萩生田光一文部科学大臣記者会見録(令和3年6月11日)

令和3年6月11日(金曜日)
教育、科学技術・学術、スポーツ、その他

キーワード

第10回統合イノベーション戦略推進会議、米国OSTP局長とのオンライン会談、次世代研究者挑戦的研究プログラム、GIGAスクール特別講座~君も宇宙へ~、デジタル教科書の今後の在り方等に関する検討会議、大学の人員・施設等を活用したワクチン接種について、学校での熱中症対策、名古屋市教委が個人情報保護の問題からタブレット端末の使用を一時中止したとの報道について、子供に関する組織の創設の検討について

萩生田光一文部科学大臣記者会見映像版

令和3年6月11日(金曜日)に行われた、萩生田光一文部科学大臣の定例記者会見の映像です。

令和3年6月11日萩生田光一文部科学大臣記者会見

令和3年6月11日萩生田光一文部科学大臣記者会見(※「YouTube」文部科学省動画チャンネルへリンク)

萩生田光一文部科学大臣記者会見テキスト版

大臣)
 おはようございます。
 今日は盛り沢山で4件ございます。まず、先ほどですね、統合イノベーション戦略推進会議が開催されました。「地域の中核となる大学の振興」について私から報告するとともに、「統合イノベーション戦略2021素案」、また、「新SBIR制度の支出目標と運用方針案」について議論し、「AI戦略2021」、「バイオ戦略」のフォローアップを決定しました。特に、地域の大学の振興については、「知と人材の集積拠点」である大学の力を最大限活用して社会変革やイノベーションの創出を推進するために、地域の期待や自身の強みを踏まえて改革を進める意欲的な地域の大学の取組を後押しすることを、私から説明したところです。官房長官からは、「統合イノベーション戦略2021」の速やかな決定、また、新SBIR制度を活用したスタートアップの育成と新技術の活用、地域の中核となる大学の機能強化に向けたパッケージの年度内策定、安全保障、倫理などを巡り急展開する海外の情勢を踏まえた、AIに係る新たな戦略の策定などについて指示がありました。文科省としては、引き続き、関係府省と連携し、大学ファンドを活用した世界と伍する研究大学の実現や、博士課程学生を含む若手研究者への支援に取り組むとともに、地域の中核となる大学の振興、戦略的に重要な技術領域における優越性の確保などを図ってまいりたいと思います。
 2つ目なのですが、新たに米国大統領府科学技術政策局の局長に就任されたエリック・ランダー氏と、一昨日、オンライン会談を行いました。ランダー局長との会談は、他国に先んじて日本への提案であり、実施されたものです。併せて、今までと違いまして、今回、この科学技術政策局長は閣僚級という位置づけになりましたので、重たい立場での初会談を日本が行うことができました。会談では、4月の日米首脳会談で発出された日米共同声明を踏まえ、今後のAI技術や量子技術をはじめとした様々な科学技術分野での日米連携について、意見交換を行いました。バイデン政権においては、科学技術を重要視する姿勢が明確に打ち出されており、ランダー局長のご就任が、米国の科学技術と日米の協力関係の一層の発展につながるものと期待しております。文科省としても、引き続き、日米科学技術の維持、協力に努めてまいりたいと思います。
 3つ目ですが、文科省では、令和2年度第3次補正予算により、優秀な、志ある博士後期課程学生への経済的支援を強化し、博士人材が幅広く活躍するための多様なキャリアパスの整備等を行う「次世代研究者挑戦的研究プログラム」を創設をしました。本事業による経済的支援の規模としては、最大で6,000人規模の優秀な博士後期課程学生に対し、1人当たり年額290万円を基準額とした支援を行うことを想定しており、他の取組と合わせて15,000人規模の博士後期課程学生支援の実現を目指すものです。本日から本事業の公募を開始しますのでお知らせをいたします。博士人材は我が国の科学技術・イノベーションの将来を担う貴重な人材であり、ぜひ多くの大学関係者から応募していただきたいと考えております。私としては、本事業を通じて、支援を受ける優秀な博士学生が、経済的な不安を抱えることなく、自由で挑戦的な研究に専念すること、採択された学生(注)が、支援する博士学生のキャリア開発や育成に主体性を持って取り組むことなどを期待しているところでございます。
 最後ですが、先月、GIGAスクールと宇宙飛行士が連携した教育活動「GIGAスクール特別講座~君も宇宙へ!~」の実施についてご案内したところですが、今回、その実施日を7月6日(火曜日)といたしましたのでお知らせします。国際宇宙ステーションとの時差があるためにですね、当日は17時以降に実施する予定ですが、より具体的な実施時間については、実施1週間前頃にご案内をします。また、来週15日より、星出宇宙飛行士への質問やメッセージの募集を開始します。応募いただいたものの中から数件、当日に星出飛行士から回答してもらう予定ですので、ぜひご応募をいただきたいと思います。詳細については、本日、各教育委員会等にお知らせをしたいと思います。今回の活動は、GIGAスクール構想に基づき整備された学校のICT環境の活用がさらに促進されるとともに、子供たちの宇宙への夢や希望を育む貴重な機会だと思っております。教育委員会や学校には、ぜひ積極的にご参加いただければありがたいと思っているところです。私からは以上です。

