科学とイノベーションが切り拓く我が国の未来

 私たちの身の回りには、スマホやアプリ、車、電気、インターネットといったモノやサービスが溢(あふ)れています。これらの多くは科学技術・イノベーションの成果から生み出されており、逆にこれらの成果と関係しないものを探し出すことは非常に難しいといえます。更に視野を広げ、現在の我が国を取り巻く情勢を見ると、世界のパワーバランスの変化や地政学的な競争の激化を受け、これまでの国際秩序が大きく変わりつつあります。先端的な科学技術は、経済成長だけでなく、国の安全保障にも直接の影響を及ぼし得る存在であり、各国の競争力を左右する鍵として、ますます重要になっています。このように、科学技術・イノベーションは、私たちの身の回りのモノやサービスから安全保障への影響に至るまで、どこを切り取ってもその姿を見せることから、現在の私たちの暮らしや営みに欠かせない存在となっており、同時に、私たちの生活を豊かにし、未来を切り拓く礎となるものでもあるといえます。

 科学技術・イノベーションは我が国の根幹を担う重要な分野であることから、政府としても、科学技術・イノベーション政策及び関連施策を推進してきました。1995年に超党派による議員立法で「科学技術基本法」(平成7年法律第130号。2020年6月に法改正され、2021年4月から「科学技術・イノベーション基本法」)が制定されて以降は、同法に基づき、科学技術・イノベーションの振興方策の指針として、「科学技術基本計画(2021年度から科学技術・イノベーション基本計画)」(以下「基本計画」という。)を策定し、5年ごとに計画の見直しを行いながら、政策を進めています。

 政府は、これまで第1期から第6期までの基本計画を策定し、計画に基づき関連政策を推進してきました。第1期基本計画では、社会的・経済的ニーズに対応した研究開発の強力な推進や基礎研究の積極的な振興、第2期・第3期基本計画では、重点分野を設定した研究開発の推進に取り組みました。第4期基本計画では、科学技術に加えイノベーション政策も幅広く対象に含めた、「科学技術イノベーション政策」の一体的展開に取り組む方針を示しました。第5期基本計画では、「Society 5.0」というサイバー空間とフィジカル空間(現実世界)を融合させた取組による新しい社会像を提示し、第6期基本計画では、「Society 5.0」を更に深化させた社会像の実現のために、総合知による社会変革や知や人への投資に向けた具体的な取組を示しています。

 そして、2026年3月に第7期基本計画が閣議決定され、2026年度は同計画が始まる最初の年度となります。第7期基本計画においては、特に科学技術・イノベーション分野を巡る情勢の変化の一つとして、「科学とビジネスの近接化」が挙げられています。

 本書の第1部では、「科学とビジネスの近接化」を切り口に、同計画が目指す科学技術・イノベーション政策の方向性について、分かりやすく解説を行います。まず第1部の第1章において、昨今の「科学とビジネスの近接化」の流れについて、解説を行うとともに、特に2025年にノーベル生理学・医学賞及びノーベル化学賞を日本人研究者が受賞したことから、これらの研究成果を実例として、科学技術による成果が生まれ、そしてイノベーションが起き、ビジネスにつながるまでの流れを解説します。第2章においては、第7期基本計画で目指す政策の方向性について解説を行うとともに、全てのイノベーションの礎となる研究で生み出された新たな「知」の創出を推進していくための柱となる我が国の「科学の再興」に向けた取組や、科学とビジネスが近接化する時代の潮流を踏まえた国家的に重要な戦略技術領域に対する一気通貫支援など、科学技術・イノベーション政策の具体的な取組について、実例を挙げながら分かりやすく紹介していきます。

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科学技術・学術政策局研究開発戦略課

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