萩生田光一文部科学大臣記者会見録(令和3年3月5日)

令和3年3月5日(金曜日)
教育、科学技術・学術、文化、その他

キーワード

著作権法の一部を改正する法律案、文化庁長官人事、自殺対策強化月間及び児童生徒等の自殺予防について、日本学生支援機構の寄附金を活用したコロナ禍における学生支援、日本人宇宙飛行士による船外活動、緊急事態宣言再延長の場合の学校行事の実施について、わいせつ行為等による教員の免許失効情報が官報未掲載だった件について、高輪築堤の遺構、東日本大震災から10年を経た受け止めと地震防災について、大学入学共通テスト

萩生田光一文部科学大臣記者会見映像版

令和3年3月5日(金曜日)に行われた、萩生田光一文部科学大臣の定例記者会見の映像です。

令和3年3月5日萩生田光一文部科学大臣記者会見

令和3年3月5日萩生田光一文部科学大臣記者会見(※「YouTube」文部科学省動画チャンネルへリンク)

萩生田光一文部科学大臣記者会見テキスト版

大臣)
 おはようございます。
 今日、ちょっと盛り沢山で5件ございます。まずですね、本日、「著作権法の一部を改正する法律案」が閣議決定されました。本法案は、図書館関係の権利制限規定の見直しと放送番組のインターネット同時配信等に係る権利処理の円滑化の2つで構成されています。1つ目の図書館関係は、国民の情報アクセスの充実、研究活動の推進等を図るため、絶版等により一般に入手困難な資料について国会図書館によるインターネット送信を可能とするとともに、一般に入手可能な図書館資料について厳格な要件設定や補償金の支払いを前提に、一部分のメール送信等を可能とするものです。2つ目の放送番組のインターネット同時配信等に係る権利処理の円滑化は、同時配信や追っかけ配信、一定期間の見逃し配信について、放送と同様の円滑な権利処理を実現するため、権利制限規定の拡充や許諾推定規定の創設などを行うものです。これにより、多岐にわたる課題が解決され、視聴者・放送事業者・クリエイターの全てにとって利益となることが期待できると考えています。今後、国において本法案についてしっかり説明を行い、ご審議をいただいて、速やかに成立させていただけるように努力をしてまいりたいと思います。
 2つ目ですが、本日の閣議で、4月1日付けの文化庁長官人事について、内閣の承認を得ました。既に資料として配布している通り、宮田長官が3月31日で任期満了により退官され、その後任として、都倉俊一氏にご就任いただくことにしました。宮田長官には、平成28年4月に就任いただき、第一期文化芸術推進基本計画の策定など、5年の長きにわたりご尽力いただいたことに深く感謝をしております。また、都倉俊一氏は、我が国を代表する作曲家として、文化芸術に関する優れた知識・経験はもとより、日本音楽著作権協会等における高い組織マネジメント能力、豊富な国際経験等を有していることから、次期文化庁長官に最適任であると判断しました。今後は、新長官としてリーダーシップを発揮されることを期待をしております。
 3件目です。毎年3月は「自殺対策強化月間」です。学校関係者の皆さまにおかれましては、コロナ禍において児童生徒等の自殺者数が大きく増加していること、また、長期休業明けに児童生徒等の自殺者数が増加する傾向にあることを踏まえ、保護者や地域、関係機関等と連携の上、児童生徒等の見守りを強化するなどの取組を積極的に行っていただくようにお願いいたします。児童生徒や学生等の皆さんは、悩みや不安を抱えていても、決して1人ではありません。ご家族、先生、周りの友達、誰でもいいですから悩みを話してほしいと思います。私をはじめ、周りの大人は皆さんの味方です。文部科学省では、24時間子供SOSダイヤルから電話相談を受け付けており、各地域にも電話やSNSなどで相談できる窓口、また、各大学等にも相談窓口があります。周囲に相談しづらいときは、ぜひ利用してみてください。「誰も自殺に追い込まれることのない社会」を実現するためには、国民一人一人が身近な人の様子を気遣い、支えていくことが不可欠です。文部科学省としても、児童生徒等の命を守り通せるよう、引き続き、自殺予防の取組に全力を尽くしてまいりたいと思います。
 4件目です。この度、コロナ禍で経済的困難を抱える学生に対し、独立行政法人日本学生支援機構の寄附金を活用したきめ細かな支援等を行うこととしました。先日もお知らせした通り、学生等の中退や休学の状況は、昨年12月時点で、前年度より増加している状況にはありませんが、他方、年度末に向けて増加する可能性もあり、また、中退や休学に至らないまでも、困難を抱える学生等がいることも想定されます。加えて、与党から、経済的に厳しい学生への追加支援が提言されたことも踏まえ、この度、日本学生支援機構の寄附金を活用し、コロナ禍において経済的困難を抱える学生に対するきめ細かな支援を実施することとします。具体的には、感染対策を講じながら対面授業を再開する大学等を対象に、その大学等が、学生に食料品などを提供したり、自宅外での生活を再開する地方出身の学生への支援を実施したりする場合、その大学等の取組に対して支援を行う予定です。詳細は、今後、学生支援機構からプレスリリースがありますのでそちらをご覧いただきたいと思います。また、文科省においては、更に学生生活の実態を把握するため、大学等と連携し、学生から直接その実態を伺う調査を実施する予定であり、今後の支援策の検討に役立てていきたいと思います。
 最後に5件目ですが、本日21時頃より約6時間半の間、国際宇宙ステーションに長期滞在中の野口聡一宇宙飛行士による船外活動が実施される予定です。船外活動では、新型太陽電池の設置に向けた準備作業や通信機器の交換などが予定されており、予定通り実施されれば、日本人による船外活動として最多回数かつ最長時間の記録を更新することとなります。野口宇宙飛行士がこれらのミッションを無事に完了し、新たな記録を打ち立てるとともに、引き続き、様々な挑戦を通じて宇宙開発の意義や成果を国民の皆さんに発信していただくことを期待しております。私からは以上です。

