萩生田光一文部科学大臣記者会見録(令和2年10月23日)

令和2年10月23日(金曜日)
教育、科学技術・学術

キーワード

日本人宇宙飛行士の募集、新卒者等の採用維持・促進に向けた取組、デジタル教科書の使用に関する検討の加速化について、児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査、体験活動推進特設ページ(たっぷり体験)の開設、大学入学共通テストの科目新設に係る報道について

萩生田光一文部科学大臣記者会見映像版

令和2年10月23日(金曜日)に行われた、萩生田光一文部科学大臣の定例記者会見の映像です。

令和2年10月23日萩生田光一文部科学大臣記者会見

令和2年10月23日萩生田光一文部科学大臣記者会見(※「YouTube」文部科学省動画チャンネルへリンク)

萩生田光一文部科学大臣記者会見テキスト版

大臣)
 おはようございます。
 すみません。今日も冒頭5件あります。まず、最初にですね、新たな日本人宇宙飛行士の募集についてでございます。本年7月、私とブライデンスタインNASA長官との共同宣言において、アルテミス計画における日本人宇宙飛行士の活動機会について確認し、先般の「アルテミス合意」に署名を行うなど、国際宇宙探査に向けて機運はますます高まっているところです。このような状況を踏まえ、この度、新たな日本人宇宙飛行士について、来年秋頃を目途に募集を開始することとしましたので発表させていただきます。また、今後、一定規模の宇宙飛行士の数を維持するため、5年に1回程度の頻度で募集を行うことを想定しています。募集の詳細については、本日午後に、担当から説明させていただきます。今後、大きく展開していく国際宇宙探査において、日本人宇宙飛行士として貢献すべく、我こそはと思う方の、積極的な応募をお待ちしております。
 次に、2件目ですが、新型コロナウイルス感染症の影響を踏まえた新卒者等の採用維持・促進に向けた特段の配慮については、今週のNHKの日曜討論で申し上げたところですが、その後、内閣官房、厚生労働省、経済産業省、文部科学省の関係省庁間で調整をし、この度、新卒者等の採用維持・促進に向けた取組を取りまとめました。内容としましては、新卒者等の採用維持・促進のために各省庁において取り組む新卒者及び企業に対する具体的な支援策を示すとともに、経済団体に対しては、卒業・修了後少なくとも3年以内の既卒者は、新規卒業・修了予定者等の採用枠に応募できるよう改めて対応を求めるものとなっております。今後、できるだけ早いタイミングで関係大臣とともに、経済4団体に対して直接要請を行うことを考えておりますが、その具体的な日程については、現在調整中であります。新型コロナウイルス感染症の影響により、希望を持った学生がくじけることのないよう、文部科学省としても、引き続き、関係省庁と連携し、学生への就職支援に取り組んでまいりたいと思います。
 次に、今月2日に行った平井大臣、河野大臣との教育分野のデジタル化に関する意見交換においては、その重要性について認識が一致したところです。そこでデジタル教科書に関するやりとりもありましたが、文部科学省として、その導入は丁寧かつ確実に進める必要があると考えており、概算要求には、小中学校等で実証授業等を行う経費を計上しています。他方、GIGAスクールで1人1台端末整備が進むとともに、来年度は小中学校の教科書の約95%でデジタル教科書が発行見込みであるなど、環境整備の進展を踏まえれば、デジタル教科書をより有効に使用できるようにする制度の見直しも必要と考えられます。このため、デジタル教科書の使用を各教科等の授業時数の2分の1未満とする現行基準の見直しについて、検討を加速するよう担当部局に指示をいたしました。現在、この見直しを含むデジタル教科書の今後の在り方について有識者会議で議論をいただいているところですが、本件については先行して年内を目途に一定の方向性をお示ししていきたいと考えております。
 4件目ですが、昨日、令和元年度の「児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査」の結果を公表しました。調査結果においては、いじめの積極的な認知の取組等により、いじめの認知件数が増加する一方で、暴力行為の発生件数や、小中学校における不登校児童生徒数が増加するなど、引き続き、憂慮すべき状況と考えます。文部科学省としては、今般の調査結果を踏まえ、こうした生徒指導上の諸課題に適切に対処するため、スクールカウンセラー、スクールソーシャルワーカーの配置の充実などの取組の一層の促進を図ってまいります。また、学校が、児童生徒が安心して教育を受けられる魅力あるものとなるよう、引き続き、道徳教育の充実、コミュニケーションのスキルを高める実践的な指導や、成長を促す積極的な生徒指導の推進等に取り組んでまいりたいと思います。
 最後ですが、この度、体験活動の推進について、国民に広く理解・普及を図るため、本日、文部科学省のホームページに「体験活動推進特設ページ」を開設します。この特設ページは、文部科学省が委嘱をしている「こどもの教育応援大使」である俳優の香川照之さんの動画による応援メッセージや、文部科学省の委託事業として実施する自然の中でのキャンプなど様々な体験活動の情報を紹介することとしています。今後、文部科学省では、青少年教育団体の協力を得ながら、体験活動に関する様々な情報を発信し、子供たちが健やかに成長できるよう体験活動の機会を充実させていきたいと考えておりますので、ぜひ大勢の方にご覧いただきたいと思います。報道各社の皆様にもご協力をお願いしたいと思います。私からは以上です。

