盛山正仁文部科学大臣記者会見録(令和6年5月24日)

令和6年5月24日(金曜日)
教育、科学技術・学術、文化

キーワード

大宮国際中等教育学校・インターカルト日本語学校の視察、大学等卒業者及び高校卒業者の就職状況調査の結果、外国人留学生の在席状況・日本人学生の海外留学状況の調査結果、羽ばたく女性研究者賞授賞式の実施と若手女性研究者の活躍促進について、財政制度等審議会の建議について、文化財の殺虫殺菌措置に使用されるガスの販売終了に向けた対応、「創薬構想会議」の中間とりまとめを受けた大学病院の機能強化の方向性、中教審特別部会の「審議まとめ」に関する一部報道に対する文部科学省の要請について、文部科学省における次世代半導体研究開発の方向性、横浜市教委による同市教員のわいせつ事案の公判の傍聴への職員動員について

盛山正仁文部科学大臣記者会見映像版

令和6年5月24日(金曜日)に行われた、盛山正仁文部科学大臣の記者会見の映像です。

令和6年5月24日盛山正仁文部科学大臣記者会見

令和6年5月24日盛山正仁文部科学大臣記者会見(※「YouTube」文部科学省動画チャンネルへリンク)

盛山正仁文部科学大臣記者会見テキスト版

大臣)
 冒頭は今日、三つあります。まず1点目ですが、一昨日22日の水曜日、さいたま市立、これは市(いち)立という市立です、大宮国際中等教育学校、中等教育学校ということですから中学と高校が合わさったものです、と都内にあるインターカルト日本語学校の二つの学校を視察いたしました。大宮国際中等教育学校では、国際バカロレアプログラムでの探究的な学びや、オールイングリッシュでの生徒のやり取りなど、特色ある実践を御紹介していただき、これからの時代に必要な力を育むための創意工夫について、多くの知見をいただいた、びっくりしたというところでございます。また、インターカルト日本語学校では、多様な外国人の方々のニーズに合わせたきめ細かなカリキュラムなどを御紹介いただくとともに、学生と意見交換を行い、日本での生活・学習の様子や今後どういう進路に進むことを考えているかなどについて伺うことができました。今回の視察の内容も踏まえ、学校現場での創意工夫を後押しする施策の充実や、外国人の方々に対する日本語教育の環境整備に引き続き取り組んでいきたいと考えています。
 2件目です。令和6年3月、この3月に卒業した学生等の就職状況の調査結果がまとまりましたので、御報告いたします。大学生の就職率は昨年と比べ0.8%上昇の98.1%、高校生の就職率は昨年と相変わらず98.0%となり、大学卒業者の就職率は、調査を開始した平成8年度以降の最高値でございます。これは、人手不足感が高まる中、採用活動に積極的な企業が増加し、学生が就職しやすい売り手市場が続いていることによるものと考えております。文部科学省としては、学校関係者や関係省庁などと連携し、まだ就職されていないまま卒業された方が一人でも多く就職できるよう、引き続き学校等の取組を促してまいりたいと考えています。
 最後、3点目です。外国人留学生の在籍状況や日本人学生の海外留学状況に関する最新の調査結果がまとまりましたので、御報告いたします。外国人留学生・日本人の海外留学生のいずれも、コロナ禍前の数字には戻っていないわけでありますが、高等教育機関及び日本語教育機関に在籍する外国人留学生数は、コロナ禍後初めて増加傾向となりまして、2023年時点で約28万人、対前年比2.1%増であります。日本人の海外留学生については、日本の機関が把握している留学者数については、2022年度において前年度から5倍以上の約6万人、海外の機関が把握している留学者数は、2021年において約4万人となっています。文部科学省としては、引き続き、グローバル人材育成に向けて、日本人の海外留学の増加と優秀な外国人留学生の受入れ、さらに、それを支える大学の国際化の好循環を実現すべく施策の推進に取り組んでまいります。私から以上3点です。
 
記者)
 昨日の23日に、ポーランド大使館にて国際的に活躍が期待される日本人の若手女性研究者を表彰する羽ばたく女性研究者賞の発表式が開催されましたが、日本の女性研究者の活躍促進に向けた課題ですとか、それを是正する取組について改めて教えてください。
 