記者)
 1問質問させていただきます。緊急事態宣言ですが、2週間程度の延長も予定されています。この期間に、卒業式や修学旅行などを計画されている学校もあると思います。難しい判断を迫られるところもあると思いますが、大臣としての見解をお聞かせください。

大臣)
 今日、夕方の会議で方向性が決まるんでしょうけれども、既に専門家会議で諮問していますので、1都3県については、2週間程度の延長ということになるのだと思います。その前提で、卒業式や修学旅行等の学校行事は、子供たちの学校生活に、潤いや秩序や変化を与えるものであり、大切なものだと考えています。仮に緊急事態宣言が再延長された場合、その延長期間に卒業式等の行事の実施を予定している学校も少なからずあると思いますが、そうした学校においても、それら行事の教育的意義や児童生徒・学生の心情等を考慮した上で、例えば、卒業式については、こまめな換気の実施や参加人数を抑えたり、参加者間のスペースを確保したり、式典の内容を精選し、式典全体の時間を短縮して実施する、修学旅行については、感染状況等を踏まえて適切に実施の判断をした上で、感染防止対策の事前指導及び健康観察の徹底、感染防止対策を十分に講じた交通機関や施設を利用するなど、感染防止拡大防止のための措置や実施方法の工夫も講じた上で、再延長の場合であっても、それをもって中止としてしまうのではなく、引き続き、適切に対応していただきたいと考えております。正直申し上げて、去年の今頃はですね、まだ、この新型コロナウイルスの特性ですとか性質ですとかそういうことが分からなくて、一斉休校の最中での卒業式シーズンだったので、圧倒的多くの学校が式を中止をするという選択をしました。1年間、様々な学習をして知見も集めてきてですね、例えば、卒業式後の飲食を伴う謝恩会などはですね、止めていただいた方がよろしいと思うんですけれども、要は、大きな声を出して密集状況を作らなければ、感染は広がらないっていう知見を積み上げてきましたので、今申し上げたような様々な工夫をしてですね、ぜひ今年は、卒業式等々実施をしていただければありがたいな、そう思っております。

