萩生田光一文部科学大臣記者会見録(令和3年1月29日)

令和3年1月29日(金曜日)
教育、科学技術・学術、文化、その他

キーワード

国立研究開発法人科学技術振興機構法の一部を改正する法律案、国立大学附属病院多用途型トリアージスペース整備事業、大学入学共通テスト第2日程に臨む受験生等へのメッセージ、旭川医科大学病院長の解任について、日本芸術院の会員選考に関する検討会議、ICTを活用した自殺対策、ICTを活用した学びの在り方、非正規教員の長期的な配置について、新しい歴史教科書をつくる会からの申入れについて

萩生田光一文部科学大臣記者会見映像版

令和3年1月29日(金曜日)に行われた、萩生田光一文部科学大臣の定例記者会見の映像です。

令和3年1月29日萩生田光一文部科学大臣記者会見

令和3年1月29日萩生田光一文部科学大臣記者会見(※「YouTube」文部科学省動画チャンネルへリンク)

萩生田光一文部科学大臣記者会見テキスト版

大臣)
 おはようございます。
 冒頭、私から3件ございます。まず、今国会において補正予算関連法案として提出しておりました「国立研究開発法人科学技術振興機構法の一部を改正する法律案」が、昨日の参議院本会議において可決、成立をいたしました。本法律及び令和2年度第3次補正予算の成立により、我が国の研究力向上に対する本気度が国内外に示されたと思います。速やかに大学ファンドの運用を開始すべく、しっかりと準備を進めてまいります。大学ファンドによる研究基盤の抜本的強化と大学改革を両輪として具体的に進めていくことで、我が国の研究大学を世界トップレベルに引き上げてまいりたいと思います。さらに、優れた学生が、経済的な不安を抱えず安心して博士後期課程へ進学できるよう、強力に支援をしてまいりたいと思います。
 2件目です。昨日、成立しました補正予算の中に、文部科学省において、新型コロナウイルス感染症対策を中心に、早急に対応すべき事業を実施するための経費を盛り込んでいますが、その中において、このコロナ禍及び今後の新たな感染症の流行等の不測の事態が生じた場合にも、地域医療の最後の砦である国立大学附属病院がその機能・役割を発揮できるよう、フレキシブルに活用できるスペースを確保するための経費として30億円を計上いたしました。本事業は、感染症の流行時において、感染症の患者とそれ以外の高度医療を必要とする患者や重症患者について、病院内での動線を分けるなどのための施設整備を行うものです。これにより、国立大学附属病院が多様なニーズに柔軟に対応できるようになり、社会の期待に一層応えることができることを期待しております。昨年末の第3次補正予算案の閣議決定以降、附属病院を有する42国立大学に照会したところ、35大学から申請がありました。昨日の補正予算成立を受け、今後、外部有識者による審査を経て、早急に採択を行い、整備を進めてまいりたいと思います。
 最後に、明日1月30日及び31日に令和3年度大学入学共通テストの第2日程が全都道府県に設けられる64会場で実施をされます。第2日程は、本試験として受ける受験生のほか、第1日程を病気等の理由で受験できず追試験として受ける受験生、第1日程が雪害のため実施できなかったことなどにより再試験に臨む受験生の計約2,500名が対象となります。明日、明後日の試験に臨む皆さんには、これまでの成果が存分に発揮できることを心から願っております。第1日程の際も申し上げましたが、特に、北日本から東日本の日本海側を中心に大雪が予想される地域もあるようですので、受験生の皆さんは、各地域の運行状況や気象予報、各試験場大学が提供する試験の実施情報に注意していただきたいと思います。各試験場となる大学においても、受験生の情報提供や問い合わせへの対応を適切に行っていただくとともに、実施準備に万全をきたしていただくようにお願いしたいと思います。また、当日、交通機関の遅延やトラブルなどが生じている場合、疾病、負傷などやむを得ない事情が生じた場合は、速やかに、受験票に記載のある「問い合わせ大学」にご連絡いただき、指示に従って落ち着いて行動いただければと思います。これまでの間、関係省庁、関係団体等と緊密な連携を図りながら準備を進めてきました。第2日程の試験会場となる大学においては、第1日程同様に感染症対策も含め、試験実施に万全を期していただきますようにお願いしたいと思います。受験生の皆さんには、試験当日示される指示等に沿って受験していただくとともに、終了後も入試日程のある方も多いと思いますので、引き続き、感染症対策をお願いします。国民の皆様も、受験生の移動等に配慮し、社会全体で受験生をサポートしてくださるように改めてお願いを申し上げたいと思います。私からは以上です。