大臣)
 今御指摘ありましたとおり、昨日、「第3回羽ばたく女性研究者賞」の授賞式が、国立研究開発法人科学技術研究機構(注)、JSTですね、これと駐日ポーランド共和国大使館との共催で開催され、3名の女性の研究者が受賞されたと承知しています。若手女性研究者の活躍を促進する上では、男性、女性両方の研究者がということにはなるのですが、研究とライフイベントの両立を図り、研究を円滑に継続できるようにしていくことが課題であると認識しております。このため、文部科学省においては、研究と出産・育児などのライフイベントの両立や、女性研究者の研究力向上を通じたリーダーの育成を支援する取組、優れた若手研究者が出産・育児による研究中断後に円滑に研究現場に復帰できるよう支援する取組などを実施しているところです。文部科学省として、引き続き、女性研究者の活躍促進に向け、力を入れて取り組んでいきたいと考えています。以上です。
(注)「国立研究開発法人科学技術研究機構」は、正しくは「国立研究開発法人科学技術振興機構」です。
 
 
記者)
 21日に財務省の財政制度等審議会が「我が国の財政運営の進むべき方向」という建議を出しました。この中で教員の処遇改善についても触れられておりまして、教職調整額の引き上げが適当ではないのではないかということですとか、あと、一律に給与水準を引き上げるのではなく、負担が大きい主任手当を引き上げるなどの、負担の軽重に応じたメリハリある給与体系とするといったようなことが書かれておりました。このあたり、先日の中教審の質の高い教師の確保特別部会の「審議のまとめ」の方策とは少し異なる見解のように感じるのですけれども、これについて大臣の受け止めを教えてください。
 
大臣)
 21日に、財務省の財政制度等審議会からそういう内容の建議が出されたということは承知しております。もちろんこれは審議会によってそれぞれの立場が異なります。あるいはメンバーが異なります。ですから、観点であり御発言の内容が違うというのは、これは自然なことかなと思いますが、我々のほう、中教審の特別部会でまとめられた「審議のまとめ」では、教師の業務の複雑性・困難性が増大し、教師不足の課題も指摘される中、教職の重要性を踏まえ、教師の処遇改善を図る必要があるとされております。具体的には、人材確保の趣旨も踏まえ、教職調整額の率について、現在の4%を少なくとも10%以上とすることが必要とされております。そしてそれだけ、そういう処遇だけではなく、若手教師へのサポートや学校内外との連携・調整の充実のため、「新たな職」を創設し、給料表上に新たな級を創設すること、あるいは職務の重要性や負荷を踏まえ、学級担任について手当額を加算すること、こういうことも言及されています。人材確保法の趣旨も踏まえた教師の処遇の優遇分は、昭和55年当時には大幅に今と違っていた、一般の方に比べて良かったと思うのですけれども、現在では0.35%までに低下して、ほとんど変わらなくなっているということであります。財政審がおっしゃるように、職務や勤務の状況に応じた給与体系とするということはそれなりに必要なことではありますが、既定の給与予算の範囲、要は財政審のほうは今の予算の中でやると、こういうことでございますので、その既定の給与予算の範囲にとらわれることなく、教職の重要性を踏まえた処遇改善、これをしていく必要があると私たちは考えているということです。
 
記者)
 博物館などの文化財に付く害虫やカビを駆除する燻蒸の件でお伺いしたいと思います。この有力なメーカーが販売中止を決めて、博物館の間で今後、燻蒸がやりにくくなってしまうのではないかという不安が広がっているのですけれども、販売するメーカーというのは他にも数社あるのですが、施工する業者や設備の問題で簡単に乗り換えるということができないみたいなのですが、この件に関する受け止めと、あと国として何か対策に乗り出すかどうかお聞かせください。
 
大臣)
 大変頭の痛い問題だと思います。文化財の殺虫殺菌措置の一つである燻蒸に使用するガスは、有害大気汚染物質の側面も有しているということでございまして、今年度で販売が終了予定の製品の主成分であります酸化エチレンは、環境省において事業者による排出抑制の自主的取組が求められている物質ということでございます。こういう環境省だけではなく、世界的な大気汚染物質の削減の動き、こういうものを踏まえなければならないわけでありまして、我々、文化財への生物被害対策につきましては、薬剤による殺虫など、化学的防除対策だけではなく、侵入経路を遮断するといった物理的な防除対策、あるいは水分・栄養源の除去など生物的な防除対策、こういったものを合理的に組み合わせて、文化財に影響を及ぼす有害生物を総合的に管理する「文化財IPM」、このIPMというのは総合的有害生物管理の英文の略称です、「文化財IPM」の重要性が高まっております。文化庁におきましては、「文化財の生物被害防止に関する日常管理の手引」こういったものの作成・周知や、保存や修理に関する研修などを通じて「文化財IPM」の重要性をこれまで周知しております。そして、東京文化財研究所においても、害虫の種の推定を補助する現場診断用ツールとしての「文化財害虫検索サイト」の立ち上げなどの取組を進めているところでありますが、引き続き、これまでの取組を進めるだけではなく、今回の販売終了による影響の把握あるいは代替方法等に関する調査あるいは情報収集を継続して、文化財保護に影響が生じることがないように、関係する機関・関係者と連携をしながら必要な対応を取っていきたいと考えていますということです。
 
