盛山正仁文部科学大臣記者会見録(令和6年5月10日)

令和6年5月10日(金曜日)
教育、科学技術・学術

キーワード

ベトナム・タイへの出張,国立極地研究所および日立製作所中央研究所の視察,埼玉県・千葉県・神奈川県知事による、居住地域にとらわれない子ども施策の実現等に向けた要望について,国立大学の学費の在り方について,令和5年度英語教育実施状況調査の結果と今後の取組について,北海道大学における研究室の運営に関する報道について,タイにおいて日本型の高等専門教育制度が受け入れられた要因について

盛山正仁文部科学大臣記者会見映像版

令和6年5月10日(金曜日)に行われた、盛山正仁文部科学大臣の記者会見の映像です。

令和6年5月10日盛山正仁文部科学大臣記者会見

令和6年5月10日盛山正仁文部科学大臣記者会見(※「YouTube」文部科学省動画チャンネルへリンク)

盛山正仁文部科学大臣記者会見テキスト版

大臣)
 冒頭、二つございます。まず最初は、御案内のとおり4月28日の日曜日から5月2日木曜日の朝にかけまして、ベトナムとタイへ出張をしてまいりました。今回の出張では、成長著しいASEAN諸国と、学生などの交流をはじめ、科学技術や文化・スポーツなど広範な分野における連携・協力に関して意見交換や視察を行いました。ベトナムでは、ソン外務大臣と会談し、半導体分野等における人材養成面での連携や、文化・芸術分野での協力関係の深化について意見交換を行うとともに、海賊版サイト対策等に対して両国が連携する重要性についても呼びかけをいたしました。タイでは、パームプーム教育大臣やスパマート高等教育・科学・研究・イノベーション大臣と会談し、人的交流の強化や新たに創設したASEAN基金の活用をはじめ、科学技術分野での連携に関しての意見交換を行いました。また、バンコク日本人学校の特色ある教育活動を視察するとともに、日本型教育の海外展開の好事例であるタイ高専や、日本から帰国した元留学生が中心となって設立されました泰日工業大学において、教員や学生等と交流し、人的交流の意義や二国間関係における重要性を再認識いたしました。昨年、50周年を迎えたASEAN諸国との関係は、いまや日本が学ぶべき面も多く、今回の視察を踏まえた上で、日本とASEANがそれぞれの強みを持ちより、「世代を超えた心と心のパートナー」として、次の50年に向けた歩みを進めてまいりたいと考えています。
 もう1点です。これは一昨日ですが、8日水曜日、国立極地研究所と日立製作所中央研究所を視察いたしました。国立極地研究所では、南極で採取された、過去の空気が閉じ込められた氷に関する研究などを視察し、地球環境変動の解明に向けて、極域における研究観測の重要性を実感しました。日立製作所中央研究所では、量子コンピューターや産業用メタバースなど、最先端の研究開発の現状を視察するとともに、博士人材の活躍促進に向けた方策などについて意見交換を行い、官民が連携して取組を進める必要性を再認識いたしました。今回の視察を踏まえ、南極及び北極における極地研究の推進や、博士人材の活躍促進を含め、関連施策の充実に引き続き取り組んでまいります。私からは以上2点です。
 
記者)
 先日の埼玉・千葉・神奈川の3県知事が要望書を出したことについて伺います。要望書では、税収の多い東京都が高校の授業料の無償化、給食費の無償化を打ち出していて、その周辺自治体と格差が拡大していると主張しています。この地域間格差の状況を大臣はどのように御認識されているかということと、国としてこの格差を是正していくべきかどうかも含めての見解をお聞かせていただけますか。
 
大臣)
 今御指摘がありましたとおり、先日7日、埼玉県・千葉県・神奈川県の3県の知事の訪問を受けまして、三知事からは高校授業料の所得制限の撤廃等について、国において支援を行うよう要望がありました。国における高校生等への修学支援は、限られた財源を有効活用する観点から、より教育の機会均等に資するよう支援の充実を図ってきたところであります。他方、各地方自治体においては、地域ごとの私立高校等の実情を踏まえた上で、国の支援に上乗せをして独自の支援が行われております。文部科学省としては、教育の機会均等を図るために基盤として行う国の支援と、それに上乗せして取り組まれる地方自治体の独自支援が一体となって、教育費負担の軽減が図られることが望ましいと考えています。それから、高校生等の修学支援に係る所得制限の見直しについては、様々な教育施策の中で、総合的な観点から考える必要があると思いますけれども、引き続き、教育負担の軽減を着実に進めてまいりたいと考えているところです。そして、自治体間の格差、特に東京都との違いということでありますが、これについて一般論として言うと、それぞれの自治体が独自の支援をなされる、取り組むべきものであるということではないかと思いますけれども、なかなかそれ以上のところ、個別の自治体についてどのようにすべきであるということを我々国のほうが申し上げる立場ではありませんよねということで、3県の知事とはお話をしたところでございます。
 
