力を抜本的に強化するために防衛装備品の研究開発等を進めている。とりわけ、政策的に緊急性・重要性が高い事業については、民生先端技術も大胆に取り込みながら、早期装備化の実現を図っている。

 さらに、「国家安全保障戦略」(令和4年12月16日国家安全保障会議・閣議決定)においては、「技術力の向上と研究開発成果の安全保障分野での積極的な活用のための官民の連携の強化」が掲げられており、技術的優越の確保に向け、10年以上先も見据えて官民の連携の下で、我が国が持つ科学技術・イノベーション力を結集し、様々な機能・装備を実現することが重要である。そのため、防衛省では、防衛分野での将来における研究開発に資することを期待し、先進的な基礎研究を公募する「安全保障技術研究推進制度」を2015年度から実施してきた。加えて、安全保障技術研究推進制度等の成果や民生分野の先端技術を育成し、装備品等の創製につなげるために行う「先端技術の橋渡し研究」を進めている。また、民生用と安全保障用の技術は二分されるものではなく、用途の多様性があることを踏まえ、「総合的な防衛体制の強化に資する研究開発」(マッチング事業)や「経済安全保障重要技術育成プログラム」等の関係府省庁による科学技術・イノベーション投資から得られた成果を積極的に防衛目的にも活用するため、必要な取組を進めている。

 こうした防衛力の抜本的強化及び技術的優越の確保につながる防衛技術基盤の強化に必要な各種の取組の方針を具体的に示した「防衛技術指針2023」を2023年6月に公表した(第2-2-3図)

 諸外国では、急速に進展する科学技術を防衛分野で活用するため、産学官が密接に連携してイノベーションの実現を目指す動きが加速している。こうした取組への第一歩として、防衛装備庁は、2024年10月に「防衛イノベーション科学技術研究所(DISTI : Defense Innovation Science and Technology Institute)」を創設し、我が国の防衛のみならず社会の在り方をも変える防衛イノベーションの実現につながる成果の創出や防衛分野での研究開発に関するコミュニティの拡大を目指している。

 また、防衛省では、科学技術と安全保障に係る諸課題について、防衛大臣に対し必要な助言や提言を行う恒常的な会議体として、「防衛科学技術委員会(DSTB : Defense Science and Technology Board)」を2025年6月に設置した。委員は、AI、量子、宇宙、半導体などの科学技術分野に精通した学識経験者や実務経験者等から構成されており、委員長は防衛大臣科学技術顧問も兼任し、防衛大臣を科学技術面で補佐することとしている。本委員会を通じて、最先端科学技術の取り込みの強化や先端科学技術創出の担い手である国研・大学等及びスタートアップ等との連携・協働の強化を図っている。

4.警察におけるテロ対策に関する研究開発の推進

 科学警察研究所においては、核物質の現場検知を目的とした検出装置の開発を実施している。本装置は、従来装置に対し大幅な低コスト化が見込まれている。さらに、小型化に伴う可搬性の向上によって、今後、現場での機動的な運用が期待される。また、国際テロで用いられている、市販原料から製造される手製爆薬に関する威力・感度の評価や実証試験を実施するとともに、爆発物原料管理者対策に資する研究を実施している。

❻ 安全・安心確保のための「知る」「育てる」「生かす」「守る」取組

 内閣府は、2026年度を目途に設立される重要技術戦略研究所(仮称)を通じて、経済安全保障に関わる科学技術戦略や重点的に開発すべき重要技術等に関し、政策提言等を行う安全・安心に関するシンクタンク機能の構築を進めている。また、文部科学省、経済産業省とともに、その他関係省庁と連携し、AIや量子、宇宙、海洋等の経済安全保障上の重要技術分野に関し、「経済安全保障重要技術育成プログラム(※134)」(通称K Program)を実施している。これまでに支援対象とする51の重要技術を「研究開発ビジョン(※135)」において特定し、順次公募手続を経て研究開発に着手するとともに、経済安全保障推進法に基づく指定基金協議会を設置・開催するなど、本プログラムを着実に推進している。さらに、研究活動の国際化・オープン化に伴う新たなリスクに対し、大学や研究機関における研究の健全性・公正性(研究インテグリティ(※136))の自律的確保に向けた取組を行った(※137)。

 また、令和7年6月6日に閣議決定された「統合イノベーション戦略 2025」において、科学技術の多義性を踏まえつつ、総合的な安全保障の基盤となる科学技術力を強化するための取組方針が示された。

 経済産業省は、2025年度も、文部科学省等の関係省庁と連携し、大学・研究機関向けの安全保障貿易管理説明会やワークショップを開催するとともに、大学の輸出管理担当者による地域ネットワーク(NW)の活動を促進するため、講演対応、NW間の交流促進等を実施した。さらに、2025年9月には「安全保障貿易に係る機微技術管理ガイダンス(大学・研究機関用)」を改訂・公表するとともに、安全保障貿易管理制度の概要説明動画等を周知し、専門人材の派遣をするなど、大学等による内部管理体制の強化及び機微技術の流出防止の取組を促進した。

 機微技術の輸出管理の在り方などについて、国際輸出管理レジームを含めた関係国間において議論を行っている。

 内閣情報調査室をはじめ、警察庁、公安調査庁、外務省、防衛省の情報コミュニティ各省庁は、相互に緊密な連携を保ちつつ、経済安全保障分野を含む情報の収集活動等に当たるとともに、必要な体制の強化に努めている。

4 価値共創型の新たな産業を創出する基盤となるイノベーション・エコシステムの形成

 社会のニーズを原動力として課題の解決に挑むスタートアップを次々と生み出し、企業、大学、公的研究機関等が多様性を確保しつつ相互に連携して価値を共創する新たな産業基盤が構築された社会を目指している。

❶ 社会ニーズに基づくスタートアップ創出・成長の支援

1.SBIR制度による支援

 SBIR(※138)制度においては、「中小企業等経営強化法」(平成11年法律第18号)から「科学技術・イノベーション創出の活性化に関する法律」(平成20年法律第63号)へ根拠規定を移管したことにより、イノベーション政策として省庁横断の取組を強化するとともに、これまでの特定補助金等を指定補助金等、特定新技術補助金等に改めた。スタートアップ等に支出可能な補助金の支出目標額(2025年度目標額:約1,408.8億円)を定める方針を令和6年6月に、制度の運用を改善する指針の改訂を令和6年6月に閣議決定した。

 また、入札参加機会の拡大や随意契約の特例を設けることにより、研究開発成果の政府調達を促進し、スタートアップが有する先端技術の社会実装の推進に期待している。

2.大学等発スタートアップの支援

 文部科学省及び(国研)科学技術振興機構では、政府が決定した「スタートアップ育成5か年計画」において、スタートアップを強力に育成するとともに、国際市場を取り込んで急成長するスタートアップの創出を目指していることを踏まえ、大学等を中心としたスタートアップ・エコシステムを形成するための様々な支援を実施している。「大学発新産業創出基金」では、地域の中核大学等を中心としたスタートアップ創出体制整備や研究成果を起業に繋げる研究開発への支援のほか、グローバルで大きく成長する可能性を秘めた大学等の技術シーズを支援するギャップファンドプログラムを実施している。また、創業後のスタートアップの成長を加速化させるために、大学等がハブになってスタートアップと大企業の協働を推進し、スタートアップの創業から成長までを一気通貫で支援する新たなオープンイノベーション構築を目指す「次世代型オープンイノベーションの構築」を推進している。さらに、「出資型新事業創出支援プログラム(SUCCESS(※139))」では、科学技術振興機構の研究開発成果を活用するスタートアップへの出資等を実施することにより、同企業の創業直後の成長と研究開発成果の実用化を促進している。

3.ディープテック・スタートアップに対する支援事業

 経済産業省では、新エネルギー・産業技術総合開発機構を通じて、我が国における技術シーズの発掘から事業化までを一体的に支援するため、創業前の若手人材の発掘・起業家育成事業や、最大で6年・30億円までの研究開発支援を実施する「ディープテック・スタートアップ支援事業」を2022年度から開始した。当該支援事業は、初期の実用化研究開発からパイロットプラントの導入等を伴う量産化・スケールアップのための技術開発までを連続的に支援する事業であり、ディープテック・スタートアップの革新的な技術の事業化・社会実装をこれまで以上に強力に支援している。

 また、2020年7月にスタートアップ支援を行う九つの政府系機関(※140)で創設されたスタートアップ支援に関するプラットフォーム(通称Plus(※141)(プラス))は、スタートアップからの相談に対応する一元的な窓口「Plus One」によるスタートアップへの支援制度に関する情報提供・相談対応等の運用等に取り組んできた。2024年10月、新たに6機関(※142)が追加参加したことにより、今後、全22機関での知見やネットワークの共有や、Plus Oneで紹介できる支援メニューの拡大が期待される。

 総務省は、先端的なICTの創出・活用による次世代の産業の育成のため、官民の役割分担の下、芽出しの研究開発から事業化までの一気通貫での支援を行う「スタートアップ創出型萌芽的研究開発支援事業」を2023年度より実施している。

❷ 企業のオープンイノベーション活動の促進

 経済産業省は、事業会社が自ら事業化できない又はしない技術について、外部の経営資源を活用して事業化を促進する観点から、「研究開発成果を活用した事業創造の手法としてのカーブアウトの戦略的活用に係る研究会」を立ち上げた。その研究会の議論の成果を踏まえて「起業家主導型カーブアウト実践のガイダンス」を取りまとめ、2024年4月に公表し、その普及・浸透に努めている。

 内閣府は、オープンソースソフトウェア(OSS)の経営上の重要性を広く認識させ、OSSの活用を促進するため、企業関係者が集う日本知的財産協会主催の研修において、昨年に引き続きパネルディスカッションを実施した。この取組は、オープンでアジャイルなイノベーションの創出に寄与することを目的としている。

❸ 産学官連携による新たな価値共創の推進

1.国内外の産学官連携活動の現状

(1)大学等における産学官連携活動の実施状況

 2004年4月の国立大学法人化以降、総じて大学等における産学官連携活動は着実に実績を上げている。2024年度は、民間企業との共同研究による大学等の研究費受入額は約1,065億円(前年度3.6%増)、このうち1件当たりの受入額が1,000万円以上の共同研究による大学等の研究費受入額は約606億円(前年度1.8%増)と増加している。また、特許権実施等件数は2万3,420件(前年度5.8%減)であり、前年度と比べて減少している(第2-2-4図)

(2)技術移転機関(TLO)の現状

 2026年2月現在、30のTLO(※143)が「大学等における技術に関する研究成果の民間事業者への移転の促進に関する法律」(平成10年法律第52号)に基づき、文部科学省及び経済産業省の承認を受けている。

2.大学等の産学官連携体制の整備

 政府は、我が国の大学・国立研究開発法人と外国企業との共同研究等の産学官連携体制に関し、安全保障貿易管理等に配慮した外国企業との連携に係るガイドラインの検討を開始した。

 文部科学省及び経済産業省は、「企業から大学・研究開発法人等への投資を今後10年間で3倍に増やすことを目指す」政府目標を踏まえ、産業界から見た、大学・国立研究開発法人が産学官連携機能を強化する上での課題とそれに対する処方箋や考え方を取りまとめた「産学官連携による共同研究強化のためのガイドライン」を2016年11月に策定した。さらに、当該ガイドラインの実効性を向上させるために大学等におけるボトルネックの解消に向けた処方箋と新たに産業界/企業における課題と処方箋を体系化した追補版(2020年6月)を取りまとめ、具体的な取組手法を整理したFAQ(2022年3月)、「知」の価値を評価・算出する方法を実務的な水準まで整理した「産学協創の充実に向けた大学等の『知』の評価・算出のためのハンドブック」(2023年3月)、大学における知財マネジメント及び知財ガバナンスに関する考え方を示す「大学知財ガバナンスガイドライン」(2023年3月)をそれぞれ公表し、その普及に努めている。

 また、2019年7月、文部科学省、経済産業省及び一般社団法人日本経済団体連合会が共同で「大学ファクトブック2019」を公表し、産学官連携活動に関する大学の取組の「見える化」を進めた。2026年3月に最新のデータを基に内容を更新した「大学ファクトブック2026」を取りまとめた。

 農林水産省は、「『知』の集積による産学連携支援事業」により、全国に農林水産・食品分野等を専門とする産学連携コーディネーターを配置し、生産現場等のニーズ及び技術シーズを収集し、マッチングを行うとともに、研究開発資金の紹介や産学官のマッチング、商品化・事業化の支援等を実施している。

3.産学官の共同研究開発の強化

 科学技術振興機構は、大学等の研究成果の実用化促進のため、多様な技術シーズの掘り起こしや、先端的基礎研究成果を持つ研究者の企業探索段階から、中核技術の構築や実用化開発の推進等を通じた企業への技術移転まで、ハンズオン支援を実施する「研究成果最適展開支援プログラム(A-STEP(※144))」を実施している。

 経済産業省は、新エネルギー・産業技術総合開発機構が2020年度から実施している「官民による若手研究者発掘支援事業」において、事業化を目指す大学等の若手研究者と企業のマッチングを伴走支援するとともに、企業との共同研究費等の補助を通して、若手研究者の支援と大学への民間投資額の増加を目指して支援している。

 総務省は、情報通信研究機構に設置した基金を活用して実施する「革新的情報通信技術(Beyond 5G(6G))基金事業」により、将来的な社会実装・海外展開を視野に入れた研究開発について、産学コンソーシアム等のプロジェクトを支援している。

 農林水産省は、農林水産関連の研究機関を相互に接続する農林水産省研究ネットワーク(MAFFIN(※145))を構築・運営しており、2026年3月時点で全国56ヶ所に接続ポイントを構築し、相互接続を実現している。MAFFINはフィリピンと接続しており、海外との研究情報流通の一翼を担っている。

4.産学官協働の「場」の構築

 科学技術によるイノベーションを効率的にかつ迅速に進めていくためには、産学官が協働し、取り組むための「場」を構築することが必要である。

(1)知と人材が集積するイノベーション・エコシステムの形成

 科学技術振興機構は、SDGsに基づく未来のありたい社会像の実現に向けた、バックキャスト型の研究開発を行う産学官共創拠点の形成を支援するため、2020年度から「共創の場形成支援プログラム(COI-NEXT)」を実施しており、2025年度は44拠点の研究開発を推進している。

(2)産業技術総合研究所による技術シーズの発掘及び研究開発プログラムの発掘並びに研究開発プロジェクトの推進

 産業技術総合研究所は、産業技術に関する産業界や社会からの多様なニーズを捉えながら、技術シーズの発掘や研究開発プロジェクトの推進を行っている。具体的な取組としては、共創の場の形成の一環として12の技術研究組合に参画している(2026年2月現在)。

5.オープンイノベーション拠点の形成

(1)筑波研究学園都市

 筑波研究学園都市は、我が国における高水準の試験研究・教育の拠点形成と東京の過密緩和への寄与を目的として建設されており、29の国等の試験研究・教育機関をはじめ、民間の研究機関・企業等が立地しており、研究交流の促進や国際的研究交流機能の整備等の諸施策を推進している。

(2)関西文化学術研究都市

 関西文化学術研究都市は、我が国及び世界の文化・学術・研究の発展並びに国民経済の発展に資するため、その拠点となる都市として整備されてきた。2025年度現在、150を超える施設が立地しており、多様な研究活動等が展開されている。

6.多様な分野との産学連携を行う「オープンイノベーションの場」の推進

 農林水産省は、農林水産・食品分野に様々な分野の技術を導入し、産学官連携研究を促進するため、2016年4月に立ち上げた「『知』の集積と活用の場®産学官連携協議会」においては、様々な分野から5,280の研究者・生産者・企業等が会員として参画し、農林水産業のスマート化や輸出促進など特定の目的の達成に向けて、研究戦略・ビジネス構想作りを行う177の研究開発プラットフォームが活動している(2026年3月末時点)。さらに、研究開発プラットフォーム内に研究コンソーシアムが形成され、研究開発や成果の商品化・事業化に向けた活動が展開されている。

7.技術シーズとニーズのマッチングを促進する環境の醸成

 農林水産省は、「スマート・スタートアップ 先端技術で未来を拓く農林水産イノベーション」をテーマに、全国のスマート農業技術メーカーやスタートアップ等が参加して、農林水産・食品分野の最新の研究成果を分かりやすく紹介し、出展者と来場者のマッチングを促進するため、関係各府省・機関の協力の下、東京ビッグサイトで「アグリビジネス創出フェア」を開催した。2025年11月26日から28日の3日間において、全国から118機関が集まり、商談等が活発に行われ、1.2万人が来場した。

 総務省は、ICT分野において新規性に富む研究開発課題を大学・国立研究開発法人・企業・地方公共団体の研究機関等から広く公募し、研究開発を委託する「戦略的情報通信研究開発推進事業(SCOPE(※146))」を通じて、電波の有効利用を推進している。

 経済産業省は、2020年度から開始した「産学融合拠点創出事業」において、産学融合の先導的取組とネットワーク構築に取り組むモデル拠点や、大学を起点とする企業ネットワークのハブとして活躍する産学連携拠点を支援し、オープンイノベーションの推進と産学連携の新たな転換に向けて取り組んでいる。また、2025年度は「地域大学のインキュベーション・産学融合拠点の整備」において、地方における産学官連携の強化、スタートアップやイノベーションによる新産業の創出に貢献するため、大学のインキュベーション施設や共同研究施設等の整備を支援している。

 農林水産省は、生物系特定産業技術研究支援センターを通じて提案公募型の研究資金である「オープンイノベーション研究・実用化推進事業」を実施している。この事業では、様々な分野の多様な知識・技術等を結集した産学官連携による研究開発への支援を通じて、農林水産・食品分野のイノベーション創出や地域課題の解消等に貢献することを目的としている。また、農林水産・食品分野等に関する専門的知見を有する産学連携コーディネーターを全国に配置し、生産現場等のニーズ及び技術シーズを収集し、マッチングを行うとともに、研究開発資金の紹介、商品化・事業化等の支援を行い、地域におけるイノベーション創出を推進している。さらに、地域の実態に応じた研究開発の推進と新たな技術の普及促進を支援するスマート農業推進フォーラムの開催等を行っている。

 産業技術総合研究所は、公設試等と密接に連携して地域企業のニーズの発掘に努めるとともに、産業技術総合研究所の技術シーズを活用した地域企業への技術支援を行っている。具体的には、地域企業への「橋渡し」の調整役として、公設試等の職員やOB等129名を「産総研連携アドバイザー」に委嘱している。また、産業技術連携推進会議を通じて公設試相互及び公設試と産業技術総合研究所との協力体制を強化するとともに、公設試職員の技術力向上や人材育成によって地域企業を支援している。さらに、地域経済をけん引する企業群や地方公共団体のニーズに応じた基盤技術を開発し、その成果を地域企業へ展開することを目的として、産総研と大学・公設試等が連携した体制、通称BIL(ブリッジ・イノベーション・ラボラトリ)の整備を進めている。現在、4拠点(金工大、長岡、立命館、米沢)に整備した。

コラム2-15 研究所発のオープンイノベーション特化AIエージェント

 産業技術総合研究所及び株式会社AIST Solutions(以下、産総研グループ)は、ストックマーク株式会社と共同で、アカデミアの研究成果を社会実装へと橋渡しするオープンイノベーション特化型AIプラットフォーム「Bibbidi(ビビディ)」を開発し、運用を開始しました。
 本プラットフォームは、産業技術総合研究所が蓄積してきた研究成果等の中核データ(約15万件)を、企業が直面する課題と結び付けることで、イノベーション創出を加速させることを目的としています。
 我が国の研究機関・大学には優れた技術やアイディアがありますが、分野や組織ごとに技術情報が分断して保有されている状況にあります。また、情報発信においても、専門用語が中心となっています。

 このため、産学連携を活用したい企業にとっては情報探索コストが大きく、アカデミアへ接触する際には専門家を必要とする状況にありました。
 Bibbidiは、こうした構造的課題に対し、ビジネス上の課題を起点としてアカデミアの研究成果を横断的に探索・分析し、課題解決に資する適切な技術を提示できるAIとして設計されています。

 本AIは、産業技術総合研究所に加え、他の研究機関等が保有する技術情報との連携を拡充しており、企業がワンストップでALL JAPANのアカデミアの技術探索を行える点も特徴です。
 さらに、産総研グループが培ってきた産学連携熟練者のノウハウをAIに実装しています。その結果、従来は一部の専門家に依存していた技術探索・マッチングが、非専門家でも効率的に実施可能なプロセスへと転換され、産学連携の敷居が大きく下がります。
 また、専門家個人の経験に依拠していた異分野間の技術の組合せには壁がありましたが、本AIは膨大な技術情報の組合せにより新たな用途・アイディアの発見を可能にする点が特徴です。このように、技術とビジネスを相互に「翻訳」する仕組みにより、研究成果が社会課題や市場ニーズと結び付く可能性を可視化し、「予期せぬ出会い」から生まれるイノベーションの芽の創出につながります。
 現在、技術情報の拡大に取り組んでおり、Bibbidiは産学連携を身近なものとし、アカデミアをビジネスパートナーへと進化させる基盤となり、我が国の知の蓄積を最大限に生かすことで、我が国全体のオープンイノベーションを次の段階へと押し上げる原動力となることが期待されています。

コラム2-16 科学技術でつながる未来 ─ 大阪・関西万博
「わたしとみらい、つながるサイエンス展」

 2025年の我が国の象徴的なイベントの一つとして、大阪・関西万博を挙げる方も多いのではないでしょうか。世界中から、最先端の技術や伝統文化に関する展示が集まり、半年にわたって様々なイベントが会場を盛り上げました。
 そんな中、文部科学省は、夏休みの時期に科学技術の体験イベントを主催しました。8月14日から19日までEXPOメッセにて開催した「わたしとみらい、つながるサイエンス展」です。本イベントは、25の大学や研究機関が出展し、「未来のありたい社会」をテーマに、最新の研究成果を若い世代にわかりやすく伝える試みでした。来場者が7万人を超える盛況となりました。

 会場では、科学技術を身近に感じていただくために、「つながる」というコンセプトを設け、自分の体や心を知ることから始まり、周囲のコミュニティ、日々の社会活動、そして地球全体へと視野を広げていくようにゾーンを配置しました。出口に展示したバルーンは、イベントのテーマを最後に改めて届けるシンボル展示です。来場者から集めた「理想のみらい」が記されていました。
 また、会場に限らず、SNSで研究者から若者へのメッセージを込めたインタビュー動画を発信するなど、研究者と「つながる」機会も設けました。

 出展者は、五感を使って科学技術を体感できるよう、工夫をこらして、子供から大人まで楽しめる空間を作りました。実際に機器を操作したり、素材に触れたりする体験型展示、VRや大型スクリーンによる没入型展示、来場者がクイズや演奏に参加できるステージプログラムなどが挙げられます。

 各ブースでは、来場者が研究者に質問することで、多くのコミュニケーションが生まれていました。来場者アンケートでも、普段は接する機会のない研究者と直接やり取りすることで、心を動かされたといった感想をいただいた他、産学官連携への理解が深まったという回答が得られました。

 文部科学省では、大学を中心に、産業界や地方公共団体が連携した研究開発と社会実装を支援してきました。地域において「ありたい社会」のビジョンを掲げ、その実現に向けて研究開発を行い、社会課題を解決する。それは短期間で実現するものではなく、社会課題や科学技術への理解を次の世代へと受け継いでいく必要があります。本イベントの結果も踏まえ、引き続き産学官連携を推進するとともに、大学等による研究成果の発信に資するよう、取組を進めてまいります。

❹ 世界に比肩するスタートアップ・エコシステム拠点の形成

 我が国におけるスタートアップの更なる育成へ向けて、官民を挙げて拠点となる都市を中心に集中支援を行うことなどを盛り込んだ「Beyond Limits. Unlock Our Potential. ~世界に伍するスタートアップ・エコシステム拠点形成戦略~」を令和元年6月に内閣府が文科省、経産省と共に策定。これに基づき、第1期のスタートアップ・エコシステム拠点都市として8都市を選定し、関係府省と連携しスタートアップ・エコシステム拠点都市への集中支援を実施した。

 第1期の5年間の進展として、スタートアップ・エコシステムの「裾野」は拡大してきたが、エコシステムの「高さ」が途上であるという課題を踏まえ、第2期スタートアップ・エコシステム拠点都市として現在の8都市に加え、新たに5都市を選定するとともに、スタートアップの成長を加速し、グローバルに稼げるスタートアップを創出するため、地域経済活性化とグローバル化を両立するエコシステム形成に向けた「スタートアップ・エコシステム拠点形成加速化プラン」を令和7年6月に策定した。

 また、政府は、海外機関等とも連携しつつ、世界最高水準のイノベーション・エコシステムのハブを構築することを目指す「グローバル・スタートアップ・キャンパス構想」を推進している。2026年3月31日には、グローバル・スタートアップ・キャンパス構想の推進に向けた運営法人の設立に関する規定整備を盛り込んだ、「科学技術・イノベーション創出の活性化に関する法律」の一部改正案が閣議決定された。本構想を通じて、ディープテック分野の研究成果を活用した新たな事業の創出・成長発展を促進し、グローバルな社会課題の解決と経済成長の実現を目指している。

❺ 挑戦する人材の輩出

 科学技術振興機構では、「大学発新産業創出プログラム(START)」の一環として、スタートアップ・エコシステム拠点都市の大学を中心に、実践的なアントレプレナーシップ教育を含めた大学等の起業支援体制の構築支援に加え、「EDGE-PRIME Initiative」において、小中高生等へのアントレプレナーシップ教育を2023年度から実施している。

 また、文部科学省においては、我が国全体のアントレプレナーシップ醸成を促進するため、「全国アントレプレナーシップ醸成促進事業」を2022年度から実施し、教育ガイド「日本版EntreComp v1」の作成や、全国の大学生等へのアントレプレナーシップ教育の受講機会拡大を目的とした「全国アントレプレナーシップ人材育成プログラム」などを実施している。さらに、全国の小中高生等がアントレプレナーシップ教育に触れる機会を拡大するため、起業家等を「アントレプレナーシップ推進大使」として任命し、全国の小中学校、高等学校等へ派遣を行った。

 文部科学省及び経済産業省は、人材の流動性を高める上で、研究者等が複数の機関の間での出向に関する協定等に基づき、各機関に雇用されつつ、一定のエフォート管理の下、各機関における役割に応じて研究・開発及び教育に従事することを可能にする、クロスアポイントメント制度を促進することが重要であるとの認識の下、その実施に当たっての留意点や推奨される実施例等をまとめた「クロスアポイントメント制度の基本的枠組みと留意点」を2014年12月に公表し、さらに、その追補版を2020年6月に公表して、制度の導入を促進している。

❻ 国内において保持する必要性の高い重要技術に関する研究開発の継続・技術の承継

 産業技術総合研究所は、国内において保持する必要性の高い重要技術について、企業等での研究継続が困難となった等の問題が生じた場合、将来的に国内企業等へ当該技術が橋渡しされることを想定した上で、可能な範囲で、様々な受入制度を活用し、関係研究者の一時的雇用や当該研究の一定期間引継ぎ・継続等の支援を行うことを確認している。

5 次世代に引き継ぐ基盤となる都市と地域づくり(スマートシティの展開)

 都市や地域における課題解決を図り、地域の可能性を発揮しつつ新たな価値を創出し続けることができる多様で持続可能な都市や地域が全国各地に生まれることで、あらゆるステークホルダーにとって人間としての活力を最大限発揮できるような持続的な生活基盤を有する社会を目指している。

❶ データの利活用を円滑にする基盤整備・データ連携可能な都市OS(※147)の展開

 内閣府は、スマートシティを構築する際の共通の設計の枠組みである「スマートシティリファレンスアーキテクチャ」(2020年3月公表)について、2025年5月に第4版及び別冊第2版を公表した

❷ スーパーシティ等を連携の核とした全国へのスマートシティ創出事例の展開

 2022年4月に茨城県つくば市及び大阪府・大阪市を指定したスーパーシティやデジタル田園健康特区、連携“絆”特区等において、先端的サービスにより地域課題の解決を実現するモデル地域として、幅広い生活分野で規制・制度改革やデータ連携等を進め、その成果を他地域にも展開している。また、こうした取組を含む国家戦略特区制度を活用し、日本成長戦略の実現や地域未来戦略の推進に資する取組の加速、地方の課題を起点とする規制・制度改革の推進を図ることとしている。

 総合特区制度は、我が国の経済成長のエンジンとなる産業・機能の集積拠点の形成を目的とする「国際戦略総合特区」と、地域資源を最大限活用した地域活性化の取組による地域力向上を目的とする「地域活性化総合特区」から成り、政府は、規制や税制(国際戦略総合特区のみ)の特例措置、財政・金融上の支援措置などにより総合的に後押しや支援を行っている。

 また、関係府省庁は、スマートシティ官民連携プラットフォームを通じた地方公共団体と民間企業のマッチング支援や、「スマートシティガイドブック」(2021年4月公開、2023年8月改定)を活用した先行事例の横展開・普及展開活動を通じ、先進的なサービスの実装に向けた地域や民間主導の取組を促進している。

 内閣府と関係府省は、スマートシティ関連施策の評価の枠組みや評価指標を示した「スマートシティ施策のKPI設定指針」(2022年4月公開、2023年4月改定)の活用を促進しつつ、「スマートシティ関連事業に係る合同審査会」においてスマートシティ関連事業の実施地域を合同で選定するなど、スマートシティの実装・普及に向けて各府省事業を一体的に実施している。

 内閣府が関係省庁と連携して取りまとめた「スマートシティ施策に関するロードマップ」(2024年3月公表)に基づき、関係者が取組事項を共有しつつスマートシティ施策を推進している。

❸ 国際展開

 政府は、我が国の「自由で開かれたスマートシティ」のコンセプトの下、グローバル・スマートシティ・アライアンス(GSCA)等の国際的な活動や、各種国際会議等において「スマートシティカタログ」等を活用し発信している。

 また、関係府省は、案件形成調査の実施や関係国・都市の参加による「日ASEANスマートシティ・ネットワーク ハイレベル会合」(第7回:2025年11月)の開催等「ASEANスマートシティ・ネットワーク」の枠組みを通じたスマートシティ展開に向けて取組を推進している。

 さらに、関係府省は、スマートシティの海外展開を国際標準の活用により促進するため、国内外の標準の専門家等と連携して、国際標準提案及び国内外の体制構築等について検討を実施している。

❹ 持続的活動を担う次世代人材の育成

 関係府省は、スマートシティの実現に必要な人材育成等の課題について、先行する取組事例を掲載したスマートシティガイドブックの普及浸透を図り、これらの運営上の課題解決の取組についての検討を実施している。

6 様々な社会課題を解決するための研究開発・社会実装の推進と総合知の活用

 人文・社会科学と自然科学の融合による「総合知」を活用しつつ、我が国と価値観を共有する国・地域・国際機関等と連携して、社会課題の解決に向けて、研究開発と成果の社会実装に取り組むことで、未来の産業創造や経済成長と社会課題の解決が両立する社会を目指している。

❶ 総合知を活用した未来社会像とエビデンスに基づく国家戦略の策定・推進

1.人間や社会の総合的理解と課題解決に貢献する「総合知」

 内閣府では、人間や社会の総合的理解と課題解決に貢献する「総合知」に関して、「総合知」が求められる社会的背景を踏まえ、「総合知」に関する基本的な考え方、さらに、戦略的な推進方策を検討し、2022年3月に中間取りまとめを行い、その普及啓発のため総合知ポータルサイトの運営やキャラバンの実施等を推進している。

