萩生田光一文部科学大臣記者会見録(令和2年7月10日)

令和2年7月10日(金曜日)
教育、科学技術・学術、文化、その他

キーワード

日米月探査協力に関するNASAとの共同宣言、令和元年度文部科学白書、GIGAスクール構想、民族共生象徴空間(ウポポイ)、新型コロナウイルスと学びの保障、アメリカの留学生受入れ、新型コロナウイルスとイベント開催の制限緩和、アイヌ文化及び歴史の伝承、新時代に対応した高等学校教育の在り方

萩生田光一文部科学大臣記者会見映像版

令和2年7月10日(金曜日)に行われた、萩生田光一文部科学大臣の定例記者会見の映像です。

令和2年7月10日萩生田光一文部科学大臣記者会見

令和2年7月10日萩生田光一文部科学大臣記者会見(※「YouTube」文部科学省動画チャンネルへリンク)

萩生田光一文部科学大臣記者会見テキスト版

大臣)
 おはようございます。
 ちょっと多いんですけど、私から三件ございます。まず、本日、ブライデンスタインNASA長官と私との間で、月探査協力に関する共同宣言に署名をいたしました。月探査については、我が国は、昨年10月に米国提案の国際宇宙探査(アルテミス計画)に参画することを政府として決定しましたが、その後、日米両国の協力内容を具体化すべく、文科省とNASAとの間で調整を進めていた結果、本日の共同宣言の取りまとめに至ったものです。本共同宣言においては、アルテミス計画に対する我が国の協力内容を具体化するとともに、ゲートウェイ及び月面における日本人飛行士の活動機会について、その詳細を、今後策定する国際約束等で規定することに合意をしており、日本人が史上初めて月面に降り立つことに向けて大きな第一歩を踏み出したものと考えております。文科省としましては、先月開催された、第22回宇宙開発戦略本部において総理から指示いただいたように、アルテミス計画の実現に向けて、今後ともしっかり取り組んでまいりたいと思います。
 二点目ですが、本日、令和元年度文部科学白書を閣議で配付をさせていただきました。今回の白書では、巻頭に、「大学入試改革の現状について」と「新型コロナウイルス感染症に関する対応について」を記載し、特集として、「教育の情報化~GIGAスクール構想の実現に向けて~」と「ラグビーワールドカップ2019日本大会の軌跡とレガシー」の2つを取り上げております。特に、教育の情報化については、初めて特集テーマとして取り上げ、最近の動向について紹介をしています。本白書が幅広く活用され、皆様の理解を深めていただく一助となれば幸いに存じます。
 最後に、アイヌ文化復興等のナショナルセンターである「民族共生象徴空間(ウポポイ)」については、新型コロナウイルス感染症の影響により、これまで2度にわたり開業を延期してきたところですが、ようやく、7月12日、明日、開業を迎える運びとなりました。皆様ご承知の通り、明後日ですね、ごめんなさい。皆様ご承知の通り、ウポポイには、北日本初の国立博物館である「国立アイヌ民族博物館」も開館する予定であり、これらの開業に先立つ開園記念式典を、明日、ウポポイにおいて執り行うこととしておりますが、私も主催者の一人として出席したいと思いますのでお知らせをいたします。また、この機会に合わせて、本日午後には苫小牧工業高等専門学校へ視察もさせていただく予定ですので、こちらも併せてお知らせを申し上げたいと思います。私からは以上です。

記者)
 今も言及されておられましたGIGAスクール構想に関してなんですけれども、先般公表された学びの保障総合パッケージの方で、コロナ第2波に備えて、特定警戒都道府県等におかれましては8月末までに、もし第2波がきた場合でも学びが止まらないようなICT環境の整備を行いたいと。最低限、小6と中3に関しては止まらないようにしたいというような記載がございましたけれども、実際、自治体等のお話を伺っていますといろいろ公契約ですのでいろんな手続きがあってですね、8月末までに端末を全て整備するのはかなり難しいと。小6、中3に関しても、手持ちの持ち駒で対応しようとしているけれどもなかなかおぼつかない自治体もあるようなんですね。で、実際に、東京都は昨日220人出てますけれども、この第2波に向けたICT環境の整備に関しての現状認識とですね、それから第2波に備えた大臣としてどのような対策をとっていきたいと考えておられるのかを伺いたいなと思います。

