末松信介文部科学大臣記者会見録(令和4年3月29日)

令和4年3月29日(火曜日)
教育、科学技術・学術、文化

キーワード

映画「ドライブ・マイ・カー」の米国アカデミー賞国際長編映画賞受賞、南極地域観測隊の帰国、学校法人制度改革特別委員会報告書の取りまとめ、理化学研究所任期制研究員の雇用上限について、全国学力・学習状況調査結果を活用した専門家による追加分析報告について、国立研究開発法人理事長の任免について

末松信介文部科学大臣記者会見映像版

令和4年3月29日(火曜日)に行われた、末松信介文部科学大臣の定例記者会見の映像です。

令和4年3月29日末松信介文部科学大臣記者会見

令和4年3月29日末松信介文部科学大臣記者会見(※「YouTube」文部科学省動画チャンネルへリンク)

末松信介文部科学大臣記者会見テキスト版

大臣)
 冒頭、私から3件ございます。
 まず1件目は、濱口竜介監督作品の「ドライブ・マイ・カー」が、第94回米国アカデミー賞国際長編映画賞を受賞をされました。国際長編映画賞の受賞は、13年ぶりの2作目となります。カンヌ国際映画祭、ゴールデン・グローブ賞、英国アカデミー賞での受賞に続く歴史的な快挙でありまして、関係者の皆様に心からお祝いを申し上げます。前回は、平成21年(2009年)の「おくりびと」が受賞されたと聞いております。映画は、私たちにとって身近な総合芸術の一つでありまして、国際文化交流に大きく貢献をするものだと考えてございます。今回の受賞をきっかけにいたしまして、より一層日本映画への注目が高まりまして、我が国の文化への関心も高まることを期待をいたしてございます。文部科学省では、日本映画の振興のために映画製作への支援、海外映画祭への出品支援、若手映画作家等の育成などに取り組んできたところでございまして、「ドライブ・マイ・カー」の製作に対してもサポートを行ってきました。今後とも、これらの施策の充実を図りまして、魅力ある日本の文化の創造に尽くしてまいりたいと思います。
 次に、冒頭の2つ目でございます。昨日28日、南極地域観測隊の第62次越冬隊と63次夏隊が、無事に南極観測船「しらせ」で横須賀港に帰国をされました。今次隊は、感染防止を徹底いたしました結果、帰国まで感染者を出すことなく、当初の計画通りに観測や基地の設営など、任務を遂行していただくことができました。関係者のご努力に心から感謝を申し上げたいと存じます。なお、現在、昭和基地では、第63次越冬隊が順調に活動中でございます。今年度は、63次74名、うち夏の隊は63人(注1)でございます、43人。来月、帰国しました隊長や艦長に来省いただける予定でございます。直接報告が聞けることを楽しみにいたしております。また、観測隊が4月15日にオンラインで記者会見をしまして、4月17日にYouTubeで成果報告会を実施すると聞いておりますので、ぜひ、皆様方にもご覧をいただければと思っております。
 次に3件目でございます。学校法人制度改革特別委員会の報告書の取りまとめについてでございます。先週22日(火曜日)の第6回会合で、報告書案が主査一任となっていましたが、この度、本日付で報告書が取りまとまりましたのでご報告をいたします。内容の詳細は、既にお配りをいたしております資料をご覧いただければと存じます。私としましては、学校法人の沿革や多様性に配慮いたしまして、かつ、社会の要請に応え得る、実効性のある改革案をおまとめいただいたものと受け止めております。今後は、この報告書と、自民党から先週いただきました提言を踏まえまして、しかるべき法案の提出に向けまして、法制化作業と並行して、パブリックコメント等により、広く国民の皆様方のご意見も伺いつつ、着実に準備を進めていきたいと、そのように考えているところでございます。私からは、3件、以上でございます。

記者)
 1点、お尋ねします。理化学研究所労組が、25日に記者会見を開きまして、来年3月末で研究系の非正規雇用職員のおよそ600人が雇止めになるということで、その回避を求める旨の会見をしました。それだけ大量の雇止めが出るというのは非常に異例のことだと思いますし、科学技術立国を掲げる政府としても、決して好ましい事態ではないと思うのですが、大臣の見解を伺います。あわせて、2016年の就業規則制定日ではなく2013年の労働契約法施行時を、いわゆる10年ルールの起点としたことに違法性を指摘する専門家もいるんですが、それについてもご見解を伺えればと思います。