記者)
 わいせつ教員対策について伺います。既に国会等でも答弁されていて、これまでの会見でもご説明いただいているんですが、一部の自治体で、教員免許失効情報が官報に掲載されていなかったという事案がありました。こうした未記載事案について、今のところ文科省としてどういうふうに把握されているのか。その未記載の状況について伺いたいのと、それから、こうした未記載がなぜ問題なのかというところも含めてですね、大臣の受止めというかお考えを教えてください。

大臣)
 官報広告は、官報情報検索ツールが適切に活用される前提条件であり、教員免許状が失効している者が教壇に立たないようにするための重要な官報公告の手続きがなされていなかった事案があったことは、常々申し上げていますけれど、誠に遺憾であったと思っています。文科省では、昨年11月30日に各都道府県教育委員会に対し、懲戒免職処分等により教員免許状が失効した場合の官報広告の手続等について、徹底を図るよう周知しました。これを踏まえ、各都道府県教育委員会における官報公告の手続の確認が改めて行われ、10の都道府県教育委員会から過去10年間で61件の未掲載事案があったとの報告がありました。これらの未掲載事案は、3月3日時点で官報公告が全て適切に行われているところです。文科省としては、官報掲載漏れがないよう今後も引き続き周知徹底を含めてまいりたいと思っております。国会でも答弁していますけれど、せっかく40年の検索ツールを作りましたので、ここに載せてくれないと全く意味がないわけですから。これは、各教育委員会は同じ思いでですね、これだけの社会問題になっているわけですから、社会全体で子供たちをしっかり守っていくという、そういう思いを共有しながら、しっかりルール通りの対応をしていただくことを期待しています。

記者)
 掲載してなかった自治体に取材しますと、未記載だった理由っていうのは、被害者のプライバシーに配慮したですとか、単純に事務手続きの不備というのもあったんですけども、こうした対応についてはどのようにお考えでしょうか。

大臣)
 これも、先日、衆議院の予算委員会で、私、答弁しましたけれども、事務的に記載漏れの自治体もあったのと、それから、より現場に近いところでは、懲戒免職はしたものの、官報記載を急ぐとですね、結果として、多くの人たちに知られて被害者が特定されて二次的な被害が起こるんではないか。すなわち、その子が周りからそのことを指摘されることで、例えばですね、自殺を考えるようなことがあるんじゃないかという配慮もあったというふうに聞いておりますので。そこは、多少のタイムラグが生じたことは、それぞれの自治体や現場の状況によって違いがあるってことは理解をしています。ですからそこは、第一に子供たちを守ることを考えていただいた上なのですけれど。だからといって、何年もそのまま放置しておくっていうのは、これまたちょっと違うんじゃないかと思いますので、そこは、ぜひ問題意識を共有していただきたいなと思っています。

記者)
 2点、ちょっとお伺いしたいんですが。まず1点目は、新しい文化庁長官となる都倉さんに期待されることを改めて教えてください。都倉さんが、権利者団体の会長をお務めになられていた方で、今も特別顧問でいらっしゃるわけなんですが、著作権法を所管する官庁の長官となる方として、この点は特に影響はないと考えておられるかどうかお考えを教えてください。2点目は、高輪築堤についてなんですが、先日、大臣が現地視察の際に、財政的な支援について何らかコミットをしていかなければいけない覚悟の下、お邪魔したと発言されました。この財政的な支援というのは、現時点でどのようなことを念頭に考えておられるのか。史跡等購入費補助という仕組みで、地方公共団体が保存のための土地買い上げの際に経費の5分の4を国が補助する仕組みがございますが、この仕組みを使って土地買い上げの支援をするということも念頭に可能性として考えておられるかどうか、この2点についてお伺いしたいと思います。