大臣)
 子供たちの学びを保障するためにはICTの活用が極めて重要であり、その前提としてICT環境の整備を進めていくことが急務となっています。文科省としても、1日も早く子供たちの手元に端末を行き渡らせるため、調達から納品、配備まで一連の工程で少しでも時間を短縮できるよう、個別自治体や事業者への働きかけを行っています。さらに、早期配備に対応できない販売事業者もあるため、自治体がOS事業者に直接相談を行うホットラインを構築するなど、様々な取組を進めています。これらを通じて1日も早い環境整備を期するとともに、整備に時間を要する自治体に対しては、緊急的な対応として、今ご指摘のあったご家庭のICT環境などを活用することもお願いしているところですが、全ての子供たちに確実に学びの保障ができるようにしっかり取り組んでまいりたいと思いますし、年度末までに約800万台を整備しなきゃならないんで、これはかねてから申し上げているように、メーカーさんもそんなにストックがあって始まった話ではありません。しかも、学校用のスペックで、できるだけ廉価でということをお願いしていますから、そういう意味ではメーカーの皆さんにも大変なご努力をいただいていますし、また、OSを何を選ぶかによって機種との連動などが生じるので、自治体それぞれ事情が違うのは承知しているのですけれど、私は、8月に間に合わないって自治体があるっていうのは初めて聞きました。これまさしく首長のリーダーシップだと私は思いますよ。すでに今申し上げたように、メーカーにも話してますし、OS業者にも話をしてますし、納品や整備までやってくれということなので、日本中を8月までに整備するのは、これは不可能なのですけれど、少なくともその当初計画したですね、警戒区域の自治体では8月末までに整備ができることを前提に準備してますし、なかんずく、6年生や中学3年生のみでも最低でもということに、もし、間に合わないとすれば、逆にどんな事情があるのか聞いてみたいぐらいでございます。議会を挟まなくてはならないって事情が地方自治体の場合はあるのは、私も地方政治家出身ですからよく分かっているのですけど、事態がこういうことですから、専決処分をしてもですね、これは議会が、反対する議員なんて、私、いないと思いますよ。ですから、そこはね、もしご取材いただいたとしたら、首長のリーダーシップだと大臣は言っていたと言っていただいて結構でございますので。もちろん、できる後押しはしっかりしたいと思います。

記者)
 アメリカの留学生受入れに関して伺います。新型コロナウイルスの対応で、米国では多くの大学がオンライン授業となっておりまして、学校再開を求めるトランプ大統領がですね、9月以降の秋学期も全ての授業でオンラインでやっている場合は留学生にビザを発給しないという方針も打ち出しています。日本人も留学生として多くアメリカに行っているわけなんですけれども、その影響とですね、今後の文科省として何か対応を考えてらっしゃるかというのをお聞かせください。

大臣)
 今月の6日に、米国政府より、米国内の大学等において全ての授業をオンラインで受講する外国人留学生に対し、本年秋の新学期から、ビザ発給について制限等の措置を行う旨が発表されたと承知をしております。今般の米国政府の対応については、現在、在外公館等を通じて、米国内の大学等における対応方針等も含め、詳細な情報の把握に努めているところであります。これら収集した情報も踏まえながら、米国に留学中及び留学予定の日本人学生に対し、関係省庁とも連携しつつ、適切な情報発信を行ってまいりたいと考えております。

記者)
 二点ありまして。冒頭のNASAとの共同宣言の関係で、今回、共同宣言を結ばれてですね、期待されることをお願いします。もう一点、別件なんですけれども、今日からですね、イベントの開催の制限が緩和されることについてです。政府としては、都道府県に留意事項を通知するなど行っていますが、東京都では感染者が急増している状況にあります。今日付けでですね、軽減が緩和されることについての受止めと、あと文化・スポーツのイベントがこれから行われていくかと思うんですけれども、何か注意の呼びかけがあればお願いします。