記者)
 2点ご質問させてください。1点目は旭川医科大学の件です。先日、旭川医科大学の学長が、病院の院長を解任するということがありまして、その理由として、報道機関へ内部の情報を漏らしたとか、内部の情報を外に出したことで混乱を招いたとか、そういう3点ほど理由を上げておりましたが、院長は否定されているそうです。この解任理由について、大臣の受止めをお聞かせください。

大臣)
 旭川医科大学において、今月25日付で、学内会議の情報を外部に漏えいさせたことなどを理由に、古川病院長を解任したと報告を受けております。学内人事については、各大学の判断で行われるべきものであり、文科省がですね、良し悪しを述べる立場にはありませんが、学長と病院長という大学トップの方々の対立は、道民や患者の方々に不安を与えるものであり、学内で冷静な対応をお願いしたいと考えております。

記者)
 もう1点ですが、2月1日に初回を迎える、日本芸術院の会員の選考会の在り方などを検討する外部有識者会議についてお尋ねします。まず、今回、このようなテーマを検討してもらうことにした理由と今の選考会についてお感じになられている具体的な課題を教えてください。また、今後のスケジュールについて、どのように進めていくのでしょうか。また、日本芸術院が、今回の検討を経てどのような姿に向かっていくことが望ましいかということ、芸術院の役割や意義について大臣のお考えをお聞かせください。

大臣)
 日本芸術院は、「芸術上の功績顕著な芸術家を優遇するための栄誉機関」として文化庁に置かれた特別の機関であり、各分野での功績顕著な芸術家が会員として選考され、文部科学大臣が任命しています。その会員選考に当たっては、現役の会員が候補者を推薦し、分野ごとに設けられた各部会での投票及び総会の承認を得て、日本芸術院としての決定を行うというプロセスになっているところ、平成27年、これに外部の意見を取り入れるべきとの国会のご指摘をいただき、一旦は日本芸術院の内部で検討が重ねられ、一部見直しが行われました。しかしながら、本件検討に当たっては、さらに外部の視点も入れながら、もう一歩進めることが必要と考えております。また、日本芸術院には美術、文芸、芸能の各分野がありますが、文化芸術の概念は時代の変化とともに広がり、新たな分野で、世界から評価される我が国の芸術家も出てきていると思います。このような中で、この度、外部有識者による検討会議を立ち上げたものです。本検討会議では、会員候補者の推薦や選考の際の外部意見の反映の他、グローバル化した文化芸術における芸術上の功績の考え方や、多様化した文化芸術の現状を踏まえた分野の在り方についてご議論いただきたいと思っております。本件は、過日の文部科学委員会でも委員からも指摘されて、その後、どうなっているんだというご指摘があって、ややその検討のペースが遅かったという思いがございますので、私の方で改めて指示をして、今回、会の立ち上げということになりました。あの、申し上げたとおり、美術、文芸、芸能という分野がありますけど、どんどん時代が変わっていまして、例えば、確かにその30年前にですね、アニメが世界的に評価されるなんてことは考えてもみなかったけれど、今やこれ日本のお家芸の一つじゃないですか。そういう人たちは、芸術としてのですね、価値がないのかとかですね、それから、オリンピックは延期になりましたけど、昨年の4月にですね、日本の書200人という書道展をやったんですね。これは、たまたま私が大臣になる前に色々お世話をしていまして、分かりやすく言うと、何となくこう新聞社の系列があって、それが力関係になってですね、背景が大きな団体の人が選ばれがちだというようなこともあったので、大同団結して、本当にお互いに評価しあって、あの人上手だよねというのは書道家だったらお互いに思いがあるわけですから、そうやって選んでいこうよといって、超党派と言いますかね、会を開いて、おかげさまでそれが実りました。で、やってみたら、やっぱりお互いにリスペクトするところがたくさんあってですね。今まで埋もれていたけれど、この人凄いよねという人がやっぱり世の中に出てきましたので、他の分野でもこういうことって多分にあるんじゃないかと思うので、良い機会ですから、ぜひ、大いに専門家の皆さんに検討を加えていただきたいなと、そう思っています。