2.分野別戦略

 AI(第2章第1節 1 ❹参照)、バイオテクノロジー、量子技術、マテリアルや、宇宙(第2章第1節 3 ❺参照)、海洋(第2章第1節 3 ❺参照)、環境エネルギー(第2章第1節 2参照)、健康・医療、食料・農林水産業(第2章第1節 2 ❶参照)、フュージョンエネルギー(核融合エネルギー)(第2章第1節 2 ❷参照)等の府省横断的に推進すべき分野については、国家戦略に基づき、研究開発等を進めている。バイオテクノロジー、量子技術、マテリアル、健康・医療等の分野別戦略については以下に記す。

(1)バイオテクノロジー

 バイオテクノロジーやバイオマスを活用するバイオエコノミーは、環境・食料・健康等の諸課題の解決、サーキュラーエコノミーと持続可能な経済成長の実現を可能とするものとして、投資やルール形成等、グローバルな政策・市場競争が加速している。

 我が国においては、2019年に「バイオ戦略」(2019年6月11日統合イノベーション戦略推進会議決定)を策定し、バイオ関連市場の拡大に向けた取組を推進してきた。グリーントランスフォーメーション(GX)やサーキュラーエコノミー、経済安全保障、食料安全保障、創薬力強化等に関する国内の議論の進展や、バイオエコノミーに対する国内外の期待の高まり等を踏まえ、2024年6月に「バイオ戦略」を更新し、「バイオエコノミー戦略」(2024年6月3日統合イノベーション戦略推進会議決定)を策定・公表した。

 バイオエコノミー戦略では、2030年にグローバル市場で我が国が100兆円規模のバイオエコノミー市場を獲得するという目標を掲げ、ターゲットとする市場領域ごとに、市場拡大に向けた科学技術・イノベーション政策の最新の取組の方向を示している。

 バイオものづくりについて、経済産業省、文部科学省、環境省を中心に研究開発や社会実装に向けた取組を推進している。2025年度は、2022年度補正予算において措置された「バイオものづくり革命推進事業」やGteXによるバイオものづくりに関する大型プロジェクトを引き続き推進した。

 一次生産等(持続的一次生産システム、木材活用大型建築・スマート林業)について、気候変動による異常気象の頻発化や地政学リスクの高まりによる世界的な食料安全保障への影響等を踏まえ、みどり戦略に基づく生産力向上と持続性の両立に向けた取組や、生産性の向上に資するスマート農業の促進等の食料安全保障の強化に向けた取組を推進している。また、2023年度から開始されたSIP第3期課題「豊かな食が提供される持続可能なフードチェーンの構築」についても、研究開発や社会実装に向けた取組を推進した。

 医薬品・再生医療等、ヘルスケア(バイオ医薬品・再生医療等関連産業、生活習慣改善ヘルスケア・機能性食品・デジタルヘルス)について、低分子医薬品からバイオ医薬品への創薬システムの変化を展望し、産学官連携による創薬力アップを推進している。また、ウェアラブルデバイス・アプリ等のデジタル技術を使ったサービス・機器の開発を推進している。

 バイオ関連市場の拡大に向けて、人材・投資を呼び込み、市場に製品・サービスを供給するための体制であるバイオコミュニティの形成も推進している。公募に基づき一定の要件を満たすものを内閣府が認定する仕組みを設け、これまで、グローバル2拠点(2022年4月:東京圏にGreater Tokyo Biocommunity、関西圏にバイオコミュニティ関西(BiocK))、地域6拠点(2021年6月:北海道・鶴岡・長岡・福岡、2022年12月:広島・沖縄)を認定している。2025年度には、バイオコミュニティの機能強化事業を実施した。

(2)量子技術

 量子技術は、例えば、量子コンピュータにより近年爆発的に増加しているデータの超高速処理を可能にすると考えられるなど、新たな価値創出の中核となる強みを有する基盤技術である。近年、量子技術に関する世界的な研究開発競争が激化しており、海外では米欧中を中心に、政府主導で研究開発戦略を策定し、研究開発投資額を増加させている。さらに、世界各国の大手IT企業も積極的な投資を進め、ベンチャー企業の設立・資金調達も進んでいる。

 こうした量子技術の先進性やあらゆる科学技術を支える基盤性と、国際的な動向に鑑み、政府は2020年1月に「量子技術イノベーション戦略」(2020年1月21日統合イノベーション戦略推進会議決定)を策定し、同戦略に基づき、2021年2月に整備した国内8拠点から成る「量子技術イノベーション拠点」を中心として戦略的な研究開発等に取り組んできた(2025年1月現在、11拠点)。量子産業を巡る国際競争の激化など外部環境が変化する中で、将来の量子技術の社会実装や量子産業の強化を実現するため、「量子未来社会ビジョン」(2022年4月22日統合イノベーション戦略推進会議決定)により、量子技術の国内利用者1,000万人などの2030年に目指すべき状況を示し、量子技術と従来型技術システムの融合、量子コンピュータ・通信等の試験可能な環境(テストベッド)の整備、量子技術の研究開発及び活用促進、新産業・スタートアップ企業の創出・活性化を推進している。さらに、2030年目標の実現に向け、重点的・優先的に取り組むべき具体的な取組を2023年4月に「量子未来産業創出戦略」(2023年4月14日統合イノベーション戦略推進会議決定)として決定し、量子技術の実用化・産業化を推進している。これら既存3戦略の下、昨今の量子技術の進展、各国の戦略、国内外の実用化・産業化の状況変化にいち早く対応するため、早急に強化・追加すべき内容を2024年4月に「量子産業の創出・発展に向けた推進方策」としてまとめ、国際連携に関する取組を更に強化している。

 内閣府では、2023年度開始のSIP第3期課題「先進的量子技術基盤の社会課題への応用促進」において、量子コンピュータ、量子セキュリティ・ネットワーク、量子センシングの各技術分野のテストベッドの整備や、社会実装に向けたユースケースの開拓をするとともに、量子産業の活性化のために人材育成プログラムの開発・実践、新産業・スタートアップ企業創出のためのエコシステムの構築等を推進している。また、「研究開発とSociety 5.0との橋渡しプログラム(BRIDGE)」により、量子技術として採択された8課題について、SIPと連携しながら、各省庁の研究開発等の施策の橋渡しを推進している。さらに、2020年1月にムーンショット型研究開発制度において、「2050年までに、経済・産業・安全保障を飛躍的に発展させる誤り耐性型汎用量子コンピュータを実現」するというムーンショット目標を設定し、挑戦的な研究開発を推進している。

 総務省では、量子コンピュータ時代においても機密情報のやりとりを安全に行うことができる量子暗号通信網の実現に向けて、量子暗号技術の高度化の研究開発を推進している。また、量子セキュリティ拠点である情報通信研究機構では、量子暗号通信技術の検証環境である「東京QKDネットワーク」を構築し、量子暗号通信技術の検証等を進めてきた。これらを踏まえ、量子暗号通信の社会実装の加速を図るため、令和7年度補正予算により、重要・機微データのやり取りの必要性が高い東京と大阪などの主要都市間を結ぶ広域テストベッドを構築し、より広域の量子暗号通信ネットワークにおける運用技術等の実証やユースケースの具体化を推進することとしている。また、量子暗号技術を衛星通信に導入するため、宇宙空間という制約の多い環境下でも動作可能なシステムの構築、高速移動している人工衛星からの光を地上局で正確に受信できる技術及び超小型衛星にも搭載できる技術の研究開発に取り組んでいる。これら取り組みと並行して、量子インターネットの2040年代の実現を見据えて、量子状態を維持したまま伝送可能な量子中継技術等の要素技術の研究開発を推進している。

 文部科学省は量子技術分野に関して、これまで基礎基盤的研究から応用研究まで幅広く中長期的な研究開発を実施するとともに、大学や量子科学技術研究開発機構(QST)・理化学研究所・物質・材料研究機構(NIMS)をはじめとする国立研究開発法人の研究基盤強化・人材育成を推進している。

 例えば、2018年度からは「光・量子飛躍フラッグシッププログラム(Q-LEAP)」を実施しており、①量子情報処理(主に量子シミュレータ・量子コンピュータ)、②量子計測・センシング、③次世代レーザーを対象として、プロトタイプによる実証を目指すFlagshipプロジェクト、基礎基盤研究における研究開発及び量子人材育成のためのプログラム開発を推進している。量子情報処理領域においては、超伝導量子コンピュータの開発を目指し、超伝導量子ビット回路の構造最適化、集積化及び量子ビットの制御技術向上等の実装技術開発、超伝導量子計算プラットフォーム開発等を実施するとともに、実用化に向けた誤り訂正アルゴリズムの実装を進め、144量子ビットの超伝導量子コンピュータがクラウド公開されるなど、研究開発等を着実に推進している。また、QSTにおいては量子技術イノベーション拠点のうち2拠点に指定されており、量子技術基盤拠点(2023年4月発足)としては、高度な量子機能を発揮する量子マテリアルの研究開発等に取り組み、量子生命拠点(2021年2月発足)としては、量子計測・センシング等の量子技術と生命・医療等に関する技術を融合した量子生命科学の研究開発に取り組んでいる。

 経済産業省では、2018年度より開始した「高効率・高速処理を可能とする次世代コンピューティングの技術開発事業」において、社会に広範に存在している「組合せ最適化問題」に特化した量子コンピュータ(量子アニーリングマシン)の当該技術の開発領域を拡大し、量子アニーリングマシンのハードウェアからソフトウェア、アプリケーションに至るまで、一体的な開発を進めており、2019年度からは新たに、共通ソフトとハードをつなぐインターフェイス集積回路の開発を開始した。また、2021年度からはこれらの量子アニーリング3テーマ(ハードウェア、ソフトウェア、インターフェイス)を「量子計算及びイジング計算システムの総合型研究開発」として統合し、より一体的に実用化を見据えた研究開発を実施している。

 また、2023年7月には、2022年度第二次補正予算を活用して、量子技術の産業利用を目的としたグローバル拠点として、産業技術総合研究所に「量子・AI融合技術ビジネス開発グローバル研究センター(G-QuAT(※148))」を設立した。さらに、量子未来産業創出戦略を踏まえて、G-QuATの機能を強化するために、2023年度補正予算により、ユースケース創出を目的とした量子・古典融合計算基盤(ABCI-Q)の整備を進めるとともに、2024年度補正予算及び2025年度予算(補正予算を含む)においては、量子コンピュータの産業化に向けたシステム・部素材の開発・評価環境の整備と高度化に取り組み、世界最高水準のグローバルハブとすることを目指していく。

 新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)等を通じた新規の研究開発支援としては、「ポスト5G情報通信システム基盤強化研究開発事業」において2024年度補正予算において量子コンピュータの産業化に向けた開発を加速するために複数方式の量子コンピュータハードウェアや関連の部素材、ミドルウェア、人材育成に関する事業を開始している。また、2024年度より「NEDO懸賞金活用型プログラム/量子コンピュータを用いた社会問題ソリューション開発」において、将来利用可能になる量子コンピュータを念頭に置いた社会課題解決に関する研究開発を実施している。また、2023年度より「量子・古典ハイブリッド技術のサイバー・フィジカル開発事業」を開始し、量子・古典ハイブリッド技術の事業化の促進に向けて、①「素材開発」、「製造」、「物流・交通」、「ネットワーク」といった重点分野における生産性ユースケース開発と、②量子・古典ハイブリッド計算を可能とするアルゴリズム基盤(ライブラリ)の開発・整備を実施している。他にも「新産業・革新技術創出に向けた先導研究プログラム」にて、量子計測・センシング等の高度化のための基盤技術に関する研究開発を進めている。

(3)マテリアル

 マテリアル分野は、我が国が産学で高い競争力を有するとともに、広範で多様な研究領域・応用分野を支え、その横串的な性格から、異分野融合・技術融合により不連続なイノベーションをもたらす鍵として広範な社会的課題の解決に資する、未来の社会における新たな価値創出のコアとなる基盤技術である。

 今般、経済安全保障の確保や環境規制強化の観点で同分野の重要性がますます高まっていることに加え、AI等の技術進展による研究開発の高度化が進んでいることに鑑み、政府は2025年6月、強靱(きょうじん)な「マテリアル・イノベーションを創出する力」、すなわち「マテリアル革新力」を強化するための戦略(「マテリアル革新力強化戦略」)を、統合イノベーション戦略推進会議において改定した。同戦略では、我が国の強みである優れた技術力・多様なプレーヤーを結び付け、優れた知や技術力をイノベーションに繋げる「知のバリューチェーン」によって「マテリアル・イノベーション」を絶えず創出し、我が国の基幹産業であるマテリアル産業で「勝ち続ける」ために、①革新的マテリアルの開発と迅速な社会実装、②マテリアル・イノベーションの加速、③マテリアル・イノベーションの継続的な創出等を強力に推進することとしている。

 文部科学省は、当該分野に係る基礎的・先導的な研究から実用化を展望した技術開発までを戦略的に推進するとともに、研究開発拠点の形成等への支援を実施している。具体的には、大学等において産学官が連携した体制を構築し、革新的な機能を有するもののプロセス技術の確立が必要となる革新的材料を社会実装につなげるため、プロセス上の課題を解決するための学理・サイエンス基盤の構築を目指す「材料の社会実装に向けたプロセスサイエンス構築事業(Materealize)」を実施している。

 また、「マテリアル革新力強化戦略」において、マテリアルデータ基盤の活用拡大と最先端研究を支える研究基盤の継続的な整備の重要性が掲げられていることも踏まえ、文部科学省では、高品質なデータを創出することが可能な最先端設備の共用体制基盤を全国的に整備する「マテリアル先端リサーチインフラ(ARIM(※149))」を2021年度から実施している(第2-2-5図)。本事業は、物質・材料研究機構が整備するデータ中核拠点を介し、産学のマテリアルデータをAI等で読み込みやすい形で戦略的に収集・蓄積・構造化して全国で利活用するためのプラットフォームの整備を進め、2025年9月から、約11万件のマテリアルデータの共用サービスを開始している。加えて、「データ創出・活用型マテリアル研究開発プロジェクト(DxMT)」においては、データ駆動型研究を取り入れた革新的な材料創出及び研究手法の開発と、その全国への展開を目指している。2022年度から本格研究を開始し、マテリアルデータの創出から統合・共有、利活用までを一貫して扱う研究開発を推進している。

 さらに、物質・材料研究機構は、新物質・新材料の創製に向けた躍進を目指し、物質・材料科学技術に関する基礎研究及び基盤的研究開発を行っている。半導体やカーボンニュートラル、バイオ等、政府の重点分野に貢献する革新的マテリアルの研究開発を推進するほか、マテリアル分野のイノベーション創出を強力に推進するため、基礎研究と産業界のニーズの融合による革新的材料創出の場や世界中の研究者が集うグローバル拠点を構築するとともに、これらの活動を最大化するための研究データ基盤の整備を行う事業として「革新的材料開発力強化プログラム~M3(M-cube)~」を実施している。2025年度には、材料研究のための予測モデルを開発・共用・利用するためのAI解析システムpinaxの提供を開始し、全国の産学が保有する良質なマテリアルデータの戦略的な収集・蓄積からAI解析までを含む利活用を可能とするデータ中核拠点の本格運用を開始している。

 経済産業省では、データを活用した材料プロセス技術開発等を加速化するマテリアル・プロセスイノベーションプラットフォームを産業技術総合研究所に整備・運用している。そこでは、各拠点(つくば・中部・中国)において我が国が強みを有するマテリアル分野の製造プロセス改善をデータ駆動で高速化・高度化する取り組みを進めている。また、ナノマテリアル試作・評価プラットフォーム(東北)を整備し、地域の産業強化に資する企業連携を促進するための活動を実施している。

 また、経済産業省は、自動車や風力発電等に必要不可欠な原料であるレアアース・レアメタル等の希少元素の調達制約の克服や、省エネルギーを図るため、研究開発を行っている。

 内閣府は、SIP第3期課題「マテリアル事業化イノベーション・育成エコシステムの構築」において、ネットワーク化したプラットフォームを構築し、スタートアップ等による革新的事業構築に必要なアプリケーション作成の基盤として活用することを通じ、ユニコーンを次々に生み出すエコシステムを形成することに取り組んでいる。

 環境省は、民生機器や産業機器等の幅広な分野への適用が期待できる省二酸化炭素性能の高い革新的な半導体の部材である窒化ガリウムの開発・実証を行っている。また、大幅な二酸化炭素削減やサーキュラーエコノミーの実現に向けて、廃プラスチックや未利用の農業系バイオマス等の地域資源の活用・循環を可能とし、希少金属依存を低減した高性能な革新的触媒の開発・実証を行っている。

(4)健康・医療

 健康・医療分野は、国民が健康な生活及び長寿を享受することのできる社会の形成に資するため、世界最高水準の医療の提供に資する医療分野の研究開発及び当該社会の形成に資する新たな産業活動の創出等を総合的かつ計画的に推進することを目的として、健康・医療戦略推進本部の主導の下、2025年度より第3期となった新たな「健康・医療戦略」(令和7年2月18日閣議決定)及び「医療分野研究開発推進計画」(2025年2月18日健康・医療戦略推進本部決定)に基づく取組を進めることとしている(※150)。

 従来、関係省庁がそれぞれに運用していた医療分野の研究開発予算を日本医療研究開発機構に一元的に計上した上で、アⅰ)~ⅷ)に示す八つの統合プロジェクトを編成し、日本医療研究開発機構を中核として、基礎から実用化まで一貫した研究開発を推進する。特に、第3期においては、出口志向の研究開発マネジメントを強化することとしている。

ア 八つの統合プロジェクト

ⅰ)医薬品プロジェクト

 国民に最新の医薬品を速やかに届けるため、創薬標的の探索から臨床研究・治験に至るまで、幅広い研究開発を行う。また、アカデミアやスタートアップに対する絶え間ないシーズ開発支援により、革新的な新薬の創出を目指す。さらに、創薬研究開発に必要な高度解析機器・技術支援基盤及び大規模生産を見据えた製造技術基盤の構築や創薬エコシステムを構成する人材の育成・拡充など、研究開発力の向上に向けた環境整備に取り組み、持続可能な創薬力の強化を目指す。

 2025年度においては、アカデミア創薬シーズと競争優位性をもつ企業の創薬技術との早期マッチングを目指したニューモダリティコンソーシアムを新たに立ち上げるなど、上記に関連する取り組みを進めたほか、これまで実施した産学連携による次世代創薬AI開発(DAIIA)の成果を踏まえ、新たにより幅広い新薬候補の予測を可能にする産学連携による創薬ターゲット予測・シーズ探索AIプラットフォーム開発を開始した。

ⅱ)医療機器・ヘルスケアプロジェクト

 AI・IoT技術、先進的な計測技術、ロボティクス技術等を融合的に活用し、診断・治療の高度化を実現する医療機器・システムの開発、医療現場のニーズが高い医療機器の研究開発、並びに予防医療や高齢者のQOL向上に資する医療機器・ヘルスケア関連技術の研究開発を推進した。

 2025年度において、ヘルスケア関連産業の国際展開は、我が国が持続的な経済成長を図る上での重点施策の一つに位置付けられている。このため、「ヘルスケア産業国際展開推進事業」に係る予算措置を講じ、医療機器、福祉用具、医療・介護サービス等を有する国内企業の海外市場進出を支援する体制整備を進めた。特に、スタートアップ企業やAI・IoT等の技術融合を活用した製品・サービスを有する企業の海外展開支援を図った。

 また、医療機器やSaMD(Software as a Medical Device)等の社会実装を促進するため、臨床的有効性や安全性に関するエビデンス創出支援を実施した。AI・デジタル技術を活用した医療機器開発の促進、リアルワールドデータ(RWD)の利活用については、関係政策に共通する重要テーマとして位置付け、研究開発支援の充実や、エコシステムの形成による環境整備を進めた。

ⅲ)再生・細胞医療・遺伝子治療プロジェクト

 我が国に強みがある再生医療をはじめとする再生・細胞医療・遺伝子治療分野から、新たな医療技術になり得る革新的なシーズの発掘・育成、将来的な実用化を見据えた基礎的・基盤的な研究開発の強化、新たな医療技術の臨床研究・臨床試験の推進、これらの医療技術の製品化に向けた研究開発、細胞・ベクターの製造基盤強化(国産のウイルスベクター産生細胞樹立及び産業化を含む)、我が国発の基盤技術開発及び医薬品開発製造受託機関(CDMO)へのノウハウ蓄積、若手研究者を含む人材育成、新規市場開拓を目指した取組等を進め、有効な技術を実用化につなげる。

 2025年度においては、萌芽的シーズの発掘・育成につながる研究開発を推進するとともに、次世代iPS細胞の実用化につなげるための研究開発を加速した。また、早期の実用化に向けて臨床研究・臨床試験の支援や、臨床研究拠点や大学におけるウイルスベクター製造施設の体制整備を強化した。さらに、安定供給可能な製造基盤を構築するため、製造工程の自動化を含む製造技術を開発する事業を新たに開始した。細胞作製技術を応用することで、医薬品の安全性評価に活用可能な創薬支援ツールの開発も進めている。

ⅳ)感染症プロジェクト

 新興・再興を含む幅広い感染症の研究を推進するとともに、エイズや肝炎についての新たな知見を獲得し、予防法・治療法等の開発を促進する。重点感染症に対するワクチン・診断薬・治療薬等の感染症危機対応医薬品等については、平時に市場原理が働きにくく、感染症の発生時期や規模等についての予測もできないことを踏まえ、他の疾患領域とは異なる観点からの研究開発支援が必要である。

 加えて、平時に発生する感染症に対する医薬品等の研究開発も極めて重要であり、その基礎となる科学的知見の創出及び社会実装も見据えた研究開発にも取り組む。

 2025年度においては、HIV感染症並びにその合併症及び肝炎ウイルス感染症等の病態解明と治療法開発を推進し、患者のQOLや予後の改善に資する研究を実施した。また、薬剤耐性(AMR)に対する新規治療法の開発研究を推進した。加えて、「ワクチン開発・生産体制強化戦略」を全面改定し、ワクチンに加え治療薬・診断薬等も含む「感染症危機対応医薬品等(ワクチン、治療薬、診断薬等)開発・生産体制強化戦略」を策定し、引き続き感染症有事に備え政府一体となった対応を推進することとした。

ⅴ)データ利活用・ライフコースプロジェクト

 がん、難病、認知症等に関する疾患レジストリ、ゲノム・コホート研究を通じて蓄積された成果・検体情報について、デジタル化された加工データとして体系的に整備し、その利活用を促進する。これにより、ライフコース全体を見据えた疾患の発症・重症化予防、病態の解明、診断・治療の高度化に資する研究開発を推進し、ゲノム医療・個別化医療の実現を目指す。

 2025年度においては、がん・難病領域の全ゲノム解析等の戦略的なデータ蓄積を進め、それらを用いた研究・創薬などを促進するための体制・基盤構築に取り組んだ。また、バイオバンクの更なる利活用促進により革新的な創薬等につなげるため、我が国の強みを生かした大規模ゲノムデータ基盤を構築するとともに、一般住民と疾患のコホート・バイオバンクの連携を強化した。また、日本医療研究開発機構のデータ利活用プラットフォームに関し、社会的要請の高い領域から順次、画像・臨床データ等の追加に向けた準備を進めた。さらに、性差を含むライフコースの観点からの研究のさらなる推進に取り組んだ。

ⅵ)シーズ開発・基礎研究プロジェクト

 アカデミアの組織・分野の枠を超えた研究体制を構築し、新規モダリティの創出に向けた画期的なシーズの創出・育成等の基礎的研究を推進するとともに、先進国や政策上重要な国々等との国際共同研究を強化する。また、基礎と臨床、アカデミアと産業界の連携を強化して、神経疾患・精神疾患の画期的な診断・治療・創薬等シーズ開発に向けた基礎研究を推進する。その上で、異分野融合、他事業連携を促進し、他の統合プロジェクトに将来的につながり得るような、モダリティの多様化に対応する革新的シーズを創出・育成する。

 2025年度においては、引き続き革新的先端研究開発支援事業において先端的な基礎研究を推進した。また、脳神経科学統合プログラムにおいても、引き続き、病態メカニズムの解明に資する研究や、数理モデルの研究基盤(デジタル脳)構築に向けた取組等、基礎・基盤的な研究開発等を推進した。また、最先端医療研究開発推進のための国際連携を推進するとともに、途上国において医療の実装化につながる研究開発を通じた国際貢献を目指す取組を進めた。

ⅶ)橋渡し・臨床加速化プロジェクト

 「革新的医療技術創出拠点」の機能を活用して基礎研究から臨床試験段階までの一貫した橋渡し研究開発支援を行うシーズ研究費事業等を引き続き実施するとともに、臨床研究中核病院について、国際共同治験の能力を強化するため国際水準の臨床試験実施体制の整備を進める。

 また、医療への実用化を加速するため、医療系スタートアップ伴走支援等の取組を強化する。

 2025年度においては、研究基盤の構築として、引き続き文部科学省と厚生労働省とが連携し、橋渡し研究支援拠点におけるシーズ研究支援を強化するとともに、臨床研究中核病院において、治験・臨床試験の効率化の推進に向け、治験・臨床試験の計画から実施までのプロセスにおいて生成AIを利活用する取組を試行的に開始した。また、2024年度補正予算において、「国家戦略上重要な研究課題」に関する研究活動を加速することと併せて、研究環境の改善に係る大学病院・医学部の取組を推進することを通じ、医学系研究の研究力を抜本的に強化することを目的とした「医学系研究支援プログラム」を立ち上げ、総合型6課題(6機関)、特色型6課題(20機関)を採択した。

ⅷ)イノベーション・エコシステムプロジェクト

 創薬ベンチャーに対する非臨床試験段階から臨床試験段階までの研究開発及びベンチャーキャピタルによるハンズオン支援を強化するとともに、産学連携による研究成果の実用化を推進し、革新的新薬のグローバル開発、さらには、我が国が世界の創薬エコシステムの一部として機能することを目指す。その際、他のプロジェクトの成果が着実に実用化につながるようプロジェクト横断的に出口戦略を見据えた連携を模索する。

 2025年度においては、ノーベル生理学・医学賞を受賞した坂口志文博士が創業したベンチャー企業をはじめ、グローバルを視野に入れた我が国発の研究開発が進展するなど、創薬ベンチャー企業における実用化に向けた取り組みが推進された。加えて、産学官連携による取り組みも進み、社会的課題となっている耐性菌に対する新規治療法の承認申請につながるなど、成果が現れ始めている。そのほか、ハンズオン支援を行う国内・海外ベンチャーキャピタルの認定による支援体制の強化、知財等スターターキットの作成、海外イベントへの出展などグローバルなイノベーション・エコシステムとの連携促進に取り組んだ。

イ ムーンショット型の研究開発

 100歳まで健康不安なく人生を楽しめる社会の実現など目指すべき未来像を展望し、困難だが実現すれば大きなインパクトが期待される社会課題に対して、健康・医療分野においても貢献するため、野心的な目標に基づくムーンショット型の研究開発を、戦略推進会議等を通じて総合科学技術・イノベーション会議で定める目標とも十分に連携しつつ、関係府省が連携して行うこととしている。

 2025年度においては、5年目の外部評価を行い、計画を超えて進捗していることが確認されたことから、実用化可能な課題の選択と集中の観点でポートフォリオの見直しを行い、健康・医療戦略推進本部において目標の継続を決定した。

ウ インハウス研究開発

 関係府省が所管するインハウス研究機関が行っている医療分野のインハウス研究開発については、健康・医療戦略推進事務局、関係府省、インハウス研究機関及び日本医療研究開発機構の間で情報共有・連携を恒常的に確保できる仕組みを構築するとともに、各機関の特性を踏まえつつ、日本医療研究開発機構の研究開発支援との適切な連携・分担の下、全体として戦略的・体系的な研究開発を推進していくこととしている。

 2025年度においては、引き続き、インハウス研究機関間での連絡調整会議を実施し、情報共有等を行った。具体的なインハウス研究機関の取組としては、例えば、国立高度専門医療研究センター(NC)においては、世界最高水準の研究開発・医療を目指して、新たなイノベーションを創出するために、5NCの資源・情報を集約し、それぞれの専門性を生かしつつ有機的・機能的に連携した取組を継続的に行った。量子科学技術研究開発機構においては、パーキンソン病やレビー小体型認知症でのαシヌクレイン沈着を捉えるPET薬剤等の研究開発を進めた。国立がん研究センターにおいては、厚生労働省の委託事業として全ゲノム解析等に係る事業実施組織を設置し、日本医療研究開発機構研究班と患者への解析結果提供に関して連携した。国立成育医療研究センターにおいて、小児・周産期領域のデータ利活用拠点を形成し、全国医療情報DX基盤と接続するとともに、小児希少疾患における治験・国際共同治験を推進した。産業技術総合研究所においては、創薬支援ネットワークにおける医薬品候補化合物の生産性や機能予測を向上させる技術の開発等に取り組んだ。他のインハウス研究機関においても、新たなイノベーションを創出するために、新たなニーズに対応した研究開発や効果的な研究開発が期待される領域等について積極的に取り組んだ。

(5)フュージョンエネルギー(核融合エネルギー)

 フュージョンエネルギーは、①カーボンニュートラル、②豊富な燃料、③安全性、④環境保全性という特徴を有することから、エネルギー問題と地球環境問題を同時に解決する世界の次世代のエネルギーとして期待されている。また、技術さえ保有していれば多くの国が海水から燃料を生成することが可能となることから、エネルギーの覇権が資源を保有する者から技術を保有する者へと移るため、技術の獲得によるエネルギー安全保障の確保が重要な課題になっている。

 そのような中、フュージョンエネルギーに関する科学的・技術的進展もあり、諸外国において民間投資が急増している。その民間投資は様々な企業に共同研究や機器調達という形で投じられ、サプライチェーンが構築されつつある。米国や英国、ドイツは、フュージョンエネルギーの産業化を目標とした国家戦略を策定し、自国への技術の囲い込みを開始しており、発電の実現を待たずして産業化への競争が既に生じている。

 我が国は、これまでの研究開発を通じて培った技術的優位性とものづくり産業における信頼性等を有している。そのため、他国との連携による相乗効果により、他国の技術を国内開発に生かすとともに海外市場を獲得するチャンスとなる。一方で、我が国は技術を提供するだけで産業化に遅れ、結果的に市場競争に敗れるというリスクにもさらされている。

 そのような背景から、政府は「世界の次世代エネルギーであるフュージョンエネルギーの実用化に向け、技術的優位性を生かして、市場の勝ち筋を掴む、フュージョンエネルギーの産業化」を国家戦略ビジョンとして掲げ、2023年4月に「フュージョンエネルギー・イノベーション戦略」(2023年4月14日統合イノベーション戦略推進会議決定)を策定した。ビジョンを達成するため、①フュージョンインダストリーの育成戦略、②フュージョンテクノロジーの開発戦略、③フュージョンエネルギー・イノベーション戦略の推進体制等を強力に推進している。

 また、世界に先駆けた2030年代の発電実証を掲げ、2025年6月に国家戦略の改定を行った。同年9月には、本改定を踏まえ、フュージョンエネルギーの社会実装を目指すに当たって考慮すべき課題について検討するため、「フュージョンエネルギーの社会実装に向けた基本的な考え方検討タスクフォース」における議論が開始した。タスクフォースの検討を踏まえ、同年11月には、令和7年度補正予算案が閣議決定され、スタートアップ等の研究開発の支援や量子科学技術研究開発機構等のイノベーション拠点化などに必要な経費として、国庫債務負担行為の後年度分も含め約1,000億円が計上された。

 さらに、2026年4月にはタスクフォースでの議論の取りまとめとして、「フュージョンエネルギーの社会実装に向けた取組の在り方」を策定した。

3.エビデンスに基づく戦略策定、未来社会を具体化した政策の立案・推進

 内閣府は、重要科学技術領域の探索・特定に資するよう、注目する技術に関する世界の研究動向や我が国の強み・弱み等を論文や特許情報に基づき把握するツールを開発し、政策検討への活用を進めている。また、府省共通研究開発管理システム(e-Rad(※151))を通じて分析に必要となる各種データを収集している。これらのデータを活用し、エビデンスシステム(e-CSTI(※152))を通じて、研究費と研究アウトプットに関する分析、研究設備・機器の共用や外部資金の獲得状況に関する分析、産業界の人材育成ニーズと学生の履修状況に関する分析等を実施しているほか、分析機能の共有も行っている。第7期基本計画の策定に当たっては、e-CSTIプロジェクトの下で行った重要技術領域の分析結果なども活用しながら、同計画の下で振興すべき技術領域が選定された。