大臣)
 まず、前段ですけれども、宇宙というフロンティアへの挑戦を続けていくことは、全人類に夢や希望を与えるのみならず、外交や安全保障、科学技術及び産業の振興、人材育成などの様々な観点から大きな意味があると思っております。アルテミス計画は、月の有人探査ということでざっくり申し上げましたけれども、この研究をしていく中ではですね、当然、その宇宙開発研究、様々に幅広に研究をしていくわけですから、そういったものが、例えば今日の異常気象などに警鐘を鳴らすことができるような様々な成果を生むことも大いに期待ができるというふうに思っております。宇宙空間での人の活動には、極めて高水準の安全性・信頼性を持つ技術が要求されるとともに、究極の省資源、自律的な健康管理・生命維持など閉鎖環境での長期滞在技術の開発が必要とされます。これらは、先端技術産業にとって一層高水準の技術開発の動機付けになるとともに、挑戦的な技術開発を通じた科学技術イノベーションを促進するものです。また、我が国はISS参加国として、「きぼう」ですとか「こうのとり」、そして日本人宇宙飛行士の活躍により、国際的に大変高い信頼と評価を受けており、これまで我が国が蓄積してきた、宇宙飛行士の訓練や健康管理等の有人宇宙技術を継承し発展させることも重要であることから、国際競争と協調の中で、我が国の得意技術を高めていくことは極めて意義が大きいと考えています。さらに、日本人宇宙飛行士やそれを支える科学者・技術者の活躍は、当事者本人の経験や感動が直接国民に伝えられることで国民の誇りや共感につながるため、これにより、宇宙に対する関心・理解、科学に対する国民の関心が一層向上し、宇宙分野の次世代育成にも貢献すると期待をしているところです。
 二点目なのですけど、本日から予定通りイベントの人数制限が緩和されることになり、早速、プロ野球やJリーグでは本日から観客を入れて試合を行うと承知をしています。プロスポーツ等を興行的に成り立たせるためには、観客を入れることが必要であり、このような意味では、新型コロナウイルス感染症の拡大防止と興行の両立に向け、大きな一歩を踏み出すことになると受け止めています。一方、昨日、東京都の新規感染者数が最多の224人に上るなど、新型コロナウイルス感染症の拡大防止に向けては、引き続き、細心の注意を払わなければならないと考えております。イベント主催者や施設の管理者においては、イベントの実施にあたって、業種別ガイドラインに基づく取組の徹底、観客等に対する十分な協力要請の呼びかけ、都道府県との必要な事前調整などを行っていただきたいと考えています。また、観客の皆様におかれましても、接触確認アプリのインストールや連絡先の登録などにご協力いただくように、私からもお願いをしたいと思います。

記者)
 冒頭あった宇宙の話なんですけれども、今回のことで日本人宇宙飛行士のお話だとかも盛り込まれていて、今後、文部科学省として、こういった月探査に関することをどのように予算に落とし込んでいくか、近々では2021年度概算要求どうしていくかというのに関して、大臣のお考えを教えてください。

大臣)
 アルテミス計画は、政府全体の大きな方針の中で決めた計画であります。所管が、我々文部科学省ということですから、その文科省で予算要求することになるのですけど、これは期間も長期にわたりますし、率直に申し上げて大きな金額を投資していかなきゃならないっていうふうに思います。それは、先ほど申し上げたとおり、月へ到着することだけが目的ではなくて、この、言うならば探査計画に参画する中で、様々な知見を得て、それを国民の皆さんに還元していく副産物をたくさん作っていくことも大きな目的の一つなんですけれど、しかしながら、文科省として予算にボンと乗りますとね、他の、外から見ると、なかなかそういう意味が分からなくて、金額的にそれが他を圧迫する可能性がありますので、改めて、この事業の位置づけというものを明確にしながらですね、必要な予算を適宜しっかりと要求をしていきたいなと、そんなふうに思っています。

記者)
 冒頭にもございましたウポポイについてお伺いをさせていただきたいと思います。明日、大臣、ウポポイ視察されるということですので、ぜひ、アイヌ文化にたくさん触れてきていただきたいなと思うんですが、今回の開業を受けて、アイヌ民族の方々を取材していますと、やはり文化、なぜ文化復興しなければいけなくなったのか。つまり、これまで受けてきた差別というものをしっかり伝えていく施設になってほしいという願いが大きいと感じています。特に、今、アイヌ新法が施行になりまして、交付金事業などもやっていますと、逆張りでアイヌ民族なんていないなんていうふうな主張すらしてくるような方もいらっしゃるようなのが、今、現実です。ウポポイ、それからあと教育通じてですね、どのようにアイヌ民族の方々が受けてきた差別というものを後世に伝えていくか、もし、大臣、お考えがありましたら、ぜひ教えていただければと思います。

大臣)
 アイヌの方々から、アイヌの歴史をしっかり伝えてほしいという声があることは承知しています。かつて、原住民と新しく開拓される皆さんの間で、様々なですね、価値観の違いっていうのはきっとあったのだと思います。それを差別という言葉でひとくくりにすることが、果たして後世にですね、アイヌ文化を伝承していくためにいいかどうかっていうのは、ちょっと私は考えるところありますので。従って、それを大切にしようということで、これだけ国が責任を持って博物館や伝承館を作ったわけですから、私は、逆にアイヌの皆さんは、そのアイヌ民族の素晴らしさっていうのを、これを、センターを使いながらですね、大いに、あの、国内外に発信をしていただいたらよろしいんじゃないかなっていうふうに思っております。ウポポイの開業を機にですね、将来を担う子供たちはじめ、内外の多様な方々に、ウポポイでの体験などを通じて、アイヌの歴史や文化をしっかりと伝えてまいりたいと思いますし、当然、あの、課外授業ですとか社会科見学ですとか、こういったことでも、あるいは修学旅行などにも活用していただいて、多くの皆さんが、逆に今まで以上に、アイヌ文化に理解をしていただく大きなきっかけになるんじゃないかってことを、逆に期待しています。

