萩生田光一文部科学大臣記者会見録(令和3年9月3日)

令和3年9月3日(金曜日)
教育、科学技術・学術、文化、その他

キーワード

令和3年度全国学力・学習状況調査、教育再生実行会議、アフガニスタンに対する教育・文化分野での働きかけについて、教職員に対する新型コロナウイルスワクチン接種、世界大学ランキング、大学拠点接種、新型コロナウイルスと大学における対面・オンライン授業

萩生田光一文部科学大臣記者会見映像版

令和3年9月3日(金曜日)に行われた、萩生田光一文部科学大臣の定例記者会見の映像です。

令和3年9月3日萩生田光一文部科学大臣記者会見

令和3年9月3日萩生田光一文部科学大臣記者会見(※「YouTube」文部科学省動画チャンネルへリンク)

萩生田光一文部科学大臣記者会見テキスト版

大臣)
 おはようございます。私からは2件です。
 先日8月31日付で、令和3年度全国学力・学習状況調査の結果を公表いたしました。各教育委員会及び学校等におかれましては、感染症対策を徹底されながら、調査の実施にご協力いただきましたことに、改めて心より感謝を申し上げたいと思います。今回の調査は2年ぶりでありまして、コロナ禍における児童生徒の学力・学習状況を把握することが重要であると考えておりましたが、調査結果からは、前回調査と比較して都道府県間の差が広がったという傾向は見られず、また、学校の臨時休業期間の長さと平均正答率との間に全体で見ると相関は見られませんでした。この結果について、学校の臨時休業が児童生徒の学力に影響を与えていないのではないかと捉える向きもあるようです。しかしながら、調査結果にもありますように、臨時休業期間中、各学校等においては、様々な手段により、児童生徒の学習状況や生活状況の把握などを行っており、また、臨時休業期間後の取組として、学習の定着が不十分な児童生徒の把握や、長期休業期間の短縮、土曜日の活用、補習の授業の実施など、あらゆる手段を講じて児童生徒の学びを保障するための懸命な取組がなされております。こうした各学校等におけるご尽力が、全体として、学力への影響が見られなかったという結果につながっていると考えております。こうした点について、改めて教職員の皆様方をはじめ関係者のご尽力に感謝申し上げたいと考えております。他方、児童生徒の心理面への影響として、過年度と比較して、「将来の夢や目標を持っている」や「学校に行くのは楽しいと思う」と回答した児童が減少するなどの結果が見られております。こうした結果からも、学校は、学習機会を保障するだけでなく、児童生徒の全人的な発達・成長を保障するという重要な役割を担っていることが、改めて明らかになったものと考えております。調査結果を踏まえ、文部科学省としては、引き続き必要な支援に努めていくとともに、児童生徒の家庭状況による影響等について、今後、更に分析を行ってまいります。また、各教育委員会及び学校におかれましては、本調査結果を十分活用し、児童生徒の学力・学習状況の把握・分析及び教育施策に成果と課題の検証を行っていただくとともに、学校における児童生徒の教育指導や教育施策の改善・充実に活かしていただきたいと考えているところです。
 2件目ですが、教育再生実行会議は、平成25年1月の設置以降、8年以上にもわたって、幅広い教育政策について大所高所から精力的にご議論いただいて、第12次に渡る提言をまとめていただきました。去る6月3日の実行会議において、総理からもフォローアップの実施についてご発言いただいたことも受け、今般、有識者の皆様により、これまでの提言を受けた取組状況についてフォローアップを行っていただき、主な課題・今後の取組などを取りまとめていただきました。今回の報告にある通り、様々な法律改正や予算措置などが行われ、目に見える成果を上げている一方、課題も残っており、更なる取組が必要と考えております。今後とも、文部科学省を中心に関係省庁等と連携して、不断の改革を図ってまいる所存です。私からは以上です。

記者)
 1点質問させてください。アフガニスタンについてお聞きしたいんですけれども、タリバン政権、タリバンがですね、首都を制圧しまして、タリバンは20年前に仏像を破壊したり、非常に文化財の保護に対して懸念が高まっているとお聞きしています。で、かつてはですね、女子教育も否定するということで、日本の価値と非常に異なった政府かと思うんですけれども、文科省としてですね、今後、文化財の保護ですとか教育の在り方について、何か発信をされたり国際的な取組をされていくというお考えはありますでしょうか。