 科学技術や社会の未来を見通すための探索・分析として、文部科学省科学技術・学術政策研究所(NISTEP(※153))は、約5年ごとに科学技術予測調査を実施している(初回の1971年は科学技術庁が実施)。第12回調査の一環として、今後30年間の我が国において重要な科学技術・社会変容の実現時期等に関する専門家の見解を示すデルファイ調査を2025年5月に公表した。さらに、市民・若者の「ありたい」将来像を把握するビジョニング調査(2023年公表)を出発点に、デルファイ調査の結果や、ワークショップでの多分野・多業種・多世代対話を通じて、起こり得る複数の未来像とそこに至る道筋を探索するシナリオ調査を実施した。これら一連の成果を第12回調査の総合報告書として取りまとめた。

 さらに、科学技術・イノベーションに関する政策形成及び調査・分析・研究に活用するデータ等を体系的かつ継続的に整備・蓄積していくためのデータ・情報基盤を構築し、また、調査・分析・研究を行っている。当該基盤を活用した調査研究の成果は、基本計画の検討をはじめ、文部科学省及び内閣府の各種政策審議会等に提供・活用されている。

 また、科学技術振興機構研究開発戦略センターは、国内外の科学技術・イノベーションや関連する社会の動向の把握・俯瞰(ふかん)・分析を行い、研究開発成果の最大化に向けた研究開発戦略を検討し、科学技術・イノベーション政策立案に資する提言等を行っている。

 技術の高度化・複雑化の進展に伴い技術革新の重要性が増す中、限られたリソースを戦略的に投じていくことが一層求められている。こうした観点から、新エネルギー・産業技術総合開発機構技術戦略研究センターは、産業技術政策の策定に必要なエビデンスや知見を提供する重要なプレーヤーとして、グローバルかつ多様な視点で技術・産業・政策動向を把握・分析し、産業技術やエネルギー・環境技術分野の技術戦略の策定及びこれに基づく重要なプロジェクトの構想に政策当局と一体となって取り組んでいる。

 文部科学省は、我が国で日常摂取される食品の成分を収載した「日本食品標準成分表」を公表している。その最新版である「日本食品標準成分表(八訂)増補2023年」(2023年4月公表)の更新に向けた食品成分分析等を進めるとともに、日本食品標準成分表の充実・利活用を含めた在り方等の検討を行っている。

4.半導体の技術的優位性確保と安定供給に向けた取組

 半導体は、デジタル化や脱炭素化、経済安全保障の確保を支えるキーテクノロジーであり、その技術的優位性の確保と安定供給体制の構築に向け、諸外国に比肩する国策としての取組が必要である。経済産業省としては、半導体・デジタル産業戦略検討会議を開催し、2021年6月には半導体・デジタル産業戦略を打ち出し、同年11月には「我が国の半導体産業の復活に向けた基本戦略」として更なる具体化を行っている。基本戦略においては、3段階にわたる取組方針を示しており、具体的には、ステップ1として、半導体の国内製造基盤の整備に取り組み、ステップ2として、次世代半導体の製造技術開発を国際連携にて進めるとともに、ステップ3として、2030年以降をにらみゲームチェンジとなり得る光電融合などの将来技術の開発などにも着手していくことを掲げている。

 この戦略に基づき、先端半導体から部素材まで含めた半導体サプライチェーン強靱(きょうじん)化や次世代半導体の製造技術開発への予算を措置し、取組を進めている。さらに、この戦略を実現していく上で不可欠な半導体産業を担う人材の育成・確保についても、全国7地域でコンソーシアムを設立し、地域の実情に応じた産学官連携の取組が進んでおり、引き続き、戦略に基づき、必要な施策を講じていくこととしている。

5.ロボット開発に関する取組等

 人口減少下において、少子高齢化に伴う構造的な人手不足により、あらゆる産業において労働供給制約の影響が顕在化してきており、多品種少量生産を行う製造業やサービス産業など、これまでロボット導入が困難であった分野へのロボット導入を進めていくことが重要な課題となっている。これらの分野では、専門的な知識を持たない者であっても使いやすく、多様な現場環境において柔軟に活躍できるロボットが求められており、近年加速度的に発展するAI技術を組み合わせて、作業環境や状況を認識し、自律的に作業を行うロボットの開発・実装が重要な鍵となる。

 そのため、経済産業省では、「①AIを含む最先端のソフトウェアをロボットに組み込むことができるオープンな開発環境の構築」、「②ロボットが高度な判断・動作をできるように、データの蓄積・活用・循環の仕組みや、データを用いたAI基盤モデルの開発」を推進している。

 また、社会実装を加速するオープンイノベーションの観点から、世界のロボット分野における叡智(えいち)を結集する競技会として、「World Robot Summit 2025」を2025年に大阪府、福島県、愛知県の3府県で開催するとともに、大阪・関西万博の会期中には「未来づくりロボットWeek」を開催し、ロボット技術の社会実装とその発信を図った。

6.地理空間情報の整備

 内閣官房地理空間情報活用推進室は、第4期地理空間情報活用推進基本計画を計画的かつ着実に推進する観点から、2025年6月に「G空間行動プラン2025」を決定した。これに基づき、地理空間情報を活用したビジネスアイディアの発掘を目指すイチBizアワードを実施するなど、産学官民が連携し、地理空間情報のポテンシャルを最大限に活用した取組を推進した。

❷ 社会課題解決のためのミッションオリエンテッド型の研究開発の推進

1.戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)

 SIPは、総合科学技術・イノベーション会議が司令塔機能を生かして、府省や産学官の垣根を越えて、分野横断的な研究開発に基礎研究から社会実装までを見据えて一気通貫で取り組むプログラムである。

 SIP第3期は、第6期基本計画に基づき、我が国が目指す将来像(Society 5.0)の実現に向けた14の課題を2023年4月より実施している。

2.ムーンショット型研究開発制度

 ムーンショット型研究開発制度は、超高齢化社会や地球温暖化問題など重要な社会課題に対し、人々を魅了する野心的な目標(ムーンショット目標)を国が設定し、挑戦的な研究開発を推進するものである。

 本制度では、研究開始から5年目の評価に基づき目標の継続又は終了を決定することとしており、2025年度は、目標1(身体、脳、空間、時間の制約からの解放)、目標2(疾患の超早期予測・予防)、目標3(自ら学習・行動し人と共生するAIロボット)、目標6(誤り耐性型汎用量子コンピュータ)について、ターゲットを変更した上で継続を決定(第80回総合科学技術・イノベーション会議)、目標7(健康不安なく100歳まで)の継続を決定した(第54回健康・医療戦略推進本部)。今後は、5年目評価等を踏まえてポートフォリオ等を見直し、引き続き研究開発を推進していく。また、その他の目標については自己評価等を実施した。

3.社会技術研究開発センター

 科学技術振興機構社会技術研究開発センターは、少子高齢化、環境・エネルギー、安全安心、医療・介護などのSDGsを含む様々な社会課題の解決や新たな科学技術の社会実装に関して生じる倫理的・法制度的・社会的課題(ELSI)への対応を行うために、自然科学及び人文・社会科学の知見を活用し、多様なステークホルダーとの共創による研究開発を実施している。2025年度には、新興科学技術のELSI対応、技術シーズ活用による地域の社会課題解決、社会的孤立・孤独の予防と多様な社会的ネットワークの構築、情報社会における社会的側面からのトラスト形成、エビデンスに基づく政策形成、ケアが根付く社会システムを目指し、研究開発を推進した。

4.福島国際研究教育機構

 福島をはじめ東北の復興を実現するための夢や希望となるとともに、我が国の科学技術力・産業競争力の強化を牽引(けんいん)し、経済成長や国民生活の向上に貢献する、世界に冠(かん)たる「創造的復興の中核拠点」を目指す、福島国際研究教育機構を、2023年4月に設立した。

 福島国際研究教育機構では、我が国や世界の抱える課題、地域の現状等を勘案し、その実施において福島の優位性を発揮できる五つの分野を基本とした研究開発を推進するとともに、その研究開発成果の産業化やこれを担う人材の育成・確保にも取り組んでいる。国が行うこととされている福島国際研究教育機構の当初の施設整備については、これまで、用地の取得、敷地造成や建物の設計を進めており、2025年度には敷地造成工事に本格的に着手した。

❸ 社会課題解決のための先進的な科学技術の社会実装

1.戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)での取組

 2023年度から開始したSIP第3期では、技術開発のみならず、それに係る社会システム改革も含め社会実装につなげる計画や体制を整備することとしている。このため、「科学技術イノベーション創造推進費に関する基本方針」における「研究開発計画」を、「社会実装に向けた戦略及び研究開発計画」に変更し、PDの下で、府省連携・産学官連携により、五つの視点(技術、制度、事業、社会的受容性、人材)から必要な取組を推進する。五つの視点の取組を測る指標として、TRL(技術成熟度レベル)に加え、新たにBRL(事業成熟度レベル)、GRL(制度成熟度レベル)、SRL(社会的受容性成熟度レベル)、HRL(人材成熟度レベル)を導入した。

2.研究開発とSociety 5.0との橋渡しプログラム(BRIDGE)による社会実装の促進

 BRIDGEは、SIPの成果や各省庁の研究成果を社会課題解決等に橋渡しする「イノベーション化」のための重点課題を設定し、各省庁の取組を推進するプログラムである。2025年度は、各省庁から重点課題を踏まえた施策として提案された54課題(2023年度から継続して実施している課題を含む。)を実施した。(第1章第2節 2 参照)。

3.政府事業への先進的な技術の導入

 科学技術・イノベーションの成果の社会実装を加速させるよう、政府において率先して先進的な技術の導入を図る政府事業のイノベーション化を推進していくことが重要である。このため、内閣府においては、関係省庁と連携して、公共事業をはじめとして幅広い分野の政府事業のイノベーション化等を推進している。

❹ 知的財産・標準の国際的・戦略的な活用による社会課題の解決・国際市場の獲得等の推進

1.知的財産戦略及び国際標準戦略の推進

 経済のグローバル化が進展するとともに、経済成長の源泉である様々な知的な活動の重要性が高まる中、我が国の産業競争力強化と国民生活の向上のためには、我が国が高度な技術や豊かな文化を創造し、それをビジネスの創出や拡大に結び付けていくことが重要となっている。その基盤となるのが知的財産戦略である。

 2025年6月、知的財産戦略本部は、「知的財産推進計画2025」を決定した。これまでの我が国の知財戦略を簡潔に振り返りつつ、我が国の競争力の現状や我が国の有する「知的資本」の再確認を行った上で、国内外の社会課題の解決を図る新たな「知的創造サイクル」の構築を「IPトランスフォーメーション」と銘打ち、「イノベーション拠点としての競争力強化」、「AI等先端技術の利活用」、「グローバル市場の取り込み」を、上記を実現するための3本柱とし、今後の方向性と重点とする取組を取りまとめた。また、昨年に引き続き、知的財産の「創造」、「保護」、「活用」の視点ごとに「現状と課題」と「施策の方向性」について整理を行うとともに、今回新たに、達成すべき目標についてKPIを定めた。知的財産戦略本部の主導の下、関係府省とともに知的財産戦略を推進している。

2.国際標準の戦略的活用への積極的対応

 国内外の社会課題解決を通じた市場創出に加え、イノベーションの促進、経済安全保障の観点からも我が国官民による国際標準の戦略的な活用を推進する必要がある。このため、2025年6月、知的財産戦略本部において「新たな国際標準戦略」を策定した。同戦略においては、17の戦略領域・重要領域を設け、国際標準化に係る官民のリソースを集中するとともに、我が国の国際標準活動における担い手強化に向けた具体的な施策として、産学官における意識改革、研究開発と国際標準活動の一体的推進や、人材育成等を進めることとしている。さらに、AIやデジタルなど、個々の省庁や業界では対応が難しい領域への迅速かつ適切な対応を図るため、司令塔となる官民連携の場を設置することとした。

 2026年1月には、同戦略を踏まえ、国際標準に係る官民連携の場として「国際標準に係る官民ハイレベルフォーラム」を設置し、第1回総会において行動宣言を決議した。また、戦略領域・重要領域における産学官の国際標準活動を促進するために、関係省庁の重要施策に対して、BRIDGEの枠組みを活用した標準活用加速化支援事業を通じて、予算追加配分による推進強化を行った。

 経済産業省では、諸外国における標準化活動の加速化を背景に、我が国の標準化・認証の取組を更に加速化するため、特定分野における国主導の戦略的標準化と国内認証機関の強化等を通じたグローバル市場の創出・獲得を展開する新たなアプローチとして「日本型標準加速化モデル2025」(日本産業標準調査会基本政策部会)を2025年6月に公表した。産業構造転換につながる不確実性の高い分野について、分野全体の戦略的標準化活動を国が牽引(けんいん)する形で展開する方針を示し、量子などパイロット的に取組を進める五つの分野を設定の上、分野別戦略の策定等を進めるとともに、これらの取組を通じて得られた知見を「型」として整理した。また、認証対象が最終製品からサプライチェーン全体に拡大しており、認証機関が取り扱う情報の機微性が格段に高まってきていることを踏まえ、産業界のニーズに応じた国内認証機関の活用・強化の方向性や国内認証機関と産業界が協力して取り組むべき課題について議論する「認証産業活用の在り方検討会」を開催した。加えて、標準・規格を活用した国内外市場の開拓・確保に向け、JIS規格の網羅的な調査・検証とそれを踏まえた公共調達等との連携強化を目指す「JIS規格の総ざらいレビュー」を開始した。産業界全体の標準化活動の底上げに係る取り組みも継続しており、企業と大学等が共同で実施する研究開発について、オープン&クローズ戦略の策定・活用を促進するための計画認定制度(特定新需要開拓事業活動計画認定制度)に基づき認定した企業・大学等の活動に対して、工業所有権情報・研修館(INPIT)及びNEDOから助言を行った。また、人材育成施策として、国際標準化をリードする若手人材を育成するための「ISO/IEC国際標準化人材育成講座」や、国際標準化を戦略的に活用できる人材を育成するための「ルール形成戦略研修」を実施した。

 あわせて、「国際ルール形成・市場創造型標準化推進事業」等において戦略的に重要な研究開発テーマや産業横断的なテーマについて、国立研究開発法人や民間企業と連携して国際標準化活動を推進した。「エネルギー需給構造高度化基準認証推進事業」においても、例えば燃料アンモニア分野において、アンモニアの発電利用を普及させるために発電用ボイラでのアンモニア燃焼技術に関する標準化活動を実施した。海外との協力においては、国際標準化活動における欧州及びアジア諸国との連携や、アジア諸国の積極的な参加を促進することを目的とした技術協力を行っている。2025年度は、アジア太平洋地域の27か国・地域の標準化機関が集まる太平洋地域標準会議(PASC(※154)、2025年度は日本開催)及びアジア諸国の標準化機関等との二国間会議に参加し、標準化協力分野について議論を行った。また、日中韓3か国の標準化機関及び標準化専門家が参加する北東アジア標準協力(NEAS)フォーラム(※155)が中国において開催され、各国標準化制度に関する相互理解を深め、今後の標準化協力について議論した。さらに、国際電気標準会議(IEC(※156))と連携したアジア地域を中心とした人材育成セミナーを実施した。加えて、アジア太平洋経済協力(APEC(※157))基準・適合性小委員会において、国際整合化や規格開発・普及のためのプロジェクトを進めるなど、国際標準化活動におけるアジア太平洋地域との連携強化に取り組んだ。

 総務省は、情報通信審議会等の提言を踏まえ、我が国の情報通信技術(ICT)の国際標準への反映を目指して、研究開発等も実施しながら、国際電気通信連合(ITU(※158))等のデジュール標準化機関やフォーラム標準化機関における標準化活動を推進している。また、Beyond 5G時代に向け、企業の経営戦略の下で国際標準化・知財活動が戦略的に推進されることを目的に、2020年12月に「Beyond 5G新経営戦略センター」を設立し、産学官が連携・協力して国際標準化・知財活動等をリードする人材育成、産業連携の推進、意識啓発、情報発信に係る各種活動を展開している。加えて、2025年10月に同センターにおいて、「ビジネス展開志向型の国際標準化・知財戦略タスクフォース」を立ち上げ、ICT分野の社会実装・海外展開を加速するための国際標準化・知財戦略の在り方を検討した。

 2024年度からは、内閣府の標準活用加速化支援事業を活用し、国際標準化活動の持続的な推進を支える人材基盤の強化に向けた取組も実施している。具体的には、情報通信・デジタル分野の標準化(ルール形成)人材に求められる役割・知識・スキル等を体系化したスキルセットによる講習カリキュラム等の開発や、教育プログラムに係る事業モデルを設計・構築し、民間事業者等による教育プログラムの実活用・普及に向けた取組を行っている。加えて、同年から、国際標準化の議論を主導できる将来の役職者の育成や標準化人材の裾野拡大を目的に、国際標準化機関・団体への調査を通じた、国際標準化活動の支援に関する取組を開始している。

 国土交通省は、我が国が強みを有する上下水道技術の海外展開を促進することを目的として、戦略的な国際標準化を推進している。

 2025年度は、「飲料水、汚水及び雨水に関するシステムとサービス」(ISO/TC 224)、「水の再利用」(ISO/TC 282)に関する会議等へ参画した。

3.特許審査の国際的な取組

 日本企業がグローバルな事業展開を円滑に行うことができるよう、国際的な知財インフラの整備が重要である。このため、特許庁は、ある国で最初に特許可能と判断された出願に基づいて、他国において早期に審査が受けられる制度である「特許審査ハイウェイ(PPH(※159))」を46庁との間で実施している(2026年1月時点)。また、PPH申請出願について、さきに審査を行った我が国の審査のポイントとなる情報を相手庁に提供することで、相手庁における審査の早期化及び我が国の審査結果の浸透を図る取組を、2026年1月から、まずタイとの間で開始した。さらに、日米が主導し7庁(2026年1月時点)が実施中である、PPH申請出願の審査着手時期の予見性を向上させる取組「PPH eXtra」(※160)について、他国・地域の知財庁がこれを開始するよう働きかけを進めている。

4.国の研究開発プロジェクトにおける知的財産(知的財産権・研究開発データ)マネジメント

(1)特許権等の知的財産権に関する取組

 経済産業省は、国の研究開発の成果を最大限事業化に結び付けるため、「委託研究開発における知的財産マネジメントに関する運用ガイドライン」(2015年5月策定)に基づき、国の委託による研究開発プロジェクトごとに適切な知的財産マネジメントを実施している。

 農林水産省は、農林水産分野に係る国の研究開発において、「農林水産研究における知的財産に関する方針」(2016年2月策定、2022年12月改訂)に基づき、研究の開始段階から研究成果の社会実装を想定した知的財産マネジメントに取り組んでいる。また、農林水産省で行っている委託研究事業の各研究課題に知的財産専門家を配置し、より適切な知的財産マネジメントが実施されるよう取り組んでいる。

(2)研究開発データに関する取組

 経済産業省は、研究開発データの利活用促進を通じた新たなビジネスの創出や競争力の強化を図るため「委託研究開発におけるデータマネジメントに関する運用ガイドライン」(2017年12月)に基づき、2018年3月より、ナショプロデータカタログ(※161)に利活用可能な研究開発データを掲載している。

5.特許情報等の整備・提供

 特許庁は、工業所有権情報・研修館が運営する「特許情報プラットフォーム(J-PlatPat(※162))」や、「外国特許情報サービス(FOPISER(※163))」を通じて、我が国の特許情報及び、我が国のユーザーからのニーズが大きい諸外国の特許情報を提供している。

 そのほか、工業所有権情報・研修館では、企業や大学、学術研究機関等が実施許諾又は権利譲渡の意思を持つ「開放特許」、「リサーチツール特許」の情報を収録したデータベースサービスを提供している。

6.早期審査の実施

 特許庁は、特許の権利化のタイミングに対する出願人の多様なニーズに応えるため、一定の要件の下に、早期に審査を行う「早期審査」を実施している。

7.特許審査体制の整備・強化

 特許庁は、2025年度においても、任期満了を迎えた任期付審査官の一部を再採用するなど、審査処理能力の維持・向上のため、引き続き審査体制の整備・強化を図った。

8.事業戦略対応まとめ審査等の実施

 特許庁は、知的財産戦略に基づいた出願に対応するための審査体制について検討を進め、事業で活用される知的財産の包括的な取得を支援するため、国内外の事業に結び付く複数の知的財産(特許・意匠・商標)を対象として、分野横断的に事業展開の時期に合わせて審査・権利化を行う「事業戦略対応まとめ審査」を実施している。また、知的財産政策と標準政策の連携強化を進めており、標準の内容に対応した適切な特許の権利範囲となるよう、補正内容や審査の進捗を柔軟に調整する特許審査について検討を開始した。

9.特許出願技術動向調査の実施・公表

 特許庁は、新市場の創出が期待される分野、今後の進展が予想される技術テーマを選定し、研究開発戦略の立案に資するよう、さらには、各企業等において自社の経営情報等と併せて参照されることで特許戦略や事業戦略を立案する際の一助となるよう特許出願動向等を調査し、その結果を公表している。2025年2月には、GXに関する技術を俯瞰(ふかん)するためのGX技術区分表(GXTI(※164))を用いた検索を、特許庁ウェブサイトから簡便に実施する機能を公表した。

10.専門家による知財活用の支援

 工業所有権情報・研修館では、「大学等の研究成果の社会実装に向けた知財支援事業(iAca(※165)、アイアカ)」において、知的財産マネジメントの専門家である知財戦略プロデューサー(以下「知財PD」という。)を日本国内の大学、高等専門学校、国立試験研究機関等に派遣し、研究ステージの初期段階におけるシーズ発掘と出口戦略の策定から、優れたシーズの事業化に向けた産学連携活動まで、シームレスな支援を実施した。また、「競争的研究費による研究成果の社会実装に向けた知財支援事業(iNat(※166)、アイナット)」では、競争的な公的資金が投入された研究開発プロジェクトを推進する大学、研究開発機関、技術研究組合及びファンディングエージェンシーに知財PDを派遣し、プロジェクトの初期段階より、知財の視点から研究開発成果の社会実装を見据えた戦略の策定及びマネジメントなどの支援を実施した。2025年度は、iAcaでは知財PDを64プロジェクト(38機関)に、iNatでは知財PDを50プロジェクト(30機関)に派遣した。

 農林水産省は、「『知』の集積による産学連携支援事業」において、専門のコーディネーターによる知的財産の戦略的活用など技術経営的視点からの助言等や大学、国立研究開発法人、公設試等が連携して研究開発に取り組む際の研究計画作成への指導を行っている。

11.技術情報の管理に関する取組

 産業競争力強化法に基づき、事業者が技術情報の管理体制等について国が認定した機関から認証を受けることができる「技術情報管理認証制度」を実施した(2025年12月末現在、8件の認証機関を認定)。2025年度は、認証取得するための改定基準に対応した、事業者自身で自社の情報管理体制を確認するための自己チェックリストを公表した。また、技術情報管理体制の構築に向けた支援等を行う専門家の派遣(100回程度派遣)や、制度の改善に向けた有識者会議等を開催した。

12.研究成果の権利化支援と活用促進

 科学技術振興機構は、優れた研究成果の発掘・特許化を支援するために、「知財活用支援事業」において、大学等における研究成果の戦略的な外国特許取得の支援、各大学等に散在している特許権等の集約・パッケージ化による活用促進を実施するなど、大学等の知的財産の総合的活用を支援している。

❺ 科学技術外交の戦略的な推進

1.科学技術外交の戦略的な推進

 グローバル化が進展する中で、我が国の科学技術・イノベーションを推進するとともに、その成果を活用し、国際社会における我が国の存在感や信頼性を向上させるため、科学技術・イノベーションの国際活動と関係省庁の取組との連携を含む科学技術外交を一体的に推進していくことが必要である。

 こうした方針を具体化するために、外務省においては、有識者の提言(※167)も踏まえつつ、二国間対話の活性化、在外公館のネットワークを通じた国際頭脳循環の推進、経済安全保障・技術保護等を踏まえた国際連携・協力の推進等の取組を進めている。

(1)国際的な枠組みの活用

ア 主要国首脳会議(サミット)関連活動

 2008年、当時のG8議長国であった我が国の発案により、G8科学技術大臣会合を主催した。同会合は、内閣府特命担当大臣(科学技術政策)と諸外国の閣僚との政策協議等を通じて、科学技術を活用した地球規模の諸問題等への対処、諸外国と連携した科学技術政策を巡る国際的な議論への主体的な貢献等を目的としている。G7科学技術大臣会合の下には、国際的研究施設に関する高級実務者会合(GSO(※168))、海洋の未来作業部会、オープンサイエンス作業部会、研究セキュリティ・インテグリティ作業部会、科学コミュニケーション作業部会の五つの作業部会が設置されている。研究セキュリティ・インテグリティ作業部会は2023年末をもって活動終了し、各国政策や産学官における経験・ノウハウの共有を行うオンラインプラットフォームである「G7バーチャル・アカデミー」にて対話枠組みを継続していたが、地政学的緊張の高まりによる研究セキュリティの必要性が更に注目される中、2025年のG7議長国であるカナダよりアドホックな取組として作業部会の再設置が提案され、各国の同意を得て活動が再開されている。「気候中立社会実現のための戦略研究ネットワーク(LCS-RNet)」(2021年、低炭素社会国際研究ネットワークから名称変更)は、2023年12月、「ネットゼロへ向けたさらなる取り組み:市民、政策担当者、研究者などのステークホルダー間の協働をどう進めるか?」をテーマに年次会合を開催しており、同ネットワークには、2025年2月現在、我が国を含む7か国17の研究機関が参加している。

 また、2025年6月にカナダで開催されたG7首脳の成果文書において、AIに関するG7首脳声明や量子の未来のためのカナナスキス共通ビジョンが盛り込まれた。

イ アジア太平洋経済協力(APEC)

 APEC科学技術イノベーション政策パートナーシップ(PPSTI(※169))会合は、共同プロジェクトやワークショップ等を通じたAPEC地域の科学技術・イノベーション推進を目的に開催されており、2025年8月に第26回会合が、2026年2月に第27回会合が開催されPPSTIの活動計画やプロジェクトの実施等について議論が行われた。

ウ 東南アジア諸国連合(ASEAN)

 我が国とASEAN科学技術イノベーション委員会(COSTI(※170))の協力枠組みである、日ASEAN科学技術協力委員会(AJCCST(※171))は、文部科学省が中心となり対応し、おおむね毎年開催されている。2025年6月には第14回AJCCSTが開催され、日本とASEAN諸国との連携について再確認する場となった。

 また、2023年に「日ASEAN友好協力50周年」を迎えたことを機に、同年には「日ASEAN科学技術・イノベーション協働連携事業(NEXUS(※172))」を開始し、2024年9月にCOSTIより正式なASEAN事業として承認された。同事業は、これまでの連携を基盤に、双方の強みを生かした持続的な科学技術協力とイノベーション共創を推進するものである。

 ほかにも、日・ASEAN統合基金(JAIF)を通じて、2024年12月から、「地球規模課題の解決に向けた日ASEAN科学技術・イノベーション(STI)コーディネーションのための人材能力開発」を実施している。

 さらに、2025年10月の日ASEAN首脳会議では、モデル開発、人材育成、ソリューションの共創などを通じ、安全、安心で信頼できるAIエコシステムを共に構築していくことを目指し、「日ASEAN・AI共創イニシアティブ」の立ち上げを提案した。

エ その他

ⅰ)アジア・太平洋地域宇宙機関会議(APRSAF(※173))

 我が国は、アジア・太平洋地域での宇宙活動、利用に関する情報交換並びに多国間協力推進の場として、1993年から毎年1回程度、APRSAFを主催しており、14か国60名が参加した第1回から、第31回(2024年)には40か国・地域から500名以上が参加登録する同地域最大規模の宇宙関連会議となっている。第31回年次会合は、2025年11月に「宇宙エコシステムの活用を通じて地域に力を与える」をテーマに、フィリピン・セブで開催し、各分科会やワークショップでは、官民・国際・異業種交流が行われ、宇宙イノベーションの機会創出に向けて多様な観点で活発な議論が行われた。

 また、第31回年次会合では、APRSAF初となる国家元首(比大統領)による参加が実現し、アジア太平洋地域の対話と協力の場としてのAPRSAFへの期待、また、日本主導によるAPRSAFの意義や価値が認識された。

 第32回は2026年にタイ(バンコク)、第33回は2027年に日本(福岡)での開催が決定された。

ⅱ)生物多様性及び生態系サービスに関する政府間科学─政策プラットフォーム(IPBES(※174))

 IPBESは、生物多様性と生態系サービスに関する動向を科学的に評価し、科学と政策のつながりを強化する政府間のプラットフォームとして2012年4月に設立された政府間組織である。加盟国等の参加によるIPBES総会第12回会合が2026年2月3日から8日まで、英国のマンチェスターで開催された。

 本会合の主な成果として、「生物多様性及び自然の寄与に係るビジネスの影響と依存度に関する方法論に関する評価(ビジネスと生物多様性アセスメント)」に係る政策決定者向け要約が承認された。また、日本政府が推薦した東京大学大学院・石原広恵准教授が、IPBESの「学際的専門家パネル(MEP)」メンバーとして選出された。さらに、IPBESワークプランの中間評価については、外部レビューパネルの報告書等に基づき、IPBESの財務状況の安定性向上やIPBES成果物の活用の推進などについて議論が行われた。

ⅲ)地球観測に関する政府間会合(GEO(※175))

 GEOは、地球観測の国際連携による課題解決を目指す国際的な枠組みであり、2026年2月時点で274の国及び国際機関等が参加している。2023年11月に開催された閣僚級会合で採択された「2026年以降のGEO戦略(Post-2025 GEO Strategy)」の実現に向け、2025年10月にアジア・オセアニア地域を対象とした第17回AOGEO(※176)シンポジウムをタイ・バンコクで開催した。本シンポジウムでは、地球観測に関係する実務者や研究者がこれまでの取組の紹介や意見交換などを行い、アジア・オセアニア地域の社会課題の解決に向けた、共通認識や今後の活動を記した「アジア・オセアニアGEO宣言2025」を採択した。

ⅳ)気候変動に関する政府間パネル(IPCC(※177))

 IPCCは、気候変動に関する最新の科学的知見について取りまとめた報告書を作成し、各国政府の気候変動に関する政策に科学的な基礎を与えることを目的として、1988年に世界気象機関(WMO(※178))と国連環境計画(UNEP(※179))により設立された。2023年には新たにIPCCの議長団が選出され、第7次評価報告書(AR7)策定に向けた取組が開始された。AR7サイクルでは、第1作業部会(WG1)による「自然科学的根拠」報告書、第2作業部会(WG2)による「影響・適応・脆弱性(影響と適応に関する1994年IPCCテクニカルガイドラインの改訂と更新を含む)」報告書、第3作業部会(WG3)による「気候変動の緩和」報告書、及び「統合報告書」の作成のほか、「気候変動と都市に関する特別報告書」、「短寿命気候強制因子(SLCF)インベントリに関する2027年IPCC方法論報告書」及び「二酸化炭素除去(CDR)技術・炭素回収利用及び貯留(CCUS)に関する方法論報告書」の作成が予定されている。

ⅴ)Innovation for Cool Earth Forum(ICEF)

