盛山正仁文部科学大臣記者会見録(令和6年7月12日)

令和6年7月12日(金曜日)
教育、科学技術・学術

キーワード

学校プールの管理の在り方,福井県(原子力研究開発機構もんじゅ、ふげん)の視察,全国学力・学習状況調査のCBT化,ITER計画の進捗状況,SLIMの成果,博士論文の審査の基準、文系の博士号取得促進

盛山正仁文部科学大臣記者会見映像版

令和6年7月12日(金曜日)に行われた、盛山正仁文部科学大臣の記者会見の映像です。

令和6年7月12日盛山正仁文部科学大臣記者会見

令和6年7月12日盛山正仁文部科学大臣記者会見(※「YouTube」文部科学省動画チャンネルへリンク)

盛山正仁文部科学大臣記者会見テキスト版

大臣)
 冒頭、今日は私から2件ございます。まず、一昨日10日の水曜日、「学校における働き方改革に配慮した学校プールの管理の在り方について」という通知を各教育委員会宛てに発出をいたしました。本年5月に中央教育審議会の特別部会で取りまとめられた審議のまとめにおいて、学校における働き方改革のさらなる加速化を図ることとされておりますが、昨今、残念ながら学校プールの管理業務に関する教師等の負担が重くなっており、給水の止め忘れなどにより、その教師等に対して水道料金の損害賠償請求がなされる事例が見受けられております。今回の通知は、各学校設置者に対し、このような教師等の負担を軽減するため、指定管理者制度の活用や管理業務の民間委託、公営・民営プールの活用等を積極的に御検討いただくことを依頼するものとなります。文部科学省としては、引き続き、学校プールの管理業務も含め、学校における働き方改革の加速化を進めてまいります。
 それから2件目でございます。昨日ですが、福井県敦賀市にあります日本原子力研究開発機構の施設を訪問しました。高速増殖原型炉「もんじゅ」、もう一つ新型転換炉原型炉「ふげん」、この二つを視察して、廃止措置の進捗状況を確認するとともに、現場で従事される方々との意見交換を行いました。様々な技術開発や実証を行いつつ、計画的に廃止措置を進めていく必要があることを改めて実感いたしました。今回の視察を通して得られたことを踏まえて、引き続き「もんじゅ」・「ふげん」の廃止措置が安全かつ着実に進捗するよう、文部科学省として、しっかりと取り組んでまいります。以上、2件であります。
 
記者)
 全国学力・学習状況調査が2027年度から全面オンライン化する方針が示されましたが、この件についての大臣のお考えや、学校のネットワーク環境などの課題への対策があればお願いします。
 
大臣)
 全国学力・学習状況調査につきましては、令和3年7月に取りまとめたCBT化の基本方針に基づいて、CBTのメリットを生かすための検討を重ねてまいりました。本年4月に、令和7年度調査の中学校理科をCBTで実施することを決定しております。そして、昨日(※)開催された専門家会議において、令和8年度調査の中学校英語4技能、四つというのは聞くこと、読むこと、書くこと、話すこと、全てについてCBTで実施をし、令和9年度からは、小学校・中学校ともにCBTに全面移行するという工程表の案をお示しをいたしました。当省としては、CBT化により、教育委員会や学校に対して、より細やかなフィードバックを行えるようになるなど、調査結果の活用可能性が広がるものと期待しています。今後、教育委員会や学校関係者の意見もよく聴きながら、令和8年度以降の調査のCBT化について、引き続き検討を進めてまいります。以上です。
※)「昨日」は、正しくは「先日」です 。(会議は7月8日に実施。)
 
記者)
 先日、ITER機構が本体部分の改修作業でITERの運転開始を9年延期する案を示しました。これについての大臣の受け止めと、文科省としてどのように対応していくか教えてください。
 
大臣)
 前回もお話したかなと思うのですけれども、僕の記憶間違いだったらごめんなさい。先月のITERの理事会、これはヨーロッパの本部での理事会において、ITER機構から、計画の日程・コストなどを定める基本文書であります「ベースライン」、これの更新の提案がありました。そして、今回の提案では、新型コロナ感染症、機器の不具合の修理などによる影響があるものの、工程の大幅な入れ替えを行うことによって、2035年の「核融合運転」の開始時期には影響を与えない方針であると承知をしております。しかし、そうは言いながらも、その内容、特にコスト等の面において大きな変更があるものですから、他の関係者、これは他の国というんですかね、と連携しながら、そして我々の審議会、科学技術・学術審議会において、この提案の妥当性、日本の原型炉の研究開発計画への影響などを踏まえ、俯瞰的な議論を実施していただくこととしているわけです。そして、10日の水曜日に開催された審議会においては、ITER機構の副機構長、日本人の鎌田さんから、今般の更新の提案を含め、ITER計画の進捗状況の説明を受けたところでございます。引き続きITER計画の推進に向けて対応を検討していきたいと思います。
 