大臣)
 まず、今、タリバン政権の正統性と言いますか政権移行の在り方について、ちょっと私は詳しく分かりませんので、今はまだ混乱のさなかにあると思います。その中で、かつてタリバン勢力によって破壊されたバーミヤンの遺跡の保存・修復などをですね、日本政府としてお手伝いをしてきたことがあったのは事実でありまして、これまでもアフガニスタンの復興支援として、女子大学のコンソーシアムによるアフガニスタンへの女子教育の支援ですとか、今申し上げたバーミヤンの遺跡の保存修復など、こういったことのお手伝いをしてきました。現在、アフガニスタンでは緊迫した情勢が続いておりますが、そうした中でも、日本政府としては、関係国とも連携しながらアフガニスタンの平和と安定に向けた努力を継続しているところです。現在、こういう状況にありますが、文科省として、外務省とも連携の上、現地情勢を引き続き注視しながら状況を見極め、教育や文化などの領域において、今まで通り、あるいは今まで以上にですね、求めがあれば適切な対応・支援を行ってまいりたいなと思っていますが、ちょっとこれ、今、待ちの状態じゃないですかね。

記者)
 教職員のワクチン接種についてお尋ねします。感染対策として、与野党からも、小中学校などの教職員の接種拡大を求める意見が出ております。また、アメリカでは、一部の市で接種義務化の動きもあるようです。文科省としては、これまで自治体に優先接種を深めることはされていると思うんですけども、接種を進めるために何らか追加で対策をとるお考えがあるのかどうか教えてください。

大臣)
 学校教育活動を継続するためには、教職員の安全を可能な限り確保し、また、教職員から児童生徒への感染を防ぐことが不可欠です。教職員のワクチン接種については、これまでも各自治体において取り組んでいただいておりますが、先日の会見でも申し上げた通り、教職員でこれから接種を希望される方には、できるだけ早く接種を済ませていただくよう自治体においてご配慮いただきたいという考えをお伝えをしているところです。また、文科省としては、教育委員会などが大学拠点接種会場での接種を希望する場合には、供給されたワクチンを有効に活用していただくよう、スタート段階からそういうことをお願いしていますけれども、改めて各大学に協力を求めたほか、大規模接種会場等における教職員のワクチン接種について、保健福祉部局とも連携して特段の配慮をいただきたいことを教育委員会等に依頼をしております。引き続き、希望する教職員がワクチンを優先的に接種できるよう、必要な対応に努めてまいりたいと思いますし、他国のように、特定の職業を強制的に打つということは、日本の場合には現実不可能でありますが、当初、夏休み前などよりはですね、国民の皆さんも接種を希望される方が一気に増えましたので、先ほど申し上げましたように自治体とも連携しながら最優先で打っていただくという、以前もちょっと話しましたけれど、その前に希望した方たちは割と順調に進んでいまして、特に、大学接種会場が途中でできあがったことで接種率が非常に高まっております。東京都などは、既に、当初希望した全ての方が8月中に2回目を終えたということでございますが、夏休みの途中からやっぱり打っておこうということで手を挙げた皆様方に、少しでも早く接種が2回完了できるように、我々の持っている接種会場、また、自治体との連携をしながらですね、しっかり後押しをしていきたい、こう考えております。

記者)
 冒頭発言にございました教育再生実行会議の件で伺いたいと思います。この実行会議は安倍内閣の閣議決定で始まったものですが、安倍政権が交代してからもう1年が経ちまして、担当大臣としてこの枠組みをこれからも続けていくお考えがあるかどうか、その見通しを含めて伺いたいと思います。あと、もう一つ、それに関連して、この教育再生実行会議というのは、政治主導で、これまでのそれ以前の文科省とか中教審の枠組みを超える形で色んな教育課題の方向付けをしてきたと思うんですけども、そういう政治主導による実行会議の役割とか意義とかについて、大臣のお考えをお聞かせいただければと思います。

大臣)
 教育再生実行会議は、第二次安倍政権発足時に安倍総理の教育への思いを受けて設置をされたものですが、昨年9月に菅総理が就任された際、検討テーマの重要性に鑑み、私から総理に実行会議の継続をお願いをして、6月の第十二次提言を、今回のフォローアップ報告を取りまとめていただきましたので、ある意味、今回をもって一区切りというふうには考えておりますが、私としては、総理の下で、教育や人材育成に関して議論する場は今後も必要だと思っております。昨日、総理にその旨を申し上げて、いわゆる後継会議の在り方について了承をいただいたところです。今後、しかるべき時期に、政府として同様の議論の場が設けられるものと考えております。教育再生実行会議が果たした役割・成果については、今回のフォローアップ報告で整理しているように、これまでの提言を受け、例えばいじめ問題等への対応ですとか、教育委員会の制度改革、大学ガバナンス改革、教育研究力の強化、教師の養成・採用・研修の一体改革、給付型奨学金の創設について法改正等がなされるなど、様々な施策が実行に移されております。一方で、今回の報告にもある通り、なお取り組むべき課題も残っており、この報告も踏まえ、より良い教育の実現のために、不断の取組を図ってまいりたいと思っております。私は、文部科学大臣という立場と同時に教育再生担当大臣という兼務をしているんですけれど、なかなかそっちはクローズアップされないものですから、教育再生なんなのか、ということを国民に、分かりづらいのですが、例えば、まさしく40年ぶりに、小学校の標準法を変えて40人学級を35人にしました。これは、教育再生実行会議の報告を受け、教育再生担当大臣である私が政府の全体の意思として文部科学大臣にその作業を指示したということですから、この手の会議はあったほうがいいんじゃないですか。ややもすると、文科省の話に矮小化されてしまうことってたくさんあるのですけれど、そうじゃなくて、やっぱり政府全体で考えなきゃならないことってあると思いますので、ぜひしっかり後継会議を立ち上げて、新たな役割を果たしていきたいと思っています。