記者)
 冒頭に発言がありました8日の日立研究所の訪問なのですけれども、博士人材の活躍促進について意見交換されたということですけれども、研究所からどのような期待ですとか意見が寄せられたのかという点を御紹介いただけますでしょうか。
 
大臣)
 日立の中央研究所、新しくてすごく立派な施設で、そこで量子コンピューターや産業用のメタバースなどの説明を受けた後で意見交換というところで出た話なのですけれども、日立さんは何人だったっけな、千数百人の博士を抱えておられるということで、社長自身も博士であるということで、我々は大変力を入れておりますと。そして、お相手をしていただいたトップの西澤さんという常務執行役の方も、自分も博士なのだけれども、御自身は大学で博士を取ってから就職しましたということでありました。それで、日立に入られてから博士を取られる、そういったことへの支援もしているし、西澤常務のように博士で採用している人、そういうような人がいろいろいて、我々、我々というのは日立さんという意味ですが、日立さんとしてはそれなりに処遇のことも含めて力を入れてやっているつもりですと。そして、やはり博士が多いということでいろんな議論が進む、そういう点で手厚いというか、いろんな議論が進んでいったりする、そういうようなお話がありました。他方、私のほうからは、処遇を、博士の人の初任給だとか、それを手厚くしていただいているのはありがたいことで素晴らしいことだと思いますが、3年か5年か分かりませんですけれども、人によっても違いがありますから、その間、授業料と生活費もかかるし、それから博士が取れるかどうか分からない、そういうようなところで学生さんが博士課程に進もうかなと思ってもらえるようなインセンティブに相当するぐらいの差なのでしょうかねと、そんな話をしまして、つまりもう少し処遇をあげてもらうだとか、博士になったら、たまたま社長は博士ですけれども、こうですよといったような、そういうようなものがないとなかなか博士にいこうという強いインセンティブにならないのではないでしょうか。そこら辺ももう少し御検討してもらえるとありがたいですねと話をしました。それに対しては、やはり一定の役員、特に日立がそういう企業だからだとは思いますけれども、やはり博士が多くいて博士でいろんな議論をする、自分の研究をして、博士を取った分野以外の部分についても当然議論していかないといけないわけです。御自身が研究したところが、それがそのままずっと研究していくことになるのかもしれませんけれども、でもそれは何となくアウトオブデートになるのかもしれませんですよね。他のものに進んでいくかもしれない。そんなことも含めて応用力がある、そういうような人材として博士はやはり大事なのですよというふうに日立さんもお答えをいただいていますし、それから都市の計画ですとか、そういうような話のテーマも出たときに、そういうときには理工系の博士だけではなくて人文社会系の、そういうような人もやはりいてもらうといいと思うので、そういう人も博士という意味では活躍をしてもらう必要があるのだというか、一緒になって仕事をしていきたい、そんな話がございました。
 
記者)
 国立大の学費についてお伺いしたいと思います。高等教育の将来像を議論している中教審の特別部会の委員から、国立の学費を値上げして私立と公正な競争環境を整えて教育の質向上を図るべきだといった意見が出ているのですけれども、特別部会で今後、将来像を含めた、授業料を含めた教育費についてというのを議論のポイントとして掲げているところではあるのですけれども、大臣として今現在、53万円程度の国立大の学費について率直にどう思われるか、現時点で今後はどうあるべきかというお考えがもしあればお答えいただければと思います。
 
大臣)
 国立大学の授業料や入学料などの学費については、国立大学法人に自主性・自律性を持たせながらも、教育の機会均等や、計画的な人材養成を実現する観点から、適正な水準を確保するため、国が標準額を示し、その120%を上限として各法人が個別に設定する仕組みとなっています。国が示す標準額の設定にあたっては、国立大学の役割を踏まえつつ、私立大学の授業料水準と社会経済情勢や家計負担の状況も総合的に勘案する必要があると考えます。そして現在、中央教育審議会で「高等教育の在り方に関する特別部会」がございまして、そこで各高等教育機関における教育研究の質を向上させる方策などとともに、あわせて学生への支援方策の在り方等についても御議論をいただいているところでありますので、国立大学の学費についても、特別部会の御議論も踏まえつつ、丁寧に検討していくことが必要であるというふうに考えます。某学長さんは、そういうようなことを十分踏まえた上で、学生への支援方策、この充実も大事だということも合わせて御発言をされたものであるというふうに考えています。
 
記者)
 大臣自身は今の53万円程度の学費はどう思われますか。
 
大臣)
 ここで私がどうだと言ってしまうわけにもいかんでしょう。今申し上げたとおり、中教審の部会で検討中ということでございますので、特に御発言をされた方は某有力私大の方でもありますから、そういうような私大のお立場も踏まえた上で御発言になったものであると思います。それで、議論を進めていくためにというような御意思があって発言されたのではないですかね。学費を下げるのがいいのか、学費をある程度上げて奨学金なり何なり支援策を充実していくのか、あるいは特に私学の場合であれば寄付その他も含めてですね、やっていくのがいいのか、そういったことを含めて教育費というのをどのレベルにするべきか、場合によったらこの方の場合は特に海外の大学の学費、そういうところとの比較、これも念頭に置かれての御発言だったのかもしれません。
 