記者)
 1問お尋ねします。デジタル教科書の在り方を検討している文科省の有識者会議が、今週、第一次報告を公表しました。この受け止めと、大臣として、2024年度のデジタル教科書への全面移行、また、紙とデジタルの関係についてどのように考えていらっしゃるのか、ご見解をお聞かせください。

大臣)
 今週8日に公表された有識者会議の第一次報告においては、学校における1人1台端末環境の整備が進む中、「児童生徒の学習環境をより良いものに改善し、学校教育の質を高めていくためには、各学校におけるデジタル教科書の活用を一層推進する必要がある」とされております。その上で、今後のデジタル教科書の在り方については、紙かデジタルかというですね、いわゆる二項対立の議論に陥ることがないように留意をしながら、実証研究の成果を踏まえつつ検討する必要があるというふうにされたところであり、これを踏まえ、文部科学省としても、児童生徒の学びが充実するよう、丁寧にスモールステップで進めてまいりたいと考えています。また、デジタル教科書を本格的に導入する最初の契機とされた令和6年度における具体的な在り方については、現時点で特定の在り方を前提に議論しているわけではありませんが、全国的な実証研究や関連分野における研究の成果等を踏まえつつ、更には財政負担のことも考えながらですね、詳細を検討していきたいと考えています。併せて、令和6年度を見据え、有識者において、今後、技術的な課題について専門的に検討するワーキンググループを設置をし、例えばデジタル教科書に標準的に備えることが望ましい最低限の機能や操作性などについてご議論いただき、まとまったものから順次報告をしたいと考えているところです。

記者)
 ワクチンの大学接種についてお伺いしたいんですけれども。加速化のチームが発足してから1週間で、各大学も非常に関心が高いかなと思うんですけども、例えば、相談があった件ですとか、実際に職域接種としてできそうな大学数ですとか、何か全体数が、全体的な像が分かるような数字が文科省で把握されているようだったら教えていただきたいなと思います。

大臣)
 まず、職域接種という概念は大学に当てはめないでいただきたいと思うのです。大学は、地域の核として地域貢献をする接種会場になってもらうことを前提に許可しようと思っているので、自分のところの職員と自分のところの学生だけを打つんだという、その、企業のやっている職域とはちょっと概念が違うということは、ぜひご理解いただきたいと思います。その上で、新型コロナワクチンの職域接種の一種でありますこの大学会場につきましては、6月8日から申請受付が開始されておりますが、現在、文部科学省に対して、97大学から相談が来ておりまして、そのうち、32大学が既に接種の申請を行ったと承知をしています。これらの大学は大きく分けて、医療系人材と施設等をセットで提供が可能なパターンや、大学の施設、体育館ですとか講堂などの提供が可能なパターンなどのケースとなっており、文科省としては、まずはモデル事例を創出するべく各大学と調整を急いでいるところです。現時点で、例えばですね、広島大学が21日の週から自大学の学生・教職員の接種を行うほか、東広島市内の企業などの職員への接種に向けて協議をしております。また、弘前大学はですね、21日の週から自分のところの学生さんや教職員の接種のほか、弘前市内の柴田学園大学、また、弘前学園大学、弘前医療福祉大学の学生・教職員、また、放送大学の教職員に接種を実施することと予定しています。これ、最初から申し上げているように、350を超える大学から協力の申し出があったのですけれど、全てが会場になるということはちょっと考えづらいので、逆に会場になった大学は、同じ自治体に立地をする他の大学でまだそれが進んでいないところを一緒に協力して呼び込んであげてくださいという良い例を弘前大学は示していただいていると思います。さらに、海外留学を予定する学生を後押しするために、留学先の大学からワクチン接種を義務付けられている場合、接種を受けられるように、文部科学省において準備を、今、進めております。文科省としては、引き続き、このような大学等を支援するとともに、各大学が自大学のみならず、近隣の教育関係者にも接種を行う拠点となるように各大学等と一体となって取組を進めてまいりたいと思っています。

記者)
 2点伺いたいんですけれども、まず、最近の熱波に関してなんですが、季節外れで気温が上がっているんですけれども、それで、運動会をまだやるっていう学校も結構ございまして、それで、練習中に熱中症で倒れるというのがですね、近日、かなり相次いでいるんですが、この辺り、マスクの着用をしてた事例もあるようなんですけれども、改めて何か注意喚起するお考えとかっていうのはございませんでしょうか。

