萩生田光一文部科学大臣記者会見録(令和2年12月11日)

令和2年12月11日(金曜日)
教育、科学技術・学術、その他

キーワード

防災・減災、国土強靱化のための5か年加速化対策,光データ中継衛星の試験運用,公立小中学校施設におけるバリアフリー化の状況調査の結果(速報値)及び整備目標,学校で行われる健康診断における児童生徒への配慮,児童生徒に対してわいせつ行為に及んだ教員への厳正な対応と他省庁等との連携について,収賄によって失職した元職員の再就職について

萩生田光一文部科学大臣記者会見映像版

令和2年12月11日(金曜日)に行われた、萩生田光一文部科学大臣の定例記者会見の映像です。

令和2年12月11日萩生田光一文部科学大臣記者会見

令和2年12月11日萩生田光一文部科学大臣記者会見(※「YouTube」文部科学省動画チャンネルへリンク)

萩生田光一文部科学大臣記者会見テキスト版

大臣)
 おはようございます。
 私からは2件ございます。まず、本日の閣議において「防災・減災、国土強靱化のための5か年加速化対策」が決定され、現在実施している3か年緊急対策後も、引き続き、国土強靱化に関する対策を重点的・集中的に実施することとなりました。今回の「5か年加速化対策」において、文部科学省では、首里城跡の火災や近年の自然災害の被害等を踏まえ、文化財の防火対策・耐震対策を新たに加えているほか、学校や独立行政法人等の施設の老朽化対策、災害支援にも活用できる大学・高専の練習船の建造、地震津波火災観測網(注)の整備など、3か年緊急対策において実施した対策についても、改めて、中長期な視点で課題を検討し、対策を加速化・深化させるための取組を盛り込んでおります。引き続き、国土強靱化の一環として、子供たちの安全・安心な教育環境を確保するとともに、国土強靱化に資する研究開発等に着実に進めてまいりたいと思います。
 もう1点ですが、11月29日にH-IIAロケットで打ち上げられた光データ中継衛星は、高度約36,000kmの静止軌道へ到達し、12月9日に電源等の機器が正常に動作することを確認をしました。この光データ中継衛星は、衛星が観測したデータを光通信より中継し、地上にリアルタイムに近い形で送信をするための技術実証を行うものです。今後、打ち上げる予定の先進光学衛星や先進レーダ衛星のデータ中継を行う予定です。これにより、例えば、災害発生時の被災地の観測データを即時に地上へ中継することが可能となるなど、防災・減災や国土強靱化に大きく貢献するものと期待しています。文部科学省としては、こうした国民の安全・安心に資する取組に力を入れ、宇宙開発の意義を国民の皆様にしっかりと発信をしてまいりたいと思います。私からは以上です。

記者)
 公立学校のバリアフリー化に関する調査が公表されまして、エレベーターの設置率が26%などの結果でした。改正バリアフリー法によって今後整備が必要になってくると思いますが、大臣の現状のご認識と今後の予算措置の見通しについてお聞かせください。

大臣)
 今般実施した学校施設のバリアフリー化の調査結果では、各学校設置者におけるバリアフリー化に関する整備計画の策定状況、バリアフリー化の状況ともに、必ずしも十分に取組が進んでいない状況が明らかになりました。文部科学省としては、学校施設のバリアフリー化を一層推進していく必要があると認識しております。こうした実態を踏まえ、昨日、学校施設のバリアフリー化に関する有識者会議の最終報告において、令和7年度末におけるバリアフリー化の整備目標案が示されたところです。例えば、車椅子使用者用トイレについては、避難所に指定されている全ての学校に整備することとし、これにより95%の公立小中学校への設置を目指すこととしています。文科省としては、こうした有識者会議の報告も踏まえた上で、今後、国としての整備目標を示し、学校設置者におけるバリアフリー化の計画の策定と、それに基づく計画的な整備を要請してまいります。また、バリアフリー化を一層推進するための「バリアフリー化推進指針」の改訂や、バリアフリー化工事を補助する財政支援の充実、また、好事例の横展開などを図ることにより、学校設置者の取組を積極的に支援してまいりたいと思います。