記者)
 昨日の参議院予算委員会で、子供の自殺予防について、1人1台端末を活用した相談体制を厚労省と検討というお話ありました。今、あの、電話やSNSなどではあると思うんですけれども、こういった端末を使うことの狙い、それとどういったものを考えていらっしゃるのか教えてください。

大臣)
 厚生労働省によると、昨年の1月から11月までにおける児童生徒の自殺者数は前年度に比べ大きく増加しており、文部科学省としてもこの実態を重く受け止め、悩みを抱える児童生徒の早期発見等に向けた取組を行っています。また、現在、文科省において、GIGAスクール構想を推進しているところであり、ICTを活用した自殺対策も重要なことだと認識しております。このため、令和3年度政府予算案において、SNS等を活用した相談事業の全国展開に向けた予算を計上しているところですが、ICTを活用した効果的な自殺解決策についても、引き続き、関係省庁と連携をしながら検討をしてまいりたいと思います。あの、現段階で完成形をイメージしているわけじゃないのですけれど、やっぱり色んなアプローチの道を増やしてあげた方がいいのだと思うのですね。命の電話だけを紹介するんじゃなくてですね、その、ややもすれば、そういう悩んでいる子たちは、学校の授業が身に入らないぐらいに悩みをしているわけですから、それがいいとは言いませんけれども、授業中でもですね、そこからアクセスできるようなこともあってもいいのではないかなってことを考えていますので、今後、よく厚労省とも相談しながら、せっかくつながる全国のネットをですね、どう有効活用したら子供たちの悩みに応えることができるのか、命を救うことができるのか、しっかり検討してみたいと思っています。

記者)
 ちょっと2点伺いたいんですけど。1つ目が中教審の答申に関してです。先日、中教審の方から大臣の方に答申があったと思いますけれども、いくつか施策が具体的なものあったと思うんですが、1つのメッセージとしては、ICTをもっと活用していこうと、デジタル化していこうというようなお話だったかと思います。その中で、高等学校においてですね、自宅におけるオンライン授業っていうのも、生徒の特殊事情とかに応じて、特例的に認めてハイブリッド型っていうのもやってもいいんじゃないかみたいな、そういう記述もあったんですけれども。これについて、大臣、どのように考えてらっしゃいますでしょうか。

大臣)
 学校においてICTは基盤的なツールとして必要不可欠なものとなっており、学びを保障し充実する手段として、義務教育段階・高等学校段階といった発達段階に応じて遠隔・オンライン教育を活用していくことは重要であると考えています。他方、学校教育は、単なる知識の伝達ではなくて、対面・集団での学びにより、リアルな体験を通じて思考力・判断力・表現力等が、学びに向かう力・人間性等を育成する必要もあります。先日、取りまとめられた中教審の答申においても、遠隔・オンライン教育を含むICTを活用した学びの在り方について、教師が対面指導と家庭の地域社会と連携した遠隔・オンライン教育の2つを使いこなす、まさにハイブリッド化をすることで、個別最適な学びと協働的な学びを展開することが基本的な考えとして必要だと示されていると思います。文科省としては、まず、義務教育段階においてはですね、1人1台端末の実現をはじめとするICT環境の整備を早急に進めつつ、教師と児童生徒、児童生徒同士の関わり合いの重要性、義務教育段階から高等学校段階までの児童生徒の発達段階の違い、新型コロナウイルス感染症への対応における成果や課題を踏まえ、初等中等教育段階における遠隔・オンライン教育に関する取組を進めてまいりたいと思います。特に、高等学校につきましては、同時双方向の遠隔授業の実施について、単位数の算定、対面による授業の実施などの要件の見直しを行い、教師による対面指導と遠隔授業を融合させた柔軟な授業方法を可能としたらどうかという提案を頂いております。まず、原則は、高校生もですね、学校に来ていただいて集団の学びをしていただくことが大事なのですけれど、小学生や中学生と違ってですね、やや専門的分野に入ってくるものもありますから、例えば、その学校の授業内で収まらないけれども、これやった方がいいというものに関してですね、遠隔の授業をご自宅でやることもいいと思うのですけれど、間違えてほしくないのは、だから朝から学校に来なくていいんだと、家に居ていいんだということになったら、これ、日本中通信教育になってしまいますので。そこは、中教審の皆さんもそれを望んでいるのではなくて、高校生にはそういうバッファもあってもいいよねということをこの中間答申では提案をしたまでだと、私、思っていますので、あまり極論しないで考えていただければと思います。