記者)
 昨日結果が公表された英語教育実施状況調査で、政府が目標とする水準の英語力がある中学3年と高校3年で初めて5割を達したということで、その一方で、自治体ごとに英語力の差がかなり見られたと思うのですけれども、この状況をどのように受け止めているのかというのと、この地域差を是正というか、改善させるためにはどのような取組が今後必要なのかという点について教えていただけますか。
 
大臣)
 全体として目標値としていた50%に到達したというのは大変ありがたいことだなというか、ここまで来たのかなと思います。生徒や教師の英語力は着実に向上しています。教育委員会や現場の先生方、子供たちの努力に敬意を表したいと思います。他方、今御指摘があったとおり、地域によって大きな差が、ばらつきがあるのも現状です。これをどうしていくのか、放置するつもりはありません。どうしていくのかということになるわけで、調査結果を分析してみますと、授業中に生徒が英語を使って活動する「言語活動」や教師の英語使用・英語力、ALTの活用状況等が生徒の英語力向上と関連していくことが分かってまいりました。これらの取組等の状況が、地域により異なっていることが要因ではないかと考えられますので、今後は、まず、今回明らかになった課題を当省から各地方の教育委員会の担当者にしっかりフィードバックをして、英語教育改善プランの見直しを含めて、主体的な検討を促していきたいと考えています。また、こうした自治体の取組を支援するため、文部科学省CBTシステムへの英語の「話すこと」などの問題の搭載、特に課題が見られる自治体への個別のデータ分析及び助言の実施、AIを用いた英語教育の実証研究を行うなど、スピード感を持って英語教育の改善を、特に地域間の改善、こういったものを進めていきたいと考えます。
 
記者)
 北海道大が理学研究院の化学部門で教授が不在になった研究室に残った教員において、教授会が内部基準を作り学生を配属しない、研究室業務に従事させないなどの対応をとっていたことが分かりました。当事者の教員らは不当に教育研究活動を阻害していてパワハラに当たると主張しています。この問題の背景として、講座制や人件費削減の影響を指摘する専門家もいますが、この問題についての御見解をお願いします。文科省として何か対応はとるのでしょうか。
 
大臣)
 まず、御指摘の報道は承知しておりますが、現在、大学において事実関係も含めて確認を行っているという報告を受けておりますので、恐縮ですがこの場でのコメントはここまでとさせていただきたいと思います。
 
記者)
 冒頭発言でありましたタイでの視察なのですけれども、高専を御覧になったということなのですが、日本の教育の方法がタイでどういうところが評価されているとお感じになられたのかということと、また高専という教育の方法がこれからタイ以外の国にも広がる可能性はあるのかというところを教えてください。
 
大臣)
 タイのタイ高専につきましては、タイ政府の教育ビジョンの実現に貢献するため、日本とタイの両政府の円借款協力事業として、日本の高専教育システムを導入した2校、二つの学校が設置をされております。タイ高専は、今年の3月に初めての卒業生を出したところでございます。タイ政府内でも今後の展開に向けた検討が進んでいると承知しておりますけれど、やはりなぜ評価されているのか、今のところ成功していると言われているのかということにつきましては、派遣された日本人の教員と現地の教員が協力して高度な専門教育を展開していることや、タイ政府も積極的に産学の連携や学生支援等に取り組んでいることで、我が国独自の高専制度がタイ国内でも浸透しつつある、評価されているのではないかと思います。他の国への展開につきましては、その国の産業構造ですとか教育制度の実情を踏まえた対応が重要となります。すでに高専制度を導入した3か国、これはタイとベトナムとモンゴルです、での展開を引き続き支援をするとともに、他国からも要望が来ておりますので、こういった要望等も踏まえた上で、必要な支援を検討していきたいと考えています。日本の教員も頑張っていただいていますし、日本の企業もですね、タイ高専に力を入れてくれていますので、そういったことが生徒さんにとってもですね、すごく身につく、役に立つと思っておられるのではないでしょうか。この春、3月に卒業した人は全員就職が決まってということのようでもございまして、私も卒業生だけではなく現役の生徒さんも含めての今やっている内容の発表というか、御説明も聞いたのですけれども、よく頑張っているなと思いました。だから、生徒さん自身の意欲がある、そういうような生徒さんが来ているということと、それに対してこれまでのタイの教育だけでは不十分だったかもしれない、そういうところを日本が機械というのかな、工具というのかな、そういうところも含めて先生のソフトの部分ですね、教え方を含めて、それをやることによってこれまでにはない高度な教育なのでしょうけれども、それがタイにおいて、少なくともタイにおいては今までなかったぐらいの教育ができるようになったということが評価されているのではないかと思います。
 
(了)

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