 ICEFは、地球温暖化問題を解決する鍵である「イノベーション」促進のため、世界の産学官のリーダーが議論するための知のプラットフォームとして、2014年から毎年開催している国際会議である。2025年10月8~9日に、開催された第12回年次総会では、「グリーントランスフォーメーション(GX)と安全保障」をメインテーマに掲げ、地球温暖化問題解決の鍵となるグリーン・イノベーションに焦点が置かれた。2日間の会合を通じ、各国政府機関、産業界、学界、国際機関等からエネルギー・環境に関する世界の第一人者が多数参加した。

ⅵ)Research and Development 20 for Clean Energy Technologies(RD20)

 RD20は、G20の研究機関によるクリーンエネルギー分野の国際連携イニシアティブである。2025年10月に第7回RD20国際会議が開催され、脱炭素化のためのイノベーション創出に向けた国際連携の強化や人材育成の促進等が議論された。

ⅶ)グローバルリサーチカウンシル(GRC(※180))

 世界各国の主要な学術振興機関の長による国際会議であるGRCの第13回年次会合が、2025年5月20~21日に、リヤド(サウジアラビア)で開催された。本会合はサウジアラビア研究開発イノベーション庁(RDIA)とキングアブドゥルアジズ科学技術都市(KACST)及びトルコ科学技術研究機構(TÜBİTAK)の共同主催により実施され、研究支援を取り巻く課題と学術振興機関が果たしていくべき役割について活発な議論が行われた。

(2)国際機関との連携

ア 国際連合システム(UNシステム)

ⅰ)持続可能な開発目標のための科学技術イノベーション(STI for SDGs)

 開発途上国での社会的課題・ニーズを把握する取組等を実施している国連開発計画(UNDP(※181))への拠出を通じて、現地で求められるニーズを踏まえて我が国の企業等が事業化を検討する「Japan SDGs Innovation Challenge for UNDP Accelerator Labs」を2020年より実施し、これまで計11か国12件のマッチングを行い、開発課題の解決策検討と実証を行った。

ⅱ)国際連合教育科学文化機関(UNESCO(※182)、ユネスコ)

 我が国は、国連の専門機関であるユネスコの多岐にわたる科学技術分野の事業活動に積極的に参加協力をしている。ユネスコでは、政府間海洋学委員会(IOC(※183))、政府間水文学計画(IHP(※184))、人間と生物圏(MAB(※185))計画、ユネスコ世界ジオパーク、国際生命倫理委員会(IBC(※186))、政府間生命倫理委員会(IGBC(※187))等において、地球規模課題解決のための事業や国際的なルール作り等が行われている。我が国は、ユネスコへの信託基金の拠出等を通じ、科学分野の人材育成事業や持続可能な開発のための国連海洋科学の10年(2021~2030年)に関する支援事業等を実施しており、また、各種政府間会合や専門委員会へ専門家等を派遣し、議論に参画するなど、ユネスコの活動を推進している。なお、2023年6月から道田豊・東京大学大気海洋研究所特任教授・総長特使(国連海洋科学の10年担当)がIOC議長を、2025年12月から位田隆一・元滋賀大学長がIGBC議長をそれぞれ務めている。また、2025年11月の第43回ユネスコ総会において、「ニューロテクノロジーの倫理に関する勧告」が採択された。

ⅲ)持続可能な開発のための国連海洋科学の10年(2021~2030年)

 持続可能な開発のための国連海洋科学の10年(2021-2030)とは、海洋科学の推進により、持続可能な開発目標(SDGs14等)を達成するため、2021~2030年の10年間に集中的に取組を実施する国際枠組みであり、ユネスコIOCの主導の下、2021年1月から開始されている。

 実施計画では、10年間の取組で目指す社会的成果として、きれいな海、健全で回復力のある海、予測できる海、安全な海、持続的に収穫できる生産的な海、万人に開かれ誰もが平等に利用できる海、心揺さぶる魅力的な海の七つが掲げられており、そのために、海洋汚染の減少や海洋生態系の保全から、海洋リテラシーの向上と人類の行動変容まで10の挑戦課題に取り組むこととされている。我が国は、これらの社会的成果への貢献を目指し、文部科学省が拠出するユネスコ信託基金や、「国連海洋科学の10年」国内委員会等の枠組みを通じて関係省庁・機関を含む産学官民の連携を促進し、国内・地域間・国際レベルにおいて様々な取組を推進している。

イ 経済協力開発機構(OECD)

 OECDでは、閣僚理事会、科学技術政策委員会(CSTP(※188))、デジタル政策委員会(DPC(※189))、産業イノベーション起業委員会(CIIE(※190))、原子力機関(NEA(※191))、国際エネルギー機関(IEA(※192))等を通じ、加盟国間の意見・経験・情報の交換、人材の交流、統計資料等の作成をはじめとした科学技術に関する活動が行われている。

 CSTPでは、科学技術政策に関する情報交換・意見交換が行われるとともに、科学技術・イノベーションが経済成長に果たす役割、研究体制の整備強化、研究開発における政府と民間の役割、国際的な研究開発協力の在り方等について検討が行われている。また、CSTPには、グローバル・サイエンス・フォーラム(GSF(※193))、イノベーション技術政策作業部会(TIP(※194))、バイオ・ナノ・コンバージングテクノロジー作業部会(BNCT(※195))及び科学技術指標各国専門家作業部会(NESTI(※196))の四つのサブグループが設置されている。

ⅰ)グローバル・サイエンス・フォーラム(GSF)

 GSFでは、地球規模課題の解決に向けた国際連携の在り方等が議論されている。2025年からは、「コアファシリティ」、「研究評価」、「ワークフォースギャップ」のプロジェクトが新たに実施されている。

ⅱ)イノベーション技術政策作業部会(TIP)

 TIPでは、科学技術・イノベーションを政策的に経済成長に結び付けるための検討を行っており、2024年からは、移行における科学技術・イノベーションシステムに必要な組織的能力とスキルに関するプロジェクトを実施している。

ⅲ)バイオ・ナノ・コンバージングテクノロジー作業部会(BNCT)

 BNCTは、新興・融合技術に関連する政策問題に対処するための検討を行っている。2024年は、ニューロテクノロジー、合成生物学、バイオエコノミー等に関する議論や報告書の公表等を行った。2025年からは、新興技術に対する予見的なガバナンス枠組みや責任あるイノベーション等について議論を行っている。

ⅳ)科学技術指標各国専門家作業部会(NESTI)

 NESTIは、統計作業に関して監督・指揮・調整等を行うとともに、科学技術・イノベーション政策の推進に資する指標や定量的分析の展開に寄与している。具体的には、研究開発費や科学技術人材等の科学技術・イノベーション関連指標について、国際比較のための枠組み、調査方法や指標の開発に関する議論等を行っている。

ウ 国際科学技術センター(ISTC(※197))

 ISTCは、旧ソ連における大量破壊兵器開発等に従事していた研究者・技術者が参画する平和目的の研究開発プロジェクトを支援することを目的として、1994年3月に設立された国際機関である。日本、米国、EU、韓国、ノルウェー、カザフスタン、アルメニア、キルギス、ジョージア、タジキスタンが参加している。近年は、CBRN(化学・生物・放射性物質及び核)分野の様々な地域の科学者らの研究活動等の事業を支援している。

(3)研究機関の活用

ア 東アジア・ASEAN経済研究センター(ERIA(※198))

 ERIAは、東アジア経済統合の推進に向けて政策研究・提言を行う機関であり、「経済統合の深化」、「開発格差の縮小」及び「持続可能な経済成長」を三つの柱として、イノベーション政策等を含む幅広い分野にわたり、研究事業、シンポジウム事業及び人材育成事業を実施している。また、2023年、東アジアにおけるデジタル技術を活用した持続可能な経済成長に貢献する「デジタルイノベーション・サステナブルエコノミーセンター(E-DISC)」を設立し、翌2024年にはASEANスタートアップラウンドテーブルを開催するなど様々な活動がなされている。

(4)科学技術・イノベーションに関する戦略的国際活動の推進

 我が国が地球規模の問題解決において先導的役割を担い、世界の中で確たる地位を維持するためには、科学技術・イノベーション政策を国際協調及び協力の観点から戦略的に進めていく必要がある。

 文部科学省は、2022年度に創設した「先端国際共同研究推進事業/プログラム(ASPIRE(※199))」において、欧米等科学技術先進国・地域との国主導で設定する先端分野における国際共同研究を戦略的に支援し、国際的な研究コミュニティへの我が国の研究者の参入促進、若手研究者の育成、国際的ネットワークの構築及び拡大を図っている。加えて、2023年度補正予算で創設した「日ASEAN科学技術・イノベーション協働連携事業(NEXUS(※200))」では、ASEANとの科学技術・イノベーション分野における関係強化のため、ASEAN諸国のニーズ等を踏まえつつ、国際共同研究及び人材交流・育成の推進や拠点設立を通じて、持続可能な研究協力関係の確立に資する取り組みを実施している。

 このほか、外務省とともに2008年度より「地球規模課題対応国際科学技術協力プログラム(SATREPS(※201))」を実施し、我が国の優れた科学技術と政府開発援助(ODA)との連携により、開発途上国と、環境・エネルギー、生物資源、防災、感染症分野において地球規模の課題解決につながる国際共同研究を推進している。また、2009年度より、「戦略的国際共同研究プログラム(SICORP(※202))」を実施し、戦略的な国際協力によるイノベーション創出を目指し、省庁間合意に基づくイコールパートナーシップ(対等な協力関係)の下、相手国・地域のポテンシャル・分野と協力フェーズに応じた多様な国際共同研究を推進している。さらに、2014年度より、世界各国・各地域の青少年に対する我が国の最先端科学技術への関心向上と、海外の優秀な人材の将来の獲得に資するため、科学技術分野での海外との青少年交流を促進する「国際青少年サイエンス交流事業(さくらサイエンスプログラム)」を実施している(第2章第2節 1 ❺参照)。

 加えて、2022年度から毎年実施している日本とインドの大学の学長等が交流する「日印大学等フォーラム」を通じて形成されたネットワークを基盤として、2025年度よりインドの博士課程等に所属する研究人材を対象とした年間招へい交流を促進する「インド若手科学頭脳循環プログラム(LOTUS Programme(※203))」を開始した。

 環境省は、アジア太平洋地域での研究者の能力向上、共通の問題解決を目的とする「アジア太平洋地球変動研究ネットワーク(APN(※204))」を支援している。2024年7月~2025年6月までに、公募型共同研究を31件、開発途上国の研究能力開発・向上プログラムを23件実施し、気候変動、生物多様性など各分野横断型研究に関する国際共同研究を推進するとともに、アジア太平洋地域の若手研究者及び政策決定者向けの能力強化を進めてきた。また、2025年7月に、アジア地域の低炭素・脱炭素社会の実現に向け、最新の研究成果や知見の共有を目的とする「低炭素アジア研究ネットワーク(LoCARNet)」を活用し、科学に根差した政策形成についてアジア地域で知見共有・相互学習する機会として、第3回アジア太平洋統合評価モデル(AIM(※205))国家間学習を開催した。国家間学習には、我が国を含む8か国のアジアの政策担当者、研究者と、UNFCCC IGES地域協力センター(RCC(※206))が参加した。

(5)諸外国との協力

ア 欧米諸国等との協力

 我が国と欧米諸国等との協力活動については、ライフサイエンス、ナノテクノロジー・材料、環境、原子力、宇宙開発等の先端研究分野での科学技術協力を推進している。具体的には、二国間科学技術協力協定に基づく科学技術協力合同委員会の開催や、情報交換、研究者の交流、共同研究の実施等の協力を進めている。

 米国との間では、1988年6月に署名された日米科学技術協力協定に基づき、日米科学技術協力合同高級委員会(閣僚級)や日米科学技術協力合同実務級委員会(実務者級)が設置されている。

 また、2025年10月のドナルド・トランプ大統領訪日の際には、日米両首脳は、AIをはじめとした重要技術など幅広い分野において、経済安全保障の取組を一層強化していくことで一致した。さらに、AI、量子、フュージョンエネルギー、宇宙等の戦略的な科学技術分野において両国間の協力を一層強化するため、小野田紀美内閣府特命担当大臣(科学技術政策)とマイケル・クラツィオス米国大統領府科学技術政策局長が「日米間の技術繁栄ディールについての協力に関する覚書」に署名した。

 加えて、2026年1月には、文部科学省が米国エネルギー省とAI・ハイパフォーマンスコンピューティング分野での協力強化に向けた「協力のための意向表明」に署名した。米国国家的取組であるジェネシス・ミッションとの連携を視野に、科学分野におけるAIの利活用(AI for Science)や量子技術、フュージョンエネルギー等の多様な分野における研究開発、人材育成、研究基盤の強化等の協力を更に推進していくこととしている。

 これらの動きに加えて、個別分野での協力として、ASPIREにおいて日米共同公募を実施し、2024年度から「バイオ」分野で研究を開始した。SICORPにおいても2024年度から米国と「人間中心のデータを活用した災害レジリエンス研究」の分野で研究を実施している。

 EUとの間では、2025年5月に城内実内閣府特命担当大臣(科学技術政策)(当時)とヘンナ・ヴィルックネン欧州委員会執行副委員長との間で、「日EU間の量子科学技術に関する協力趣意書」への署名を行った。この協力趣意書は、基礎研究のみならず応用研究や産業化に至るまで、広域で強化し、人材交流、共同研究、情報共有などを加速することを目的としている。

 また、2025年12月に我が国と欧州委員会との間で、ホライズン・ヨーロッパへの我が国の準参加に関する協定について実質合意に至った。

 その他の欧州諸国との間でも、科学技術協力が進められている。2025年4月にはスイスと、5月にはドイツと、2026年2月にはルーマニア、スロベニアとの間で科学技術協力合同委員会を開催し、それぞれの国との間における科学技術協力の更なる促進について議論が行われた。

 また、25年は量子力学のはじまりから100年を記念した国際量子科学年として、デンマーク(1月)、英国(5月)、スイス(10月)とそれぞれ量子科学技術に関する協力覚書へ署名した。そのほか、ドイツとはより幅広い領域で「日独間の科学技術・イノベーションに関する協力趣意書」への署名を行った(6月)。

 ASPIREでは、科学技術振興機構が英国と「バイオ」、「量子」、「AI・情報」の各分野、ドイツと「量子技術」分野で共同研究を実施している。また、オランダとは「半導体・量子」分野で公募を行い、研究実施に向け審査を行っている。さらに、日本医療研究開発機構においては、「健康・医療」の分野で2024年度から英国、2025年度からフランス、オーストラリア、スイスとの共同研究を開始している。加えて2026年度よりカナダとの共同研究を開始する予定である。

 SICORPでは、科学技術振興機構が、ドイツと「水素技術」、フランスと「エッジAI」分野において、共同研究を実施している。また、多国間協力として、EUの研究・技術開発フレームワーク・プログラム(FP7)における国際協力活動プロジェクト「CONCERT-Japan」の後継として2015年に設立された「EIG CONCERT-Japan(※207)」を主導し、欧州諸国との共同研究を実施している。また、革新的情報通信技術(Beyond 5G(6G))基金事業の「要素技術・シーズ創出型プログラム」において、2025年4月からEUとの間で、AIにより運用や制御を自律的に行う無線ネットワークに関する共同研究を開始し、同年6月からドイツとの間で、オール光ネットワークのデジタルツイン技術に関する共同研究を開始している。

イ 中国、韓国との協力

 日中韓3か国の枠組みでは、文部科学省科学技術・学術政策研究所と中韓の科学技術政策研究機関が協力して、2025年11月に第20回日中韓科学技術政策セミナーを開催した。

 韓国との間では、2025年11月に第14回日韓科学技術協力委員会を開催し、SICORPでは、韓国と「物理世界におけるAI技術」の分野で研究を実施している。

ウ ASEAN諸国、インドとの協力

 アジアには、環境・エネルギー、食料、水、防災、感染症など、問題解決に当たって我が国の科学技術を生かせる領域が多く、このようなアジア共通の問題の解決に積極的な役割を果たし、この地域における相互信頼、相互利益の関係を構築していく必要がある。

 文部科学省は、科学技術振興機構と協力して、2012年6月に、研究開発力を強化するとともに、アジア諸国が共通して抱える課題の解決を目指して多国間の共同研究を行う「e-ASIA共同研究プログラム」を発足させた。同プログラムは、ASEAN諸国を含むアジア太平洋諸国等の機関が参加し、「材料(ナノテクノロジー)」、「農業(食料)」、「代替エネルギー」、「ヘルスリサーチ(感染症、がん)」、「防災」、「環境(気候変動、海洋科学)」、「イノベーションのための先端融合」の7分野を対象にしている。なお、ヘルスリサーチ分野については、2015年4月から日本医療研究開発機構において支援している。

 また、NEXUSを通じた科学技術協力も進めている。タイ、マレーシアと「グリーンテクノロジー」、シンガポールと「AI」、フィリピンと「水の安全保障」、インドネシアと「バイオものづくり」、そしてベトナムと「半導体」の分野で、それぞれ国際共同研究の実施に向けて事業が進められているほか、ASEAN10か国を対象とした若手人材交流・育成の取組も実施している。

 加えて、SICORP「国際共同研究拠点」として、2022年よりインド(ICT分野)において支援のフェーズⅡを実施している。イノベーションの創出、我が国の科学技術力の向上、相手国・地域との研究協力基盤の強化を目的として、我が国の「顔の見える」持続的な共同研究・協力を推進するとともにネットワークの形成や若手研究者の育成を図っている。

 このほか、インドとの関係として、2025年度は日印科学技術協力協定締結40周年にあたり、「日印科学技術交流年」と位置付けられている。2025年6月に第11回日印科学技術協力合同委員会がデリーにて開催された。同年8月にはモディ首相が訪日し、首脳会談において科学技術協力の重要性が確認され、日印のAI協力や人材交流に関するイニシアティブの立ち上げが発表された。

 科学技術振興機構は、「日印科学技術交流年」の取組の一環として、2025年11月にインド工科大学ハイデラバード校において、日印両国の大学の学長等200名以上が参加した「第4回日印大学等フォーラム」を開催した。

エ その他の国との協力

 その他の国との間でも、情報交換、研究者の交流、共同研究の実施等の科学技術協力が進められている。

 SICORPでは、2024年から、新たにニュージーランドと「防災」の分野で連携を開始し、2025年4月より共同研究を実施している。また、オーストラリアとの間では、「認知症の予防・診断・治療法の開発研究」を実施、カナダとの間では「Well Beingな高齢化のためのAI技術についての研究」を実施している。さらに、南アフリカとの間では、SICORPにおいて、ゲノム情報を基礎としたがん・感染症研究を開始した。アジア、アフリカや中南米等の開発途上国との科学技術協力については、これらの国々のニーズを踏まえ、地球規模課題の解決と将来的な社会実装に向けた国際共同研究を推進するため、文部科学省、科学技術振興機構及び日本医療研究開発機構並びに外務省及び国際協力機構が連携し、SATREPSを実施している。2008~2025年度に、「環境・エネルギー」、「生物資源」、「防災」、「感染症」の各分野において、62か国で214件(地域別ではアジア116件、アフリカ52件、中南米30件等)を採択している。

 文部科学省は、我が国のSATREPSに参加する大学に留学を希望する者を国費外国人留学生として採用する、国際共同研究と留学生制度を組み合わせた取組を実施している。これにより、国際共同研究に参画する相手国の若手研究者等が、我が国で学位を取得することが可能になるなど、人材育成にも寄与する協力を進めている。また、我が国と南アフリカを核として3か国以上の日・アフリカ多国間共同研究を行うプログラム「AJ-CORE(※208)」では、2025年までに、「環境科学」分野において18件を採択している。

 このほか、2025年には、日本医療研究開発機構において、アフリカ諸国が発展する際の大きな阻害要因としてその対策が急務となっている、アフリカにおける顧みられない熱帯病(NTDs(※209))対策のための国際共同研究プログラム1件を実施している。2025年8月には、第9回アフリカ開発会議「TICAD 9(※210)」が横浜で開催され、科学技術振興機構主催のさくらサイエンスプログラムにより来日中のアフリカ6か国の高校生も参加した「日本とアフリカの高校生による科学技術ワークショップ」や日本医療研究開発機構におけるアフリカの取組を紹介するセミナーを実施した。

 また、科学技術振興機構は、TICAD 9を契機として、今後の日アフリカ間の機関間連携及び研究協力の促進を目的に、我が国との協力の端緒を有するアフリカ各地域を代表する大学関係者を招へいした「日本アフリカ大学交流会議」を開催した。

 中南米においては、2025年12月にメキシコにおいて開催された第3回STSフォーラム中南米カリブ地域ハイレベル会合に小谷外務大臣次席科学技術顧問が参加した。また、小谷次席顧問は、メキシコ訪問の機会を捉え学術関係者や科学・人文・技術・イノベーション省関係者と両国の科学技術分野における関係深化等につき意見交換を実施した。

 また、ブラジルとの間では、2025年10月に東京で第6回日・ブラジル科学技術協力合同委員会が開催された。同委員会では、持続可能な開発及び環境・気候変動対策における二国間協力、社会課題解決のためのAI、デジタル化、医療・ヘルスケア等、多岐にわたる分野における両国の科学技術協力の現状と今後の方向性について活発な議論が行われた。

 加えて、ブラジルとの間ではSICORPの「バイオテクノロジー/バイオエネルギー」分野において3件の共同研究を実施している。

 チリとの間では、2025年12月に第1回日・チリ科学技術協力合同委員会が開催された。同委員会では、両国の科学技術・イノベーション政策について紹介するとともに、天文学、GX(グリーントランスフォーメーション)、AI、量子技術、防災等、多岐にわたる分野における両国の科学技術協力の現状と今後の方向性について活発な議論が行われた。

(6)研究活動の国際化・オープン化に伴う研究の健全性・公正性(研究インテグリティ)の自律的な確保

 研究活動の国際化、オープン化に伴う新たなリスクへ適切に対応し、必要な国際共同研究を進めていくために、2021年4月に統合イノベーション戦略推進会議において「研究活動の国際化、オープン化に伴う新たなリスクに対する研究インテグリティの確保に係る対応方針について」(以下「対応方針」という。)が決定された。本対応方針に基づき、研究インテグリティの確保に関する大学・研究機関等における取組状況の継続的な調査や、意見交換会・セミナーの開催による取組事例の共有や横展開を推進している。

 また、「国立研究開発法人の機能強化に向けた取組について」(2024年3月29日関係府省申合せ)において、国立研究開発法人が他の法人とも連携・協力しながら、柔軟な人事・給与制度の導入や研修等の人材育成機会の確保に取り組むとともに、第三者機関や外部専門家等による客観的レビュー、適切なフォローアップ等を含む研究セキュリティ・インテグリティの一層の強化を図り、研究成果の社会実装に取り組んでいくこととしている。

 さらに、2025年4月に設置された「研究セキュリティと研究インテグリティの確保に関する有識者会議」において、オープンで自由な研究環境を確保しつつ、国際共同研究を進めていくため、諸外国の先進的な取組と同等の研究セキュリティの確保に関する取組を検討し、2025年12月に「研究セキュリティの確保に関する取組のための手順書」を策定・公表した。

2.研究の公正性の確保

 研究者が社会の多様なステークホルダーとの信頼関係を構築するためには、研究の公正性の確保が前提であり、研究不正行為に対する不断の対応が科学技術・イノベーションへの社会的な信頼や負託(ふたく)に応え、その推進力を向上させるものであることを、研究者及び大学等の研究機関は十分に認識する必要がある。

 公正な研究活動の推進については、文部科学省では、「研究活動における不正行為への対応等に関するガイドライン」(2014年8月26日文部科学大臣決定)に基づき、研究機関における体制整備等の取組の徹底を図るとともに、日本学術振興会、科学技術振興機構及び日本医療研究開発機構と連携し、研究機関による研究倫理教育の実施等を支援するなどの取組を行っている。

 研究費の不正使用の防止については、例えば文部科学省では、「研究機関における公的研究費の管理・監査のガイドライン(実施基準)」(2007年2月15日文部科学大臣決定。以下「ガイドライン」という。)に基づき、研究機関における公的研究費の適正な管理を促すとともに、研究機関の取組を支援するための指導・助言を行っている。さらに、2021年2月にガイドラインを改正し、研究費不正防止対策の強化を図っている。経済産業省では、「研究活動の不正行為への対応に関する指針」(2015年1月15日改正)及び「公的研究費の不正な使用等の対応に関する指針」(2015年1月15日改正)により対応を行うなど、関係府省においてもそれぞれの指針等に基づき対応を行っている。

 また、不正行為等に関与した者等の情報を関係府省で共有し、「競争的研究費の適正な執行に関する指針」(2021年12月17日改正競争的研究費に関する関係府省連絡会申合せ)に基づき、関係府省全ての競争的研究費への応募資格制限等を行っている。

コラム2-17 国際連携による地球規模課題解決への取り組み
~海洋マイクロプラスチックごみの発生経路や
海洋環境への影響を解明せよ!~

 東南アジア地域は海洋プラスチック汚染のホットスポットと考えられていますが、その発生経路や生態系・人間活動への影響には未解明の点が多く、削減に向けた科学的根拠が十分ではありませんでした。
 そこで、磯辺篤彦・九州大学応用力学研究所大気海洋環境研究センター教授らは、地球規模課題対応国際科学技術協力プログラム(SATREPS)の枠組みにより、我が国とタイの国際共同研究を開始し、九州大学の研究拠点である海洋プラスチック研究センター(COPS)をチュラロンコン大学内に設置しました。ここでは、陸域から海域に至るプラスチックごみの移動経路や発生量の実態解明を進め、将来的なマイクロプラスチック排出量の予測モデル構築を目指しています。
 また、研究成果の一例として、世界で初めて造礁サンゴの骨格内部から微細マイクロプラスチック片の検出に成功し、サンゴ死後も千年規模で残存・蓄積する可能性が示されるなど、海洋生態系への深刻な影響も明らかになりつつあります。
 さらに本プロジェクトでは、研究と並行して海洋プラスチックの監視体制の構築も進めています。現在、タイ天然資源環境省の海洋・海岸資源局(DMCR)内に「海洋プラスチック監視センター(仮称)」を設置する案が検討されており、設立後はCOPSが手法の標準化や高度化など科学的支援を継続し、DMCRが継続的な観測データを提供する形で連携を強化していきます。両者の協力は政策提言にも直結する基盤であり、既に共同航海調査や職員研修も進めています。COPSと監視センターを柱として、プロジェクトのレガシーとなる「Center of Excellence」の形成を目指しています。

研究課題名:東南アジア海域における海洋プラスチック汚染研究の拠点形成
研究代表者:磯辺 篤彦(九州大学 応用力学研究所 大気海洋環境研究センター 教授)
相手国側研究代表者:ヴォラノップ ヴィヤカーン(チュラロンコン大学 水産資源研究所長 教授)
研究成果例1:世界で初めて造礁サンゴの骨格から微細マイクロプラスチック片を検出
(https://www.kyushu-u.ac.jp/ja/researches/view/1153)
研究成果例2:東京からバンコクまでの微細なマイクロプラスチック濃度分布を解明
(https://www.kaiyodai.ac.jp/upload-file/aae39822c5040c329a45d1b2fd3d475f654fdb97.pdf)

第2節 知のフロンティアを開拓し価値創造の源泉となる研究力の強化

 研究者の内在的な動機に基づく研究が、人類の知識の領域を開拓し、その積み重ねが人類の繁栄を支えてきた。人材の育成や研究インフラの整備、多様な研究に挑戦できる文化を実現し、「知」を育む研究環境を整備するために行っている政府の施策を報告する。

1 多様で卓越した研究を生み出す環境の再構築

 知のフロンティアを開拓する多様で卓越した研究成果を生み出すため、研究者が一人ひとりに内在する多様性に富む問題意識に基づき、その能力をいかんなく発揮し、課題解決へのあくなき挑戦を続けられる環境の実現を目指している。

 また、文部科学省では2025年9月に我が国の「科学の再興」に向けた有識者会議を設置し、検討を行い、同年11月に報告書を取りまとめた。同報告書においては、我が国の科学を再興し、科学を基盤として我が国の将来を切り拓くため、新たな「知」を豊富に生み出し続ける状態を実現し、我が国の基礎研究・学術研究の国際的な優位性を取り戻すため、第7期基本計画期間中に迅速かつ集中的に取り組む事項を整理しており、我が国全体の研究活動の行動変革や世界をリードする研究大学群等の実現に向けた変革、基盤的経費や基礎研究をはじめ文部科学省をはじめとする様々な府省庁・民間からの大学・国立研究開発法人等への投資の抜本的拡充等に取り組むこと等について提言がされている。

❶ 博士後期課程学生の処遇向上とキャリアパスの拡大

 科学技術・イノベーション政策の推進の中核的基盤は、研究者や技術者、研究開発マネジメント人材、博士課程学生をはじめとする多様な「科学技術人材」(※211)である。多くの政策・施策が密接に関わる幅広い取組を一体的に推進することが重要であるとの認識の下、多様な科学技術人材の育成・活躍促進や、各教育段階における人材の育成、制度・システム改革の推進に取り組んでいる(※212)。

 大学院の博士後期課程は、研究者をはじめとする科学技術人材の輩出源である。文部科学省では、優秀で志のある博士後期課程学生が研究に専念するための経済的支援及び、博士人材が産業界等を含め幅広く活躍するためのキャリアパス整備を一体として行う実力と意欲のある大学を支援する「次世代研究者挑戦的研究プログラム(SPRING(※213))」や、緊急性の高い国家戦略分野として設定した次世代AI分野(AI分野及びAI分野における新興・融合領域)の博士後期課程学生の育成等に取り組む大学を支援する「国家戦略分野の若手研究者及び博士後期課程学生の育成事業(BOOST(※214))次世代AI人材育成プログラム」に取り組んでいる。

 また、日本学術振興会は、我が国の学術研究の将来を担う優秀な博士後期課程の学生に対して研究奨励金を支給する「特別研究員(DC(※215))事業」を実施している。起業を志す研究者の増加や、大学等発スタートアップの重要性を鑑み、特別研究員の研究課題に関連する事業内容での起業を認める制度改革や、2026年度の新規採用者の研究奨励金の単価を引き上げる等、処遇改善や研究環境の更なる改善に向けて、取組の充実を図っている。

 日本学生支援機構は、意欲と能力があるにもかかわらず、経済的な理由により進学等が困難な学生に対する奨学金事業を実施しており、大学院で無利子奨学金の貸与を受けた学生のうち、在学中に特に優れた業績を上げた学生の奨学金について返還免除を行っている。さらに、2018年度入学者より、博士課程の大学院業績優秀者免除制度の拡充を行い、博士後期課程学生の経済的負担を軽減することによって、進学を促進している。

 これらの事業などにより、博士後期課程学生の経済的支援の充実を進めている。また、博士課程学生の処遇向上に向けて、第6期基本計画や「ポストドクター等の雇用・育成に関するガイドライン」(2020年12月3日文部科学省科学技術・学術審議会 人材委員会)を踏まえ、競争的研究費制度において、博士課程学生の積極的なリサーチアシスタント(RA)等としての活用と、それに伴うRA経費等の適正な支出を促進している。

 文部科学省では、2021年度より博士後期課程学生の多様なキャリアパスの実現に向け、研究力に裏打ちされた実践力を養成する長期・有給のインターンシップをジョブ型研究インターンシップ(先行的・試行的取組)として開始し、大学と企業の連携による取組の推進を図っている。

 また、国家公務員の博士課程修了者の活躍促進について、内閣官房内閣人事局、内閣府科学技術・イノベーション推進事務局、文部科学省の連名で、「各府省等における博士号取得者の活用に関する検討に向けた調査結果」及び「各府省等における博士号取得者及び修士号・専門職学位取得者の採用人数調査結果」を2026年3月に公表した。これらを通じて国家公務員における博士課程修了者の更なる活用方策を検討する。