大臣)
 最終的には、労働法令を一つの大きな目安にはしていただきたいと思うんですけれども。昨日も、共産党の田村委員からも指摘がございまして、ご答弁を申し上げたんですけれども。まず、今のご質問に対してですけれども、一般論として申し上げますけれども、無期転換ルールの適用を意図的に避ける目的で雇止めをしたとしたならばですね、これは、労働契約法の趣旨に照らして全く望ましくないという、私はそのように考えております。これは、昨日も決算委員会の答弁で申し上げた通りでございます。その上で、理化学研究所におきましては、国家的・社会的ニーズの高い研究を機動的に進めるために、プロジェクトの廃止も含めた見直しを適切に行っております。これにより、時宜にかなった最先端のプロジェクトを立ち上げまして、そこに優れた若手研究者の人材も結集して、研究所の国際的な競争力を維持して向上していくというもの、そういうように、今、認識をいたしております。また、理化学研究所でありますけれども、労働組合との協議を重ねて、労働者にも周知をされてきた就業規定に基づき雇用の契約を結んでおりまして、だから、今ご指摘された雇用年数の起算日の扱いも含めた雇用上限についても、労働者の方々、働いておられる方々とのですね、対話も私は重ねてきているというように、そのように私は承知をいたしております。聞いております。いずれにしましても、独立行政法人であります理化学研究所におきましては、法人の自主性・自立性の下に業務運営が行われることが基本でございます。起算日の扱いも含めた雇用上限については、労働関係法令に基づいて、法人において適切に定めたものと承知をいたしております。文部科学省としても、引き続き、理化学研究所におきましては、職員の方々と対話を継続してほしいということと、丁寧にやっていただきたいと、そして、適切な人員の運営を行っていただくことが重要であるというように、そのように認識をいたしております。とにかく丁寧な対応をして話合いを重ねてほしいというのが、私の考えです。

記者)
 冒頭発言の法人改革の報告書についてお尋ねしたいんですけれども、法案提出に向けて準備を進めたいとおっしゃっていたんですが、今国会で提出するのか、できるのか、いつ頃提出するのかというのを1点伺いたいのと、あと、実効性がある改革案をまとめていただいたとおっしゃったんですけども、昨年12月に有識者会議が先に出していた改革案の、最高機関を評議員会にするという案からは大幅に修正になったと思うんですけど、見方によっては、それは後退であるとか骨抜きという見方もあるのではないのかなと思うんですが、この辺りに関する大臣の受け止めをお願いします。

大臣)
 いま申し上げた、まず、パブリックコメント等は求めてまいります。広く国民の皆さん方からご意見をいただいて、参考にしたいというふうに考えておりますから。今国会に提出が間に合うのかどうかということですけれども、これは内部の、法制局との調整もございますし、今のパブリックコメントのこともございますので、今のところは精一杯の努力はしてみたいというふうに考えています。国会の情勢も、ゴールデンウイークが明けたらどういう状況になるかということもよく見ておかないといけませんけれども、努力を続けておるということだけ申し上げたいと思います。それでですね、先ほど申し上げていた、12月でしたかね、増田先生のところのガバナンス改革会議の答申(注2)、それを受けて、新たに特別委員会を設けて、今回、案(注3)の提出をいただいたわけなんですけれども、並行して、自民党の部会でも、成案を得るための会議をずっと続けていっていただいていたことはご承知の通りだったと思います。それで、昨年末の学校法人ガバナンス会議では、評議員会を「最高監督・議決機関」とするなど、まったく新たな役割分担をご提言いただきましたが、その基本的な考え方は、他の公益法人と同等のガバナンス体制を構築するために、執行と監視・監督の役割の分離を行う点にあると認識をしております。今回の学校法人制度改革特別委員会の報告書案(注4)も、執行と監視・監督の役割の明確化、分離を基本的な考え方としておりまして、私は、目指すべき姿は、ガバナンス改革会議のご提言と同じであるというふうに考えているんです。その上で、ガバナンス改革会議では、そこで提言されました改革の理念を実効性のある形で実現するためには、現場の実態にも鑑みて、適切な見直しを加えた改革案を練り上げることが不可欠であったと。特別委員会では、ガバナンス会議の提言事項を参考としつつも、学校法人の持つ独自性などにも配慮して、具体の取りまとめに向けた議論をいただいてきたわけでございます。だから、ガバナンス改革会議を、こういう箇条書きに、得られた成案の箇条書きですね、項目、今回得られたところの箇条書きを見て、私は、評議員会を最高議決機関にするという点をもってですね、これが大きな違いであるということ、しかし、正すべきものは一体何か、どういうところを正していかなきゃいけないかと言いましたら、私は、よくよく考えていただいたら、増田先生のお話も不十分であるなということは、おっしゃってもですね、全否定されているわけでも何でもないので、やはり、今後、政府案として提出をしていかないといけませんので、そのためには、当然与党の、あるいは与野党のご理解も得なければならないという問題もありますので、そういう意味では、通ってこその法案でありますのでね、ずいぶんいろいろな皆さん方にご苦労いただいたものと私は思っております。

記者)
 私、昨日、全国学力学習調査の分析で報告された「レジリエントな学校」、これについて伺いたいと思います。この分析では、社会的・経済的に困難な状況で、かつ、長期の休業を迫られた学校であっても、例えば学校が子供たちとのつながりを維持することによって、結果的に学力の低下というのを回避できたと、そういう事例が統計的に発見されたということが結論付けられていました。こうした、その「レジリエントな学校」が発見されたということをですね、これやっぱり、公立学校の可能性を、やるべきことを感じてさせると思うんですけれども、こうしたことへの受け止めと、また、この結果をですね、今後の教育政策・学校政策にどんなふうに反映させていくのか、お考えを伺えればと思います。