記者)
 昨日発表されました世界大学ランキングの関連でちょっと伺いたいことがあるんですけれども、タイムズ・ハイヤー・エデュケーションの方で世界大学ランキングが発表されましたが、東大がですね、1つ順位を上げたというお話でしたけれども、全体的にはやっぱり低ランク傾向に歯止めがかかっていないと。先日、同じような形で報道されてましたけれども、光触媒の藤嶋昭先生が中国の大学にチームごと移籍されたというような報道がありました。それで、はっきり言って、今回、世界大学ランキングの分析等でもはっきりしているのは、投資を増やさなければ世界的な競争には勝てないということだと思うんですけれども、今回の結果を受けて、大臣としてどのようにお考えか、どう取り組んでいかれるかというのをお聞かせください。

大臣)
 昨日公表された今年のタイムズ・ハイヤー・エデュケーション誌による世界ランキングでランクインした全1,662校中、我が国の大学数は118校となりました。これにより、国別のランクイン大学数では、昨年同様、世界第2位と米国に次ぐ順位になりましたが、個別の大学では、東京大学が昨年の36位から35位へ順位を上げる一方、京都大学が54位から61位へと順位を下げ、昨年同様、100位以内にはこの2校がランクインする形となっております。また、上位にランクインした大学の特徴として、公開されている各指標のスコアを見る感じ、産業界からの収入面や国際面などで昨年よりも数値が上がっていると思います。一方、同ランキングの各指標からは、我が国の大学の主な課題として、これまでと同様、論文の引用数の評価が低い。また、留学生や外国人教員比率などの指標で構成される国際面の評価について、スコアは上昇しているものの、相対的にはなお低い状況にあることなどが挙げられると思います。このような大学ランキングは、今回のタイムズ・ハイヤー・エデュケーション以外にも複数ありますけれども、それらの評価指標の中には、我が国の大学の国際的な評価を知り、改善する上で参考になるものもあり、各大学においては、課題について分析の上、教育研究力の向上に努めていただきたいなと思っております。この手の話、毎年ありますし、就任以来、私も言い訳をし続けていますけれど、1つはやっぱり、論文の引用数。これは、国際論文はやっぱり英文で発表しないとなかなかその引用の対象になりません。で、誤解を恐れず申し上げますけれど、やっぱり、日本の大学、圧倒的に学部学生数、人文学系が多くてですね、いわゆる国際論文に引用がされやすい、いわゆる理系・科学技術系の学生そのものも少ない、研究者も少ないということが一つは大きな問題なのだと思います。それから、去年もいろいろ話題になりましたけれども、留学生や外国人の教授などのですね、言うならば、日本で働いてもらうような環境を考えたときに、日本のこの4月入学・3月卒業というのも、これは国際スタンダードから考えると、非常に、大学の世界では、人の人流が難しい環境にあります。こういうことも含めて考えていかなきゃならないんじゃないかなと思います。意識的にものすごい勢いで論文を発表している国もありますから、そういう意味では、ただ単にですね、外形的なことだけでランキングをするというのはいかがなものかなというものもあるのですけれど、しかし、そんなことを言っていたら日本だけが取り残されることになりますから、問題意識を持って、先ほどたまたま質問出ましたけれど、まさに後継会議はですね、こういった今の日本の制度上の課題などについてもですね、深く議論をして次の時代を切り拓いていく、そういうきっかけにしたいなと思っているところです。

記者)
 すみません、追加でなんですけど、今、例えば外国人の方の教授であるとか、たぶん優秀な留学生のことも意味されているんだと思うんですが、そういう方に来ていただくというのも重要だという観点だと思うんですけれども、例えば外国の優れた頭脳を呼び込もうと思えば、ある程度、資金とかも必要になってくると思うんですね。この間、先ほど教育再生実行会議のお話がありましたけれども、再生会議の提言をずっと読んでいくと、基本的に人への投資というのはかなり重視されていますし、例えば高等教育の無償化であるとか、幼児教育の無償化であるとか、そういったところはかなり提言されておられるんですが、機関投資といいますか、大学とか研究機関とか研究者に投資するという観点があまりなかったように思うので、提言を振り返ると。この点、どうお考えでしょうか。