記者)
 政府の政策であるフュージョンエネルギー戦略、これへの影響というのはどのようにお考えでしょうか。
 
大臣)
 フュージョンエネルギーは、私というよりは内閣府のほうで政府全体のものを中心に取りまとめているわけでありますけれども、このITERの今の状況について、あるいは今後の審議会での議論、我々の対応について、適宜内閣府をはじめ関係府省とも共有をするというか、相談をするというか、調整をしていきたいと考えています。
 
記者)
 JAXAが今回2回連続で越夜後のSLIMとの通信再開に至らなかったと発表しました。このまま運用停止になるのかなというところなんですけども、SLIMが果たした役割であるとか、今後の課題についてお聞かせください。
 
大臣)
 これも前にこちらでも御説明しました。きれいな着地ではなかった、失敗かと思ってだいぶやきもきしたところでありますが、結果的には姿勢が悪かったということで、思っていたところから本当に10m以内ですか、ピンポイントで着陸できたということ、そして完全自律ロボット、動き回るようなものなんかも含めて、複数の世界初めての成果を上げた。そして、月の表面で得られたデータを地球に向けて送ってきた。そして、暑さ寒さが大変厳しい中、空気がないので日中は暑くなり夜は寒くなる、そんな中で、3度夜を越すと言うのですかね、夜と言っても半月ぐらい、15日ぐらいの長い夜なのですけれども、それを越すということで、思った以上にSLIMの機器が耐久性が強いと、そういうようなことも分かりました。そういう点では十分な成果を上げたのではないかなと思います。今後、JAXAにおいてこのSLIMの成果などの総括が行われるというふうに聞いております。観測データの解析は今現在やっているところだと思いますので、こういったデータが明らかになってくる、それを我々も期待しているところでございます。
 
記者)
 別の質問なんですけれども、一昨日未来の博士フェスで、大臣が博士論文、博士号、さらに三つめをという話をされていましたけれども、その中で論文の審査について、公平な物差しがないというようなことも言及されていましたが、それは何かこう統一的な基準が必要だということなのか、何かその辺の課題をクリアするようなアイデアがあるのか、お考えをもう少し詳しくお聞かせいただけたらなと思います。
 
大臣)
 それは全く大臣ということではなく、私的な応募者の愚痴をこぼしたというだけでございますが、私ではない共同で提出した方はちゃんとした立派な国立大学の教授でございまして、その教授ともちょっとひどいよねという話を我々はしていたということでございますが、これは私の論文が、私どもの論文が出来が悪かったから駄目ということになったということなのでしょうけれども、やはり学校の試験もそうですし、そしてもっとよく言われているのは博士、特に人文系の博士がですね、3年かかっても5年かかってもなかなか取れないというようなことを言われるわけでございまして、それであまり日本の博士の基準が厳しいのか、取りにくいということであれば、例えば海外からの留学生が日本に来ないと、他の国に行って人文系の博士を取ろうと、こういうふうな動きも出ていると聞いているものですから、やはりそこは世界的な、標準的な基準というのをやっぱり考えていかないといけないのではないでしょうかということは、これは大学等の関係者の方にも申し上げているところでございます。ただ、まだそこまでということですので、具体的なものができているわけではありません。例えば、僕の個人的な体験ですよ、大臣としての発言ではないと思って聞いていただきたいのですが、私は落選中、浪人中に大学で教えておりました。それで、採点をするわけですね。この人はAを付けていいのだろうか、Bを付けていいのだろうか、Cなのか、Dなのかすごく迷うわけなのです。半分とは言いませんけれども、3分の1はDを付けたいな、不可を付けたいなという誘惑に駆られるのですが、あまり厳しくすると学生からこの先生はけしからんという、そんなレポートがたくさん大学側にいくのだろうなと。最近学生さんがですね、学生さんは匿名でこの先生、自分が受けた授業について評価を出すわけですね。それで、あまり評判が悪くなると次どうなるかな、という気持ちもつい出てくるものですから、そうすると甘くなる。それで、私が教えたのは当然必修ではない授業なものですから、そこで不可を取っても他で単位さえ取っていればいいのではないかとは思うのですが、でもその学生さんが例えば3年生だったり4年生だったりする場合もあるものですから、そうすると卒業も近いだろうからなとか、つい余計なことを考えまして、心が千々に乱れながら少し甘く付けたりしておりました。他の先生とも話をするのですけれども、なかなかここはこうですよというものがないと思います。つまり、少なくとも私がやっていた10年ぐらい前は、これができれば何点です、これができればこうですというちゃんとした評価の基準がなかったと思います。それで、多分それは今でもそれほど大きく変わっていないのではないかと思うのです。学校によって授業の難易度も違うかもしれませんし、採点が違うのかもしれません。だからこそ、採用する企業の方がですね、これも某大学の学長から聞いたのですが、大学の成績は一切見ませんと。大学の成績というのはいい加減だから見ないというふうに言われているので、我々は困るのですよねと。そして、話が脱線して悪いのですけれども、今だんだん青田買いになりつつあります。採用選考の時期はね。そうすると、4年生の成績は全く見れないわけですが、なおかつ下手をすると3年生の前期まで、3年生の後期の成績を全く見ない形で採用活動をする、そんなことにもなっている。そうすると、余計に学校側としては生徒のことを慮ると少しいい成績を付けてやりたいなというような先生もやはり出てこられるようでありまして、悪循環なのですよね。やはり学校側としたら、4年生の最後まできちんと勉強してほしいという気持ちになるのです。その辺の関係もあって、某大学の学長さんからは、採用のことを何とかしてほしいと言われ、他方、企業、採用する側からは、それは学校側の採点があまり信頼できる内容ではないから我々は見ないのですよということで、そこら辺はやはり大学側でも、そして採用のやり方、時期という点では企業側にもお考えいただかないといけないところですねという話を某学長さんとしたことがあります。そんなこともあって余計に、私個人の話だけではなくて一般論として大学の採点、これは学部・大学院両方でしょうね。それから、論文の採点もそうでしょうし、そういったものを全てある程度学校によって、あるいは先生によって異なる、あるいはそれこそ他の国のスタンダードとあまり変わらない、そんなふうに本当はしていけるといいなというふうに考えてはおりますけれども、今名案はございません。
 