大臣)
 運動会をまだやるっていう学校が良くないということですか。

記者)
 いや、そうじゃなくて、練習のときに熱中症になってしまう。

大臣)
 おっしゃるとおりですね、暑い日が続いております。マスクを着用して運動を行なう際は、十分な呼吸ができなくなるリスクや熱中症になるリスクがあります。運動時は、体へのリスクを考慮してマスクの着用は必要ないこと、また、特に呼気が激しくなる運動を行なう際や気温・湿度など高い日には、十分な感染症対策を講じた上で、マスクを外すことについて、去年からずっと言っていますけれども、改めて、先月28日にですね、学校や学校設置者に対して通知をしたところでございます。マスク着用については、呼気が激しくなる運動時には、児童生徒の間隔を十分確保するなどの感染症対策を講じた上でマスクを外すとともに、マスクを着用している場合には、児童生徒の体調の変化に十分注意をするように、引き続き、教育委員会や学校等に対して周知を徹底してまいりたいと思います。特に、校庭を使った体育の授業は、間隔を広く普段より取ってもらえればマスク要らないですから。ぜひ、そこはもう現場で徹底してもらいたいなと思っているんですね。あの、たまたま2月の事故のことが最近になって報道になったので、今の体育の授業でそういうことが続いているんじゃないかという心配をされるご父兄もいらっしゃるのですが、他方、確かになかなか外さないという学校現場もあることも現実でありますので、もう1回、徹底してまいりたいと思います。それで、体育の授業っていうのは、大概、大体1年間を通じて何月に何をやるかっていう計画を立てていますけれど、こういう、当日の気温だとか湿度とかそういったものを配慮してですね、そこは、授業内容を柔軟に対応していただきたいなと。よもや、この暑い中で、持久走とかですね、そういうのはちょっとやめたほうがいいと思いますので。運動会は、各地で時間短縮などで努力しているのを承知しております。それは、子供たちもみんな、ある意味達成感や満足感を持っているのだと思うので、できれば開催してあげてほしいし、無理に、この時期じゃなければ秋などに変更してもらいたいっていう気持ちは、引き続きございますけれど、そのためにですね、詰めた練習をして、それで子供たちが熱中症や具合が悪くなるっていうのは全く望ましい姿じゃありませんので、そこは、教育現場とよく共有しながらですね、ぜひ徹底していきたいなと思っています。

記者)
 すみません、もう1点なんですけれども。先日、名古屋市の方でですね、GIGAスクールの関係なんですけれども、その、タブレットを一時使用を中止するっていうお話がありまして。端末の操作記録が残ると。で、まあ、それを行政の方が教育目的に利用するわけですけれども、これが個人情報保護条例に違反するのではないかという指摘があったということなんですが、条例を改正していただければというお話もこれまで文部科学省の方でもされてこられたと思うんですけど、まだ、そういうのが整備されてない自治体っていうのが今回あるということが浮き彫りになってですね、改めて、何かお考えをですね、全国の教育委員会にお伝えすることっていうのは考えておられますでしょうか。

大臣)
 名古屋市で小中学校に配布を進めている児童生徒端末に関し、名古屋市議会において、児童生徒等に目的を明らかにしないまま操作履歴を記録していることが、市の個人情報保護条例に違反するのではないかという指摘があって、そして、児童生徒端末の使用を一時停止したとの報道があることは承知をしています。文科省としては、ICT端末の利用における個人情報の取扱いに関し、これはあの、GIGAスクールを1年で一気に前倒しということを決めた段階から累次にわたり、ガイドラインにこのことは示してまいりました。また、本年3月のですね、年度末に、改めてGIGA元年を始めるに当たって、局長通知を行い、先月末に改訂した「教育情報セキュリティポリシーに関するガイドライン」においても、各自治体の個人情報保護条例等に基づき、適切な運用を行なうよう周知をしてきているところでございます。本件につきましては、名古屋市において条例に基づき、適切に対処されるべきものと考えていますが、文科省として、必要に応じて状況の把握をしてまいりたいと思います。今、おっしゃったように、1年間の準備期間の中で、このことは条例変更をするか、あるいは条例をそのままにしてこういったことで学校としては、匿名を前提ですけれども、子供たちの履歴はクラウド上に保管をしますよということを保護者の同意を得るっていう、どちらかをどこの自治体も必ずやっているはずなのですね。ですから、そういう意味では、こういうことが新学期が始まった上で出てきたことはすごく残念だと思います。併せて、一度、報道でしか分かりませんけれど、一度配ったタブレットを回収したということも聞きましたので、すごく子供たちはショックもあるんじゃないかなということで心配しています。回収する前に、名古屋市はですね、今年度4月段階で、全ての小中学生のタブレットが配布をされてない状況が続いておりまして。1学期中にどうなるのか、まだあと残り9万台ということで、2学期に間に合うのかっていうことを逆に心配しておりますので。あの、政令市でございますから、ぜひしっかりとですね、地域の、ある意味ではリーダー役を務めていただかなくてはならないと、私、思いますので、この条例の対応の在り方、また、子供たちへの配布を1日も早く進めていただけるようにですね、お願いしたいなというふうに期待しています。