記者)
 1点質問させてください。いじめ認知件数の件で、特に重大事態が増えていることが深刻だと思うんですが、これについての受止めと、文科省としての対策や設置者への働きかけなどについて教えてください。

大臣)
 今回の調査において、重大事態の件数は723件となっており、調査項目となった平成25年度以降最多となったことについては、憂慮すべき状況であると認識しております。文科省では、いじめの重大事態の判断について、「疑い」が生じた段階での調査を開始しなければならないこと、被害児童生徒や保護者から重大事態に至ったという申立てがあったときには、発生したものとして報告・調査等に当たることを従前から周知徹底してきており、このことは、平成29年3月に改定した「いじめの防止等のための基本的な方針」等において明記したところです。このような取組の結果として、いじめの重大事態として判断された件数が増えたものと考えられますが、重要なことは、それぞれの重大事態について、教育委員会等が、あるいは、及び学校等がですね、被害児童生徒や保護者に寄り添いながら、いじめの事案への対処、いじめの事実の全容解明及び再発防止に向けて、調査を真摯に行うことであると考えています。文科省としては、今後とも、いじめ防止対策推進法等にのっとり、教育委員会及び学校が適切に対応するよう周知徹底を図ってまいりたいと思います。

記者)
 宇宙飛行士の募集について改めて聞かせてください。こちらはアルテミス計画に参加する宇宙飛行士を募集ということでよろしいのかということと、こちらに対する期待、改めてもう一度お願いたします。

大臣)
 アルテミス計画に日本人宇宙飛行士を参画させてほしいという要望を日米の私と長官との覚書の中では加えておりますが、日本人宇宙飛行士がアルテミス計画に搭乗をするということを決定した事実はないわけですから、当然、今の段階では、そのことを前提に期待を持って人材育成を図っていくということでございます。今年はですね、先週報告したように、来月には野口さんがISSに飛び立ちます。そして12月には「はやぶさ2」が帰ってきます。こういった、宇宙への、宇宙探査研究へのですね、日本の取組というものを国民の皆さんによく知っていただく上で、日本人宇宙飛行士が参画することというのは極めて大事だと思いますので、ぜひ、そのチャンスを活かしていけるように国としても後押しをしていきたいと思います。また、同時に、宇宙科学研究が国民の皆さんにとってどういうメリットがあるのかということを分かりやすく伝えていくことが、我々の使命だと思っていますので、宇宙開発研究で得た知見をですね、皆さんの暮らしを一歩でも前進させるために様々な分野で活用しています。そういったことを、文科省としては、しっかりアピールをしていきたいなと思っています。

記者)
 冒頭発言でデジタル教科書への言及がありました。2分の1の規制について見直す方向で検討するということなんですけれども、なぜこうした検討を加速するように判断したのか、その理由についてお聞かせください。

