盛山正仁文部科学大臣記者会見録(令和6年3月29日)

令和6年3月29日(金曜日)
教育、科学技術・学術、文化、その他

キーワード

大臣と経団連の懇談会について、ムーンショット目標(フュージョンエネルギー)の新規PM(プロジェクトマネージャー)の公募開始、若田宇宙飛行士のJAXA退職について、国立劇場の再整備に向けた現状について、「博士人材活躍プラン」の実現に向けて、特別支援学級に在籍する児童生徒の指導に関する通知に対する大阪弁護士会の勧告、東京都の会計年度任用職員であるスクールカウンセラーの任用、宇都宮大学が学生に対し免除した授業料の返還を求めているという報道

盛山正仁文部科学大臣記者会見映像版

令和6年3月29日(金曜日)に行われた、盛山正仁文部科学大臣の記者会見の映像です。

令和6年3月29日盛山正仁文部科学大臣記者会見

令和6年3月29日盛山正仁文部科学大臣記者会見(※「YouTube」文部科学省動画チャンネルへリンク)

盛山正仁文部科学大臣記者会見テキスト版

大臣)
 冒頭、2件ございます。一昨日の27日水曜日、経団連からの招待と言うのでしょうか、十倉会長をはじめ、経団連との懇談会を行いました。私からは、博士人材の育成・活躍について、26日に取りまとめました「博士人材活躍プラン~博士をとろう~」を紹介し、博士人材の民間企業による採用の拡大や処遇の改善、従業員の博士号取得の支援などの7項目に対する協力をお願いしました。これに対して、経団連側からも、同じ方向性であるとの御発言をいただいたところであります。また、スタートアップエコシステムの構築・強化や、日本の文化芸術による新たな価値の創出と世界への発信などについても、官民連携の重要性を共有することができるなど、全体として大変有意義な意見交換となりました。今後も、こういった経団連さんとの意見交換の場を継続的に設けていきたいと考えています。
 2点目であります。ムーンショット型研究開発制度のフュージョンエネルギーに関する目標について、本日、科学技術振興機構JSTが公募を開始いたします。昨年末の総合科学技術・イノベーション会議で、新たな目標として追加されたことを受けまして、これまで、小型化・高度化などの新興技術など、研究開発の方向性について、国際ワークショップや核融合科学技術委員会で議論してまいりました。フュージョンエネルギーの実現には多様な分野の人材や技術が不可欠です。これまで、必ずしも関わりがなかった方々も含めて、幅広い分野の研究者からの挑戦的な提案を歓迎するものでございます。私からは以上2点です。
 
記者)
 宇宙飛行士の若田光一さんがJAXAを退職されることになりました。若田さんのこれまでの活動に対する評価や今後への期待について、大臣の所感をお聞かせください。
 
大臣)
 若田光一宇宙飛行士が31日付けでJAXAを退職されるということは承知しております。まずこれまでの長年の御活躍に心から敬意を表したいと思います。若田さんは日本人では最多の5回宇宙飛行を行いました。そして、日本人で初めてとなるISS国際宇宙ステーションの船長もお務めになるなど、日本の国際プレゼンスの発揮に大きく貢献されました。私は昨年の末、若田宇宙飛行士が司会をしてくださいまして、ISSに滞在中の古川宇宙飛行士との交信を行いました。若田宇宙飛行士の温かい人柄を、限られた時間でございましたがそのやり取りの中で感じたところでございます。今後も、若田さんが宇宙飛行士としての御経験や素晴らしいお人柄をいかされて、宇宙や科学の発展に関わっていただければいいなと思いますし、それに留まらず様々な分野で御活躍されることを期待しております。以上です。
 
記者)
 国立劇場のことについてお伺いします。入札が2回不調に終わりまして、建て替え計画が難航している国立劇場について、今週火曜に日本芸術文化振興会、芸文振の有識者検討会、昨日木曜には自民党でそれぞれプロジェクトチームが立ち上がったところです。特に自民のPTでは、現在の計画やPFI計画の手法の是非も含めてゼロベースから話し合っていく方針ということでした。昨年10月の9回以降、新たな動きがない現状につきまして伝統芸能の後継者育成や継承という面からも一刻も早い現状解決を望む声が多くあると思います。改めて、芸文振を所轄する担当省庁としての大臣の現状認識と、新年度の骨太の方針や概算要求も見据えた考えがもしあればお聞かせください。
 
大臣)
 今お話がありましたように、独立行政法人日本芸術文化振興会では、国立劇場の再整備に向けて、なぜ入札不調に2回続けてなったのか、そういう要因の分析、そして論点の整理、そして入札要件の見直し、こういった方向性について検討するための有識者会議を開催しているということでございます。この検討状況を我々は踏まえながら、文部科学副大臣のもとに設置され、関係省庁から構成されるプロジェクトチームがございますので、ここで国立劇場の再整備に向けた整備計画の見直しについて検討を進めていく予定であります。そしてまた、先ほど御指摘がありましたように昨日、自民党の文化立国調査会が開催されました。その場でもいろんな御意見が出たというふうに我々も承知をしております。自民党のプロジェクトチームの後押しもいただきながらということになろうかと思いますが、先ほど来申し上げました芸文振の有識者会議、そして文部科学副大臣をはじめとする政府のもの、そういったものでですね、どのような形で今後、国立劇場の整備をどういう内容でいつ頃どういうふうにしていくのかということについて、しっかり取り組んでいきたいと思いますし、そういった検討と合わせてですね、骨太という言葉もありましたが、どのような予算要求ということにつなげていくのかということになっていくのではないかと思います。
 