記者)
 私、一昨日の骨太の方針の原案で示された新しい行政組織の創設という、要はこども庁の業務の関連で伺いたいと思います。骨太の方針の原案では、「年齢による切れ目や省庁間の縦割りを排し」た形で「行政組織を創設する」という文言になっております。それと、その前日の6月8日には官房長官の記者会見で、その実現に向けてですね、検討体制の準備も進めているということをご発言になっているんですけども、文科省は、これもう与党の話じゃなくて、政府の中での話になったと思うんですが、文科省はこれについてどういうスタンスでですね、検討に対応していこうとお考えでしょうか。

大臣)
 9日に示された骨太の方針の原案については承知していますし、また、官房長官の記者会見は承知をしております。文科省としては、子供に関する組織の創設の検討に当たっては、福祉との連携を図りながら、一方で、教育の一貫性・継続性を確保した形で対応する必要があると考えておりまして、これは、与党の検討会の中でも申し上げてきたところです。未来を担う子供たちを社会全体で支えていくため、政府全体として、子供関連政策をしっかりと前に進め、子供の発達や成長を一貫して支援する契機とする必要があるかと考えております。

記者)
 1つフォローさせていただいてよろしいでしょうか。やっぱり骨太の方針のポイントって、年齢による切れ目を省庁の中でなくした方がいいっていう話と、実は、その幼児期の問題だけじゃなくて、かなり長い小中高、おそらく思春期までっていう長いところを、1つの行政組織でフォローすべきじゃないかっていう、今、原案の段階ではありますけどもそういう姿勢を持ってるんですけど、こちらはいかがでございましょうか。

大臣)
 その原案がそこまでを言っているのかどうか、ちょっと私分かりませんし、おっしゃるように切れ目のない支援っていうのは大事なのですけれど、例えば、よく言われているこども庁なるですね、そういう役所を作って、0才から18才はそこでやると言ったら、教育から福祉までを全部そこでやることが本当に可能なのかどうなのか、じゃあ18才から19才へは切れ目があっていいのか。そういうことも含めて大きな議論をしていかなきゃならないんじゃないですかね。あるいは、もっと古い議論を引き出せば、幼保一元化ということで、就学前までをどうするかっていう議論なのか。その辺はちょっと、私は、実際にこの議論に参加してないので分かりませんけれど、いずれにしても、教育の一貫性っていうのも大事なわけでありまして、じゃあそれは文部科学省以外の役所でもいいんだということであれば、それは別に、権益を守るのが私の仕事じゃないので、それが子供たちのためになるのなら一つの方法だとは思いますけれど、やっぱり現実に照らしてやっていく必要があるんじゃないかと思うんですね。で、特に教育っていうのは、教育、学校でのお勉強だけじゃなくて、様々な人間育成っていうのを横展開をしながら、子供たちは成長していくわけなので。うちだけでもないですよね。子供たちのことっていうのは、文科省だけがやっているわけじゃなくて、今もいろんな省庁にまたがることがあって、そのまたがることに不自由のある項目についてはどこかが一つ責任を持ってやるっていうのは、私はいいと思うんですけれど、やっぱり教育っていうのは一貫性が必要なんじゃないですかね。ですから、今回先駆けて、5才児の新しい教育プランっていうの提案させてもらいました。保育園にいても幼稚園にいても、あるいは認定こども園にいても、もっと言えば類似施設にいても、小学校に上がる前の5才の段階で、こういうことはしっかり学んでおいてもらった方がいいんじゃないかっていうことを、横串を刺すことを提案させてもらいましたので。実効性が大事だと思いますのでね、その辺は、別に政府全体としてこういう方向を示しているので、私は別に反対でもなんでもないですけれど、そこは、よく中身をですね、しっかり見ていかなきゃならないし、文科省として積み上げてきた知見や様々なデータもあるわけですから、そういったものもしっかり披露しながらですね、何が子供たちにとって一番いい方向なのかっていうのは、間違いがないように見極めていきたいなと思っています。

(注)「学生」と発言しましたが、正しくは「大学」です。

(了)

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大臣官房総務課広報室