記者)
 小中学校のですね、定期健康診断についてお伺いします。昔から、学校では、児童生徒を一律に上半身裸にさせて健康診断を実施していると。現在も続いている学校があるわけですけれども、特に、思春期の女子の児童生徒からはですね、裸になることを強いられてストレスを感じたりですね、トラウマになったりしたというような声が近年上がっています。大臣はですね、こういった、一律に上半身裸にさせるということについてやむを得ないと考えているのか、望ましくないと考えていらっしゃるのか、その辺も含めてご所見をお願いいたします。

大臣)
 健康診断は学校医の協力により実施をされているものであり、児童生徒等が自身の健康状態を理解し、保護者や教職員が適切な指導や事後措置を行うことにより、児童生徒等の健康の保持促進を図るものです。特に、小学校段階では、虐待の兆候となるあざなど直接の視診による確認が必要なものや、中学校段階では、女子に発症しやすい脊柱側弯症など、肩甲骨の位置などの確認が重要な疾患もあることから、これらを見落とさないよう丁寧な診断が必要です。児童生徒のプライバシーの確保や発達段階に応じた配慮も当然に必要でありまして、正確な診断を行う上でどのような対応が可能か、医師会とも意見交換を進めているところでございます。

記者)
 すみません、関連して、ごめんなさい。学校現場でですね、どうしたらいいかという、判断が揺れているところがあるんですけれども。文科省としてですね、性に対する自我みたいなものが低年齢化しているという現代にあってですね、何かしらのガイドラインみたいなものを示すようなお考えとかはありますでしょうか。

大臣)
 そういう現場の声も聞いていますので、先ほど申し上げたように医師会の皆さんと、学校医の人たちにやってもらっていることなので、医師の皆さんとの考え方も伺いながら必要な対応を考えていきたいなと思っています。

記者)
 わいせつ教員の関連で質問です。文部科学省の方では、児童生徒にわいせつ行為を行った教員を、原則、懲戒免職とするよう各教育委員会に求めています。しかし、実態として、他校の児童生徒だから免職しないなど、あるいは児童生徒を抱きしめてキスをしても免職しないなど、教育委員会によって判断に差が出ているのが実態であります。こうした状況についての大臣のお考えをお聞かせください。

大臣)
 従前から述べておりますけれども、児童生徒を守り育てる立場にある教師が児童生徒に対してわいせつ行為を行うことは、断じてあってはならないと思います。文科省としては、従前から繰り返し指導等をしてきた通り、児童生徒に対するわいせつ行為を行った教員については原則として懲戒免職とするなど、厳正に処分を行うことが必要であると考えておりまして、その指導の結果として、本年9月時点で、全ての都道府県・指定都市教育委員会の懲戒処分基準において、その旨の規定が整備をされたところです。公立学校の教員への懲戒処分については、任命権者である教育委員会の権限と責任において判断・対応がなされるものであり、それぞれの懲戒処分基準を踏まえ、個別の事案ごとに各教育委員会において処分の判断がなされるものと承知しています。私としては、被害児童生徒はもとより、保護者や他の児童生徒等に与える影響、教育に対する信頼を著しく損なえることなどを考えると、教員の児童生徒に対するわいせつ行為については、自校の児童生徒であるかどうかなどを問わず、免職とすべきであると考えています。文科省としては、各教育委員会が同じ思いで対応いただけるよう、引き続き、わいせつ行為を行った教員に対する厳正な処分などについて周知徹底を図ってまいりたいと思います。

記者)
 関連して。今の、各教委の責任でというご発言ありましたけれど、例えば、国の方で、処分に当たって一定の具体的な基準などを設けるというようなお考えはありますでしょうか。

大臣)
 一番現場に近い設置者の皆さん、教育委員会の皆さんが、それぞれ、元々の任命権者である都道府県教育委員会や政令市教育委員会を含めてですけれども、それぞれのルール化をしていると思うんですね。それで、例えばここで、御社が色んな取材をしていただく中で、懲戒免職をしてなかったとか、あるいは官報の掲載がなかったっていう事案を調べていただきましたよね。それで、それ、色々どうしてこういうことになるんだろうなっていう確認をしますと、様々レアな事情っていうのが浮き彫りになってきました。従って、一律のルール化じゃなくてですね、やっぱり児童生徒に一番近い教育委員会が、なぜ掲載しなかったかってことで、例えば、それが怠慢であればこれけしからんことなのですけれど、児童生徒を特定しないように配慮して、みんなで相談の結果ですね、一定期間、掲載を見送ったなどという例も報告として上がってきていますので、そういうことを含めますと、処分内容も含めて現場でご判断いただくことが一番いいと思います。原則はもうお示ししているわけですから、自校の生徒であれ他校の生徒であれ、それはもうきちんとですね、懲戒処分をすることを原則にしてほしいということは申し上げていますし、また、条例化も全て終わったということで先ほど申し上げた通りでございますので、そこは現場の良識を信じたいなと思います。

