特別寄稿

総合科学技術・イノベーション会議議員 宮園浩平氏

 第7期科学技術・イノベーション基本計画が策定されました。多くの方々から多大なご支援とご助言を賜りましたことに、心より感謝いたします。

 近年、我が国の研究力の低下が強く認識されるようになっています。トップレベル論文数の指標は諸外国と比べて大きく低下し、博士号取得者も我が国は長年横ばいのままです。また、急速に変化する時代において、AIをはじめとする新たな潮流への対応の遅れといった課題が顕在化しています。海外に目を向けると、科学技術の成果と経済発展との結びつきは国力の向上に直結するとの認識が各国で共有されています。優れた科学技術人材の国際的な獲得競争が激化する中で、我が国にとって今がまさにターニングポイントと言えます。

 第7期基本計画は、科学技術・イノベーションの推進によって我が国が世界をリードすることを目指しています。特に重視するのは、自由な発想に基づく基礎研究をしっかり支えるとともに、魅力的な研究環境を整備すること、研究成果を社会実装につなげるプラットフォームを構築することです。何よりも重要で最初に掲げることにしたのが、「知の基盤としての『科学の再興』」です。科学研究費の大幅な拡充、博士号取得者数の増加、基盤的経費の着実な確保などの目標を掲げました。目指すことは、若い人たちが科学研究に興味を持ち、様々な形で積極的に参加できるような環境づくりです。

 さらに、限られた政策資源を最大限に活用するために、技術領域の戦略的重点化を掲げました。研究成果を速やかに社会実装につなげるために、17の「新興・基盤技術領域」を選定して戦略的に支援します。このうち、AI・先端ロボットや量子などの6つを「国家戦略技術領域」とし、関係府省が連携して、基礎研究から人材育成、社会実装、産業競争力の強化に至るまで一気通貫の支援を実施します。

 その他、第7期基本計画では、科学技術と国家安全保障との有機的連携、イノベーション・エコシステムの高度化、戦略的科学技術外交の推進、推進体制・ガバナンスの改革を掲げました。特に、科学技術と国家安全保障の関係については、繰り返し議論を行いました。最先端の科学技術には、デュアルユースの側面が強まっています。こうした技術が流出しないように適切に管理しつつ、国民生活に役立てていくためには、正面から向き合って行くことが重要です。

 2025年は坂口志文博士、北川進博士がそろってノーベル賞を受賞され、日本の科学の先進性が改めて評価された年といえます。振り返ると2001年に策定された第2期科学技術基本計画では「50年間にノーベル賞受賞者30人程度」を輩出するという目標が掲げられました。当時はこの目標に対し疑問の声が多く出されたとも聞きますが、25年が経過した現在までに既に20人を超える日本人研究者がノーベル賞を受賞されています。両博士の研究は30年以上前に得られた成果が起点となっていますが、今後我が国における「科学の再興」を図る上でも、これまでの流れを振り返りつつ、強力に支援を進めていくことが必要です。

 私は、2025年9月に南アフリカのプレトリアで開催されたG20研究・イノベーション大臣会合に出席しました。印象的だったのは、G20に出席したどの国の代表も「研究成果を速やかにイノベーションにつなげていくことが、経済発展に欠かせない」と話していたことでした。我が国ではこうした国際的な政策基調を十分踏まえて行動していくべきものと思います。未来の日本の姿を見据えて、基礎研究で生まれたシーズを円滑に社会実装につなげるシステムを作っていくことを目指して、皆様と共に努めてまいりたいと思います。

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科学技術・学術政策局研究開発戦略課

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