大臣)
 デジタル教科書の今後の在り方について、現在、有識者会議のほうで議論を進めておりますが、先日、平井大臣との会談の中でですね、平井大臣が、教科書については、原則、デジタル教科書にすべきという新たな提案をされました。これは、文部科学省発じゃなくて、デジタル庁を準備する担当大臣発の発言でありますけれども、だとするならば、既存のデジタル教科書の課題というのを、来年度、色々精査をしてみようと思います。出版会社の95%がほぼカバーをできているという実態もあるようですし、また、値段もですね、今お試し期間だから安いのか、本当にこれからもずっと廉価で販売が可能なのかということも、これは、出版社とも色々協議しないと分からないことがありますので、こういったことも実態として把握をしていきたいと思いますし、今、2分の1でピン留めをしていますけれど、果たして、そういうことで来年から1人1台の端末が整備されるわけですから、今までは5.4人に1台を覗き込んでいた授業ですから、2分の1という根拠もやや皆さんに伝わるところがあったと思いますけど、手元に端末があるのだとすれば、そこは色々チャレンジしてみたらどうかという思いもありますので、発達段階に応じてでありますけれども、これを改めて、2分の1という規制だけではなくて段階的に解除できるものがないかどうかを、改めて、局の方に見直すように指示をしたところでありまして。まさに、GIGAスクール、来年からICT教育元年が迎えられますので、それに合わせてデジタル教科書の利用方法についても見直しを図ったということでございます。

記者)
 関連して、2分の1の見直しというのは、規制を撤廃するということなのか、緩和するということなのか。どういう方向性で、今、考えてらっしゃいますでしょうか。

大臣)
 例えば、小学生と中学生では、また授業の在り方が違うと思いますし、同じ小学校でも、低学年と高学年ではこれからICTを授業の中でどうやって使うかっていうのは色々変わってくると思うので、直ちに撤廃ということは考えていません。子供たちの発達状況に応じて緩和を前提に見直しをしていったらどうかと思って、これは、今並行して専門家の皆さんの会議も進んでおりますので、その報告を待ちながら担当局でも対応を進めるようにという指示をしたところです。

記者)
 最後に一つだけ。平井大臣の、原則、デジタル教科書に移行すべきというご発言に対して、それについて現時点の大臣のお考えはいかがでしょうか。

大臣)
 将来的にはデジタル教科書がですね、良いものが出来上がってくるんだとすればそれを否定するものではありません。ただ、やっぱり、紙の良さというのも一定程度あるわけですから、じゃあ、国が義務教育のですね、国庫負担をする教科書というのはデジタルなのか紙なのか、例えば、デジタルに移行した場合、紙は全く廃止してしまうのか、あるいは希望があれば紙の教科書も残しながら授業をやっていくのかっていうのは、これは、現場の皆さんの話も聞いていく必要が私はあると思っていますので、そこは、10か0かというのは改めて、最初から決めるんじゃなくてですね、少し様子を見ながら前に進みたいなと思っています。

記者)
 先般、大学入試センターの方で、令和7年の共通テストに関しまして情報科が新設されるというような、素案ですけれども、まとまったという話です。情報科に関しては、新しい学習指導要領への対応なので規定路線なんだろうと思うんですけれども、一方で、情報科に関しましては、全国の教育委員会の方で選科教員の採用が随分行われてこなかったというような実情があると思います。どの程度の大学の、この情報科を入試に課すかどうかというのは、現段階では不透明な部分がありますけれども、実際、共通テストで課す以上ですね、学校で学んだ範囲でしっかり解けるようでなければいけないと思います。情報科の選科教員が足りないという部分、不公平ではないかという話も出てくる可能性があるんですが、このあたり、どのように対応されますでしょうか。