記者)
 先日、官邸で行われている「創薬力の向上により国民に最新の医薬品を迅速に届けるための構想会議」が中間とりまとめをとりまとめました。その中では、大学病院の機能強化だとか、そういった文科省に関係するところも数多く含まれているのですけれども、大臣として受け止めと今後どのように政策にいかしていくのか教えてください。
 
大臣)
 官房副長官の村井さんを座長とする「創薬構想会議」の中間とりまとめということで、うちだけではないのですがいろんなことが言われていまして、当省の関係でも、今おっしゃった大学病院等の研究開発力の向上、こういったことが述べられているわけでございます。大学病院は、質の高い臨床研究あるいは治験の実施ということで、我が国の医学研究をけん引する役割を担っているわけでありますが、御案内のとおり今年4月からその他の業種同様に、医師の働き方改革ということで、医師の時間外労働等の上限規制ということで、大学病院に勤務する医師の研究に従事する時間が減少していくのではないかということが懸念されているところであります。我々としては、大学病院において、医師の働き方改革への対応、これは進めなければならないわけであります。そして、教育・研究・診療という三つの役割があるわけでございます。こういったところを踏まえながら、運営体制、経営面等も含めた必要な改革に取り組んでいく必要があると考えています。こういう改革を後押しする観点から、各大学病院が、その実情に応じて作成する改革プランの参考となる「大学病院改革ガイドライン」を策定するとともに、研究支援者を活用した取組等を支援する事業等により、大学病院における研究開発力の向上に向けた環境整備を行うということをしていきたいということで、大学病院に対する支援も含めまして、医療分野におけるさらなる研究環境の改善に向けて、できるだけの取組は講じたいと考えています。
 
記者)
 1点目の質の高い教師の確保に向けた中教審特別会議のとりまとめに関してなのですけれども、5月13日のとりまとめに関する一部の報道に対して、17日付で一面的な報道であるなどという抗議文を文科省として公表されておりますが、抗議の意図を改めてお聞かせいただきたいのと、またこの抗議についてはインターネット上などでメディアに対する圧力ではないかという意見も散見されますが、こういった指摘に対する見解をお聞かせください。もう1点あわせてなのですけれども、一部報道機関側は一面的な報道という指摘は当たらないという反論のような見解を示しているようですが、この点に対する大臣の御意見もお聞かせください。
 
大臣)
 御指摘については、5月13日のNHKの報道についてでございますね。それで、我々のほうからお願いしたことは、多面的、公平公正に取り扱う報道をお願いしたいというものであります。その辺、特にどういうことかというと、教師の給与制度の背景や中央教育審議会における議論に触れることなく、「定額働かせ放題の枠組み」と言及するにとどまっていたものでございますので、我々としては、現行の給特法の仕組みや経緯・背景、教職調整額の仕組みを維持することとした中央教育審議会における議論の内容にも触れていただきたいということでのお願いであります。そういう点で、報道機関に対する圧力というような御批判もありますけれども、我々は圧力をかけようということではなくて、報道機関に対してできるだけ広い観点でいろいろこういうような議論がなされ、こういう取りまとめになっているのだということを報道してほしいということでございますので、NHKさんは一面的というふうに今おっしゃいましたけれども、我々としては、もう少し背景も含めてよく御理解をして報道していただきたいという要請をしたということでございます。
 
記者)
 少し前になりますけれども、文科省の「次世代半導体のアカデミアにおける研究開発等に関する検討会」が今後重点的に取り組むべき技術課題などをまとめた中間整理案を公表しました。この中では、次世代エッジ用AI半導体実現に向けたコア技術に重点すべきだといった内容が盛り込まれましたけれども、今後、文科省としてはどのように政策に反映させていくのか、大臣のお考えを教えていただけないでしょうか。
 