 また、「博士人材活躍プラン~博士をとろう~」(2024年3月26日文部科学省)を踏まえ、文部科学省と経済産業省では、「博士人材の民間企業における活躍促進に向けた検討会」を開催し、2025年3月に企業や大学向けの「博士人材の民間企業における活躍促進に向けたガイドブック」と「企業で活躍する博士人材ロールモデル事例集」を取りまとめた。

 文部科学省科学技術・学術政策研究所では、博士人材の活躍状況を把握する情報基盤である博士人材データベース(JGRAD(※216))を運用した。

❷ 大学等において若手研究者が活躍できる環境の整備

1.若手研究者の育成・活躍促進

 政府は、「統合イノベーション戦略2019」(令和元年6月21日閣議決定)に基づき、研究機関において適切に執行される体制の構築を前提として、研究活動に従事するエフォートに応じ、研究代表者本人の希望により、競争的研究費の直接経費から研究代表者(Pl(※217))への人件費を支出可能とした。これにより、研究機関において、確保した財源を、研究に集中できる環境整備等による研究代表者の研究パフォーマンス向上、若手研究者をはじめとした多様かつ優秀な人材の確保等を通じた機関の研究力強化に資する取組に活用することができ、研究者及び研究機関双方の研究力の向上が期待される。

 文部科学省は、雇用財源に外部資金(競争的研究費、共同研究費、寄附金等)を活用することで捻出された学内財源を若手ポスト増設や研究支援体制の整備などに充てる取組や、シニア研究者に対する年俸制やクロスアポイントメント制度の活用、外部資金による任期付き雇用への転換の促進などを通じて、組織全体で若手研究者のポストの確保と、若手の育成・活躍促進を後押しし、持続可能な研究体制を構築する取組の優良事例を盛り込んだ、「国立大学法人等人事給与マネジメント改革に関するガイドライン(追補版)」を作成し、2021年12月21日に公表した。

 また、日本学術振興会において、「特別研究員事業」によるポストドクターへの支援を通じ、優れた若手研究者の養成・確保に努めている。特別研究員-PD、RPD(※218)を受入研究機関で雇用可能にする事業や海外渡航に係る家族の往復航空賃の支援などの実施により、若手研究者の処遇改善と研究に専念できる環境の更なる向上に向けて取組を進めている。

 我が国の研究生産性の向上を図るため国内外の先進事例の知見を取り入れ、世界トップクラスの研究者育成に向けたプログラムを開発し、トップジャーナルへの論文掲載や海外資金の獲得等に向けた支援体制など、研究室単位ではなく組織的な研究者育成システムの構築を目指す「世界で活躍できる研究者戦略育成事業」を2019年度から実施し、2025年度においては5機関を支援した。

 また、優れた若手研究者が産学官の研究機関において、安定かつ自立した研究環境を得て自主的・自立的な研究に専念できるように研究者及び研究機関に対して支援を行う「卓越研究員事業」を2016年度から実施している。本事業を通じて創出されたポストにおいて、少なくとも496名の若手研究者が安定かつ自立した研究環境を確保した。

 2025年1月には、「若手研究者へのメッセージ~雇用環境の改善に向けて文部科学省・大学に期待する取組~」(2025年1月科学技術・学術審議会人材委員会 研究者・教員等の流動性・安定性に関するワーキング・グループ)を取りまとめ、同報告書に基づき、研究者・教員等の流動性を高めつつ安定的な雇用を確保し、多様なキャリアパス構築や活躍促進を図っている科学技術振興機構は、産学官で連携し、研究者や研究支援人材を対象とした求人・求職情報など、当該人材のキャリア開発に資する情報の提供及び活用支援を行うため、「研究人材のキャリア支援ポータルサイト(JREC-IN Portal(※219))」を運営している。

 産学で活躍できる優れた研究者・技術者を研究開発を通して育成し、産学の人材流動性を高めるとともに、大学における人事給与マネジメントを改革することを目的に、2025年度補正予算を措置し「産業・科学革新人材事業」を新たに開始した。

2.研究開発マネジメント人材の育成・活躍促進

 研究者の研究環境の整備に向けては、研究者に伴走し外部資金獲得や組織運営業務等を行う、URA(※220)等の研究開発マネジメント人材が重要であり、こうした人材の育成・確保を図るため、「研究開発マネジメント人材の人事制度等に関するガイドライン」(2025年6月文部科学省 科学技術・学術審議会 人材委員会)を取りまとめた。また、2025年度から「研究開発マネジメント人材に関する体制整備事業」により、我が国全体の研究開発マネジメント人材の量的不足の解消及び質的向上を図るとともに、適切な処遇・キャリアパスの確立を推進するための支援を行っている。

3.技術職員の育成・活躍促進

 大学等の研究者と大学等において研究活動を支える高度専門人材である、技術職員については、「技術職員の人事制度等に関するガイドライン」(2026年3月文部科学省 科学技術・学術審議会 人材委員会)を策定した。

4.博士人材情報基盤の継続

 上述のとおり、文部科学省科学技術・学術政策研究所では、博士人材の活躍状況を把握する情報基盤であるJGRADを運用した。

コラム2-18 博士インタビュー
~産学官で挑戦する博士人材~ 「産」


○山並 千佳氏
富士通株式会社
富士通研究所

Q. 博士号を取得された研究テーマと、魅力を教えてください。

 学部時代は法学を専攻していましたが、学際的な学びを通じて経済学に触れ、人の行動を計量的に分析する点に魅力を感じたことから「もっと学びたい」と大学院への進学を決めました。博士課程では、働く意欲や生産性がどのような条件で高まるのかを明らかにするため、労働や健康を切り口に、行政や民間企業と連携して研究に取り組みました。また、副専攻プログラムを活用し、理学・工学など異分野の博士課程学生とチームを組んで、企業・研究所と連携した実課題解決型のプロジェクトに参画し、実務にインパクトをもたらす研究の意義を実感しました。

Q. 博士課程の後、活躍の場としてアカデミアではなく、企業への就職という選択を取られたのはなぜだったのでしょうか?

 これらの経験から、研究成果と現場の実践知をより効果的に結びつける橋渡しを担うことで自身の専門性を社会に還元できるのでは、と考えるようになりました。また、博士課程を、新卒扱いではなく、中途採用と同等のキャリアとして評価してくれる企業に出会えたことも決め手となり、民間企業に就職しました。

 その後、現職に移り、社会課題の解決に向けて「人々の移動や行動を高精度に予測し最適解を探索する」研究開発に、経済学含め社会科学の観点から携わっています。博士課程での分野横断のプロジェクト経験が、異分野のメンバーと議論しながら成果につなげる現在の仕事にも活きていると感じています。

Q. 最後に、博士課程に進学を検討されている方に一言、応援メッセージをお願いします。

 AI活用が加速する今だからこそ、自ら問いを立てて考え抜く力がますます重要であると考えています。博士課程は、試行錯誤を繰り返し、本質的な問いを見極め、「なぜ」を深掘りして課題設定する力を磨く貴重な機会です。培った専門性と思考力は必ず強みになります。修士課程からのストレートな進路に限らず、就職を経て博士課程に進む道もあります。現場で得た問いは、机上では気づきにくいおもしろい研究テーマの入り口になりえます。キャリアの選択肢を広げる意味でも、ぜひ一歩踏み出してみてはいかがでしょうか。


○高本 聡氏
株式会社PreferredNetworks
マテリアルズ&ドラッグディスカバリー事業本部 リサーチ部 部長

Q. 博士号を取得しようと思ったきっかけを教えてください。

 修士時代に、研究を通じて企業の研究者と関わる中で、博士号取得者が研究を

 リードしている姿を目の当たりにし、自然と博士課程への進学を選択していました。

 学部時代には、機械学習を専攻し、数理的な面に着目していましたが、修士課程以降は材料科学の観点からシミュレーションに関わる研究をしていて、それらは現在の研究のバックグラウンドとなっています。博士号取得後には、MITにポスドクとして留学し、人工知能を使ったシミュレーションの着想を得て、現在の研究に至っています。

Q. 現在研究されている内容(機械学習と物質科学の融合による汎用原子シミュレーション技術)を簡単に教えていただけますか。

 現職では、原子レベルでの物質の性質や動きを再現する物理シミュレーションの研究をしています。昔は実験しなければわからなかったことを、人工知能の機械学習を用いたシミュレーションを活用し仮想空間で動きを再現することで、計算コストを縮小できるこの研究技術は、材料開発を加速する技術として期待されています。

Q. アカデミアで研究をされていたところから、企業に移ったという御経歴ですが、そのきっかけは何だったのでしょうか

 MITで得た着想を膨らませるため、日本の大学に助教として戻り研究を続けていましたが、研究内容を世に実装させる時機に、自身も企業に籍を置いてその実装に携わり、よりスピーディに研究を発展させたいと思い、以前から論文等で見知っていた現職への転職を決めました。大学も社会のための研究ではありますが、企業にいるとより強く、社会実装を見据えた研究を意識させられ、そのスピードの速さは、大学とは異なるところだと感じています。

Q. 最後に、博士課程に進学を検討されている方に一言、応援メッセージをお願いします。

 自分の力で世の中を変えていくというのは楽しいことです。そのやり方は様々ですが、研究の角度からだと、自分の知識が様々な知識に波及して、世界が前進するところに接することができます。博士課程はそういった研究の最前線に触れる好機だと考えています。ただし、博士課程は飽くまで通過点なので、研究を通して、今後どのように進みたいかのイメージを持つと、より実り多いものになると思います。

❸ 女性研究者の活躍促進

 女性研究者がその能力を発揮し、活躍できる環境を整えることは、我が国の科学技術・イノベーションの活発化や男女共同参画の推進に寄与するものである。我が国では、女性研究者の登用や活躍支援を進めることにより、女性研究者の割合は年々増加傾向にあるものの、2025年3月31日現在で19.0%であり、先進諸国と比較すると依然として低い水準にある(第2-2-6図)。第6期基本計画では、大学の研究者の採用に占める女性の割合に関する成果目標として、2025年までに理学系20%、工学系15%、農学系30%、医学・歯学・薬学系合わせて30%、人文科学系45%、社会科学系30%を目指すとしている。

 文部科学省は、出産・育児等のライフイベントと研究との両立や女性研究者の研究力向上を通じたリーダーの育成を一体的に推進するダイバーシティの実現に向けた大学等の取組を支援するため、「ダイバーシティ研究環境実現イニシアティブ」を実施しており、2024年度までに延べ151機関を支援している。

 日本学術振興会は、出産・育児等により研究を中断した研究者に対して、研究奨励金を支給し、研究復帰を支援する「特別研究員(RPD)事業」や、海外の研究機関において長期間研究に専念できるよう支援する「海外特別研究員(RRA(※221))事業」を実施している。

 科学技術振興機構は、科学技術分野で活躍する女性研究者・技術者、女子学生などと女子中高生の交流機会の提供や実験教室、出前授業の実施などを通して女子中高生の理工系分野に対する興味・関心を喚起し、理系進路選択を支援する「女子中高生の理系進路選択支援プログラム」を実施している。

 内閣府は、ウェブサイト「理工チャレンジ(リコチャレ)(※222)」において、理工系分野での女性の活躍を推進している大学や企業等の取組やイベント等の情報を提供している。また、2025年度オンラインシンポジウムとして動画公開セミナーを同ウェブサイト上に掲載し、全国の女子中高生等とその保護者・教員へ向けて、理工系で活躍する多様なロールモデルからのメッセージを配信した。さらに、学校や地方公共団体が実施するイベント等に理工系女子応援大使(STEM(※223) Girls Ambassadors)の派遣を行った。

 産業技術総合研究所は、全国21の大学や研究機関から成る組織「ダイバーシティ・サポート・オフィス」の運営に携わり、参加機関と連携してダイバーシティ推進に関する情報共有や意見交換を行っている。また、大学・企業との連携・協働で女性活躍推進法に基づく一般事業主行動計画を実践し、より広いネットワークの下、相互に研究者等のワーク・ライフ・バランスの実現やキャリア形成を支援し、意識啓発を進めるなどダイバーシティ・エクイティ&インクルージョン(DEI)推進に努めている。

❹ 基礎研究・学術研究の振興

1.科学研究費助成事業の改善・強化

 文部科学省及び日本学術振興会は科学研究費助成事業(科研費)を実施している。科研費は、全ての分野にわたり、あらゆる学術研究を対象とする競争的研究費であり、研究の多様性を確保しつつ独創的な研究活動を支援することにより、研究活動の裾野の拡大を図り、持続的な研究の発展と重厚な知的蓄積の形成に資する役割を果たしている。2025年度は、主な研究種目全体で約9万5,000件の新たな応募のうち、ピアレビュー(研究者コミュニティから選ばれた研究者による審査)によって約2万6,000件を採択し、数年間継続する研究課題を含めて約8万件を支援している(2025年度当初予算額約2,379億円、2025年度補正予算額約300億円)。

 科研費は、これまでも制度を不断に見直し、研究費の柔軟な使用を可能とする基金化の導入をはじめとする抜本的な改善を進めている。2025年度においては、若手研究者を中心に国際的な研究の採択件数を増加したほか、「学術変革領域研究(B)」及び「基盤研究(S)」の基金化に向けて取り組んでいる。

 今後も、更なる学術研究の振興に向け、科研費制度の不断の見直しを行い、支援の充実を図っていく。

コラム2-19 博士インタビュー
~産学官で挑戦する博士人材~ 「学」


○佐々田 槙子氏
東京大学大学院
数理科学

Q. 博士課程に進まれた理由とその後現職に就かれた理由を教えていただけますか。

  小さい頃から算数が大好きで、式や論理と使うと一見複雑なこともすっきり説明できるというところに魅力を感じていました。大学3年生の時に受けた授業で確率論に出会い、衝撃を受け、様々な事象について確率論を使って解き明かしていく研究に没頭し、もっと研究がしたいという思いで博士課程への進学を決めました。そして、博士課程での研究活動を経て、ますます数学の世界に魅了されて現在の大学教授という職業に至っています。

Q. 現在研究をされているテーマ(非平衡統計力学の基礎づけとなる数学理論)について簡単に教えていただけますか。

 現在は、様々な事象について、ひとつひとつの分子の動き(ミクロ)を捉えて、全体(マクロ)の普遍性や法則を見つける統計物理学を、確率論を使って数学的に説明する研究を行っています。PCと黒板が必須アイテムで、研究の着想を得るために、たくさんの文献を読み、テーマや方法についてのアイディアを得て、共同研究者や学生たちと黒板に数式を書きながら議論し、研究を発展させています。思いついたアイディアを書けるものさえあれば、いつでもどこでも研究できることも、この分野の魅力の一つと感じています。

Q. 数学という分野の研究の魅力を教えてください。

 数学はとても興味深い学問です。例えば、一つの論文から着想を得て、研究を発展させていくうちに、当初の目的とは異なる他分野に応用できることがあります。統計物理に由来する熱や物質の拡散現象の理論が、SNSや感染症のような身近な事象にも当てはめて応用できるなど、驚きと面白さに溢れていて、その魅力を広く伝えたいと考えています。

Q. 最後に、博士課程に進学を検討されている方に一言、応援メッセージをお願いします。

 博士課程への進学は、やはり研究に没頭できる点がとても魅力的です。研究の道に進むことは、ともすれば社会との接点を狭めてしまうのではないかと思われがちですが、私自身はむしろ博士課程に進んだからこそ海外に行く機会に恵まれ、視野が広がったと考えています。


○宮川 創氏
筑波大学人文社会系
西アジア文明研究センター 准教授

Q. 博士課程に進まれた理由と現在の研究テーマと出会われたきっかけは何だったのでしょうか。

 小さい頃から連珠の大会での海外遠征の経験を通じて、博物館を訪れる機会がたくさんあり、古い言語に興味を持っていました。高校の時には所属する音楽部で歌うラテン語の歌詞の翻訳をしたりしていて、もっと古代の言語を学びたい、と文学部への進学を決めました。学部生時代には、古代ギリシャ語を専攻していましたが、ギリシャがかつて支配していたこととその乾燥した地域性に由来して、エジプトからたくさんのテキスト資料が出土しており、資料の中にはギリシャ語と古代エジプト語の最終段階にあたるコプト語とのバイリンガルで書かれたものも多く、読み進めるうちにコプト語へ興味が移り、本格的に勉強したい、と修士課程、そして博士課程へと進みました。

Q. 現在研究をされているテーマ(最新テクノロジーを活用したエジプト学及びアジア・アフリカの言語の研究)について簡単に教えていただけますか。

 現在も、文字で書かれた期間が最長の世界記録を持つ古代エジプト語についてAIを使った研究をしています。古代エジプト語の最終段階のコプト語は一旦日常会話の言語としては遅くても17世紀に消滅しましたが、現在でもコプト正教会の典礼言語や文語として使用されています。19世紀後半からこのコプト語を日常会話の言語として復活させようとしている人たちがいますが、彼らを助けるような機械翻訳のツールや教育アプリ等も作っていて、ハイパフォーマンスコンピュータといわれるコンピュータを使用して言語解析の研究を進めています。

Q. 現在のキャリアに進まれた理由を教えていただけますか。

 大学教員という職業には、研究がしたい、という思いで突き進んでいたら辿り着いていました。研究を進めていくうちに、様々なポストからお声がかかるようになり、今に至るので、研究が今のキャリアの道を作ってくれたとも言えますね。

Q. 最後に、博士課程に進学を検討されている方に一言、応援メッセージをお願いします。

 博士号取得後のキャリアは、昔よりも選択肢が広がり、また、待遇もよくなってきていると感じています。博士課程という選択を早期に就職せず研究に没頭するだけのものと悲観的に捉えず、研究を進めるうちに道が開けることもあるので、「何とかなる」という心持ちを大切に進学してほしいと思います。

2.戦略的創造研究推進事業

 科学技術振興機構が実施している「戦略的創造研究推進事業(新技術シーズ創出)」及び日本医療研究開発機構が実施している「革新的先端研究開発支援事業」では、国が戦略的に定めた目標の下、大学等の研究者から提案を募り、組織・分野の枠を超えた時限的な研究体制を構築し、戦略的な基礎研究を推進するとともに、有望な成果について研究を加速・深化している。研究者の独創的・挑戦的なアイディアを喚起し、多様な分野の研究者による異分野融合研究を促進する。2026年度目標として、文部科学省では以下の六つを設定した。

(1)戦略的創造研究推進事業(新技術シーズ創出)

 ・基礎量子科学技術研究がドライブする量子未踏領域の開拓

 ・持続可能社会につなげる超寿命マテリアルの創出

 ・デジタル時空間拡張

 ・拡張五感と認知

 ・生体環境インタラクション~生物とエクスポソームの相互作用の解明~

(2)革新的先端研究開発支援事業

 ・核酸フロンティア~核酸科学の再定義と応用から創薬の未来を切り拓く~

3.創発的研究の推進

 科学技術振興機構では、自由で挑戦的・融合的な構想にリスクを恐れず挑戦し続ける独立前後の研究者に対し、最長10年間の安定した研究資金と研究に専念できる環境の確保を一体的に支援することで、破壊的イノベーションにつながるシーズの創出を目指す「創発的研究支援事業」を実施している。2025年度には、第6回新規課題公募を行い、2025年度補正予算により今後も公募を継続する等、更なる事業の充実を図っている。

4.大学・大学共同利用機関における共同利用・共同研究の推進

 我が国の学術研究の発展には、最先端の大型装置や貴重な資料・データ等を、個々の大学の枠を超えて全国の研究者が利用し、共同研究を行う「共同利用・共同研究体制」が大きく貢献しており、主に大学共同利用機関や、文部科学大臣の認定を受けた国公私立大学の共同利用・共同研究拠点(※224)によって担われている。

 2023年度からは、大学共同利用機関や共同利用・共同研究拠点等がハブとなり、異分野の研究を行う研究機関と連携した学際共同研究、組織・分野を超えた研究ネットワークの構築・強化・拡大を推進する「学際領域展開ハブ形成プログラム」を開始している。

 さらに、文部科学省では、最先端の大型研究装置等により人類未踏の研究課題に挑み世界の学術研究を先導し、また、国内外の優れた研究者を結集し、国際的な研究拠点を形成するとともに、国内外の研究機関に対して研究活動の共通基盤を提供する学術研究の大型プロジェクト(※225)を推進している。代表的な例として、陽子崩壊探索やニュートリノ研究を通じた新たな物理法則の発見や、宇宙の謎の解明を目指す「ハイパーカミオカンデ計画」(東京大学宇宙線研究所等)が進行中であるほか、2023年度からは、多くの生命現象や疾患に関与するものの全容が未解明である「糖鎖」について、ヒトの糖鎖情報を網羅的に解読して情報基盤を構築することにより、生命科学の革新・病気で苦しむことのない未来を目指す「ヒューマングライコームプロジェクト」(東海国立大学機構等)が開始している。

 また、情報・システム研究機構国立情報学研究所(NII(※226))の「学術研究プラットフォーム」は、最先端のネットワーク基盤「SINET」と研究データ基盤「NII RDC」を整備することにより、基幹的ネットワークとして大学等の学術研究や教育活動全般を支えるとともに、データ駆動型研究の実現に貢献している。

❺ 国際共同研究・国際頭脳循環の推進

1.国際研究ネットワークの充実

(1)我が国の研究者の国際流動の現状

 文部科学省が2026年度に公表した「国際研究交流の概況」によれば、我が国における研究者の短期派遣者数は調査開始以降増加傾向にあったが、2020年度に新型コロナウイルス感染症の発生(コロナ禍)によって著しく減少した。その後、派遣者数は再び増加に転じ、2024年度にはコロナ禍以前(2018年度)の7割弱にまで回復していると考えられる。中・長期派遣者数は2008年度以降、おおむね4,000から5,000人の水準で推移していたが、2020年度にコロナ禍によって大きく減少した。その後は増加に転じており、2024年度には4000人を超えるまでに回復している(第2-2-7図)

 我が国の大学や国立研究開発法人等の外国人研究者の短期受入者数は、2009年度まで増加傾向であったところ、東日本大震災等の影響により2011年度にかけて減少し、その後回復したが、2020年度にコロナ禍によって著しく減少した。その後は再び増加傾向が続いており、2024年度には2万8,000人を回復した。中・長期受入者数は、2000年度以降、おおむね1万2,000人から1万5,000人の水準で推移していた。2020年度にコロナ禍によって大きく減少したものの、2022年度以降は再び同程度の水準を維持している(第2-2-8図)

(2)研究者の国際交流を促進するための取組

 文部科学省は、世界規模で進む頭脳循環の流れの中において、我が国の研究者及び研究グループが国際的研究・人材ネットワークの中心に位置付けられ、また、それを維持していくことができるように、取組を進めている。

 また、内閣府では、2025年6月に、我が国が、研究者にとって世界で最も魅力的な国となることを目指した政策パッケージとして、「J-RISE Initiative(※227)」を取りまとめた。

 日本学術振興会は、国際舞台で活躍できる我が国の若手研究者の育成を図るため、若手研究者を海外に派遣する諸事業を実施している。優れた若手研究者が海外の特定の大学等研究機関において長期間研究に専念できるよう支援する「海外特別研究員事業」では、世界的な物価高騰等の影響を踏まえ、支給額を増額した。また、科研費のうち「国際先導研究」において、トップレベル研究者が率いる優秀な研究チームの下、若手(ポストドクター・博士課程学生)の参画を要件とし、国際共同研究を通じて、長期の海外派遣・交流や自立支援を行うことにより、世界で活躍できる優秀な若手研究者の育成を推進している。

 さらに、国際コミュニティの中核に位置する一流の大学・研究機関において挑戦的な研究に取り組みながら、著名な研究者等とのネットワーク形成に取り組む優れた若手研究者に対して研究奨励金を支給する「国際競争力強化研究員(特別研究員(CPD(※228)))事業」を2019年度より実施している。

 研究者の国際交流を促進するその他の取組として、優れた外国人研究者に対し、我が国の大学等において研究活動に従事する機会を提供するとともに、我が国の大学等の研究環境の国際化に資するため、「外国人研究者招へい事業」により外国人特別研究員等の受入れを実施しているほか、「二国間交流事業」や「研究拠点形成事業」等により我が国と諸外国の研究チームの持続的ネットワーク形成を支援している。

 また、アジア・太平洋・アフリカ地域の若手研究者の育成と相互のネットワーク形成のため「HOPEミーティング」を開催し、同地域から選抜された大学院生等とノーベル賞受賞者をはじめとする世界の著名研究者が交流する機会を提供している。

 加えて、より広い学問的視野を得るとともに、既存の学問領域にとらわれない自由な発想を更に発展させ、新しい学問領域の開拓に貢献できるような、次世代を担うリーダーの育成と世界をリードする人材を結ぶネットワーク形成を目的として、日本及び諸外国の新進気鋭の若手研究者を対象に、最先端の科学トピックについて分野横断的な議論を行う合宿形式の国際シンポジウム「先端科学(Frontiers of Science: FoS)シンポジウム」を開催している。

 科学技術振興機構は、海外の優秀な人材の獲得につなげるため、世界各国・各地域から青少年を短期で我が国に招へいする「国際青少年サイエンス交流事業(さくらサイエンスプログラム)」を2014年度から実施している。

 また、国際的な研究コミュニティへの我が国の研究者の参入促進、若手研究者の育成、国際的ネットワークの構築及び拡大を図る「先端国際共同研究推進事業/プログラム(ASPIRE(※229))」を日本医療研究開発機構と実施するとともに、ASEAN諸国のニーズ等を踏まえつつ、国際共同研究及び人材交流・育成の推進や拠点設立を通じて、持続可能な研究協力関係の強化を図る「日ASEAN科学技術・イノベーション協働連携事業(NEXUS(※230))」を実施することにより、国際頭脳循環を推進している。

 さらに、2022年度から毎年実施している我が国とインドの大学の学長等が交流する「日印大学等フォーラム」からの展開として、2025年度よりインドからの博士課程等の研究人材を対象とした年間招へい交流を促進する「インド若手科学頭脳循環プログラム(LOTUS Programme(※231))」を開始した。

2.国際的な研究助成プログラム

 ヒューマン・フロンティア・サイエンス・プログラム(HFSP(※232))は、1987年6月のヴェネチア・サミットにおいて我が国が提唱した国際的な研究助成プログラムで、生体の持つ複雑な機能の解明のための基礎的な国際共同研究などを推進し、また、その成果を広く人類全体の利益に供することを目的としている。2025年度時点で、日本、オーストラリア、カナダ、欧州委員会、フランス、ドイツ、インド、イスラエル、イタリア、韓国、ニュージーランド、ノルウェー、シンガポール、南アフリカ、スイス、英国、米国の計17か国・極が加盟しており、フランスのストラスブールに置かれた国際ヒューマン・フロンティア・サイエンス・プログラム機構(HFSPO、理事長:米田悦啓・一般財団法人阪大微生物病研究会理事長)により運営されている。我が国は本プログラム創設以来積極的な支援を行い、プログラム運営において重要な役割を担っている。

 本プログラムでは、国際共同研究チームへの研究費助成(研究グラント)、若手研究者が国外で研究を行うための旅費、滞在費等の助成(フェローシップ)及び受賞者会合の開催等が実施されている。国際的協力による、独創的・野心的・学際的な研究を支援する本プログラムでは、過去に研究グラントに採択された受賞者の中から、2018年にノーベル生理学・医学賞を受賞された本庶 佑(ほんじょ たすく)・京都大学特別教授をはじめ31名のノーベル賞受賞者を輩出するなど、世界的に高く評価されている。

コラム2-20 博士インタビュー
~産学官で挑戦する博士人材~ 「官」


○片山 彩 氏
文部科学省職員

Q. 博士課程に進まれた理由を教えていただけますか。

 スーパーサイエンスハイスクール(SSH)指定校の高校に進学し、研究の国際交流を含む多様な科学プログラムに参加しました。また、夏休みには大学や研究機関で高校生を対象に実施していたサイエンスキャンプ等に参加し、研究者と直接交流する機会を得ました。こうした経験を通じて研究の面白さに魅了されたことが、博士課程への進学につながりました。

Q. 博士号を取得された時の研究テーマを簡単に教えていただけますか。

 火山性土壌において植物がどのように生育して森林が形成されていくのかについて、雨や落ち葉由来の栄養に着目し、その仕組みを解明する研究に取り組みました。

Q. 博士課程の後に、活躍の場として、アカデミアではなく、国家公務員という選択を取られたきっかけは何だったのでしょうか。

 研究に没頭する一方で、研究職に限定せず、様々なキャリアを視野に入れていました。科学の世界に貢献したいという思いを持って就職セミナーに参加した際、文部科学省の業務について知り、自分の専門分野に限らず幅広い領域を対象としながら、科学の未来を切り拓く多様なアプローチに直接関与できる点に魅力を感じ、入省を決めました。

Q. 今の業務において、博士号を取るに当たって研究を続けた経験や知識などが活きていると感じる瞬間はいつでしょうか。

 現在の部署では、若手研究者向けの施策の検討も担当しています。「自分が参画する若手研究者だったらどう感じるか」と仮定しながら検討できるのは、これまでの研究経験があったからこそだと考えています。また、博士課程で、多角的なアプローチを検討し、新たに知識を吸収しながら研究に活用した経験は、現在の業務にも重なり、活かされていると感じています。

Q. 最後に、博士課程に進学を検討されている方に一言、応援メッセージをお願いします。

 博士課程進学後のキャリアは、研究者に限らず、幅広く開かれています。博士課程で培った力は必ず御自身のキャリアに生かすことができます。御興味のある方は、ぜひ博士課程への進学を御検討ください。


○高山 正行 氏
文部科学省職員

Q. 博士課程に進まれた理由を教えていただけますか。

 所属していたのが物理学科であったため、その性質上、修士課程へは自然と進学しましたが、「博士課程教育リーディングプログラム」に採択されたことにより、経済支援を受けながら研究できる環境が整ったことが決め手となり、博士課程へ進学しました。

Q. 博士課程の後に、活躍の場として、アカデミアではなく、国家公務員という選択を取られたきっかけは何だったのでしょうか

 博士課程では半導体素材の中での電子の性質について光を使って調べる研究をしていました。電子の複雑な振る舞いを解明することで、半導体をコントロール・応用できる幅が広がり、物理としての面白さだけでなく、これまで以上の活用法が見いだせる可能性に面白みを感じていました。
 一方で、思うように結果が出ず、試行錯誤する日々が続いたこともありました。研究費にも限りがある中で、実験のために必要な物品・環境整備にもコストがかかります。その時、研究支援は、試行錯誤を許容しつつ研究を続けられる基礎的な環境を維持することが重要だと考え、自分自身は研究者としてではなく、政策的に支援する立場として携わりたい、と文部科学省への入省を志すようになりました。

Q. 今の業務において、博士号を取るに当たって研究を続けた経験や知識などが活きていると感じる瞬間はいつでしょうか。

 現在は、産学官連携に関する業務を担当しています。政策の効果を最大化させるには、現場の感覚をもつ人間が政策立案やその実行に関わることが重要で、自身の経験が活かされていると感じています。併任しているNISTEPの研究官としても、博士人材や大学教員を対象とした研究を行っていますが、博士課程で身につけたシミュレーション等の手法・考え方も活用しています。

Q. 最後に、博士課程に進学を検討されている方に一言、応援メッセージをお願いします。

 博士課程では、研究のプロセス全てを自ら設計し試行錯誤する経験や資質が求められます。この経験で身につく力は社会の様々な場面で役立つトランスファラブルスキルであると考えていて、博士課程は、御自身の関心に沿った研究を軸に、経験を積むことのできるチャンスであると思っています。

3.国際共同研究の推進と世界トップレベルの研究拠点の形成

 我が国が世界の研究ネットワークの主要な一角に位置付けられ、世界の中で存在感を発揮していくためには、国際共同研究を戦略的に推進するとともに、国内に国際頭脳循環の中核となる研究拠点を形成することが重要である。