記者)
 ちなみにですね、その、差別でひとくくりにするのは難しいのかもしれないですけど、一方で、そういう過去があって、今のおじいちゃん、おばあちゃんぐらいのときに、やはり大きな差別があった、結婚差別があった、職業差別があったことによって、今もやはり経済的に困窮してる人が多いという現実もあります。文化の素晴らしさは、皆さん、アイヌ民族の方々の誇りですし、それが民族を支えてきたと思いますけれど、一方で、やっぱりそういう現実をしっかり伝える、例えばアウシュビッツのように、負の歴史というものもしっかり伝えていってほしいという方々もいらっしゃるんですけれども、そこについてはいかがでしょうか。

大臣)
 別段、歴史に目隠しをするためにこの施設を作ったわけじゃないので、仮にですね、そういう、その、負の部分と言いますか、悲しい歴史があるとすれば、それは伝承いただける方が、こういう施設を通じてですね、機会があれば、語り部としてお話ししていただいたりですね、何か記録を残しておくことは大事だと思うのですけれど、それはそれで決して否定はしませんし目を背けるつもりないですけれど、せっかくの施設ですから、皆さんでお祝いしていただいてですね、前向きにアイヌ文化の良さってのを広めていくことに努力したいなと思っております。

記者)
 9日に行われた中教審の高校ワーキンググループで、全国の市区町村のうち、1校も高校がない自治体が3割に上り、0もしくは1校しかない市区町村が6割だったことが明らかになりました。文科省や政府は、地域社会との協働による高校の魅力化、農業高校などで産業界の後継者の育成を進めていこうとされていますけれども、現場では、農山村とか、地方統廃合が進んでいまして、政府と自治体と、実態が大きく乖離しております。地域社会における高校の重要性ですとか、こうした矛盾に関して大臣のご見解をお願いいたします。

大臣)
 中教審のですね、「新しい時代の高等学校教育の在り方ワーキンググループ」では、普通科改革や地域社会との協働など、新時代に対応した高等学校教育の在り方について、ご議論をいただいているところです。昨日の会議では、普通科改革の方向性として、例えばSDGsなどの学際的・科学的な学びに重点的に取り組む新たな学科ですとか、地域社会を抱える課題解決に向けた学びの重点的に取り組む新たな学科の創設などを検討するとともに、専門学科の充実方策として、地域の産業界を核とした人材育成の推進の在り方について検討をいただいたところです。また、域内に公立学校が0校又は1校しかない市町村が約6割とする資料も踏まえ、離島や中山間地域などのこれからの小規模高校の在り方について、ICTも活用して、複数の高等学校が連携・協働した学校間連携の在り方について検討を行ったところです。ちなみに、市町村に高校を計画的に配置するってことを過去に行ったわけではありませんので、現状、突然学校がなくなったわけじゃなくて最初からない自治体もたくさんありましたし、また15歳人口の減少の中で、統廃合を進める中で、結果として在籍数が少ない学校が統廃合の対象にされてしまったという事実はあるのだと思いますけれど、ご指摘のようにですね、例えば、地域に、農業が盛んな地域で、あえて農業高校を閉鎖するっていうのは、これは逆に、地域の経済にも逆行している話だと思いますので、その点は、それぞれの自治体もしっかり考えていただいていると思います。公立学校の統廃合は、設置者である地方自治体において適切に判断いただくべきものではありますけれども、文科省としては、高等学校が担う地域振興の核としての役割は、今後も極めて重要と考えております。私、個人的には、結果として統廃合を考えていかなきゃいけないのだとすれば、そのかけがえのない学校は残していくってことが大事でありまして、なんとなく、あの、商業、工業、農業から先に閉鎖する自治体が圧倒的に多いのですけれど、それが、果たして地域経済にとってマイナスなのかプラスなのかってことは、各自治体が、やっぱりしっかり考えていただくことが必要だと思っております。地元の市町村や高等教育機関、企業をはじめとする関係機関との連携・協働をさらに進め、各地域において、より一層魅力ある高校教育が展開されるように、文科省としては、しっかり後押しをして取り組んでいきたいなと思っています。

(了)

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大臣官房総務課広報室