記者)
 それに付け加えてなんですけども、理系が博士人材は修士も含めて大学院の進学というのはよくあると思うのですけれども、文系でさらにハードルが高いような気がしていて、やっぱり論文が通りにくいというのもありますし、就職にどのように反映されるかというのも学生さんにとってはわかりにくいところかなと思いまして。理系も含めて、さらに特に文系で大学院進学のハードルを下げるためにどのようなことが必要だとお考えでしょうか。
 
大臣)
 一般論で言うと、これまで博士人材の関係で、経団連をはじめ各経済界の方々とお話をしてまいりました。トップの会長さんをはじめ、お話をしてまいりました。それで彼らに、彼らというか経済界の方々にお願いしているのは、まずは博士を取った人の処遇をまずよくしてください。そしてキャリアパス、将来どこまでどうなるのか、そういうのを分かりやすくしてくださいと。そうでないと、学生さんが大学院に進む、あるいは博士課程に進むというインセンティブがなかなか出ないでしょうと。やはり3年、5年かかる、それだけ授業料や生活費もかかる、そのリスクを取ってでも行こうと思うようなインセンティブをぜひお願いしますと。こういう話はしております。そして企業側はですね、これも一般的には当たり前なのですが、やはり理系のほうが即戦力に近いものですから、そこを取っているので、私が博士をもらって、私の役所の先輩の、当時の某知事に取りましたと報告に行ったら、「盛山君、何の役にもたたない博士を取ってどうするのだ」と、「落ちたときのことを考えて他の勉強をしたほうがいいのではないか」と言われたわけなのですが、やはり文系の博士というもののニーズは少ないと思います。それで、そういうことに対しても企業のほうにもいろいろ文科系の博士も役に立つと思いますよと、そういう観点で、理系だけではなく文理融合ということでございますが、そういうことも考えてくださいということを申し上げました。そして、さらにこれは大学あるいは学生さんにも伝えようとしているところなのですが、他の外国の企業、国際機関、そういったところでは博士がゴロゴロいます。そして、それは必ずしも理系ではない。企業のトップだとか、そういうところに博士がいっぱいいるわけですから、大学だけが、これは理系も含めてですが就職先ではない。アカデミアの世界だけではなくて、いろんなところで活躍する、そのための一つのステップなのですよと、トレーニングなのですよということを申し上げています。そしてもう一つ、つい先日、学士院での式がございまして、学士院の会長さんというのは佐々木毅先生という元東大の総長の方、政治学の先生ですが、そこでもちょっとそういう話は、私からではないですが、別の方から出まして、それに対して佐々木先生がおっしゃったことは、特にこれは東大のことを念頭におっしゃったのですが、文系のよくできる人間がなかなか、少なくとも東大に限って言うと、法学部や経済は大学院に行かない、行かなくて助手になる、あるいは海外の大学に留学をして、そして戻ってきて教授になる、そういうコースができてしまったものだから、なかなかそれが変わらないのでちょっと頭が痛い問題ですねという話もしておられました。大学側のほうとしても、やはり取り組んでもらうべき話があると思います。いろんな話をそれぞれの関係者の方が、それぞれのところで変えましょうと、変えていってこうしましょうという問題意識を持ってやっていただくことが大事ではないかなと思います。すみません。話が長くなりました。
 
(了)

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