令和7年12月9日(火曜日)
教育、科学技術・学術、文化
青森県東方沖を震源とする地震の被害状況と文科省の対応、長期的に行われる基礎研究を推進するための支援方策、多様な大学入学者選抜が大学入学後や社会進出後に及ぼす効果と入試の早期化が進路選択へ及ぼす影響、ヒューマングライコームプロジェクトなどの糖鎖分野の研究への期待と先端研究分野の推進、フュージョンの原型炉の誘致活動の活発化と今後の原型炉を見据えた研究開発、旧統一教会田中会長の辞任報道
令和7年12月9日(火曜日)に行われた、松本洋平文部科学大臣の記者会見の映像です。
令和7年12月9日松本洋平文部科学大臣記者会見(※「YouTube」文部科学省動画チャンネルへリンク)
大臣)
冒頭、私からは昨晩の地震に関しての御報告であります。昨日12月8日、青森県東方沖を震源とする地震が発生をし、青森県八戸市で震度6強が観測されました。まずは、被災をされました皆様方に心からお見舞いを申し上げたいと存じます。文部科学省といたしましては、災害に係る情報収集などを行うため、地震直後に災害情報連絡室を設置いたしました。関係教育委員会等に対し、児童生徒などの安全確保と文教施設などの被害情報の把握、二次被害防止(注)を要請しているところであります。また、気象庁から北海道・三陸沖後発地震注意情報が出たことを受けまして、日頃からの地震への備えの再確認などについても要請をいたしたところであります。今回の地震による文部科学省関係の被害につきましては、12月9日6時時点でありますけれども、学校管理下における児童生徒等の人的被害の報告は受けておりませんが、物的被害といたしましては学校施設で窓ガラス等の破損等、7件の被害があったとの報告を受けているところであります。なお、青森県では本日、公立の小中学校及び高校につきまして139校が休校する予定との報告を受けております。また、本日15時から地震調査研究推進本部地震調査委員会の臨時会を開催いたしまして、今回の地震活動について審議をいたしまして、地震の発生メカニズムなどの総合的な評価を行う予定であり、私も出席をする予定にしております。引き続き関係機関と連携し、情報収集に努めるとともに、児童生徒等の安全確保に全力を尽くしてまいります。私からは以上です。
(注)「二次被害防止」は、正しくは「二次災害防止」です。
記者)
ノーベル賞の受賞をされる坂口先生、北川先生がストックホルムでの会見ですとか、あと取材に対していずれも基礎研究への支援が重要であることを強調されました。お二人は、大臣を表敬訪問された際にも同じ趣旨の発言をされたと承知しておりますけれども、授賞式を前に改めて訴えたのはこのことへの強い危機感の表れではないかという感じがいたしております。基礎研究への支援、また環境整備を今後どうするかということについて、改めて大臣のお考えを伺いたいと思います。
大臣)
基礎研究は貴重な知的資産を創造し、イノベーションの源泉となるものであります。先日、両先生とも直接お話をいたしまして、息の長い基礎研究を長期的に支える重要性を改めて認識をしたところであります。私もこの記者会見をはじめ、また国会でも質問等々ありましたけれども、そのことについて私からもそうした強い思いでありますとかについて御説明を申し上げてきたところであります。文部科学省では、これまでも研究者の自由な発想に基づく研究への支援、継続的・安定的な研究活動を支える基盤的経費の確保、トップレベルの国際的な研究拠点の形成等を通じて基礎研究を推進してきたところであります。加えて先月、「科学の再興」に関する有識者会議におきまして、第7期科学技術・イノベーション基本計画の策定に向けた提言が取りまとめられました。この中において、基礎研究力の強化のために新たな研究領域への挑戦に係る支援の抜本的な拡充や、研究者がより研究に専念できる環境の確保等の取組が示されたところであります。これを踏まえまして、文部科学省としては引き続き国立大学運営費交付金等の基盤的経費や科研費等の競争的研究費の確保に努めるなど、必要となる政策を総動員いたしまして、基礎研究力の抜本的な強化に取り組んでまいりたいと存じます。
記者)
大学入試について2点御質問です。まず、総合型・学校推薦型選抜などの年内入試が増加していると思うのですが、生徒それぞれの興味関心に特化したような専攻が広がることで大学での学びやその後のキャリア選択にどのような効果をもたらすのかというのが1点と、もう1点は26年度から年内の学力試験が解禁されたということで、入試の早期化の部分で生徒の進路選択にどう影響するとお考えかお聞かせ願いたいです。
大臣)
大学入学者選抜におきましては、学生の能力・意欲・適性などを多面的・総合的に評価・判定することが重要だと考えております。学力のみでなく、多面的・総合的な評価が組み合わせられた総合型選抜などを経まして、自分にとって必然性のある学びを大学において重ね、意欲的・主体的に学修に取り組むことにより学生が知的に成長することは卒業後に構造的な社会変容の中で次代を切り拓く上で意義があるものと考えているところであります。実際にそうした形で実際に進学をした方が、実際、研究現場であったりとか様々な現場で大変素晴らしい成果を上げているような例というものもお聞きをしているところであります。こうした人材育成を進めるためには、入試の改善にとどまらず、大学における学修の密度が高く、質・量ともに充実をすることが不可欠でありまして、大学教育の質的転換も喫緊の課題であると考えております。そのため、現在国会で審議がなされております補正予算案に200億円の追加を計上した「成長分野転換基金」では、特に大都市の大規模大学の人文学、社会科学系学部における学生・教員比率の改善や、数理・デジタル併修によりまして学修の質を高めることも支援することとしているところであります。なお、今年度の入試につきましては年内に行われる総合型選抜等であっても、合否の判断に当たって特定の教科の学力試験の結果が重視される恐れがあるのではないか、高校教育に対する影響が大きいのではないかといった指摘があることは承知をしております。文部科学省としても、今後、今年度に行われる入試の状況を検証し、次年度の大学入学者選抜実施要項の改定に向けまして、高校や大学団体などとしっかりと議論を進め、これらの懸念に対応してまいりたいと考えております。以上です。