(1)諸外国との国際共同研究

ア ITER(イーター)計画等

 ITER(※233)計画は、フュージョンエネルギー(核融合エネルギー)の実現に向け、世界7極の国際協力により実施されており、南仏(サン・ポール・レ・デュランス)においてITERの建設作業が本格化している。我が国は、ITERの主要な機器の製作等を担当している。また、日欧協力によりITER計画を補完・支援し、原型炉に必要な技術基盤を確立するための先進的核融合研究開発である幅広いアプローチ(BA(※234))活動を青森県六ヶ所村及び茨城県那珂(なか)市で推進している。その一環として建設したJT-60SAに、2025年10月、米国プリンストン・プラズマ物理研究所及びゼネラル・アトミクス社が参画を開始した(第2章第1節 2 ❷参照)。また、フュージョンエネルギーの早期実現を目指し、BA活動の実績を踏まえ、フュージョンプラント等の構造材料の開発に必要となる中性子照射試験を実施するため、2025年5月に、「日本・文部科学省とスペイン・科学・イノベーション・大学省との間のDONES(核融合中性子源)計画の共同開発に関する協力覚書」を締結し、スペイン

 (グラナダ)で建設中の欧州のDONES計画に参画した。

イ 国際宇宙ステーション(ISS)

 我が国は、「きぼう」日本実験棟、宇宙ステーション補給機「こうのとり」(HTV(※235))及び新型宇宙ステーション補給機(HTV-X)の運用や、日本人宇宙飛行士のISS(※236)長期滞在等によりISS計画に参加している。2022年1月、米国航空宇宙局(NASA(※237))が米国としてISSの運用期間を2030年まで延長することを発表し、我が国も、同年11月、米国以外の参加極の中で最初に運用延長への参加を表明した(第2章第1節 3 ❺参照)。

ウ アルテミス計画

 我が国は、2019年10月、宇宙開発戦略本部において、国際宇宙探査計画「アルテミス計画」への参画を決定した。2020年12月には、日本政府とNASAとの間で、「ゲートウェイのための協力に関する了解覚書」(以下「了解覚書」という。)に署名し、2022年11月には、文部科学省とNASAとの間で、了解覚書に基づく「ゲートウェイのための協力に関する実施取決め」に署名した。また、2023年6月には、「日・米宇宙協力に関する枠組協定」(以下「枠組協定」という。)が発効された。さらに、2024年4月には文部科学省とNASAの間で、枠組協定に基づき、「与圧ローバによる月面探査の実施取決め」に署名した(第2章第1節 3 ❺参照)。

エ 国際海洋科学掘削計画(IODP3(※238))

 深海掘削を通じ、地球科学や環境科学の重要課題に取り組むため、2024年に終了した国際深海科学掘削計画(IODP3)の後継プログラムとして、2025年4月より、海洋研究開発機構(JAMSTEC)と欧州海洋研究掘削コンソーシアム(ECORD)が中心となりIODP3を開始した。2020年10月に策定された2050 Science Frameworkに基づいた取組を推進するため、JAMSTECが保有する世界最高レベルの性能を有する地球深部探査船「ちきゅう」や海底や海底下を広く効果的に調査することのできる海底広域研究船「かいめい」を活用した研究航海や、歴代の海洋科学掘削計画により50年以上にわたって収集されてきたレガシー試料を使用したサンプリング・調査、教育やアウトリーチ活動を実施する。

オ 大型ハドロン衝突型加速器(LHC)

 現在、LHC計画(※239)においては、LHCの高輝度化(HL-LHC(※240)計画)が進められている。

カ その他

 国際リニアコライダー(ILC(※241))計画については、ヒッグス粒子の性質をより詳細に解明することを目指した国際プロジェクトであり、国際研究者コミュニティで検討されている。

(2)世界トップレベル研究拠点の形成に向けた取組

 文部科学省は、「世界トップレベル研究拠点プログラム(WPI(※242))」により、高度に国際化された研究環境と世界トップレベルの研究水準を誇る「国際頭脳循環のハブ」となる拠点の充実・強化を進めている。具体的には、国内外のトップサイエンティストらによるきめ細やかな進捗管理の下で、1拠点当たり7億円程度を10年間支援し、2025年度末時点で18拠点が活動している(※243)。2020年には、これまでのミッションを高度化し、「次代を先導する価値創造」を加えた新たなミッションを策定し、この新たなミッションの下、拠点形成を計画的・継続的に推進することとしている。

(3)その他の研究大学等に関する取組

 内閣府は、沖縄科学技術大学院大学(OIST(※244))について、世界最高水準の教育研究を行うための様々な取組を支援している。

❻ 研究時間の確保

1.URA等の研究開発マネジメント人材や技術職員の活躍促進

 研究者のみならず、多様な人材の育成・活躍促進が重要である。大学等におけるURA等の研究開発マネジメント人材や技術職員の育成・確保を図るため、「文部科学省 科学技術・学術審議会 人材委員会科学技術人材多様化ワーキング・グループ」において、「研究開発マネジメント人材の人事制度等に関するガイドライン」(2025年6月30日文部科学省科学技術・学術審議会 人材委員会)及び「技術職員の人事制度等に関するガイドライン」(2026年3月文部科学省 科学技術・学術審議会 人材委員会)を策定した(第2章第2節 1 ❷参照)。

2.研究支援サービス・パートナーシップ認定制度(A-PRAS)

 文部科学省は、2019年10月に、民間事業者が行う研究支援サービスのうち、一定の要件を満たすサービスを「研究支援サービス・パートナーシップ」として認定する「研究支援サービス・パートナーシップ認定制度(A-PRAS(※245))」を創設した。認定することを通じ、研究者の研究時間確保を含めた研究環境を向上させ、我が国における科学技術の推進及びイノベーションの創出を加速するとともに、研究支援サービスに関する多様な取組の発展を支援することを目的としている。2025年度は新たに10件のサービスを認定し、認定サービスは合計28件となった。

3.大学等の事務処理の簡素化、デジタル化

 文部科学省は、各大学、高等専門学校及び大学共同利用機関に対して、事務処理手続の簡素化、デジタル化を図るため、公募申請する教員等の希望に応じて電子的な手続を認めるなど柔軟な対応を求めてきている。2021年6月には、各大学等の求人公募書類の作成に係る応募者の負担軽減の観点から、各大学等が指定する様式以外の様式で作成された履歴書や業績リスト等の書類を応募書類として活用することを可能とする等、柔軟な対応の検討を各大学等に対して促しており、その後、各大学等の教務担当者向け会議等で累次にわたり周知している。

4.競争的研究費の事務手続に係るルールの統一化・簡素化

 政府全体として、研究者の事務負担軽減による研究時間の確保及び研究費の効果的・効率的な使用のため、研究費の使い勝手の向上を目的とした制度改善に取り組んでいる。その一環として、従来の「競争的資金」に該当する事業とそれ以外の公募型の研究費である各事業を「競争的研究費」として一本化し、これまで競争的資金の使用に関して統一化・簡素化したルールについて、競争的資金以外の研究資金にも適用を拡大した。さらに、競争的研究費事業の応募申請や実績報告については、府省共通研究開発管理システム(e-Rad(※246))を通じて行うよう統一を図っている。

 科学技術振興機構(JST)は、競争的研究費の申請者や審査者の負担軽減と研究時間確保のために、提案書・報告書の合理化・簡素化・共通化の取組を進めるとともに、特設ウェブサイト等で、研究者や資金配分機関等に向けて解説や情報発信を行っている(※247)。

5.「研究力強化・若手研究者支援総合パッケージ」のフォローアップ

 内閣府は「研究力強化・若手研究者支援総合パッケージ」に示された取組について、進捗状況や今後の方針についてフォローアップを実施した。2022年度には、「研究に専念する時間の確保」を取り上げ、研究に専念する時間を増やすという「量」的な観点と、研究の効率化や高度化などといった「質」的な観点に分類し議論した。これらの議論を大学等のマネジメント層へ向けて、行動変容を促すためのガイドラインとして取りまとめた。このガイドラインは改定された「地域中核・特色ある研究大学総合振興パッケージ」(第2章第2節 3 ❸参照)とも連動し、各大学の研究環境やマネジメント体制に対する指針となっている。

 2023年度には、大学等のマネジメント層のみでは対応できない制度運用上の課題の把握を目指し、競争的研究費の申請や評価をはじめとする「大学の評価疲れ申請疲れに関するアンケート」を実施した。

❼ 人文・社会科学の振興と総合知の創出

 科研費は、全ての分野にわたり、あらゆる学術研究を対象とする競争的研究費であり、研究の多様性を確保しつつ独創的な研究活動を支援することにより、研究活動の裾野の拡大を図り、持続的な研究の発展と重厚な知的蓄積の形成に資する役割を果たしている。

 日本学術振興会が実施している「課題設定による先導的人文学・社会科学研究推進事業」において、「学術知共創プログラム」を実施し、人文学・社会科学から自然科学などの多様な分野の研究者や社会の多様なステークホルダーが参加して、人文学・社会科学に固有の本質的・根源的な問いを追究する研究を推進している。また、「人文学・社会科学データインフラストラクチャー強化事業」において、人文学・社会科学に関するデータを日本語・英語で検索できる「人文学・社会科学総合データカタログ(JDCat(※248))」を構築し、研究者間でのデータの共有・利活用を支援している。

 文部科学省は、客観的根拠(エビデンス)に基づいた合理的なプロセスによる科学技術・イノベーション政策の形成の実現を目指し、「科学技術イノベーション政策における『政策のための科学』推進事業」を実施している。本事業では、科学技術・イノベーション政策を科学的に進めるための研究人材や同政策の形成を支える人材の育成を行う拠点(大学)に対して支援を行うとともに、これらの複数の拠点をネットワークによって結び、我が国全体で体系的な人材育成が可能となる仕組みを構築している。さらに、これらの拠点を中心として、課題設定の段階から行政官と研究者が政策研究・分析を協働して行う研究プロジェクトの実施を進めている。そのほか、2024年度から「人文学・社会科学のDX化に向けた研究開発推進事業」を立ち上げ、データ基盤の開発に向けたデジタル・ヒューマニティーズ・コンソーシアムの運営や、人文学・社会科学研究におけるデータ分析による成果の可視化に向けた研究開発を実施している。

 また、2023年度より、複数の人文・社会科学系大学院や産業界・公的機関等から成るネットワーク型の教育研究体制の構築を通じて大学院教育の質的改革につなげる「人文・社会科学系ネットワーク型大学院構築事業」を実施している。これにより、小規模・分散的な教育研究指導体制から、スケールメリットを発揮したチーム型の教育研究や組織的な就職支援体制への転換が期待されている。

 内閣府では、人間や社会の総合的理解と課題解決に貢献する「総合知」に関する基本的な考え方、さらに、戦略的な推進方策を検討し、2022年3月に中間取りまとめとして取りまとめ、その普及啓発のため総合知ポータルサイトの運営やキャラバンの実施等を推進している(第2章第1節 6 ❶参照)。

 文部科学省科学技術・学術政策研究所では、総合知に関する意識の変化をモニタリングするため、基本計画と連動して毎年実施しているNISTEP定点調査で「総合知」に関連する質問を行い、経年比較を実施した。

❽ 競争的研究費制度の一体的改革

 競争的研究費制度(※249)は、競争的な研究環境を形成し、研究者が多様で独創的な研究に継続的・発展的に取り組む上で基幹的な研究資金制度であり、これまでも予算の確保や制度の改善及び充実に努めてきた(2025年度当初予算額7,346億円(※250))。

 「統合イノベーション戦略2019」(令和元年6月21日閣議決定)及び「統合イノベーション戦略2020」(令和2年7月17日閣議決定)に基づき、我が国の研究力強化のため、2020年度以降順次、研究者の研究時間の確保のため、競争的研究費の直接経費から研究以外の業務の代行に係る経費の支出を可能とすることや、競争的研究費の直接経費から研究代表者への人件費を支出することにより確保された財源を、研究機関において研究力向上のために活用することを可能としている。

 研究者の事務負担を軽減し、研究時間の確保を図る観点から、従来の「競争的資金」に該当する事業とそれ以外の公募型の研究費である各事業を「競争的研究費」として一本化し、統一的なルールの下で各種事務手続の簡素化・デジタル化・迅速化に係る取組等の改善を図っている(第2章第2節 1 ❻参照)。あわせて、競争的研究費における間接経費についても、直接経費に対する割合等を含め「競争的研究費」として扱いを一本化するとともに、間接経費に係る使途報告、証拠書類の簡素化に係る取組を2022年度より実施している。

 さらに、博士課程学生の処遇向上に向けて、競争的研究費における博士課程学生の活用に伴うRA経費等の適正な支出を促進している(第2章第2節 1 ❶参照)。

 また、女性研究者の更なる活躍と男女共同参画等を促進するため、第6期基本計画や「男女共同参画基本計画」(令和2年12月25日閣議決定)、「Society 5.0の実現に向けた教育・人材育成に関する政策パッケージ」(2022年6月2日総合科学技術・イノベーション会議決定)に基づき、競争的研究費制度において、各事業の性格等を考慮しつつ、男女共同参画や性差の視点を踏まえた研究の促進や、出産・育児・介護等のライフイベントが生じても男女の研究者が共に働き続けやすい研究環境の整備の推進、さらには、次代を担う理工系分野の人材育成の促進に向け、デジタルも活用しながら研究者等が研究活動成果を子供たちにアウトリーチする取組の促進等に関し、統一ルールを定め、2023年度から適用している。

 また、各制度では、公正かつ透明で質の高い審査及び評価を行うため、審査員の年齢や性別及び所属等の多様性の確保、利害関係者の排除、審査員の評価システムの整備、審査及び採択の方法や基準の明確化並びに審査結果の開示を行っている。

 例えば、科研費では、6,000人以上の研究者によるピアレビューにより審査が実施されている。日本学術振興会は、審査委員候補者データベースを活用し、研究機関のバランスや若手研究者、女性研究者の積極的な登用等に配慮しながら、審査委員を選考している。また、応募者本人に対する審査結果の開示については、内容を順次充実させてきており、例えば、不採択課題全体の中でのおおよその順位や評定要素ごとの平均点等の数値情報のほか、応募者により詳しく評価内容を伝えるために、審査委員が不十分であると評価した評定要素ごとの具体的な項目についても、「科研費電子申請システム」により開示している。

2 新たな研究システムの構築(オープンサイエンスとデータ駆動型研究等の推進)

 昨今、ビッグデータ等の多様なデータ収集や分析等が容易となる中、シミュレーションやAIを活用したデータ駆動型の研究手法が拡大している。このことは、社会全体のデジタル化や世界的なオープンサイエンスの潮流により、研究そのもののデジタルトランスフォーメーション(研究DX)が求められているといえる。さらには、新型コロナウイルス感染症を契機として世界的にも研究DXの進展が加速しており、我が国においても重要なキーワードとなる研究データの管理・利活用促進や研究DXを支えるインフラストラクチャーの整備を進めるなど、新たな社会の実現に向けた研究システムの構築に取り組んでいる。

❶ 信頼性のある研究データの適切な管理・利活用促進のための環境整備

 様々な研究活動によって創出される研究データは、我が国のみならず世界にとって重要な知的資産といえる。一方で、産業競争力や科学技術・学術上の優位性の確保等の重要な情報を含むものもあることから、国際的な貢献と国益の双方を考慮するため、オープン・アンド・クローズ戦略に基づく研究データの管理・利活用を実行することが重要である。これらのことから、我が国のナショナルポリシーとして「公的資金による研究データの管理・利活用に関する基本的な考え方」(2021年4月27日統合イノベーション戦略推進会議決定)が定められ、研究データの管理・利活用を図るため、メタデータを検索可能とする研究データ基盤の構築等環境整備を進めている。

 情報・システム研究機構国立情報学研究所では、イノベーション創出に必要な学術情報を適切に管理・保存し、そして、利用者に提供するための様々なサービスを実施している。研究データの管理・利活用促進のため、クラウド上で大学等が共同利用できる研究データの管理・共有・公開・検索を促進するシステム(NII RDC)の運用を継続しており、これを用いて、2022年度から機能高度化やガイドラインの作成等の取組を推進する、「AI等の活用を推進する研究データエコシステム構築事業」を、理化学研究所、東京大学、名古屋大学、大阪大学と共に実施している。

 科学技術振興機構(JST)では、「オープンサイエンス促進に向けた研究成果の取扱いに関するJSTの基本方針」において、研究プロジェクトの成果に基づく研究成果論文のオープンアクセス化、研究データのデータマネジメントプランに基づく保存・管理等を原則とすることで、オープンサイエンス促進に向けた環境整備を行っている。また、文献・特許等、9種の科学技術情報をつなぎ、幅広い分野や業種で活用できる情報を提供するサービス(J-GLOBAL)や、国内外の科学技術関係の文献データを網羅的に検索・分析できる科学技術文献データベース検索サービス(JDreamⅢ)、研究者自身が業績を管理・発信できる研究者総覧データベース(researchmap)、国内の学協会等における科学技術刊行物の発行を支援する電子ジャーナルプラットフォーム(J-STAGE(※251))、未発表の査読前論文をオープンアクセスで公開する我が国で初めての本格的なプレプリントサーバ(Jxiv)研究データの公開・利活用を促進するための研究データリポジトリ(GRANTS Data)等を通じた科学技術情報基盤の環境整備により、公的機関・民間企業と連携した科学技術情報の収集・保存・公開等、研究開発活動を支えている。さらに、同機構では、「ライフサイエンスデータベース統合推進事業」によりオープンサイエンスの推進に寄与している。統合データベース構築支援や統合のための技術開発、及び、生命科学系データベースを統合的に活用するための情報基盤の整備を実施した。また、2025年度は17課題の統合データベース構築支援を実施した。

 農林水産省は、国内で発行されている農林水産関係学術誌の論文等の書誌データベース(JASI(※252))など、農林水産関係の文献情報や図書資料類の所在情報を構築・提供している。また、所管する国立研究開発法人、大学や地方公設試等の研究情報に関するデータベース等を構築するとともに、農業関係者がアクセスしやすい環境を提供している。

 環境省は、生物多様性情報システム(J-IBIS(※253))において、全国の自然環境及び生物多様性に関する情報の収集・管理・提供をしている。

 理化学研究所、物質・材料研究機構や防災科学技術研究所は、我が国が強みを生かせるライフサイエンス、マテリアルや防災分野で、膨大・高品質な研究データを利活用しやすい形で集積し、産学官で共有・解析することにより、新たな価値の創出につなげる取組を進めている。

 日本学術振興会では、「論文のオープンアクセス化に関する実施方針」及び「研究データの取扱いに関する基本方針」を制定し、科研費等によるオープンサイエンスを推進している。

❷ 研究DXを支えるインフラ整備と高付加価値な研究の加速

 政府は、研究DXを推進するため、ネットワーク、データインフラや計算資源について世界最高水準の研究基盤を形成・維持するとともに、時間や距離の制約を超えて、研究を遂行できるよう、遠隔から活用するリモート研究や、実験の自動化等を実現するスマートラボの普及に取り組んでいる。また、最先端のデータ駆動型研究、AI駆動型研究の実施を促進するとともに、これらの新たな研究手法を支える情報科学技術の研究を進めている。さらに、オープンサイエンス時代における教育研究を支える新たな大学図書館像としての「デジタル・ライブラリー」実現に向けた検討や公的資金によって生み出された学術論文等の研究成果を研究者が自由に、かつ広く公開・共有し、国民が広くその知的資産にアクセスできる環境を構築するための取組を進めている。

1.SINETの整備、運用

 情報・システム研究機構国立情報学研究所は、大学等の学術研究や教育活動全般を支える基幹的ネットワークとして学術情報ネットワーク(SINET)を整備・運用しており、2022年度からは、全都道府県にわたり400Gbps(※254)(沖縄は200Gbps)での運用を開始した。また、国際的な先端研究プロジェクトで必要とされる国際間の研究情報流通を円滑に進めるため、米国や欧州等多くの海外研究ネットワークとの連携を進めているほか、国立大学等と連携して、セキュリティ強化に向けて引き続き対応を進めている。

2.研究施設・設備の整備・共用、ネットワーク化の促進

 科学技術の振興のための基盤である研究施設・設備は、整備や効果的な利用を図ることが重要である。また、科学技術・イノベーション創出の活性化に関する法律においても、国立大学法人及び国立研究開発法人等が保有する研究開発施設・設備及び知的基盤の共用の促進を図るため、国が必要な施策を講じる旨が規定されている。

 このため、政府は科学技術に関する広範な研究開発領域や産学官の多様な研究機関に用いられる共通的、基盤的な施設・設備に関し、その有効利用や活用を促進するとともに、施設・設備の相互のネットワーク化を図り、利便性、相互補完性、緊急時の対応力等を向上させるための取組を進めている。

(1)特定先端大型研究施設

 「特定先端大型研究施設の共用の促進に関する法律」(平成6年法律第78号)(以下「共用促進法」という。)においては、特に重要な大規模研究施設は特定先端大型研究施設と位置付けられ、計画的な整備及び運用並びに中立・公正な共用が規定されている。

ア 大型放射光施設(SPring-8)/X線自由電子レーザー施設(SACLA)

 SPring-8(※255)は、光速近くまで加速した電子の進行方向を曲げたときに発生する強力なX線「放射光」を用いて、肉眼では見えない小さなものを観察できる施設。硬X線領域での計測に強みがあり、物質を構成する原子や分子の構造や、物体の内部の様子を可視化できる。1997年の共用開始以降、北川進博士(2025年ノーベル化学賞受賞)の金属有機構造体(MOF)の解析をはじめ、生命科学、環境・エネルギー、新材料開発など、我が国の経済成長を牽引(けんいん)する様々な分野で革新的な研究開発に貢献している。

 2025年度には、次世代光源に向けて、蓄積ビームへの損失なく安定なビーム入射が可能となる高性能磁石を開発するなど、放射光施設の高度化に寄与しつつ共用を促進した。

 SACLA(※256)は、レーザーと放射光の特長を併せ持つ究極の光を発振し、原子レベルの超微細構造の解析や化学反応の超高速動態・変化の観察ができる世界最先端の施設である。2012年3月に共用を開始し、2017年度より、世界初となる電子ビームの振り分け運転(※257)を実現し、2本のX線自由電子レーザービームラインの同時共用が開始されるなど、更なる高インパクト成果の創出に向けた利用環境を整備している。2020年度からはSPring-8へ電子ビームを供給する入射器としてもSACLAを利用しており、省エネ化を達成すると同時に、SPring-8における、より高品質で安定した放射光の提供にも貢献している。2025年度には、超強磁場発生装置の開発と強磁場が引き起こす物質の新しい構造を実証し、新現象発見への足掛かりになるなど、施設を高度化しつつ共用を推進した。

イ SPring-8-IIの整備

 SPring-8は1997年の共用開始から25年以上が経過し、施設の老朽化のほか、諸外国の放射光施設の高度化が進む中、性能面でも後れを取りつつある。そのため、NanoTerasuの整備等で得られた知見を活かし、第4世代の加速器テクノロジーや省エネルギー技術を導入するなど、現行の約100倍の最高輝度を誇る世界最高水準の性能を目指して、第3世代放射光施設であるSPring-8を第4世代に高度化(SPring-8-II)している。2024年度より、SPring-8-IIの整備に着手しており、第7期基本計画期間中の2029年度の共用開始を目指している。

 2025年度は磁石システムや真空機器など、主要構成機器の大型調達契約を締結し、順次納入される構成機器の精密組立を行うなど、着実に整備が進んでいる。

ウ 3GeV高輝度放射光施設(NanoTerasu)

 我が国初の第4世代の放射光施設であるNanoTerasuは、SPring-8とは波長領域が異なる軟X線領域での計測に強みがあり、物質の機能に影響を与える電子状態の可視化ができる。学術研究だけでなく触媒化学や生命科学、磁性・スピントロニクス材料、高分子材料等の産業利用も含めた広範な分野での利用が期待されている。本施設は、官民地域パートナーシップという新たな枠組みの下で整備・運用がされており、量子科学技術研究開発機構(QST)を施設の整備・運用を進める国の主体とし、さらに、2018年7月、一般財団法人光科学イノベーションセンターを代表とする、宮城県、仙台市、東北大学及び一般社団法人東北経済連合会の5者を地域・産業界のパートナーとして選定した。2023年12月にはファーストビームを達成するなど着実に整備が進められ、2024年4月に運用を開始した。

 地域パートナーが整備したコアリションビームラインでは、運用当初から企業ユーザーの活用がなされ、タイヤやリチウム硫黄電池の原材料について、極めて高い解像度で観察することに成功するなど、多くの優れた成果が創出されている。また、2025年3月には共用促進法に基づく共用が開始され、世界最高性能のビームラインによる更なる先進的な成果の創出が期待されている。

 他方、NanoTerasuには最大28本のビームラインが整備可能だが、現状、運用しているビームラインは10本となっている。放射光施設を基盤とした国際競争が激化している状況等を踏まえ、NanoTerasuの技術的優位性を活かし、我が国の革新的な成果を創出するため、2024年度及び2025年度補正予算ではユーザーニーズの高いビームラインの増設を進めている。さらに、NanoTerasuの機能を最大化させるための研究開発等を目的として、QSTの新たなビームラインの整備に着手した。

エ スーパーコンピュータ「富岳(ふがく)」/新たなフラッグシップシステムの開発・整備

 スーパーコンピュータを用いたシミュレーションや、データサイエンス、さらには自動実験やリアルタイムデータ等とAIを組合わせ、多様な科学技術分野に活用する「AI for Science」の取組の発展により新たな時代を先導することが期待されている。こうした多様なユーザーニーズに応えるため、文部科学省では、国内の大学・研究機関のスーパーコンピュータをSINETでつなぎ、HPCIの構築を進め、様々な分野でのスーパーコンピュータの利用を推進している。

 スーパーコンピュータ「富岳(ふがく)」は、その中核として、2021年3月に共用を開始した。システムとアプリケーションの協調的開発(co-design)により、世界最高水準の計算性能と汎用性の実現に向けて開発をされた計算機である。

 2025年の大阪・関西万博会場では、「富岳(ふがく)」を用いた高精度な気象予測情報を提供する実証実験が行われ、会場周辺のゲリラ豪雨を30分前から予測し、精度良く的中した。

 そのほか、企業コンソーシアムとの連携によるAIを活用した創薬研究をはじめとした、防災・減災、ものづくり、ライフサイエンス、環境・エネルギーといった幅広い分野で「富岳(ふがく)」の活用が広がっている。

 また、「富岳(ふがく)」の次世代となる新たなフラッグシップシステムの開発・整備については、2030年頃の運転開始を目指し、開発主体である理化学研究所を中心とした国内外の事業者との国際連携による開発体制が、2025年8月に始動した。「富岳(ふがく)」の次世代機の開発・整備を通じて、AI処理能力・アプリケーション実行性能の飛躍による卓越した研究成果の創出や、国産技術を国際市場に効果的に訴求することによる産業競争力の強化、様々な社会的課題の解決などを目指す。

コラム2-21 スーパーコンピュータ「富岳(ふがく)」における
生成AI活用による利用者支援の高度化

 国立研究開発法人理化学研究所計算科学研究センター(R-CCS)が運用するスーパーコンピュータ「富岳(ふがく)」では、利用者支援の高度化に向けた生成AI(大規模言語モデル:LLM)の活用が加速しています。特に、2024年7月から導入された株式会社GFLOPSが開発した生成AIプラットフォーム「AskDona(アスクドナ)」は、実際の運用において顕著な成果を上げ、大きな注目を集めています。

 「富岳(ふがく)」は、民間企業や研究者に加え、高校生や個人にも利用の機会が提供されている一方、実際に使いこなすには、膨大なマニュアルやFAQを理解し、適切な設定等を行う必要があり、その敷居の高さが、新規ユーザーにとって大きな障壁になっていました。こうした課題への対応として導入されたAskDonaは、検索拡張生成(RAG:Retrieval-Augmented Generation)技術を用いることで、「富岳(ふがく)」の膨大な公式ドキュメントをリアルタイムで参照しながら回答を生成します。この仕組みにより、LLM単体で課題となる「ハルシネーション(誤情報)」のリスクを効果的に抑制し、専門性の高い質問に対しても正確な応答を可能にしました。導入後の10か月間では、月平均で約680件の問合せに対応しており、複数の情報を統合する必要がある複雑な問いに対しても適切な回答を提示しています。その結果、2025年4月時点での有人サポートによる問合せチケット数は、前年同月比で最大61%も削減されました。これは、AIによる自動回答がユーザーの間で着実に定着し、信頼を得ていることの証左と言えます。

 また、単なるFAQの代替に留まらず、AskDonaがユーザーの「思考のパートナー」として機能し始めている点も特筆すべき変化です。技術情報の深層的な理解を必要とする相談において、生成AIが専門知識の橋渡し役を果たすケースが増えています。R-CCSでは、将来的には計算ジョブの設定やコマンドの最適化までをAIが補助する「AIコパイロット」構想を掲げており、専門知識の有無に関わらず、より幅広い層の研究者や開発者が「富岳(ふがく)」を容易に活用できる環境の構築を目指しています。

 さらに、この活用は技術サポートのみならず、研究成果の可視化にも広がっています。「スパコン成果ナビ」では、生成AIが膨大な論文を解析・要約することで、専門外の人でも内容を直感的に把握できる仕組みを提供しています。AskDonaによる操作支援と、ナビによる知見の探索支援が両輪となり、「富岳(ふがく)」の支援体制は多角的な進化を遂げました。計算性能の提供から「高度な支援」へと利用者体験の質を引き上げるこの取組は、国際的なスーパーコンピュータ運用の潮流においても極めて先進的な事例であり、今後の更なる発展が期待されています。

オ 大強度陽子加速器施設(J-PARC)

 J-PARC(※258)は、2009年度に全施設が稼働し、光速近くまで加速した陽子を原子核に衝突させることによって発生する中性子、ミュオン(※259)、ニュートリノ(※260)等の多彩な二次粒子を利用して、幅広い分野における基礎研究から産業応用まで様々な研究開発に貢献している。大強度のパルス中性子線を発生させることが強みであり、物質・生命科学実験施設(特定中性子線施設)では、物質の内部の変化をリアルタイムに可視化できるため、革新的な材料や新しい薬の開発につながる構造解析等の研究が行われ、多くの成果が創出されている。2024年度には、物質・生命科学実験施設において1MWでの利用運転を実現するなど、中性子科学研究を進めるとともに産業界における中性子利用の裾野拡大に向けた取組を進めている。原子核・素粒子実験施設(ハドロン実験施設)やニュートリノ実験施設は共用促進法の対象外の施設であるが、国内外の大学等の研究者との共同利用が進められている。特に、ニュートリノ実験施設では、2015年にノーベル物理学賞を受賞したニュートリノ振動の研究に続き、その更なる詳細解明を目指して、T2K(Tokai to Kamioka)実験が進行中で、ハイパーカミオカンデ計画も進んでいる。

(2)研究施設・設備間のネットワーク構築

 文部科学省では、国内有数の先端的な研究施設・設備について、その整備・運用を含めた研究施設・設備間のネットワークを構築し、遠隔利用・自動化を図りつつ、ワンストップサービスによる利便性向上を図り、全ての研究者への高度な利用支援体制を有する全国的なプラットフォームを形成する取組を進めている。

(3)研究機関全体の研究基盤として戦略的に先端的な研究設備・機器の整備・共用・高度化する仕組みの強化

 文部科学省は、研究機関全体で設備のマネジメントを担う統括部局の機能を強化し、学部・学科・研究科等の各研究組織での管理が進みつつある研究設備・機器を、研究機関全体の研究基盤として戦略的に整備・共用・高度化する仕組みを強化(コアファシリティ化)する取組を進めている。