記者)
 冒頭発表がありました「博士人材活躍プラン」について伺います。このプランは大臣の肝いりのプランだと思いますけれども、公表後に博士学生を指導する複数の大学教員にプランについての受け止めを取材しました。そうしたところ、野心的なプランだということではあるのですけれども、博士は量より質なのではないかとか、博士号取得を乱発するのではなくて博士の育成はRU11に限るなど、特定の大学で博士を育成すべきでは、あるいはポスドク1万人計画の再来になるのではないか、そういう厳しい声もかなり上がりました。こういった声について大臣の所感を伺えないでしょうか。
 
大臣)
 いろんなことをおっしゃる方がいらっしゃると思います。ただ、日本の博士がなぜ、例えば人口100万人当たりでいいのですけれども他の国に比べて少ないのか、そういったことも含めて考えていかないといけないと思います。そしてまた、いろいろ言われているわけなのですが、論文がね、まず数が少ない、落ちてきたということですかね。そして、中国なんかに抜かれて、それからトップ10だの何だの引用されるものがじり貧になっている。結局、研究や何やのトップの部分がだんだんだんだん弱ってきてこういうことを言われているわけですから、そういったことをもう1回高みを目指していくためには、やはり底辺を広げないとですね、これは別に博士に限った話ではないと思います。スポーツでもどんな分野でそうだと思いますが、ある程度たくさんの人が入ってこないと高みを目指せないのではないかというのが我々の問題意識でございます。そしてまた、博士というか大学院に対しての考え方が、日本の考え方が世界のスタンダードに合っているのかということもやはり問題意識を持ってもらう必要があるのではないかなと思うのですね。理工系の博士もそうですし、より社文系というのですかね、そちらのほうがそうではないかと思うのですけれども、なかなか博士が取れない、取りにくい、海外であればもっと普通に何年間かで取れている。そこのところの考え方、物差しの差というのがあるのではないかなと思います。そうすると、そんなことをやっていると、つまり内にこもったというのですかね、これまでの考え方だけであれば博士を取ろうという人が、海外の、仮に人がどこに行こうかと思ったときに日本を選ばないですよね。他の国を選んで行きますね。それから、日本の国内にいる日本人にとってもあまりうまくないと思うし、そして経団連さんからも言われたことではあるのですけれども、スタートアップ、ベンチャー、アントレプレナー、何と言ってもいいのですけれども、そういうところに対しての大学側というか、アカデミアのですね、働きかけなり取組というのは日本はすごく圧倒的に限られているのではないか、やはりお金を儲けるというか、会社を作るというか、そういうことはやはりアカデミア、あるいは大学、大学院があまりやることではないのだと、そういうのは他の企業に任せればいいのだと、自分たちは研究をするのだという考え方が少し強すぎるのではないのかという御批判もいただいているところでありました。要は、基礎研究はいろいろ日本は進んでいるけれども、そこから先がうまくいかないということもよく言われるわけなのです。そのような御批判も含めて、日本の体制を変えていかないといけないというような意識でこういう博士人材のというタスクフォースを作って、それで博士になったら何かいいことがあるのですかと、就職するのに大学院、例えば修士であっても行くと遅れるし、年も食うし難しくなる。ましてや博士なんか大学に残る人以外行っても仕方がないというような、そういうような常識というのですかね、考え方自身も変えてもらわないといけないです。そういうことを含めて、今取組をしているところでございますので、これから経団連さん他経済界の方からは前向きに受け止めていただいているところでありますけれども、進むべき道筋やポスドク問題で言われたような大学だけではないので、他にもいろいろあるのだからそういうところを含めて大きく羽ばたいていってほしい、そしてまた大学院、博士を取ることによってメリットが感じられるような、活躍の場が広がるような、そういうような社会を作っていければと思います。
 
記者)
 追加で質問なのですけれども、大目標ですと博士号取得者は2040年には年間3倍以上になる見通しですけれども、学生から上がるいわゆるストレートドクター、社会人、あと留学生、これの比率、ポートフォリオはどのように考えているのでしょうか。
 
大臣)
 具体的にというところはありませんが、今でもね結構社会人は意外に多いですよね。4割ぐらいが社会人でございますので、そういうのも含めて社会人の方が戻ってきやすいような、大学院でドクターコースに進めるように、そういうようなところは大学側の方でもちょっと工夫をしていただければいいなと思います。学卒の人も含めて別に差を付けるわけではないですから、うまく進んでいっていただければありがたいなとは思っております。
 