大臣)
 申し上げませんでしたけれども、そこもやっぱり非常に大きなポイントだと思います。海外の大学は、やっぱり寄附や投資でしっかりとした資金を稼いでですね、それで安定した研究を続けている。また、その結果をどんどん発表しているという、この良い展開ができているんですけれど、日本の場合は、やっぱり大学へ投資をする、あるいは研究にお金を出すということに対して、非常に、今までも抑制的なところがあったと思うのですが、ここ数年、そこは少しずつ変わってきていると思いますし、せっかくの機会ですから申し上げれば、税制上の優遇措置、寄附税制なども、やっぱり海外と比べると非常に弱いと思います。自分の母校にですね、良い研究をしてもらいたくてどんとお金を出したい富裕層というのは、きっといるのだと思いますけれど、それは学校に出したいので、政府に出したいんじゃないんだということになるとですね、今の税制ですと、なかなかそういったものもブレイクスルーできないのだと思うので。これは、毎年、党でも話題になりますけれど、寄附の在り方、寄附税制の在り方、こういったものを変えていくとですね、かなり所得があって資産を持っている人、しかしお子さんがいない方などが母校の研究室へ寄附したいという、そういう傾向は非常に多くあるので、そこを何とか受け皿になれるようにしていきたいと思いますし、今回、10兆円のファンドという新しいスキームも作りましたので、いただけるものはいただく、自ら稼ぐものは稼ぐ、そして良い研究に投資をしていく資金をしっかりバックアップをしていく、こういう環境をですね、次、作っていくことが重要だなと思っています。

記者)
 今、小中学校の方では2学期が始まっているところだと思うんですけれども、今、大学の方でも後期授業に向けて準備を進めているところかと思います。ワクチンの接種も日程がずれて、調整しながらも進んでいるところかと思うんですが、接種の状況をどのように見てらっしゃるかということと、これらを踏まえて、後期授業の方針、どのようにお考えかお伺いします。

大臣)
 文科省としては、新型コロナウイルス感染症の影響下にあっても、学生が安心して学修に専念できることが重要だと考えておりまして、各大学に対して、学生に寄り添いながら、感染拡大の防止と学生の学修機会の確保の両立に取り組むように求めてまいりました。先般変更された新型コロナウイルス感染症対策の基本的対処方針では、緊急事態宣言の対象区域にある大学に対して、感染対策の徹底とともに、遠隔授業も一層活用した学修者本意の授業の実施が求められていると承知しております。文科省では、基本的対処方針の変更も踏まえ、各大学等に対して事務連絡を発出をしまして、各校が所在をする自治体から、例えば人流抑制を徹底するなどの趣旨で遠隔授業の活用が求められている場合には、遠隔授業も適切に活用した上で、学修者本意の授業を効果的に行うなど、様々な工夫を講じていただきたい旨、要請をいたしました。ただし、その場合でも、大学等の考え方ですとか遠隔授業を行う期間が終了した後の授業の実施方針などについて、学生の皆さんに丁寧な説明を行うなど、学生に寄り添った対応を講じることが重要であり、学生が孤立・孤独に陥ることがないような配慮も併せて要請をしております。文科省としては、引き続き、感染状況の動向も注視しながら、各大学等において感染拡大の防止と学生の学修機会の確保が両立されるよう、必要な支援や助言に取り組んでまいりたいと思っています。また、大学接種については、今週までに計323大学で実施されており、来週6日の週から更に24大学が追加をされ、計347大学で接種が実施される予定となっております。途中でですね、モデルナ製のワクチンの供給の遅れなどがありまして、一部の大学に対して大変ご迷惑をおかけしましたが、何とか8月末から正規の軌道に戻ってまいりましたので、現在、その全てで接種は開始をされていると承知しています。残る大学等についても、それぞれの希望通りの時期にワクチンをお届けするように、今、手配をしておりますので、今後9月いっぱいは順調に進むと承知しています。引き続き、1人でも多くの学生の皆さんが1日も早く本来の日常を取り戻すことができるように、関係省庁と連携しながら取組を進めてまいりたいなと思っておりますし、前段の質問の答えに戻りますけれど、小学校とか中学校と違いますから、大学の場合は、それぞれですね、授業スタイルも違うし、今申し上げたように、学校関係者も、あるいは生徒側も、ワクチンが全て終わっているということもありますから、10か0か、オンかオフかじゃなくてですね、まさしくその、オンラインだけ、必ず対面、じゃなくてですね、やっぱり感染状況を鑑みて、それぞれの設置されている自治体ともよく相談をしながらですね、学生の皆さんが納得する後期を迎えてもらいたいということをぜひお願いしたいと思っています。

(了)

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