 また、大学等における研究設備・機器の戦略的な整備・運用を推進するため、2022年3月に「研究設備・機器の共用推進に向けたガイドライン(※261)」を策定し、大学等への周知活動を進めている。

 さらに、2025年度補正予算では我が国の研究基盤を刷新し、若手を含めた全国の研究者等が挑戦できる魅力的な研究環境を実現するために、先端研究基盤刷新事業(EPOCH)の予算を措置しており、全国の研究大学等において、地域性や組織の強み・特色等も踏まえ、技術職員やURA等の人材を含めたコアファシリティの戦略的な整備等を推進している。

3.知的基盤の整備・共用、ネットワーク化の促進

 文部科学省は、ライフサイエンス研究の基盤となる研究用動植物等のバイオリソースのうち、国が戦略的に整備することが重要なものについて、体系的に収集、保存、提供等を行うための体制を整備することを目的として、「ナショナルバイオリソースプロジェクト」を実施しており、2025年度では33リソースの支援を実施した。

 また、理化学研究所は、AIと数理科学により、SPring-8、「富岳(ふがく)」、バイオリソースセンター、量子コンピュータ等の研究インフラをつなぎ、次世代の研究DXプラットフォームを構築するとともに、それを活用して研究開発を実施することで、未来の予測制御の科学を開拓する「最先端研究プラットフォーム連携事業」を実施している。

 経済産業省は、我が国の研究開発力を強化するため、産業構造審議会 産業技術環境分科会 知的基盤整備特別小委員会・日本産業標準調査会基本政策部会知的基盤整備専門委員会合同会議において審議した第3期知的基盤整備計画を2021年5月に取りまとめ、公表した。これまでの第3期知的基盤整備計画における各分野の進捗は以下のとおりである。

 計量標準・計測については、産業技術総合研究所が、各種取組を実施した。

 蓄電池の非破壊劣化評価に適用できるインピーダンス計測の高度化を進め、民間企業との連携を実施した。海底圧力モニタリングセンサの評価を海洋研究開発機構(JAMSTEC)と連携して実施、センサの長期ドリフトを補正可能な装置を開発し、観測に実装されている。半導体製造装置や高精度ミラーなどの精密ものづくりに必要な超高精度な平面度・球面度の校正技術を確立した。次世代移動通信システムに資するため、ミリ波帯以上(28GHz~)におけるアンテナの放射パターン測定を高精度化した。水銀ランプに代わり工業現場で普及が進む紫外発光ダイオード(UV-LED)の放射照度校正のため、民間企業と連携して安定性に優れた標準LEDを開発し、販売が開始された。りんを含む生体分子の定量分析の精度管理へ向け、31P定量NMR用標準物質を開発し、頒布体制を整えた。

 整備済みの計量標準に関しては、デジタル校正証明書化を進め、合理化・効率化を推進した。また、産業界との一層の連携促進を図る目的で見学とトピック講演を主体としたイベント開催や展示会への出展を行った。2025年はメートル条約締結150周年であり、記念式典への参加や特別企画の実施を通じて、一般向けの計量標準に関する啓発活動を行った(第2-2-9図)

 微生物遺伝資源については、製品評価技術基盤機構が、微生物遺伝資源の収集・保存・分譲を行うとともに、これらの資源に関する情報(系統的位置付け、遺伝子に関する情報等)を整備・拡充し、幅広く提供している(2025年4~12月末までの分譲株数は7,974株)。また、同機構が設立に寄与し、微生物遺伝資源の保存と持続可能な利用を目指した14か国・地域の35機関のネットワーク活動(アジア・コンソーシアム、2004年設立)への参加を通じて、アジア各国との協力関係を構築し、生物多様性条約や名古屋議定書を踏まえたアジア諸国の微生物遺伝資源の利用を支援している。

 地質情報については、産業技術総合研究所が、5万分の1地質図幅3区画(「大子(だいご)」、「浜坂(はまさか)」及び「大多喜(おおたき)」)(第2-2-10図)、20万分の1地質図幅1区画(「京都及大阪(第2版)」)、20万分の1海底地質図1区画(「宮古島周辺海域」)の出版、20万分の1日本シームレス地質図V2の更新を行っている。また、都市域の地震災害予測や地盤リスク評価を適切に行うために必要な地質情報として、都市域の3次元地質地盤図「千葉県中央部」及び「千葉県北部延長域」を公開した。地下水資源については、2024年度に出版した水文環境図「大井川下流域」の成果を基に、大井川地域地下水利用対策協議会において講演を行い、地下水情報を広く発信した。火山地質では、活火山等の活動履歴調査を行うことで、将来の噴火災害に対応するための基礎的情報を整備し、火山地質図「伊豆大島(第2版)」を出版した。また、噴火口図4火山(有珠山・新潟焼山・富士山・桜島)を公表した。そのほか、データ統合に向けて、地球科学図類のデジタルデータ化を加速し、一部の既存データベースの連携利用のためのAPI(※262)を着実に整備した。

 データ利活用・ライフコースプロジェクトでは、ゲノム・データ基盤の整備・利活用を促進し、ライフステージを俯瞰(ふかん)した疾患の発症・重症化予防、診断、治療等に資する研究開発を推進することで個別化予防・医療の実現を目指すこととしている。日本医療研究開発機構の「革新的がん医療実用化研究事業」等において、2022年9月に策定された「全ゲノム解析等実行計画2022」に基づき、がん・難病領域の全ゲノム解析等を行い、国民へ質の高い医療を届けるために、戦略的なデータの蓄積を進め、それらを用いた研究・創薬などを促進することとしている。また、文部科学省の東北メディカル・メガバンク計画においても、ゲノム・データ基盤整備の一環として、子供を含めた一般住民12万人の全ゲノム解析を遂行し、その利活用を推進している。

4.数理・情報科学技術に係る研究

 文部科学省は、Society 5.0の実現に向けた数理科学の展開に当たり、産学官にて数理科学の目指す姿を共有した上で、数学・数理科学の知的資産としての価値が正しく評価され、諸科学・産業界との共同研究等の取組を加速することによって、新産業や社会変革を伴うイノベーションを創造し、得られた成果が学問へ再投資される機能拡張モデルの構築を目指している。理化学研究所では数理創造研究センター(iTHEMS(※263))において、数学・理論科学・計算科学を軸とした諸科学の統合的解明、社会における課題発掘及び解決、さらに、民間との共同出資により設立された株式会社理研数理との連携によるイノベーションの創出等に向けて取り組んでいる。また、Society 5.0の実現に向け、情報科学技術を基盤として事業や組織の垣根を超えて研究成果を統合し、社会実装に向けた取組を加速するため、2018年度より、「Society 5.0実現化研究拠点支援事業」を実施している。本事業では、知恵・情報・技術・人材が高い水準で揃う大学等が、産業界や地方公共団体等と連携し、情報科学技術分野の研究成果の社会実装を推進している。

5.DXによる研究活動の変化等に関する分析

 文部科学省科学技術・学術政策研究所では、DXによる研究活動の変化等に関する新たな分析手法・指標の開発の一環として、オープンデータ・オープンソースの利用状況を取りまとめ、経年比較を行った。

6.学術論文等のオープンアクセス化の促進

 2023年5月のG7広島サミット及びG7仙台科学技術大臣会合等を踏まえ、2024年2月16日に統合イノベーション戦略推進会議において「学術論文等の即時オープンアクセスの実現に向けた基本方針」が我が国のオープンアクセス方針として決定された。同方針に基づき、2025年度から新たに公募を行う即時オープンアクセスの対象となる競争的研究費を受給する者(法人を含む)に対し、該当する競争的研究費による学術論文及び根拠データの学術雑誌への掲載後、即時に機関リポジトリ等の情報基盤へ掲載することの義務付けを行うとともに、グローバルな学術出版社等に対する大学・国研等を主体とする集団交渉の体制構築支援、学術論文等の研究成果を管理・利活用するためのプラットフォームの整備・充実に向けた支援等を実施している。

❸ 研究DXが開拓する新しい研究コミュニティ・環境の醸成

 文部科学省は、地方公共団体、NPOやNGO、中小・スタートアップ、フリーランス型の研究者、さらに、市民参加など、多様な主体と共創しながら、知の創出・融合といった研究活動を促進することとしている。また、例えば、研究者単独では実現できない、多くのサンプルの収集や、科学実験の実施など多くの市民の参画を見込むシチズンサイエンスの研究プロジェクトの立ち上げなど、産学官の関係者のボトムアップ型の取組として、多様な主体の参画を促す環境整備を、新たな科学技術・イノベーション政策形成プロセスとして実践することとしている。

 また、2023年度から、「市民参加による海洋総合知創出手法構築プロジェクト」を実施し、中核推進機関の東京大学、並びにエリア研究実施チームの神戸大学及び喜界島サンゴ礁科学研究所が、市民と協働しながら、海洋に関する総合知を創出するための取組を推進している。

 科学技術振興機構は、「サイエンスアゴラ」や、地方公共団体や大学等と連携して行うサイエンスアゴラ連携企画、未来社会デザインオープンプラットフォーム(CHANCE(※264))等を通じ、多様な主体との対話・協働(共創)の場を構築し、知の創出・融合等を通じた研究活動の推進や社会における科学技術リテラシーの向上に寄与している。

3 大学改革の促進と戦略的経営に向けた機能拡張

 多様な知の結節点であり、最大かつ最先端の知の基盤である大学はSociety 5.0を牽引(けんいん)する役割を求められている。不確実性の高い社会を豊かな知識基盤を活用することで乗りきるため、個々の強みを伸ばし、各大学にふさわしいミッションを明確化することで、多様な大学群の形成を目指している。

❶ 国立大学法人の真の経営体への転換

 文部科学省は、第4期中期目標期間に向けて、中期目標の在り方の見直しを行い、国が総体としての国立大学法人に求める役割・機能に関する基本的事項を「国立大学法人中期目標大綱」として提示し、各法人がそれを踏まえた上で中期目標の原案を策定する取扱いとした。

 なお、2022年度より年度評価を廃止し、原則として6年間を通した業務実績を評価することとしている。

 また、各国立大学法人が公表している「国立大学法人ガバナンス・コード」への適合状況等について、外部有識者の意見を踏まえながら確認を行っている。

 さらに、様々なステークホルダーと共に、研究力の強化に向けて大学の活動を充実させる政策を進める中で、法人の大きな運営方針の継続性・安定性を確保することや、多様な専門性を有する方々にも運営に参画いただくことを目的として、2023年12月に「国立大学法人法」(平成15年法律第112号)を改正し、事業の規模が特に大きい国立大学法人について、法人の大きな運営方針を決議する運営方針会議を設置することとした。

 また、今後の国立大学法人等の機能強化の方向性について、2025年8月に有識者会議において「改革の方針」が取りまとめられた。本方針を踏まえ、同年11月には文部科学省として「国立大学法人等改革基本方針」を策定し、第5期中期目標期間(2028~2033年度)に向けた組織業務や国立大学法人運営費交付金等の見直しの具体化をはじめとして、国立大学法人等の改革を進めていく。

❷ 戦略的経営を支援する規制緩和

 2023年12月に成立した「国立大学法人法の一部を改正する法律」(令和5年法律第88号)によって長期借入等を充てることができる費用の範囲の拡大等の規制緩和を行った。

 また、留学生受入れの質の向上を図るために必要な対価の徴収としての外国人留学生の授業料等の設定の柔軟化等を可能とする省令の改正を行い、2024年4月に施行した。

 さらに、累次の税制改正によって国立大学法人に対する寄附の促進を図っているほか、国立大学法人会計基準については、損益均衡会計の廃止等、多様なステークホルダーからも理解しやすくするとともに、目的積立金を含む繰越しに関連する制度の在り方について検討し、施設設備の取替更新のための資金を積み立てることを可能とする改正を行った。

 内閣府では、大学関係者、産業界及び政府による「大学支援フォーラムPEAKS(※265)」を2019年5月に設立し、大学における経営課題や解決策等の議論や規制緩和等の検討、大学経営層の育成を進めている。2022~2024年度にかけて、我が国の大学の成長モデルの構築及び大学経営人材の確保・育成を目的とした実証事業を実施し、2025年度にはそのモデルの横展開を実施した。また、博士号取得者の産業界での活躍促進等に向けて、2024年度に産学双方による具体的なアクション・プランを策定し、2025年度にはその実行推進に向けた会合の開催や政策提言を行った。

❸ 我が国の大学の研究力強化

1.10兆円規模の大学ファンドによる支援

 近年、我が国の研究力は、諸外国と比較して相対的に低下している状況にあり、その一因は、特に欧米のトップレベル大学において、数兆円規模のファンドの運用益を活用し、研究基盤や若手研究員への投資を充実していることにあると指摘されている。このため、我が国においても、世界最高水準の研究大学を実現するため、国の資金を活用して大学ファンドを創設し、2021年度末からその運用を開始した。

 大学ファンドの支援対象となる国際卓越研究大学の選定に当たっては、制度の意義、大学ファンドの支援対象大学の認定等に関する基本的な事項を定めた「基本的な方針」等に基づき、これまでの実績や蓄積のみで判断するのではなく、世界最高水準の研究大学の実現に向けた「変革」への意思(ビジョン)とコミットメントの提示に基づき、研究現場の状況把握や大学側との丁寧な対話を実施することとしている。初回の公募では、有識者会議における結論を踏まえ、2024年11月に文部科学大臣が東北大学を初の国際卓越研究大学として認定、同年12月には25年間にわたる国際卓越研究大学研究等体制強化計画(以下、「体制強化計画」という。)を認可し、東北大学は2025年4月に計画を開始した。

 第2期公募では8大学から申請を受け付け、2025年12月の有識者会議において、東京科学大学は2026年4月に体制強化計画開始、京都大学は最長で1年間の体制強化計画の磨き上げ後に計画開始、東京大学は最長で1年間の継続審査が適当との判断が得られた。それを踏まえ、2026年1月に文部科学大臣が東京科学大学を国際卓越研究大学の第2号として認定し、同年2月には体制強化計画を認可した。今後、国際卓越研究大学自身の明確なビジョンの下、研究基盤の抜本的強化や若手研究者に対する長期的・安定的な支援を行うことにより、我が国の研究大学における研究力の抜本的な強化につなげることとしている。

2.地域中核・特色ある研究大学総合振興パッケージ

 我が国の大学の研究力の底上げには、全国の大学が、個々の強みを伸ばし、各大学のミッションの下、多様な研究大学群を形成することも重要である。そのため、地域の中核大学や特定分野に強みを持つ大学が、“特色ある強み”を十分に発揮し、社会変革を牽引(けんいん)する取組を強力に支援するため、2022年2月に「地域中核・特色ある研究大学総合振興パッケージ(※266)」を決定した。同パッケージについては、地域中核・特色ある研究大学に求められる「機能」の観点から、目指す大学像に向けた大学自身の立ち位置を振り返る「羅針盤」の基本的な考え方を示すなど、質的・量的拡充を図る改定やこうした内容を踏まえながら、さらに、新たな政府予算案の反映や対象事業の追加、参考事例の修正を行う等、累次にわたって改定を行っている。

 また、2022年度第2次補正予算により、本パッケージの主な支援策の一つとして、日本学術振興会に造成した約1,500億円の基金による「地域中核・特色ある研究大学強化促進事業(J-PEAKS(※267))」を実施し、地域中核・特色ある研究大学に対し、強みや特色ある研究力を核とした戦略的経営の下、研究活動の国際展開や社会実装の加速・レベルアップの実現に必要なハードとソフト双方の環境構築の取組を支援している。2023年度に12件、2024年度に13件の提案を採択しており、採択された大学に対して、引き続き伴走支援を確実に実施していく。

 本パッケージにより、全国に存在する我が国の様々な機能を担う多様な大学が、自らのミッションに応じて、様々な施策を選択的・段階的に活用することで強みや特色を強化し、トップレベルの研究大学とも互いに切磋琢磨(せっさたくま)できる関係を構築することで、我が国全体の研究力を向上させることを目指している。

❹ 大学の基盤を支える公的資金とガバナンスの多様化

1.国立大学法人等の基盤を支える国立大学法人運営費交付金

 国立大学の継続的・安定的な教育研究活動を支える重要な基盤的経費である国立大学法人運営費交付金について、2026年度予算では、物価上昇等が継続する中においても、基礎研究の充実、文理融合、学長による経営改革及び自己収入確保策の強化を図るため、実質的に過去最大の増額幅(対前年度比188億円)となる1兆971億円を計上した。また、2025年度補正予算においても物価・人件費上昇等の対応として、運営費交付金421億円を含む486億円を計上した。

2.国立大学法人等の施設整備

 国立大学法人等の施設は、将来を担う人材の育成の場であるとともに、地方創生やイノベーション創出等教育研究活動を支える重要なインフラである。一方、昭和40~50年代に大量に整備された施設が一斉に老朽改善のタイミングを迎えている中で、一定の改善は図ってきたものの、十分に改善されていないため、安全面・機能面等で大きな課題が生じている。

 このような状況の中、文部科学省では、2021~2025年度までを計画期間とする「第5次国立大学法人等施設整備5か年計画」(2021年3月31日文部科学大臣決定)の下、老朽改善整備等による安全確保を着実に行いつつ機能強化を図り、キャンパス全体でソフト・ハードが一体となり、地域や産業界等の様々なステークホルダーとの共創活動が展開される「イノベーション・コモンズ(共創拠点)(※268)」の実現を目指すこととしている(第2-2-11図、第2-2-12図)

<関連サイト>

①国立大学法人等の施設整備
https://www.mext.go.jp/a_menu/shisetu/kokuritu/index.htm

②「イノベーション・コモンズ(共創拠点)」の実現に向けて
https://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chousa/shisetu/062/1417904_00002.htm

③我が国の未来の成長を見据えた「イノベーション・コモンズ(共創拠点)」の更なる展開に向けて
https://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chousa/shisetu/062/1417904_00004.htm

 2023年10月にはDX・GX等の成長分野やグローバル化等に対応した環境整備について取組のポイントや推進方策、事例を取りまとめ、「我が国の未来の成長を見据えた『イノベーション・コモンズ(共創拠点)』の更なる展開に向けて」を公表した。

 現在、第6次国立大学法人等施設整備5か年計画(2026~2030年度)の策定に向け、大学施設や高等教育に関する有識者、知事会や経済団体等の関係団体代表者を構成員とする「今後の国立大学法人等施設の整備充実に関する調査研究協力者会議」を設置し、国立大学法人等の施設整備の目指すべき方向性等を検討している。

 また、2050年カーボンニュートラルの実現に向け、地球温暖化対策計画等において、公共施設等におけるネット・ゼロ・エネルギー・ビル(ZEB(※269))の率先した取組が求められており、政府として2030年度以降に新築される建築物についてZEB基準の水準の省エネルギー性能の確保が目標とされている。このため、国立大学法人等における新増改築及び改修事業について、徹底した省エネルギー対策を図ることや、PPA(※270)等を活用した太陽光発電設備等の再生可能エネルギー設備の設置により、他大学や地域の先導モデルとなる施設のZEB化を推進している。

❺ 国立研究開発法人の機能・財政基盤の強化

 2014年に「独立行政法人通則法」(平成11年法律第103号)が改正され、独立行政法人のうち我が国における科学技術の水準の向上を通じた国民経済の健全な発展その他の公益に資するため研究開発の最大限の成果を確保することを目的とした法人を国立研究開発法人と位置付けた(2026年3月31日現在で26法人)。さらに、2016年には「特定国立研究開発法人による研究開発等の促進に関する特別措置法」(平成28年法律第43号)が成立し、国立研究開発法人のうち、世界最高水準の研究開発成果の創出・普及及び活用を促進し、イノベーションを牽引(けんいん)する中核機関として、物質・材料研究機構、理化学研究所、産業技術総合研究所が特定国立研究開発法人に指定された。

 また、「研究開発力強化法」(平成20年法律第63号)が2018年に改正され、名称を「科学技術・イノベーション創出の活性化に関する法律」としたほか、出資等業務を行うことができる研究開発法人及びその対象となる事業者の拡大、研究開発法人等による法人発ベンチャー支援に際しての株式等の取得・保有の可能化等が規定された。2020年6月には同法が改正され、成果を活用する事業者等に出資可能な研究開発法人が更に拡大するとともに、研究開発法人の出資先事業者において共同研究等が実施できる旨が明確化された。また、本改正を受けて、2021年4月に内閣府及び文部科学省において「研究開発法人による出資等に係るガイドライン」(2019年1月17日内閣府科学技術・イノベーション推進事務局統括官、文部科学省科学技術・学術政策局長決定)を改定した。本改正により、研究開発法人等を中心とした知識・人材・資金の好循環が実現し、科学技術・イノベーション創出の活性化がより一層促進されることが期待されている。

 さらに、新しい行政ニーズへの対応等の増大により業務運営の厳しさが増していることを踏まえ、研究基盤や人材の充実、相互の連携等による機能強化を図っていく必要があることから、2024年3月に「国立研究開発法人の機能強化に向けた取組について」(2024年3月29日関係府省申合せ)を策定した。本申合せに基づき、国立研究開発法人が他の法人とも連携・協力しながら、柔軟な人事・給与制度の導入や研修等の人材育成機会の確保に取り組むとともに、第三者機関や外部専門家等による客観的レビュー、適切なフォローアップ等を含む研究セキュリティ・研究インテグリティの一層の強化を図り、研究成果の社会実装に取り組んでいくこととしている。

コラム2-22 国立研究開発法人の取組(理化学研究所)

〇丈夫なのに、塩水で分解するプラスチック~木材成分から製造できる次世代高分子材料~

 増え続ける廃プラスチック問題とマイクロプラスチック汚染は、世界的に喫緊の社会課題です。現在流通している生分解性プラスチックは、自然環境下での生分解性に限界があるうえに、リサイクル性や力学特性にも問題を抱えており、これらの問題を同時に解決する新素材の必要性が高まっています。理化学研究所創発物性科学研究センターでは、豊富な天然資源である木材成分セルロースを主原料とする「頑丈なのに塩水中や土壌などの自然環境下で速やかに分解する新型プラスチック」を開発しました。理論上、このプラスチックは品質を下げずに何度でもリサイクルでき、仮に海洋に流出してもマイクロプラスチックを生じないことが想定されています。
 食品包装やビニール袋など石油由来の現行プラスチックの代替材料として使えば、環境汚染の抑制に大いに貢献することが期待されます。

〇低濃度エタノールで作物の環境ストレス耐性を強化する「EGAO」技術

 記録的猛暑となった2025年夏、野菜をはじめ種々の農作物で品質や収量の低下が報告されました。厳しい暑さや少雨による乾燥といった極端な気象現象は、気候変動により増加すると予想され、安定的な食料生産の実現へ対策が求められています。
 理化学研究所環境資源科学研究センターでは、低濃度の「エタノール」を与えた作物で乾燥・高温・塩耐性が向上することを見いだし、この仕組みの解明や、様々な作物への応用に取り組んでいます。2025年には、トマトにエタノールを噴霧すると高温耐性に加えて果実の糖度やビタミンC含量が向上することを、筑波大学と共に明らかにしました。
 「世界中みんなの笑顔を増やしたい」という願いから、この技術は「EGAO(Ethanol-based Global Agricultural Optimization)」と名づけられました。エタノールは安価で入手しやすく、また植物を原料とするバイオエタノールは再生可能エネルギーとして導入拡大が進められています。そうしたことから、EGAO技術は持続可能な気候変動適応策として注目を集めています。

第3節 一人ひとりの多様な幸せ(well-being)と課題への挑戦を実現する教育・人材育成

 Society 5.0を実現するためには、これを担う人材が鍵である。このため第6期基本計画では、自ら課題を発見し、解決手法を模索する、探究的な活動を通じて身に付く能力や資質が重要としており、それらを磨き高めることで、多様な幸せを追求し、課題に立ち向かう人材を育成することを目指している。その実現に向け、政府で行っている施策を報告する。

❶ STEAM(※271)教育の推進による探究力の育成強化

 文部科学省は、学校教育段階に応じた多様な科学技術人材の育成を体系的に推進しており、2022年度から年次進行で実施されている高等学校学習指導要領に基づき、「理数探究」や「総合的な探究の時間」等における問題発見・課題解決的な学習活動の充実を図るため、その趣旨を周知している。なお、理数教育の充実に向けた取組として、「理科教育振興法」(昭和28年法律第186号)に基づく観察、実験に係る実験器具等の設備整備の補助や、理科観察実験アシスタントの配置の支援も引き続き実施している。

 また、先進的な理数系教育を実施する高等学校等を「スーパーサイエンスハイスクール(SSH)」に指定し、科学技術振興機構による支援を通じて、生徒の科学的な探究能力等を培い、将来、国際的に活躍し得る科学技術人材等の育成を図っている。2025年度においては、全国230校のSSH指定校が特色ある取組を進めた。

 科学技術振興機構は、初等中等教育(小学校高学年~高校生)段階において理数系に優れた意欲・能力を持つ児童生徒を対象に、その能力の更なる伸長を図る育成プログラムの開発・実施に取り組む大学等を「次世代科学技術チャレンジプログラム(STELLA(※272))」に選定し、支援している。

 また、数学、化学、生物学、物理、情報、地学、地理の国際科学オリンピックや国際学生科学技術フェア(ISEF(※273))等の国際科学技術コンテストの国内大会の開催や、国際大会への日本代表選手の派遣、国際大会の日本開催に対する支援等を行っている(第2-2-13図)

 2025年度は、全国の中学・高校生等が学校対抗・チーム制で理科・数学等における筆記・実技の総合力を競う場として、中学生を対象とした「第13回科学の甲子園ジュニア全国大会」(2025年12月12日~14日)が開催され、千葉県代表チームが優勝した(第2-2-14図)。また、高校生等を対象とした「第15回科学の甲子園全国大会」(2026年3月20~23日)が開催され、岡山県代表の岡山県立岡山朝日高等学校が優勝した(第2-2-15図)

 また、海洋研究開発機構は、次世代の海洋人材育成に貢献する取組として、2023年度から「海洋STEAM教育事業」に着手し、学習指導要領に沿った探究型の教材を開発するとともに、学校教育現場への展開を行っている。開発した教材や学校で活用された授業の動画を海洋STEAM教材ライブラリー(※274)にて公開しているほか、教員の指導法向上に資する「海洋STEAM教育ハンドブック」を制作し発刊した。文部科学省、特許庁、日本弁理士会及び工業所有権情報・研修館は、生徒・学生の知的財産に対する理解と関心を深めるため、高等学校、高等専門学校、専修学校、大学及び大学校の生徒・学生を対象とした「パテントコンテスト」及び「デザインパテントコンテスト」を開催している。コンテストに応募された発明・意匠のうち優れたものについて表彰を行うとともに、表彰された生徒・学生に対して、応募作品について特許出願・意匠登録出願から権利取得までの過程を支援している。なお、応募作品のうち、身の回りにある物の科学的性質や働きから着想を得た、独創的かつ画期的な作品に対しては、文部科学省から特別賞として表彰を行っている。

 内閣府では、総合科学技術・イノベーション会議に文部科学省 中央教育審議会、経済産業省 産業構造審議会の委員の参画を得た有識者会議を設置し、イノベーションの源泉となるSTEAM教育の充実に向けた省庁横断的な具体策の検討を進め、2022年に「Society 5.0の実現に向けた教育・人材育成に関する政策パッケージ」を策定した。同パッケージを踏まえ、科学技術振興機構では、探究・STEAM教育を社会全体で支えるエコシステムの一つとして、科学技術振興機構日本科学未来館におけるSTEAM教育に資する新規常設展示の公開や探究学習・STEAM教育情報サイト「サイエンスティーム」における教育事例や児童生徒の成果物等の情報提供を実施している。

❷ 外部人材・資源の学びへの参画・活用

 特別免許状や特別非常勤講師制度については、「令和の日本型学校教育」の実現に向けて多様な専門性を有する質の高い教職員集団を形成する観点から、複線化された入職ルートとして、一層機能させていく必要があるため、中央教育審議会答申を踏まえつつ、文部科学省において必要な検討を行っている。

❸ 教育分野におけるDXの推進

 GIGA(※275)スクール構想に基づく1人1台端末の整備が義務教育段階で完了し、本格的な活用の段階に入っている。教育現場において、教員のICT活用を支援する「ICT支援員(情報通信技術支援員)」の配置促進に向けて、2026年3月に2024年度時点の配置状況を公表した。また、1人1台端末環境において教育データを効果的に利活用し「個別最適な学び」や「協働的な学び」を実現するため、文部科学省では、教育データの標準化等の共通ルールの整備、全国の学校等で共通に活用できるシステム(基盤的ツール)の開発等を行っている。2025年度には、例えば、共通ルールの整備の観点から「教育データ標準」の更新等を行った。

 学校における働き方改革、教育活動の高度化、教育現場のレジリエンス確保の実現に資する次世代校務DXを推進するため、モデルケースの創出・展開を図るとともに、都道府県域での共同調達・共同利用を前提に、地方公共団体における次世代校務DX環境整備に要する初期費用等を補助している。また、GIGAスクール構想の下で整備されたクラウド環境を十全に活用して校務の効率化を図る観点から、取り組むべき項目をまとめたチェックリストに基づいて教育委員会や学校の自己点検を実施し、その結果を2026年3月に公表した。

❹ 人材流動性の促進とキャリアチェンジやキャリアアップに向けた学びの強化

 文部科学省は、大学等における実践的な工学教育に向けた取組を推進しており、各大学では、例えば、連携する企業における課題を用いた課題解決型学習や、産業社会構造を見据えた分野を融合した教育など、教育内容や方法の質的充実に向けた取組が進められている。また、文部科学省は、科学技術に関する高等の専門的応用能力を持って計画や設計等の業務を行う者に対し、「技術士」の資格を付与する「技術士制度」を設けている。技術士試験は、理工系大学卒業程度の専門的学識等を第一次試験(2025年度合格者数5,754名)と技術士にふさわしい高等の専門的応用能力を確認する第二次試験(同2,752名)から成る。2025年度第二次試験の部門別合格者は第2-2-16表のとおりである。

 科学技術振興機構は、技術者が科学技術の基礎知識を幅広く習得することを支援するために、科学技術の各分野及び共通領域に関するインターネット自習教材(※276)を提供している。

 文部科学省及び経済産業省は、人材の流動性を高める上で、クロスアポイントメント制度の導入を促進している(第2章第1節 4 ❺参照)。また、2016年11月に策定された「産学官連携による共同研究強化のためのガイドライン」、2020年6月に取りまとめた追補版、及び2022年3月に公表したFAQにおいてもクロスアポイントメント制度の導入を促進している。

❺ 学び続けることを社会や企業が促進する環境・文化の醸成

 DXの加速など、企業・労働者を取り巻く環境が急速かつ広範に変化するとともに、労働者の職業人生の長期化や働き方の多様化も同時に進行する中で、個人のキャリアアップ・キャリアチェンジのため、リ・スキリングを推進する必要性がますます高まっている。その際、企業における人材育成の取組の推進や教育機関におけるリ・スキリングプログラムの充実など、幅広い観点から必要な施策を講じていく必要がある。このため、内閣府、文部科学省、厚生労働省及び経済産業省を構成員とした検討の場を設置し、関係府省庁の人材育成施策についての情報共有等を行っている。

 文部科学省はリ・スキリングによって産業界・個人・教育機関の成長を好循環させるエコシステムの創出に向け、大学等が地域や産業界と連携・協働し、経営者を含む地域や産業界の人材育成ニーズを踏まえたリ・スキリングプログラムの開発・提供、及び持続的にプログラムを提供するための産学官連携プラットフォームや産学協働体制の構築を支援することとし、リ・スキリングに係る委託事業の取組内容や成果、教育界、産業界等の意見を踏まえ関係省庁と連携して検討を進めている。