大臣)
 まず、都倉新長官予定者でございますが、就任いただく上で、宮田長官の後を引き継いで、文化芸術立国の実現に向けて我が国の文化行政をしっかりと牽引していただきたい、そのことを期待をしております。とりわけ、まずは新型コロナウイルスの影響により、活動の自粛を余儀なくされた文化芸術活動の再開・継続・発展、特に都倉さんの場合は、作曲家という出身なので、音楽や舞台の関係者との様々な人脈を通じたものもありますので、そういった現場の声をしっかりと汲み上げていただいて、コロナが収束した後に、どうやってこの文化の再興をしていくか、再起動をさせていくか、そういったことにも力を尽くしていただきたいと思います。また、今まで培ってきた知識や経験を生かしてですね、東京オリンピック・パラリンピック競技大会の開催に向けた文化プログラムの推進、京都への本格移転をはじめとする諸準備にしっかりと取り組んでいただきたいと思っています。これは、私、個人的に都倉さんにお願いしたのは、いい素材を日本は持っているので、今まで文化といいますとどうしても保護というのが先にきた感があるんですけれど、これからは、積極的に攻めに転じてですね、稼ぐ文化というものも考えていただきたいということも申し上げたところでございます。それから、著作権協会の会長をかつてやっていた、今も非常勤で、顧問のようなお立場にあるんですけれども、著作権制度の改善に関する検討に当たっては、著作権者の権利の保護と著作物の利用円滑化のバランスを図りながら、文化審議会において有識者による議論を経て、関係者との丁寧な調整を図りながら対応の方向性をまとめておりまして、何らここに対立もございませんでした。したがって、逆に、利益相反もあるとは思っておりません。そういう権利者の立場も知っているということをですね、長官になった後は、大いに活用していただいて、ユーザーの思いや権利者の思い、全ての皆さんに目配りができる長官になっていただけるんじゃないかなと思っていますので、逆に、その経験は活かしていただいたらいかがかなと思っております。
 それから、高輪築堤なのですけれど、遺構の保存方策については、現在、JR東日本の有識者会議の検討や、JR東日本と港区との協議が行われていると承知しています。私からは、有識者の意見も踏まえながら丁寧に議論をいただき、開発と保存を両立させながら、貴重な文化遺産を現地で保存・公開できるようご検討いただきたい旨を視察時に関係者にお願いしているところであり、現在、有識者会議の検討や協議の状況を見守っているところです。あの、あのときにも申し上げましたけれども、文化庁と言いますか文科省として現場に入ってですね、これは残すべきだと申し上げる以上はですね、国としての一定の責任も共有したいという思いもあって発言をさせていただきました。保存のための財政支援については、文化庁にメニューは色々あるんですけれど、補助率や予算がちょっと寂しい金額でございまして。しかしながら、有識者会議での検討やJR東日本と港区の協議の結果を伺ってから、どういうメニューが使えるかということを考えていきたいと思います。今ご指摘のあった、史跡に指定された土地を自治体が買い上げる経費の補助として、補助率5分の4というものが自治体に出すことができる国庫補助などもありますので。私が現場で申し上げたのは、保存と開発、両方できるんじゃないんですか、文科省でも同じようなことをやりましたよ、ということを申し上げて、参考にしてほしいということを申し上げましたので。必ずしも、開発を止めてですね、そこを自治体が完全に買い上げて、例えば、公園整備するような場合の支援メニューとしては、今申し上げた、5分の4というのは使えるんじゃないかと思いますし、そのときにも、工事を止めると財政的な問題が生じるということは、JR側からも発言がございました。あるいは、港区とJRとの協議の間では、じゃあその、財政的にいくらお金が出せるんだろうかというやりとりもあったと報告を聞きましたので、私、文化庁を通じて港区やJRにお願いしているのは、じゃあこの土地はJR東日本さんがどこからいくらで購入した土地なのかを教えてほしいということを申し上げています。金額によっては全額負担しても買えるんじゃないかと思っています。あの、そういった意味で、他の民間の開発用地と違うというプロセスを、私は、JR東日本という会社は一緒に考えていただけないかな、私が申し上げるまでもなく、この土地はJR東日本が後ほど取得をした土地ではなくて、国鉄からJRに移行するときに国鉄の財産として移行した土地でありますし、国民共有の財産だった時代があるわけですから。そこから150年前のかけがえのない遺構が出てきたので、それを保存をしようという行政等々の考えは、私は、そんなにおかしなものではないんじゃないかなと。企業としても、ぜひ、一緒に伴走して考えていただきたいなと、そう思っています。