大臣)
 この学力調査の結果につきまして、報告を、昨日かな、金曜日でしたか、ちょっと頂戴をしました、説明を受けました。それでですね、一番、冒頭申し上げたのは、やっぱり不利な状況の中でも一生懸命現場は頑張ってくれたんだなというのは本音でございますし、現場の先生は、そういう意味では喜びを感じておられると思うんです。感謝を申し上げたいと思います。「全国的な学力調査に関する専門家会議」において、専門家によります令和3年度全国学力・学習状況調査結果を活用した追加分析の報告が行われました。今、ご指摘があった通りです。それによれば、社会経済的に困難な状況にも関わらず、平均正答率がですね、相対的に高かったと、いわゆる「レジリエントな学校」があることが分かったということで、私もそうだったんだということを思ったんです。そうした学校の特徴としましては、1つは、コロナ下前から児童の学習状況を把握し、きめ細かに個別学習指導や自主学習を徹底できるような取組を行ってきたこと、そして、2つ目などは、臨時休業の期間中に、例えば学校図書館を開放するとか、また、児童と学校のつながりをできるだけ絶やさないようにするように努めるとか、学校が福祉的な役割を果たしていくということなどがいろいろと挙げられています。私としても、大変重要な知見が得られたと受け止めております。文部科学省としましては、こうした知見を参考としまして、取組を改善していただけるように、今回の分析結果を様々な機会を捉えて教育委員会や学校に周知をいたしていきたいと思っています。また、来年度予算では、家庭環境に関わらず、子供たちの必要な学習が継続できますようにですね、貧困等に起因する学力課題の解消のための教員定数の加配配置、あるいは、スクールソーシャルワーカーの配置充実、これは2,900校重点配置ですけれども、貧困対策のための重点配置ですが、放課後の補習等を担う学習指導員の配置、予算的には39億円ですけれども、これらの関連施策を盛り込んでいるところでございます。引き続き、家庭の経済状況に関わらず、すべての子供たちが学びの機会を確保できる、こういった社会の実現に向けて取り組んでいきたいと。1つの、私は、良い知見が得られたと思っておりますので、これからこの事実をですね、大切にしていきたいと思っています。

記者)
 ありがとうございます。1つフォローさせてください。教育格差が問題になる中で、やっぱり、学校が福祉的な役割を果たすことでその格差解消に大きな役割を果たせるということが、多分、この調査で分かってきたんじゃないかなと思うんですが、この、学校の福祉的な役割をこれから強めていく、また、そこに重点を置いていくということについて、大臣はどのようにお考えでしょうか。

大臣)
 私は、教育と福祉というのは、やっぱり福祉的機能、あるいは教育的機能というのは、これはもう、裏と表、私は、ある面では、本当は、表裏一体的なものであるという認識をしてございます。ただ、やっぱり、教育の、例えば1つ、経済格差を取り上げてですね、そういった教育の能力、結果に至るですね、結果を見てみたら、経済格差がその原因であったというようなことは、私は、そういうことは認められないと思いますから、当然、そこには公平な機会が与えられるという、そういう発想というものも必要でございましょうし、もちろん子供たち、低学年にとってはですね、まだまだ、幼稚園から小学校へ連続していく中で、どこまで子供たちを育てるべきか、正しい、望ましい姿にすべきか、育ってもらうべきかといったところには、そういった機能も必要であるということ、いろんな意味での、私は、一概に、ぱっと福祉的機能と言われましても、切り口は複数ございますので、そういうように理解しています。

記者)
 先日、国立研究開発法人をはじめとした理事長人事が発表になったと思います。そこで大幅な人事異動があったと思いますが、理研の理事長をはじめとして、新理事長が選出された経緯だったりその新体制に対する大臣の期待を教えてください。

大臣)
 4月1日付でこの人事におきまして、文部科学省所管の8つの国立研究開発法人のうち、5つの法人で理事長が交代する予定でございます。科学技術・イノベーション政策を進める上で、国立研究開発法人の役割は大変重要であります。特に、分野を越えました連携や、大学や産業界との連携を通じまして、研究開発成果を最大化するために、各法人の理事長のマネジメント力が非常に重要だというように、このように思います。今般、各法人におきましては、いずれも素晴らしい知見と経験を備えた新理事長に着任をいただく予定でございまして、4月以降、その手腕を存分に発揮いただくことを期待をいたしております。筑波に出張しましたときには、物質材料機構の橋本さん、非常にいろんなこと、クリープ実験とかいろんなことのご説明を直接受けたんですけれど、あの方が今度はJSTへ来られるので、多少の面識もあるので、辣腕を振るっていただきたいなという、特に、大学ファンド等々、運営をしながら、これから日本の研究を高めなければいけませんから、今度、変わられる方には、橋本さんに限らず、大活躍していただきたいというように期待をしています。

(注1)「今年度は、63次74名、うち夏の隊は63人」と発言しましたが、正しくは「今年度派遣は、63次74名、うち夏隊は43人」です。
(注2)「答申」と発言しましたが、正しくは「提言」です。
(注3)「案」と発言しましたが、正しくは「報告書」です。
(注4)「報告書案」と発言しましたが、正しくは「報告書」です。

(了)

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