記者)
 留学生は増やさなければいけない状況だと思うのですけれども、留学生を増やすとなると例えば非同志国の外国人が入ってきた場合、外国への技術流出の懸念があると思います。あるいは生活費相当を支援するということですけれども、留学生にも支援して母国に帰られると日本の税金が海外に流出する懸念もあります。こういう留学生の入学の扱いですとか、博士取得後に日本にとどめるかどうかという点について、大臣は法務副大臣も務められていらっしゃいましたけれども、お考えを教えていただけるとありがたいです。
 
大臣)
 まずはやはり海外の人に日本で学びたいと思えるような環境を作ることが大事でしょうね。日本に行っても仕方がないよと思われてしまうとせっかくの人材が来なくなる。そしてまた、大学院を出て母国かあるいは他の国か分かりませんが行くというのではなく、せっかく日本で学んで、そして日本の企業でさらに勤めていただいて御活躍いただくほうがやはり望ましいわけですから、日本自身のプレゼンスというのかな、経済力を含めてそういったのを高めるものとセットで留学生をもっと増やせるかであり、そして留学生で博士を取った人をもっと日本の中で活躍をしていただく、そういうふうな場をどう作っていくのかというところがポイントではないかと思います。
 
記者)
 大阪弁護士会が先日、障害がある特別支援学級の児童生徒について通常学級で学ぶ時間の週の授業の半分以下とするように求めた2022年4月の文科省通知に対して、インクルーシブ教育を受ける権利を侵害し、不当な差別に当たる恐れがあるということで撤回勧告を出しました。そのことについて大臣としての受け止めを教えてください。それと、申し訳ないのですけれども、東京都の会計年度任用職員のスクールカウンセラー250人が今年度で雇い止めになることになりまして、大規模な雇い止めは教育現場への影響を避けられないと思います。文科省としてスクールカウンセラーの配置拡充を進められているということで、このことについての受け止めについてもお願いします。
 
大臣)
 最初の点でございますけれども、令和4年4月の文部科学省通知というのは、当時、一部の自治体で、特別支援学級に在籍する児童生徒が、大半の時間を通常の学級で学び、特別支援学級での障害の状態などに応じた特別な指導を十分に受けていない実態があることが明らかになったことから、それまで示してきた内容をより明確化するために、改めて周知するために出したものということになります。それで、その内容なのですけれども、これはインクルーシブ教育というものを目指したものであるというふうに我々は考えておりますので、大阪弁護士会さんがなぜこういうような勧告という名前のですね、発表をされたのか、我々は理解できませんですけれども、私どもとしては、引き続き、通知の趣旨を正しく理解していただけるよう、様々な機会を通じて、周知・情報発信に努めたいと考えます。
それから、東京都のスクールカウンセラーの件でございますけれども、これも国会でも答弁しておりますけれども、スクールカウンセラー等の採用条件や任用方法については、各自治体の権限と責任の下、適切に判断されるべきものということであります。そして、会計年度任用職員の運用についての再任用についてこうすべきですよという旨は、令和2年2月に各教育委員会等に対して既に周知をしております。ということで、我々としては引き続き、必要な周知徹底、あるいは必要な支援はやってまいりますけれども、あくまでまずは各自治体、教育委員会のほうで御判断されるべき問題かと思います。
 
記者)
 国立宇都宮大学の国際学部のフィリピン人の女性、この方は先ほどの話にも出ましたが外国人の方で定住者として8歳のときに日本に来てずっと勉強をしてきて、親が貧しいものだから国の支援制度に基づいて授業料を3分の1に下げてもらって、それで奨学金給付も受けて学んでいたのですけれども、急に昨年の秋に大学は親の所得区分がちょっと変わったということでそれまで半期で8万9,300円だったのを17万8,000円に授業料を引き上げると。女性もびっくりして親は変わっていない、貧乏のままのはずだということで、日本学生機構から大学に再判定を求めました。親の所得の。そうしたら今期の後半の授業料はそのままだと、17万8,000円に上がったままだと。それに加えて、一昨年の女性が3年生だったときから遡って再判定が必要なので全部上がってしまいますよということで44万円、これを払いなさいと。これを通告したのは3月8日なんですよ。29日までに払わないと、3週間で44万円払わないと除籍だと。除籍になれば全部パーです。女性がせめて分割払いにしてくれと言っているのだけれども、大学側は聞かないと。そのデッドラインが今日なんですよ。これは適正な運用なのか、学問をする権利というのがあるわけです。能力に応じて。
 
大臣)
 東京新聞の報道については承知をしておりますが、詳細な状況を我々は把握しておりませんので、この場で詳しいコメントをすることはできません。その上で、一般論として申し上げれば、大学の授業料その他、これは大学や設置者において判断されるべきものであります。しかしながら、今回の報道でね、あるような徴収に当たって学生や保護者に対する丁寧な周知や情報発信がうまくできていたのか、そういうようなことについては課題が残るものではないかと考えております。
 
記者)
 発信だけではなくて対応が必要な案件ですよね。
 
大臣)
 それも含めて詳しく承知しておりません。そういうことをこれからどういうふうにするのか聞いていきたいと思います。
 
(了)

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