記者)
 あと1週間ほどで3.11の大震災から10年が経ちます。これに対する大臣の、振り返ってこの受止めと、あと、この10年間で地震防災の取組を振り返り、今後の技術でどのようなことが必要で、文科省としてどのように取り組んでいきたいか、大臣のお考えをお聞かせください。

大臣)
 まもなく、東日本大震災から10年を迎えます。震災により犠牲となられた方々に対し、改めて哀悼の意を表するとともに、被災され今なお苦しまれている方々に心からお見舞いを申し上げたいと思います。文科省では、これまでも、被災した児童生徒に対する就学支援や、スクールカウンセラーの配置など心のケア等への支援、また、ふたば未来学園や再開した学校等における「ふるさと創造学」や遠隔教育等、特色ある教育への支援、福島イノベーション・コースト構想の推進、紛争審査会の指針等に沿った原子力損害賠償の実施に向けた対応などに精力的に取り組んでまいりました。被災地の復興・創生が実感でき、子供たちが笑顔で過ごせるように、復興の総仕上げに向けて、引き続き、被災者に寄り添った復興に全力で取り組んでまいりたいと思います。合わせて、この10年間で様々な科学的な進歩もありますので、例えば海域にはですね、N-netをはじめとする地震の観測システムを強化をしてまいりました。地震警報などにも有効に活用されているということで、このときの経験を踏まえてですね、科学の力をもって、できるだけ事前に予知をしたり、できるだけ早く住民の皆さんに現状や予測を伝えることによって被害を最小限に抑えていく。AIや様々な技術、地震メカニズムの解明など、引き続きですね、令和3年度から新たに「情報科学を活用した地震調査研究プロジェクト」も開始をする準備を進めておりますので、科学の力をもって、自然災害を止めることはできませんけれども、最小限に抑えて被害を広げないという努力のために、引き続き、取組を深めていきたいと思っています。

記者)
 大学入試改革の関係で伺いたいなと思います。今年は大学入試改革元年と本来なるはずだったということですけれど、色々議論があった上で、コロナ禍で実施されたということです。それで、共通テストの関係なんですけれども、色んな見送りとかがある中で、「1点刻み」からの脱却というのが元々の議論の開始点でありまして、段階別評価というのを今回入れたというところがあったと思うんですが、私、一応、一生懸命探したんですけれども、この段階別評価を入学者選抜に使った大学っていうのはどうもなかったと、ほとんどなかったということなんですけれども、この点の受止めと、この表示方法というのは、こういうのが今後も必要なのかどうかっていうのは、大臣、どのようにお考えになりますでしょうか。

大臣)
 高大接続改革に関する教育再生実行会議の第四次提言や中教審の答申において、「1点刻み」による評価から脱し、多様な評価方法の導入を促進するため、大学及び大学入学者に対して、段階表示による成績提供を行うことが提言されました。こうした提言を踏まえて、平成29年7月に策定された大学入学共通テスト実施方針において、結果の表示に関して、「大学入試センター試験よりも詳細な情報を大学に提供すること」として、大学入試センターにおいて、今年度から初めて、全体における各受験者の位置付けを示す、9段階表示の成績を大学に提供することにしました。段階表示の利用状況は、今後把握する予定ですけれども、大学入学者選抜実施要項において、共通テストの成績については、素点による選抜だけでなく、資格試験的な利用など、成績の利用方法を工夫することが望ましいこととしており、来年度以降も段階表示にする成績提供を継続することで、各大学が共通テストを活用し、多様な選抜に取り組むことを期待をしております。まさに、今年初めてだったので、すいません、我々はどの学校がどのくらい使ったかまだ把握してないので、これから報告を上げていただいて、使い勝手の悪さですとか不具合とかがあるとすれば、それを改善をしていきたいなと思っていますけれど、現段階では実施状況について把握をしていません。