記者)
今、インフルエンザ流行っていまして、治療薬のタミフルとかリレンザというのはウイルス表面の糖鎖に結合することで高い治療効果を発揮します。その糖鎖の研究については、日本は強みを持っていてヒューマングライコームプロジェクトも進めていますけれども、糖鎖分野への大臣の期待についてお聞かせいただきたいのと、また糖鎖以外にも日本に強みのある先端科学技術分野はあると思うのですけれども、それらについてどのように支援していくのか、お考えを教えてください。
大臣)
「糖鎖」は、ゲノム、タンパク質とともに「第3の生命鎖」と呼ばれておりまして、数多くの生命現象や疾患に関与するとされているものであり、その知見を基盤とした創薬や診断技術の開発が期待をされているところであります。今御指摘のあったインフルエンザのお薬だったりというものも、やはり糖鎖との関係と言いますか、と大変密接に結びついていたり、元々血液型も糖鎖によって決まるというようなことだというふうに承知をしているところであります。その全容はまだ未解明ではありますけれども、糖鎖関連の遺伝子の6割は日本人研究者によって同定・解析をされ、現在使用されている多くの糖鎖解析技術は日本初であるなど、我が国はこれまで世界の糖鎖研究をリードしてきたというふうに承知をしております。糖鎖研究につきましては、東海国立大学機構を中心とする「ヒューマングライコームプロジェクト」が先導しているところでありまして、生命科学の革新などの大きな成果を上げることを期待しております。基礎研究による成果は、短期間で社会を変えるほどのインパクトを与え得るものだと考えております。この糖鎖に限らず、そうした我が国が強みを持っている分野というものをしっかりと認識をした上で、文部科学省としては現在検討が進められております次期「科学技術・イノベーション基本計画」においても、日本が強みを有するこれらの先端分野の研究を推進すべく、関係府省と連携をして具体的な推進策についてしっかりと検討をしてまいりたいと存じます。
記者)
先日、青森県の宮下知事が核融合の原型炉の誘致を表明しました。10月には茨城県の大井川知事も同じように誘致を表明していまして、高市政権では核融合を重要分野に位置づけるといった、そういった施策とも連動しているかと思うのですけれども、自治体側でこういった取組が行われていて表明が行われてきていることについて、まず受け止めをお聞かせ願いたいのと、あと現状、原型炉につきましては文科省の審議会で、原型炉開発総合戦略タスクフォースで、議論もされていますけれども、量子科学技術研究開発機構が当初の計画より縮小して2030年代にも発電実証を実現するために縮小した計画を構想しておりますけれども、ちょっと今議論が続いていない状況でして、今後、発電実証に向けてどう議論を加速させていくのかについてのお考えをお聞かせください。
大臣)
青森県知事が昨日、フュージョンの原型炉の誘致を表明されたということは承知をしているところであります。青森県は、炉材料照射施設の工学実証、燃料サイクル研究やブランケット開発といった将来の原型炉を見据えました研究開発の拠点といたしまして、これまでも重要な役割を果たしていただいているところであります。現時点におきまして、政府としてフュージョンの原型炉の建設判断は行っておらず、立地についてコメントできる状況にはありませんけれども、一方で今お話がありましたように茨城県からも誘致の表明があったところであります。こうして地元から前向きな意思表明を頂戴するということは、フュージョンエネルギーの実現の機運を高めるものというふうに受け止めているところであります。また、文部科学省の有識者会議におきまして提案されました原型炉計画も含めまして、フュージョンエネルギーの社会実装に向けたロードマップを内閣府の有識者会議において検討しているところと承知をしております。文部科学省としては、この議論に最大限貢献するとともに、量子科学技術研究開発機構(QST)における原型炉を見据えた研究開発を着実に推進してまいりたいと存じます。
記者)
旧統一教会の関係で質問させてください。旧統一教会の田中会長が辞任を表明するという報道が出ています。まだ被害の回復というのは十分なされていない段階でのこういうことだと思うのですけれども、この時期にやめられるということは、大臣はどうお考えでしょうか。責任を果たしたということになるのでしょうかということを伺いたいのと、あと大臣からより求めたい、旧統一教会側に対応として求めたいことがあればぜひお聞かせください。
大臣)
お尋ねのような報道があることは承知をしておりますが、逐一コメントをすることは控えさせていただきたいと存じます。いずれにいたしましても、文部科学省といたしましては、旧統一教会への対応について引き続き万全を期してまいります。以上です。
(了)
大臣官房総務課広報室