大臣)
 今御指摘があったとおり、「次世代半導体のアカデミアにおける研究開発等に関する検討会」、これを昨年設置をいたしまして、これまで5回にわたってアカデミアが重点的に取り組むべき技術課題等や研究開発の推進方策について議論をしてきたところでございます。そして、その中間取りまとめを3月だったと思いますが出したということであります。この検討会では、2030年代以降を見据えた、次世代半導体の創出・活用に向け、設計・デバイス・新材料などの統合的な研究開発、アカデミアから産業界へ円滑な成果の橋渡しができる体制、大学・高専等における半導体人材育成の強化、先端共用設備等の研究環境の整備などの必要性について御意見をいただきました。私自身も、先月北海道に参りまして、北大の寳金総長から大学院改革と連動した形での半導体人材育成の構想についてお話を伺い、意見交換もいたしましたし、あるいはラピダス社の先端半導体製造工場の建設現場を見せていただきまして、東会長と産業界の取組とアカデミアへの期待についてお話も伺ったところであります。文部科学省としては、今後、本検討会での意見も踏まえ、経済産業省をはじめとする関係府省とも連携をしながら、効果的な研究開発及び人材育成のための施策の具体化を進めていきたいと考えています。
 
記者)
 横浜市の教育委員会が5月21日に教員が被告となっているわいせつ事件の裁判に教育委員会の職員を動員していたと発表して謝罪をされています。この件について適切であるとお考えかどうか含めて改めて教えていただければと思います。合わせて、市教委に対して何らかの指導であるとかをされるお考えがあるのかというところもお聞かせいただければと思います。
 
大臣)
 横浜市教育委員会において、同市教員による児童生徒に対するわいせつ事案の公判に、事務局職員に傍聴の呼びかけですかね、動員といった方がいいのかもしれません、そういうことを行っていたということは承知しております。市のほうでは、今般の事案に対して、「一般の方が傍聴する機会を損なう行為であり、今後このようなことが起こらないよう教育委員会として徹底する」と述べております。文部科学省としても、今回の横浜市教育委員会の対応は、今の発言ではなくてこれまでの行動に対しては、適切ではなかったと考えております。今後、横浜市教育委員会がしっかり対応を今後ですね、していくものと期待をしておりますので、我々はその状況を見ていきたいということでございます。
 
記者)
 先ほどの毎日さんの1問目の質問の関係で、NHKへの抗議文の関係ですけれども、要請ですか、1点目が報道機関に要請するときの方法論として、インターネット上で要請文を公開しなくても報道機関に対して担当者と対話するという方法もあったと思うのですが、なぜ局長印を押した公文書を公開するという方法を取られたのか、その方法の判断についてお伺いしたいのと、もう1点はNHKさんの報道を見ていると、解説委員の方がこれまで、例えば教職調整額というのがどういう経緯で生まれて、当時4%というのはどういう算出だったのか、そういったことを丁寧に解説した番組も放送していたと思うのですが、なぜあのときだけとらまえて一面的だという風に感じられているのか、総合的に捉えて経緯を報道していたような気がするのですが、なぜあのときこのタイミングで要請となったのか、もう少し具体的に教えていただけないでしょうか。
 
大臣)
 今の御指摘のうちですね、インターネットでの公開については後で事務局のほうとやり取りをしてください。それで、これまでにも別にNHKさんだけには限りませんが、マスミさんに対して我々が思っていることと違うような報道がなされた場合、あるいは場合によっては事実の誤認があった場合、何らかの形でこれまで我々のほうから文章その他で御連絡をしている、あるいは電話での御連絡もあるのだろうと思います。そういうことがあるのではないかと思います。そして2点目の話は、まず最初、5月13日の報道でですね、定額働かせ放題という部分が前面に出てきたものですから、それに対してもう少し詳しくやってくださいということを言ったものであり、多分その後、解説委員かな、論説委員かな、どちらか、言葉が不適切だったらごめんなさい。その方が丁寧に話をされたというのはその後の番組だったのではないかなと思います。いずれにしても、我々としては定額働かせ放題という、そういうような部分だけではなく、処遇の改善もこれも大事でございますが、残業時間の規制でございますとか、どうやって職員を増やしていくかですとか、そういったことも含めて全体的にあの提言では触れられているわけでございますので、教師の今の働いている環境をどのようにしていくか、改善していくかということを我々文科省ではなく特別部会の先生方がこういうふうに考えているということでまとめているわけでございますので、そういうような背景を踏まえて十分に報道していただきたいという、そういう趣旨であります。
 
(了)

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