 厚生労働省は、労働政策審議会人材開発分科会において、労使の検討・審議を経て、学び・学び直しを促進するため、企業労使が取り組むべき事項等を体系的に示した「職場における学び・学び直し促進ガイドライン」を2022年6月に策定した。さらに、特設サイトの開設等により、経営者や労働者に対してガイドラインの周知を行うことで、学び・学び直しの気運の醸成や環境整備の促進に取り組んでいる。

❻ 大学・高等専門学校における多様なカリキュラム、プログラムの提供

 国立大学法人については、「国立大学法人ガバナンス・コード」において、各国立大学法人に対し、学生が享受した教育成果を示す情報の公表を求めている。

 文部科学省は、2022年度から「地域活性化人材育成事業~SPARC(※277)~」を実施し、地域と大学間の連携を通じて、既存の教育プログラムを再構築し、地域を牽引(けんいん)する人材を育成する大学等の取組を支援している。

 さらに、令和3年5月に成立した国立大学法人法の一部を改正する法律により、全ての国立大学法人が大学の研究成果を活用したコンサルティング・研修・講習等を実施する事業者へ出資することを可能としている。

 高等専門学校では、中学校卒業後からの5年一貫の専門教育を特徴とし、実践的・創造的な技術者の育成を進めている。

 近年では、産業構造の変化に対応した、AI、半導体、蓄電池といった社会的要請が高い分野の人材育成やイノベーション創出によって、社会課題の解決に貢献する人材育成を進めている。さらに、高専生が高専教育で培った「高い技術力」、「社会貢献へのモチベーション」、「自由な発想力」を生かして起業する事例が出てきている。

❼ 市民参画など多様な主体の参画による知の共創と科学技術コミュニケーションの強化

1.公的機関等の取組

 毎年4月、科学技術に関し、広く国民の関心と理解を深め、科学技術の振興を図るため、科学技術週間が設定されている(昭和35年2月26日閣議了解)。期間中、全国で研究施設公開や講演会など、科学技術週間関連行事が多数開催されている。

 文部科学省では令和7年度科学技術週間(2025年4月14~20日)に合わせて、大人から子供まで、広く科学技術への関心を深めるため、学習資料「一家に1枚 量子と量子技術~量子コンピュータまでの100年!~」を全国の小・中学校、高等学校、大学、科学館・博物館等に配布するとともに、学びを更に深めるため特設ウェブサイトや動画を公開した。2026年3月には、令和8年度版学習資料「一家に1枚 身近な現象から知る地球 自然と生きる列島」(第2-2-17図)を公表した。令和8年度版からは、配布先への全国の公立図書館の追加、SNSでの計画的広報、教育現場への訴求を高める依頼等、一層の工夫を図っている。また、STEAM教育の充実と科学技術分野の次世代人材育成を目的とし、文部科学省が国立研究開発法人等の研究者等を任命する「科学技術教育アドバイザー」制度を令和7年度から開始した。

 農林水産省は、品種改良加速技術(ゲノム編集技術)等の社会実装に向け、消費者等を対象に研究者等の専門家を派遣して行う出前講座や研究施設の見学会の実施、技術を解説した動画や漫画による情報発信のアウトリーチ活動を行っている。

 宇宙航空研究開発機構は、青少年の人材育成の一環として「コズミックカレッジ」や連携授業、セミナー等の宇宙を素材とした様々な教育支援活動等を行っている。

 理化学研究所は、より多くの国民に対して最新の研究成果等の理解増進を図るため、作成した冊子や動画などをウェブサイト上で公開しているほか、中学生や高校生を対象とした講演会など様々なアウトリーチ活動を行っている。

 海洋研究開発機構は、研究開発の理解増進を図るため、オウンドメディアやSNSを活用した旬な広報発信を行うほか、科学館・博物館・水族館等の外部機関と連携した事業や、将来の海洋人材の裾野拡大を目指した若年層向けの「マリン・ディスカバリー・コース」を実施している。

 産業技術総合研究所は、常設展示施設や各種イベントへの出展などを通じて、科学技術に関するアウトリーチ活動を行っている。さらに、最新の研究成果を分かりやすく説明するウェブコンテンツを作成・公開し、情報発信に努めている。

<参考URL>各機関等のウェブ・動画サイト

○科学技術週間/学習資料「一家に1枚」
https://www.mext.go.jp/stw/

○理研チャンネル
https://www.youtube.com/user/rikenchannel

○Science Window『一家に1枚 20周年特別号』
https://www.jstage.jst.go.jp/article/sciencewindow/18/S5/18_202418S5/_pdf/-char/ja

○産総研マガジン
https://www.aist.go.jp/aist_j/magazine/index.html

 そのほか、各大学や公的研究機関は、研究成果について広く国民に対して情報発信する取組等を行っている。

 なお、総合科学技術・イノベーション会議は、1件当たり年間3,000万円以上の公的研究費の配分を受ける研究者等に対して、研究活動の内容や成果について国民との対話を行う活動を積極的に行うよう促している。

 国立国会図書館は、国民共有の知識・情報資源へのアクセス向上と利活用促進のため、所蔵資料のデジタル化及び全文テキストデータ化に取り組むとともに、全国の図書館、学術研究機関等が提供する資料、デジタルコンテンツ等を統合的に検索可能なデータベース(国立国会図書館サーチ(※278))を提供している。

2.科学館・科学博物館等の活動の充実

 科学技術振興機構は、科学技術・イノベーションと社会の関係の深化に向けて、多様な主体が双方向で対話・協働する「サイエンスアゴラ(※279)」や「サイエンスポータル(※280)」を通じた情報発信などの多層的な科学技術コミュニケーション活動を推進している(第2章第2節 2 ❸参照)。特に科学技術振興機構日本科学未来館(※281)においては、先端の科学技術と社会との関わりを来館者等とともに考える活動を展開しており、IoT(※282)やAI等の最先端技術も活用した展示やイベント等を通じて多層的な科学技術コミュニケーション活動を推進するとともに、全国各地域の科学館・学校等との連携を進めている。2025年4月には、研究開発の最前線を体験的に理解できる「量子コンピュータ・ディスコ」と「未読の宇宙」の二つの常設展示を公開した。特別展も、「チ。─地球の運動について─ 地球(いわ)が動く」と「深宇宙展~人類はどこへ向かうのか To the Moon and Beyond」(※283)を公開し、多様な来館者層にリーチする多層的な科学技術コミュニケーションを展開した。

 国立科学博物館(※284)は、自然史・科学技術史におけるナショナルセンターとして蓄積してきた研究成果や標本・資料などの知的・物的・人的資源を生かして、未就学児から成人まで幅広い世代に自然や科学技術の面白さを伝え、共に考える機会を提供する展示や学習支援活動を実施している。さらに、研究者による研究活動や展示を解説する動画の公開、各SNSによるタイムリーな情報発信にも取り組んでいる。

3.日本学術会議や学協会における取組

 日本学術会議は、学術の成果を国民に還元するための活動の一環として学術フォーラムを開催しており、2025年度は、「くらしを豊かにする化学の力 ─材料と分析の融合が拓く未来─」、「世界の防災の未来:災害の経験をふまえたメガシティの防災力強化に向けた科学技術イノベーション」、「循環経済の実現に向けたものづくりの役割」等の広範囲なテーマについて計5回開催した。

 大学などの研究者を中心に自主的に組織された学協会は、研究組織を超えた人的交流や研究評価の場として重要な役割を果たしており、最新の研究成果を発信する研究集会などの開催や学会誌の刊行等を通じて、学術研究の発展に寄与している。

 日本学術振興会は、学協会による国際会議やシンポジウムの開催及び国際情報発信力を強化する取組などに対して、科学研究費助成事業(科研費)「研究成果公開促進費」による助成を行っている。


  • ※1 様々な分野、業界が自らデータ連携基盤(データスペース)を構築するための共通技術や標準等を提供する活動の総称
  • ※2 Tera bit per second:ビットパーセカンド(bps)はデータ伝送速度の単位の一つで1秒間に何ビットのデータを伝送できるかを表す。毎秒1兆ビット(1テラビット)のデータを伝送できるのが1Tbpsである。
  • ※3 Internet of Things
  • ※4 Ethical, Legal and Social Issues
  • ※5 Large Language Models
  • ※6 Advanced Integrated Intelligence Platform
  • ※7 革新的ハイパフォーマンス・コンピューティング・インフラ
  • ※8 NII Research Data Cloud:データ管理基盤GakuNin RDM、データ公開基盤JAIRO Cloud、データ検索基盤CiNii Researchの3基盤から構成される。
  • ※9 Science Information NETwork
  • ※10 Broadening Opportunities for Outstanding young researchers and doctoral students in STrategic areas
  • ※11 AI Bridging Cloud Infrastructure
  • ※12 Data Free Flow with Trust
  • ※13 Organisation for Economic Co-operation and Development
  • ※14 Institutional Arrangement for Partnership
  • ※15 Green Technologies of Excellence
  • ※16 Advanced Technologies for Carbon-Neutral
  • ※17 Carbon dioxide Capture, Utilization and Storage
  • ※18 CO2 Ultimate Reduction System for Cool Earth 50
  • ※19 Carbon dioxide Capture and Storage
  • ※20 Carbon dioxide Capture and Utilization
  • ※21 Sustainable Aviation Fuel
  • ※22 この成果は、NEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)の委託業務(JPNP20008)の結果得られたものです。
  • ※23 製品評価技術基盤機構(2026年)「日本沿岸での生分解性プラスチック浸漬試験から得られた微生物とそれらの分解活性」
    https://www.nite.go.jp/nbrc/industry/plastic-waste/immersion-test/biodegrading-bacteria.html
  • ※24 Nature Communications(2024年1月26日)「Microbial decomposition of biodegradable plastics on the deep-sea floor」
    https://www.nature.com/articles/s41467-023-44368-8
  • ※25 Sustainable Development Goals
  • ※26 Key Performance Indicatorの略であり、「重要業績評価指標」のこと
  • ※27 Association of South East Asian Nations
  • ※28 内閣府の事業であり、「programs for Bridging the gap between R&d and the IDeal society (society 5.0) and Generating Economic and social value」の略称
  • ※29 Application Programming Interface
  • ※30 和(WA)-AGRIculture
  • ※31 Fukushima Institute for Research Education and Innovation
  • ※32 Biological Nitrification Inhibition
  • ※33 ジャングルジム状構造をもった多孔性物質であり、特定のイオンを選択吸着する性質を持つ。本研究ではカリウムイオンを選択的に回収する錯体を利用した。
  • ※34 ぶどうにおいて、種無し化、果粒肥大等を目的に行われる植物ホルモン(ジベレリン)剤の処理。
  • ※35 Liquefied Natural Gas
  • ※36 Global Earth Observation System of Systems
  • ※37 Group on Earth Observations
  • ※38 Global Change Observation Mission-Climate
  • ※39 Global Change Observation Mission-Water
  • ※40 Advanced Land Observing Satellite - 2
  • ※41 Advanced Land Observing Satellite - 4
  • ※42 Precipitation Measuring Mission
  • ※43 Greenhouse gases Observing SATellite
  • ※44 Global Observing SATellite for Greenhouse gases and Water cycle
  • ※45 Advanced Microwave Scanning Radiometer 3
  • ※46 Total Anthropogenic and Natural emissions mapping SpectrOmeter-3
  • ※47 United Nations Framework Convention on Climate Change
  • ※48 全世界の海洋を常時観測するため、日本、米国等30以上の国や世界気象機関(WMO:World Meteorological Organization)、ユネスコ政府間海洋学委員会(IOC:Intergovernmental Oceanographic Commission)等の国際機関が参加する国際プロジェクト
  • ※49 アルゴ計画で運用されている、海洋の水温や塩分などを測定するための小型の自動観測機器。海面から水深2,000mまでの間を自動的に浮き沈みしながら観測を行い、衛星を通じてデータを陸上に送信する。
  • ※50 Arctic Challenge for Sustainability Ⅲ
  • ※51 https://www.data.jma.go.jp/kaiyou/shindan/index.html
  • ※52 Intergovernmental Panel on Climate Change
  • ※53 Data Integration and Analysis System
  • ※54 ペロブスカイトと呼ばれる結晶構造で配列する材料を発電層に用いた我が国発の太陽電池の総称。省資源、製造に必要な温度や期間などの面に優れ、将来的にシリコン太陽電池に比肩する発電コストを実現していくことが期待される。
  • ※55 Integrated Coal Gasification Combined Cycle
  • ※56 Carbon dioxide Capture and Utilization/Carbon Recycling
  • ※57 Radioisotope
  • ※58 International Atomic Energy Agency
  • ※59 The Preparatory Commission for the Comprehensive Nuclear-Test-Ban Treaty Organization
  • ※60 Advanced Nuclear Education Consortium for the Future Society
  • ※61 Mixed Oxide(ウラン・プルトニウム混合酸化物)
  • ※62 Regional Cooperative Agreement for Research, Development and Training Related to Nuclear Science and Technology
  • ※63 Peaceful Uses Initiative
  • ※64 OECD Nuclear Energy Agency
  • ※65 Forum for Nuclear Cooperation in Asia
  • ※66 Generation IV International Forum
  • ※67 フュージョンエネルギー・イノベーション戦略
    https://www8.cao.go.jp/cstp/fusion/index.html
  • ※68 日本・欧州・米国等の7極による国際約束に基づき、核融合実験炉の建設・運転を通じて、その科学的・技術的実現可能性を実証する国際共同プロジェクト
  • ※69 Broader Approach
  • ※70 Demo Oriented NEutron Source
  • ※71 Large Helical Device
  • ※72 Compact Helical Device
  • ※73 net Zero Energy House
  • ※74 Home Energy Management System
  • ※75 Building Energy Management System
  • ※76 Electric Vehicle
  • ※77 Plug-in Hybrid Electric Vehicle
  • ※78 Fuel Cell Vehicle
  • ※79 Climate Change Adaptation Information Platform
  • ※80 全固体電池やリチウムイオン電池よりも高いエネルギー密度を有する革新型蓄電池
  • ※81 革新的GX技術創出事業
  • ※82 Life Cycle Assessment
  • ※83 Intergovernmental science-policy Platform on Biodiversity and Ecosystem Services
  • ※84 Global Biodiversity Information Facility
  • ※85 Data and Biological Resource Platform
  • ※86 Behavioral Insights x Technology
  • ※87 環境省「子どもの健康と環境に関する全国調査」
    http://www.env.go.jp/chemi/ceh/
  • ※88 Nationwide Ocean Wave information network for Ports and HArbourS
  • ※89 http://www.mlit.go.jp/kowan/nowphas/
  • ※90 Dense Oceanfloor Network system for Earthquakes and Tsunamis
  • ※91 Seafloor observation network for earthquakes and tsunamis along the Japan Trench
  • ※92 Nankai Trough Seafloor Observation Network for Earthquakes and Tsunamis
  • ※93 The Fundamental Volcano Observation Network
  • ※94 Monitoring of Waves on Land and Seafloor
  • ※95 Phase combination Forward search
  • ※96 Integrated Particle Filter法:同時に複数の地震が発生した場合でも、震源を精度良く推定する手法。京都大学防災研究所と協力して開発。
  • ※97 Propagation of Local Undamped Motion法:強く揺れる地域が非常に広範囲に及ぶ大規模地震でも、震度を適切に予測する手法
  • ※98 tsunami Forecasting based on Inversion for initial sea-Surface Height
  • ※99 Volcanic Observations and Information Center System
  • ※100 2026年3月末現在で、全国に約1,300点
  • ※101 Global Navigation Satellite System
  • ※102 Very Long Baseline Interferometry:数十億光年の彼方(かなた)から、地球に届く電波を利用し、数千kmもの距離を数mmの誤差で測る技術
  • ※103 Synthetic Aperture Radar:合成開口レーダ
  • ※104 Shared Information Platform for Disaster Management
  • ※105 Polarimetric and Interferometric Airborne Synthetic Aperture Radar
  • ※106 Cross-Agency Information and Communication System
  • ※107 調査、測量から設計、施工、検査、維持管理、更新までのあらゆる建設生産プロセスにおいてICT等を活用すること
  • ※108 Building Information Modeling/Construction Information Modeling, Management
  • ※109 重要電子計算機に対する不正な行為による被害の防止に関する法律(令和7年法律第42号)及び重要電子計算機に対する不正な行為による被害の防止に関する法律の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律(令和7年法律第43号)
  • ※110 CYber Defense Exercise with Recurrence
  • ※111 CYber Range Open Platform
  • ※112 CYbersecurity NEXus
  • ※113 National Aeronautics and Space Administration
  • ※114 Global Precipitation Measurement
  • ※115 Precipitation Measuring Mission
  • ※116 Space Situational Awareness
  • ※117 X-Ray Imaging and Spectroscopy Mission
  • ※118 Smart Lander for Investigating Moon
  • ※119 LEV-2:Lunar Excursion Vehicle 2
  • ※120 SORA-Q:宇宙を意味する「宙(そら)」と、宇宙に対する「Question(問い)」「Quest(探求)」、「球(きゅう)体」であること、横からのシルエットが「Q」に似ていることなどから名付けられた。
  • ※121 Martian Moons eXploration
  • ※122 Demonstration and Experiment of Space Technology for INterplanetary voYage with Phaethon fLyby and dUst Science
  • ※123 Rapid Apophis Mission for Space Safety
  • ※124 International Space Station
  • ※125 日本・米国・欧州・カナダ・ロシアの政府間協定に基づき地球周回低軌道(約400km)上に有人宇宙ステーションを建設・運用・利用する国際協力プロジェクト
  • ※126 H-Ⅱ Transfer Vehicle
  • ※127 Hyperspectral Imager SUIte
  • ※128 衛星の災害関連情報の共有等、アジア・太平洋地域の災害管理への貢献に資する我が国主導の国際協力プロジェクト。
  • ※129 Space Applications For Environment。宇宙技術による環境監視に関する国際協力プロジェクト。
  • ※130 「きぼう」利用に関する多国参加型の各種プログラムの立案・実行における経験蓄積と能力向上、宇宙実験を目指す研究者・技術者・青少年への普及啓蒙と情報発信、そして日本との二国間協力プロジェクトの創出を実施。
  • ※131 宇宙法政策イニシアティブ。アジア来併用地域・諸国における国内宇宙法や政策等について学習・能力向上を図る活動。
  • ※132 アジア太平洋の宇宙協力を10年単位で示した指針。2019年に名古屋で開催されたAPRSAF-26で初めて採択された。
  • ※133 VHF Data Exchange System
  • ※134 本プログラムは経済安全保障推進会議及び統合イノベーション戦略推進会議の下、内閣府、文部科学省及び経済産業省が中心となって、科学技術振興機構及び新エネルギー・産業技術総合開発機構に設置された基金により実施している。本基金は2022年10月に経済安全保障推進法に基づく指定基金として指定された。
  • ※135 経済安全保障推進会議・統合イノベーション戦略推進会議合同会議決定(第一次:2022年9月16日、第二次:2023年8月28日、第二次一部改定:2025年3月7日)
  • ※136 「研究活動の国際化、オープン化に伴う新たなリスクに対する研究インテグリティの確保に係る対応方針について」(2021年4月27日統合イノベーション戦略推進会議決定)において、研究インテグリティは、研究の国際化やオープン化に伴う新たなリスクに対して新たに確保が求められる、研究の健全性・公正性を意味する。
  • ※137 詳細は第2章第1節6 ❺ 1(6)において後述
  • ※138 Small/Startup Business Innovation Research
  • ※139 SUpport Program of Capital Contribution to Early-Stage CompanieS
  • ※140 Plus既存参加9機関:新エネルギー・産業技術総合開発機構、日本医療研究開発機構、国際協力機構、科学技術振興機構、農業・食品産業技術総合研究機構、日本貿易振興機構、情報処理推進機構、産業技術総合研究所、中小企業基盤整備機構
  • ※141 Platform for unified support for startups
  • ※142 Plus新規参加6機関:宇宙航空研究開発機構、株式会社商工組合中央金庫、沖縄振興開発金融公庫、株式会社海外需要開拓支援機構、株式会社海外通信・放送・郵便事業支援機構、株式会社脱炭素化支援機構
  • ※143 Technology Licensing Organization
  • ※144 Adaptable and Seamless TEchnology transfer Program through target-driven R&D
  • ※145 Ministry of Agriculture, Forestry and Fisheries Research Network
  • ※146 Strategic Information and Communications R&D Promotion Programme
  • ※147 都市オペレーティングシステムの略。スマートシティ実現のために、スマートシティを実現しようとする地域が共通的に活用する機能が集約され、スマートシティで導入する様々な分野のサービスの導入を容易にさせることを実現するITシステムの総称。
  • ※148 Global Research and Development Center for Business by Quantum-AI Technology
  • ※149 Advanced Research Infrastructure for Materials and Nanotechnology in Japan
  • ※150 内閣官房「健康・医療戦略推進本部」
    https://www.kantei.go.jp/jp/singi/kenkouiryou/senryaku/index.html
  • ※151 Research and Development(科学技術のための研究開発)の頭文字に、Electronic(電子)の頭文字を冠したもの
  • ※152 Evidence data platform constructed by Council for Science, Technology and Innovation
    「エビデンスシステム」
    https://e-csti.go.jp/
  • ※153 National Institute of Science and Technology Policy
  • ※154 Pacific Area Standards Congress
  • ※155 NorthEast Asia Standards Cooperation Forum
  • ※156 International Electrotechnical Commission
  • ※157 Asia Pacific Economic Cooperation
  • ※158 International Telecommunication Union
  • ※159 Patent Prosecution Highway
  • ※160 特許庁「PPHポータル」
    https://www.jpo.go.jp/toppage/pph-portal-j/pph-extra.html
  • ※161 経済産業省「ナショプロデータカタログ」
    https://www.meti.go.jp/policy/innovation_policy/datamanagement.html
  • ※162 特許庁「特許情報プラットフォーム」
    https://www.j-platpat.inpit.go.jp/
  • ※163 FOreign Patent Information SERvice「外国特許情報サービス」
    https://www.foreignsearch2.jpo.go.jp/
  • ※164 Green Transformation Technologies Inventory
  • ※165 工業所有権情報・研修館「IP Acceleration program for Academic R&D projects」
    https://www.inpit.go.jp/katsuyo/ip_academia_haken/index.html
  • ※166 工業所有権情報・研修館「IP Acceleration program for National R&D projects」
    https://www.inpit.go.jp/katsuyo/ipsupport/index.html
  • ※167 https://www.mofa.go.jp/mofaj/dns/isc/index.html
  • ※168 The meeting of the Group of Senior Officials
  • ※169 Policy Partnership on Science, Technology and Innovation
  • ※170 ASEAN COmmittee on Science, Technology, and Innovation
  • ※171 ASEAN-Japan Cooperation Committee on Science and Technology
  • ※172 Networked EXchange, United Strength for Stronger Partnerships between Japan and ASEAN
  • ※173 Asia-Pacific Regional Space Agency Forum
  • ※174 The Intergovernmental Science-Policy Platform on Biodiversity and Ecosystem Services
  • ※175 Group on Earth Observations
  • ※176 Asia-Oceania Group on Earth Observations
  • ※177 Intergovernmental Panel on Climate Change
  • ※178 World Meteorological Organization
  • ※179 United Nations Environment Programme
  • ※180 Global Research Council
  • ※181 United Nations Development Programme
  • ※182 United Nations Educational, Scientific and Cultural Organization
  • ※183 Intergovernmental Oceanographic Commission
  • ※184 Intergovernmental Hydrological Programme
  • ※185 Man And the Biosphere
  • ※186 International Bioethics Committee
  • ※187 InterGovernmental Bioethics Committee
  • ※188 Committee for Scientific and Technological Policy
  • ※189 Digital Policy Committee
  • ※190 Committee on Industry, Innovation and Entrepreneurship
  • ※191 Nuclear Energy Agency
  • ※192 International Energy Agency
  • ※193 OECD Global Science Forum
  • ※194 Working Party on Innovation and Technology Policy
  • ※195 Working Party on Biotechnology, Nanotechnology and Converging Technologies
  • ※196 Working Party of National Experts on Science and Technology Indicators
  • ※197 International Science and Technology Center
  • ※198 Economic Research Institute for ASEAN and East Asia
  • ※199 Adopting Sustainable Partnerships for Innovative Research Ecosystem
  • ※200 Networked EXchange, United Strength for Stronger Partnerships between Japan and ASEAN
  • ※201 Science And Technology REsearch Partnership for Sustainable Development
  • ※202 Strategic International COllaborative Research Program
  • ※203 India-Japan Circulation of Talented Youths in Science Programme
  • ※204 Asia-Pacific Network for Global Change Research
  • ※205 Asia-Pacific Integrated Model
  • ※206 Regional Collaboration Centers
  • ※207 The European Interest Group CONnecting and Coordinating European Research and Technology Development with Japan
  • ※208 Africa-Japan COllaborative REsearch
  • ※209 Neglected Tropical DiseaseS
  • ※210 Tokyo International Conference on African Development
  • ※211 研究者・技術者のみならず、科学技術に関わる多様かつ幅広い人材を含む。また、自然科学分野のみならず、人文科学分野の人材も含む。
  • ※212 「今後の科学技術人材政策の方向性(中間まとめ)」令和7年7月30日、科学技術・学術審議会人材委員会
  • ※213 Support for Pioneering Research Initiated by the Next Generation. 科学技術振興機構の事業
  • ※214 Broadening Opportunities for Outstanding young researchers and doctoral students in STrategic areas. 科学技術振興機構の事業
  • ※215 Doctoral Course
  • ※216 Japan Graduates Database
  • ※217 Principal Investigator
  • ※218 Restart Postdoctoral Fellowship:研究活動を再開(Restart)する博士取得後の研究者の意味
  • ※219 科学技術振興機構「研究人材のキャリア支援ポータルサイト」
    https://jrecin.jst.go.jp
  • ※220 University Research Administrator
  • ※221 Restart Research Abroad
  • ※222 内閣府「理工チャレンジ(リコチャレ)」
    https://www.gender.go.jp/c-challenge/
  • ※223 Science, Technology, Engineering and Mathematics
  • ※224 2026年4月時点で、54大学104拠点(国際共同利用・共同研究拠点6大学9拠点を含む。)が認定を受けて活動
  • ※225 文部科学省「学術研究の大型プロジェクトについて」
    https://www.mext.go.jp/a_menu/kyoten/1383666.htm
  • ※226 National Institute of Informatics
  • ※227 Japan Research & Innovation for Scientific Excellence Initiative
  • ※228 Cross-border Postdoctoral Fellow
  • ※229 Adopting Sustainable Partnerships for Innovative Research Ecosystem
  • ※230 Networked EXchange, United Strength for Stronger Partnerships between Japan and ASEAN
  • ※231 India-Japan Circulation of Talented Youths in Science Programme
  • ※232 Human Frontier Science Program
  • ※233 International Thermonuclear Experimental Reactor
  • ※234 Broader Approach
  • ※235 H-Ⅱ Transfer Vehicle
  • ※236 International Space Station
  • ※237 National Aeronautics and Space Administration
  • ※238 International Ocan Drilling Programme
  • ※239 Large Hadron Collider:欧州合同原子核研究機関(CERN)の巨大な円形加速器を用いて、宇宙創成時(ビッグバン直後)の状態を再現し、未知の粒子の発見や、物質の究極の内部構造の探索を行う実験計画であり、CERN加盟国と日本、米国等による国際協力の下で進められている。
  • ※240 High Luminosity-Large Hadron Collider
  • ※241 International Linear Collider
  • ※242 World Premier International Research Center Initiative
  • ※243 日本学術振興会「世界トップレベル研究拠点プログラム」
    https://www.jsps.go.jp/j-toplevel/04_saitaku.html
  • ※244 Okinawa Institute of Science and Technology Graduate University
  • ※245 Accreditation of Partnership on Research Assistance Service「研究支援サービス・パートナーシップ認定制度」
    https://www.mext.go.jp/a_menu/kagaku/kihon/1422215_00001.htm
  • ※246 府省共通研究開発管理システムの略称で、Research and Development(科学技術のための研究開発)の頭文字に、Electronic(電子)の頭文字を冠したもの
  • ※247 科学技術振興機構特設ウェブサイト「研究力復活への取り組み」
    https://www.jst.go.jp/osirase/revive_research/index.html
  • ※248 Japan Data Catalog for the Humanities and Social Sciences
  • ※249 内閣府「競争的研究費制度」
    https://www8.cao.go.jp/cstp/compefund/
  • ※250 予算額を内数としている事業は含まない。
  • ※251 Japan Science and Technology Information Aggregator, Electronic
  • ※252 Japanese Agricultural Sciences Index
  • ※253 Japan Integrated Biodiversity Information System
  • ※254 Giga bit per second:ビットパーセカンド(bps)はデータ伝送速度の単位の一つで1秒間に何ビットのデータを伝送できるかを表す。毎秒10億ビット(1ギガビット)のデータを伝送できるのが1Gbpsである。
  • ※255 Super Photon ring-8 GeV
  • ※256 SPring-8 Angstrom Compact free electron LAser
  • ※257 線形加速器からの電子ビームをパルスごとに複数のビームラインに振り分けることで、複数のビームラインを同時に利用可能
  • ※258 Japan Proton Accelerator Research Complex
  • ※259 高エネルギー陽子ビームと原子核の反応で生成されるパイ中間子の崩壊によって生まれる素粒子。正あるいは負の電荷を持ち、重さは電子の約200倍。
  • ※260 素粒子の一つ。電気的に中性で物質を通り抜けるため検出が難しく、質量などその性質は未知の部分が多い。
  • ※261 文部科学省「研究設備・機器の共用推進に向けたガイドライン」
    https://www.mext.go.jp/content/20220329-mxt_kibanken01-000021605_2.pdf
  • ※262 Application Programming Interface
  • ※263 RIKEN Center for Interdisciplinary Theoretical and Mathematical Sciences
  • ※264 CHAllenge driveN Convergence Engine
  • ※265 Leaders’ Forum on Promoting the Evolution of Academia for Knowledge Society
  • ※266 内閣府「地域中核・特色ある研究大学総合振興パッケージ」
    https://www8.cao.go.jp/cstp/daigaku/index.html
  • ※267 Program for Forming Japan's Peak Research Universities
  • ※268 教育、研究、産学連携、地域連携など様々な分野・場面において、学生、研究者、産業界、公共団体など様々なプレーヤーが対面やオンラインを通じて、交流・対話し、共創することで、新たな価値を創造できるキャンパス
  • ※269 Net Zero Energy Building
  • ※270 Power Purchase Agreement
  • ※271 Science, Technology, Engineering, Art(s) and Mathematics
  • ※272 Science and TEchnology chaLLenge program for next generAtion
  • ※273 International Science and Engineering Fair
  • ※274 海洋研究開発機構「海洋STEAM教材ライブラリー」
    https://www.jamstec.go.jp/steam/
  • ※275 Global and Innovation Gateway for All
  • ※276 科学技術振興機構「イノベーション創出を担う研究人材のためのキャリア支援ポータルサイト」
    https://jrecin.jst.go.jp/
  • ※277 Supereminent Program for Activating Regional Collaboration
  • ※278 国立国会図書館「国立国会図書館サーチ」
    https://ndlsearch.ndl.go.jp/
  • ※279 科学技術振興機構「サイエンスアゴラ」
    https://www.jst.go.jp/sis/scienceagora/
  • ※280 科学技術振興機構「サイエンスポータル」
    https://scienceportal.jst.go.jp/
  • ※281 科学技術振興機構日本科学未来館「MiraikanChannel」
    https://scienceportal.jst.go.jp/
  • ※282 Internet of Things
  • ※283 第7回宇宙開発利用大賞文部科学大臣賞(2026年3月、内閣府宇宙開発戦略推進事務局主催)を受賞
  • ※284 国立科学博物館「かはくチャンネル」
    https://www.youtube.com/user/NMNSTOKYO

お問合せ先

科学技術・学術政策局研究開発戦略課

(科学技術・学術政策局研究開発戦略課)