記者)
 もう1点なんですけれども、非正規の先生方の関係なんですが、臨時とか非常勤講師とか言われる先生方、全国的に増えているということなんですけれども、これ、教員採用試験でですね、チャレンジし続けていらっしゃる方もいらっしゃるわけです。何年も何回も落ちているという方が何年も続けて非正規の先生をしていると。これ、子供に関わるっていう意味では、別に正規でも非正規も変わらないにも関わらず、落ちた人を教壇に非正規として立たせ続けるというのは、これ矛盾じゃないかという指摘があるんですけど、この点は大臣、どうお考えでしょうか。

大臣)
 まず、全国的に見ますと、都道府県及び政令指定都市において、教員定数を超える教員を配置しており、教員定数に対する正規職員の割合は9割を超えています。また、この割合は近年大きく変動していません。また、正規教員や非正規教員の任用、配置については、各教育委員会において、適切に判断されるものでありますが、教職員定数は児童生徒数などの不確定要素により、時限的な確保が必要となる教員数を見込めないケースがあります。文科省としては、今回の教職員定数改善計画により、今度、小学校35人学級になるわけですから、定数を児童生徒数に応じて自動的に配置されることですから、都道府県や政令都市において、加配定数の配置措置と比べて計画的な教員採用ができるようになると思っています。で、全国見渡すと、やっぱり都道府県で状況が違っていて、長いスパンで計画的に新規採用をしてきたところっていうのは、そんなにその穴ができないので、臨時雇用の数が少ないんですね。そうじゃないところがどうしてもこうなるのと、もう1つの要因は、やっぱり特別指導が必要になってきて、当初計画していた人員では対応できないということで、教員資格者を急遽集めるためにですね、臨時雇用の人たちが増えているっていう一面があります。ただ、ご質問は、要するに試験に落っこちた、本試験に落っこちた人を臨時雇用で使うのはどうなんだということなのですけれど、私、いつも申し上げていますけれど、例えば、最短22歳で大学卒業して、それで採用試験、紙と対面とで受かりますよね。で、したがって、もう既に完璧な教員かといったらそうじゃないから、言うならば、条件付任用で大体採用をするのだけれど、分かりやすく言えば、まだ本採用じゃないですよという期間が1年間あるわけじゃないですか。そこであぶれた子たちもですね、同じ試験を受けて、何かが足りなくて、そのときにはもしかしたら落ちるかもしれないけど、社会へ出るっていうか教壇に出るのは同じ条件なので、もしかすると、教壇に立ってみたらですね、採用した子より落っこちた子の方がすごく教員としていいじゃないかという場合もあるのだと思うので。私はこれ、逆に言えばですね、教員を志す人が仮に採用で一度落ちて、採用待ちとかウェイティングになったとしてもですね、こういう臨時の機会を使って力をどんどんつけていったらどうかなと思うので、逆にいい研修の機会じゃないかなと思っているのですね。ただ、不安定で、このまま教師を続けていられるのかっていうドキドキした環境の中で教員をやるっていうのは、あまり子供たちにもいい影響を与えないと、私、思いますので、今回、フェーズがすごく変わりますから、もう1回都道府県で計画的な配置をしていただいて、ぜひ安心していい先生方をしっかり選んでもらうってことを心がけてもらうことが大事かなと思います。

記者)
 中学の歴史教科書における従軍慰安婦の記述問題でお聞かせください。令和元年度検定で合格した山川出版社の歴史教科書にある従軍慰安婦の記述をめぐって、新しい歴史教科書をつくる会などが、昨日、記述の問題点を指摘した上で、文科省の方に削除を勧告するよう求める申入れをしました。同趣旨の申入れは、先月にもなされて、教科書課名で回答済みなのですけれども、この問題について大臣はどのようにお考えでしょうか。また、あの、平成5年の河野談話を除いて、政府が使わなくなった用語が教科書では使われ続けるという状況が是正されるべきとの指摘もあるんですけれども、その点、どうお考えでしょうかお聞かせください。

大臣)
 新しい歴史教科書をつくる会などの関係者が、昨日、文科省を来省し、担当課に再度申入書を提出したことは承知をしています。ご指摘の図書の記述については、教科書検定基準等に基づき、教科書用図書検定調査審議会の学術的・専門的な審議の結果、検定意見は付されなかったところであり、記述の訂正を発行者に勧告することは考えておりません。

(了)

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