大臣)
 まずですね、今日の時点で、共通テストで情報を試験科目に入れるかということはまだ検討中でございまして、決まっておりません。その上で申し上げますけれども、情報科の指導内容を充実させた新高等学校の学習指導要領が令和4年度から実施になることを見据えると、各都道府県等教育委員会において情報科の担当教員を適切に採用、配置等することが重要と認識しております。情報化の教員につきましては、平成30年度における免許状授与件数が1,387件である一方、平成30年度に実施された公立学校教員採用選考試験における採用者数は57人でありまして、更に、都道府県ごとで採用状況に差が生じております。この状況を受けて、文科省においては、各教育委員会に対して、情報科の担当教員の計画的な採用等による適切な配置に努めるよう、会場、会議など、その場を通じて働きかけるとともに、現職の情報科担当教員の指導力向上に資する教員研修用教材を作成・配布し、その活用を促すなどの取組を続けており、今後とも情報科の指導体制の充実に向けて取り組んでまいりたいと思います。ご指摘の通り、まだ歴史の浅い分野でありますので、専門性を持った教員の数が少ないという課題があります。ですから、従って、大学入試に直ちに教科として入れればですね、専門性の高い先生の下で学んだ学生さんと、残念ながら専門の情報知識を持っていなくて授業を行っていた場合とではどうしても差が出てしまうと思うので、そこは変えていかなきゃならないと思うのですが、高等学校も来年度の予算の中で、できる限り、高校GIGAと言いますか、端末を利用した授業の推進を図っていきたいと思っています。私は、あの、情報科教育こそですね、オンラインで逆にいいんじゃないかと思っていまして。専攻する授業の内容などを特別専任の先生がいない学校でも受けられるようなことは、高校だったら、私は、十分できるんじゃないかと思っていまして。そんな取組も視野に入れながら、いずれにしても、人の確保というのをしっかりやっていきたいなと思っています。

記者)
 いじめの調査についてお伺いします。いじめ認知件数が過去最多になる一方で、学校現場では学校の先生の働き方改革について、ずっと言われてまして、労働時間の削減というのはずっと課題だと思うんですけれども、いじめ認知、積極的な認知、あるいは、いじめの解消と、そういった先生の働き過ぎの問題とどう両立していくのか、大臣のお考えを教えてください。

大臣)
 いじめなどの問題行動等への対応に当たっては、未然防止や早期発見に努め、保護者との連携を図りつつ、速やかな組織的対応につなげて解消を図っていくことが重要だと思っています。このような早期対応を行うことにより、いじめが深刻化する前の段階で対応することが可能となり、結果として教員の負担軽減にも資すると考えています。加えて、文部科学省としては、業務の役割分担や適正化、いじめ等に対応するための教職員の加配ですとか、スクールカウンセラー、スクールソーシャルワーカーなどの専門スタッフ等の活用等の取組を総合的に進めるとともに、少人数によるきめ細かな指導体制の整備についての検討を進め、教師が子供と向き合う時間を確保できる環境作りを進めてまいりたいと思います。私、あの、国会でも答弁しているんですけれど、確かにスクールカウンセラー、スクールソーシャルワーカーなどの派遣が行われていますけれど、残念ながら、毎日、朝から夕方の時間まで、一校に一人必ずいるという状況じゃないものですから、一義的には、やっぱり、担任の先生たちがこの問題に取り組むことになると思います。もっと言い換えれば、自分のクラスの子で起きている問題を、まあ、週に何回か来る先生に委ねるというのは、これは、先生のプライドからしても、なかなか許せないところがあって、そういったものを抱え込めば抱え込むほど、教員の皆さんの負担も増えていくと言う実態もあると思います。したがって、できるだけ早めにですね、情報を学校内で共有していただいて、その一人の特定の先生に負担が偏らないように、こういった課題を学校ごとの課題としてしっかり取り組んでいただくことが大事だと思っておりまして、そこに専門性を持った心理のカウンセリングが入ることによって、更なる効果を現すと思うので、ぜひ、なんといいますが、クラスの問題として、抱え込みをしないで、学校内で情報共有していただくことが負担軽減にもつながるんじゃないかと思っています。将来的には、私、やっぱり、こういう専門性高い先生方が直接現場にいた方がいいのだと思いますので、そういった人員配置もですね、将来の課題として検討していく、そして、働き方につなげていきたいなと思っています。

(了)

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