記者)
 子供へのわいせつに対する対策についてお伺いします。教員からわいせつ被害を受けた児童を持つ保護者にお話を聞きますと、加害をした教員が学校を辞めた後も子供に接する職業に就いているケースもあり、その保護者は、自分のお子さんと同じような目に遭うのではと非常に心を痛めていました。子供と接する職業は、教員以外にも保育士や塾講師、ボランティアスタッフなど数多く所管官庁も多岐にわたります。子供へのわいせつ対策という意味で、関係省庁の連携の必要性について、そしてまた、連携の、何かもう、具体策など検討状況ありましたら教えてください。

大臣)
 性犯罪・性暴力は被害者の尊厳を踏みにじり、心身に深刻な影響を及ぼすものです。子供に対してわいせつ行為を行うようなことは言語道断であって、決して許されるものではありません。文科省としては、本年6月に関係府省会議で決定した「性犯罪・性暴力対策の強化の方針」を踏まえ、児童生徒等に対しわいせつ行為を行った教員への対応として、官報の情報検索ツールの検索可能期間を大幅に延長するとともに、教育免許状の改正についても検討しているところです。ご指摘のように、この問題は教員だけでなく、例えば、学習塾ですとか児童相談所ですとか、子供と日常的に接する職に共通する問題であると認識しています。まずは、各省において必要な対策を講じていただくべきと思いますが、当然、連携・協力は行っていきたいと考えています。なお、イギリスには、教員のみならず保育士や学校の保護者ボランティアなど、子供と日常的に接する職種に就く場合に、雇用主が、内務省が所管する機関に照会することにより、性犯罪の前科などがないことの証明を求める職種横断的な仕組みがあると承知しております。このような仕組みも参考になるのではないかと考えているところです。

記者)
 私もわいせつ問題に関して伺わせていただきたいと思います。今お話でありましたイギリスのシステムですね、先日、あの、自民党の有志の方々が、上川法務大臣の方にですね、そのようなことの導入もいかがかというような要望がございまして、上川大臣の方も、色々難しい点はありますけれども法務省としてできることを考えていきたい、というようなお話だったと聞いております。で、これ、教員採用にも当然関わる問題ですが、萩生田大臣としては、この件、どのようにお受止めでしょうか。もしくは厚労省とかですね、法務省と連携して何かなさるお考えはございますでしょうか。

大臣)
 与党議員の皆さんが、上川法務大臣のところに、「無犯罪証明書」の取得のできる仕組みの創設を求める要望書を提出されたとの報道は承知しています。イギリスでは、今申し上げたように、教員のみならず保育士や学校の保護者ボランティアなど、子供と日常的に接する職種や役割に就く場合には、雇用主等が、内務省が所管する機関に照会することにより、性犯罪の前科等がないことを証明を求める仕組みがあると承知していますが、今回の要望書はまさにこの仕組みを参考にされたものではないかと理解します。子供たちをわいせつ行為の被害から守る仕組みとして、このような職種横断的な仕組みは我が国にとっても非常に有効であると私は受け止めています。まずは、今回の要望を受けられた法務省の動向を注視したいと思いますが、文科省としても、その動向に応じて、法務省等の関係省庁に対し可能な協力を行ってまいりたいと思います。繰り返し、法改正、教員免許については、法改正の様々な検討をしていることを報告しているのですが、色々法律の建付けや概念で難しいところもあるんですね。で、例えば教員免許は、例えば剥奪ができたとしても、子供たちと接する他の職種へ流れた場合には、それを止めることができないってこともありますので、あの、こういう、大きく俯瞰して子供たちを守っていく仕組み作りっていうのが今後必要だと思うので、省庁の壁を越えて検討したいと思います。