記者)
 追加で教えていただきたいんですけれども、その「1点刻み」から脱却しようという話になるとですね、やはりその、総合型選抜とか推薦とかそういうところになってくるんだと思うんですけれども、こちらの総合型というのも、すごく、人物評価ということで丁寧にその人を評価すると。これまでの人生とか頑張りとか、そういうものを面接とかで評価すると。すごく丁寧にやるので当然エネルギーが必要だと思うんですけれども、そもそも論として、大学っていうのは入ってきた学生に対して一生懸命教育をしたりとか、もしくは研究活動に打ち込むというのが大学の本務ではないかという意見もあります。この、入試と大学の本務のバランスというのは、大臣、どのようにお考えでしょうか。

大臣)
 どっちも大事なんだと思うんですよね。そもそも、その、大学には3つのポリシーが与えられていて、どういう学生を取りたいかは必ずしも点数じゃなくてもいいわけじゃないですか。だから、AOがあったり推薦があったりするわけですよね。で、紙の上のテストだけじゃなくて、高校3年間の歩みですとか、あるいは、ご本人の主体性等々を評価して総合的に入学を許可する場合もあれば、こういった共通テストなどを利用して点数による選抜というものもあって、色んな方法で各大学が学生さんを取っていただくことはいいことだと思うんです。ただ、本当は、深く知ろうと思えば手間がかかるわけで、ややもすると、日本の場合は受験シーズンがこの2月に集中をしていますので、秋口にやる推薦テストなどは、本来は時間があるわけですから、そこで本当は学校がじっくりやっていただいたらどうかなと思うんですけれど、それも何か、やや形骸している学校もないとは言えないという状況にあって、誤解を恐れず申し上げると、先に入学を予約してくれる人を見つけているようなね、そういう一面もなくはないんじゃないかと思うので。私は、やっぱり、学校がポリシーに則って、どういう学生、うちに来てもらいたいかってのは、明確に、頑張ってもらいたいと思うし、成熟した状況で入学してきたら教えることはなくなってしまうわけですから、そうじゃなくて、粗削りの人たちを、うちの学校だったらこうやって社会に出せるんだということも、やっぱり同時に、外に向かってもしっかり発信をしていただきたいなと思っていますので、今回の一連の受験のことで、大学の果たすべき使命ですとか役割ってかなり色んな角度から注目されたんじゃないかと思うんですよ。例えばコロナ禍における授業の在り方。キャンパスを閉めるか開けるかの選択だけじゃなくてですね、様々な工夫をしながら学生との接点を求めている学校もあれば、もう来年もオンラインでやりますよと宣言している学校もあって。しかし、そのオンラインも他所から見れば羨ましいぐらいいい授業をやっている学校もあれば、首をかしげるようなそういうものも中にはあるんだろうと思いますので。私は、主役は、申し訳ないんですけれど、学校じゃなくて学生だと思いますので、それぞれの学生一人一人が能力や可能性を伸ばすことができる日本の大学であっていただきたい。そのためには、あんまり手間を惜しまないでですね、素晴らしい人材が各大学にいるわけですから、入試問題を作りたくないとかですね、採点が大変だとかそういうことではなくてですね、やっぱり、一人一人に向き合った受験というものをしっかりやっていただきたいなと。そのために時間が必要だったら色んな工夫もまたできるんじゃないかなと思いますので、今回のこういったコロナを機会にですね、大学の在り方というのは、国公立私立それぞれがみんな考え直すいい機会にしていただきたいなということを期待しています。

(了)

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