記者)
 ちょっと関連で伺いたいんですが。このわいせつの問題というのは、ずっと議論を聞いていますと、公立学校の問題を中心にかなり議論されているように感じているんですが、実際、私の取材経験から言いますと、私学でもそういった問題は起きていると。私学の処分とかいうのは、公立と違って教育委員会がグリップできないので、そこは、私学の判断に任せられているわけです。実際の取材の関係で、経験で言いますと、実際には処分されていないという事案、かなり相当数上っていると考えられるんですけれど、この、私学に対してどうグリップをかけていくか、これは、大臣、どうお考えでしょうか。

大臣)
 これだけ毎日のように社会的な問題になっていますから、私学関係者の皆さんも問題意識は共有していると思います。例えば、仮にですね、私学の場合はそういう先生が中にいたということで学校の評判を落としたくない、従って、処分を見送って、静かにいなくなってもらうみたいなことをやっているとすれば、その人は、無傷でまた次の職場に行ってしまうわけですから、ここはやっぱり、お互いに情報共有してもらう必要があると思います。確かに、直接の、文科省の所管ではないですけれど、知事部局とも連携をとりながらですね、問題意識は共有してもらうように、機会を通じて、これからもしっかり対応していきたいと思っています。

記者)
 JAXAの業務をめぐる接待汚職事件の関連で伺うんですが。この事件で有罪が確定した文科省の元国際統括官が、JAXAから業務委託を受ける企業に非常勤顧問として再就職をしていると。この件で、文科省としては、国民の誤解を受けるということで再考を求めたが応じられなかったという経緯があるそうなんですが、大臣としての受止めを伺いたいと思います。

大臣)
 収賄罪の判決確定により失職した文部科学省の元職員の川端和明氏が、国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構(JAXA)の業務委託を受けている民間企業に再就職したことは、川端氏から国家公務員法に基づく届け出を受けておりまして、私も承知しています。退職した職員のうち一定の者の再就職については、届出がなされるたび、文科省として、再就職等規則違反の有無の確認をしています。川端氏からの届出についても、法曹の協力をいただきながら確認しましたが、直ちに違法性のある事実は認められませんでした。法令に抵触しない範囲内で、職員が退職後にどのような職業を選択するかは当該職員の判断であるものの、一方で、川端氏が収賄罪に問われた経緯を踏まえると、今回の再就職は当該再就職先がJAXAとの関係の深い企業であることから、文部科学行政の適切な運用について再び国民から疑念を抱かれかねないものであり、文部科学省としても不相当と考えております。そうしたことから、川端氏に収賄罪に問われた経緯を踏まえ、本年3月に、実は、本人に対して、今般の再就職については考え直してもらえないかということを文書で要請をしたのですが、この要請に対して何らかの対応が行われたという事実は承知しておりませんので、文科省としては、現在も本年3月に行った要請の通りの考え方であり、引き続き、状況を注視してまいりたいなと思っております。良識で考えて、これ、文科省内の改革をしなきゃならないことの大事件だったわけですから、私はあの、事に至るまでの経緯というのは色々ご本人も納得いかないものがきっとあったかもしれないけれど、いずれにしましても、退職をしたそのきっかけになった関係の所に再就職するっていうのは、今、本当に、国民の皆さんの信頼をしっかり受け止めて教育改革をしようという文部科学省にとっては、私はちょっとOBとしてどうなのかと思いますし、また、民間ですから、そこに文部科学省の及ぶ範囲じゃないですけれど、雇う方も雇う方じゃないかという思いが私はしていまして。従って、3月の時点で、少し考え直してくれないかというお願いをしたんですけれど、他方、もう退職した立場でありますから、これはもう憲法の保障される職業選択の自由もありますし、民間の皆さんがどういう人を雇用するかはですね、これは行政の及ぶ範囲ではないので、ぜひあの、仮に、今までの知見を活かしてその会社でお仕事をされるんだとしたら、誤解のないようにいい仕事をしてもらいたいなというのがせめてもの願いです。

(注)「地震津波火災観測網」と発言しましたが、正しくは「地震津波火山観測網」です。

(了)

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大臣官房総務課広報室