萩生田光一文部科学大臣記者会見録(令和2年5月22日)

令和2年5月22日(金曜日)
教育、科学技術・学術、スポーツ、文化、その他

キーワード

こうのとり9号機の打ち上げ、夏の甲子園大会の中止、新型コロナウイルスの感染拡大と対策、新型コロナウイルス感染症対策の基本的対処方針の変更と学校教育活動の再開、学校における新型コロナウイルス感染症に関する衛生管理マニュアル、ES細胞を使った細胞移植と再生医療研究、国立文化施設の再開、二次補正に向けた文化芸術支援策、学生支援緊急給付金、新型コロナウイルスと学びの保障

萩生田光一文部科学大臣記者会見映像版

令和2年5月22日(金曜日)に行われた、萩生田光一文部科学大臣の定例記者会見の映像です。

令和2年5月22日萩生田光一文部科学大臣記者会見

令和2年5月22日萩生田光一文部科学大臣記者会見(※「YouTube」文部科学省動画チャンネルへリンク)

萩生田光一文部科学大臣記者会見テキスト版

大臣)
 おはようございます。
 冒頭、私からは三件ございます。まず、昨日、H-IIBロケット9号機による宇宙ステーション補給機「こうのとり」9号機の打上げに成功いたしました。現在、「こうのとり」は順調に所定の軌道上を飛行しております。H-IIBロケット及び「こうのとり」は、今回が共に最終号機となりますけれども、打上げを成功裏に終えられたことは大変喜ばしいと思っております。「こうのとり」の9号機では、国際宇宙ステーションの運用に必要な物資のほか、宇宙での新たなサービス事業を目指した民間企業の取組の一環として、遠隔宇宙体験に向けた宇宙アバターや「きぼう」放送スタジオに関する機材を輸送します。文科省としては、打ち上げた「こうのとり」9号機が、無事にISSの物資補給を完了できるよう、引き続き、着実な運用に向けて関係機関と協力をしてまいりたいと思います。
 二つ目ですが、先日、夏の甲子園の中止が決定されました。決して、野球を特別視するわけではありませんが、夏の甲子園で高校球児が頑張る姿は我が国では誰もが知っている夏の風物詩ともいえる存在であり、大きな社会的注目を集める大会であることは否めないのではないかと思います。すべての高校球児にとって、甲子園は憧れの夢の舞台であり、多くの国民も注目する大会が、春だけでなく夏も中止となったことは、私としても断腸の思いです。大会の中止は、生徒の健康と安全を第一に考慮した結果であると理解しておりますが、特に高校3年生にとっては、これまでの練習の成果を発揮できる機会すら失ったこととなり、生徒を思いやると、かけるべき言葉が見つからないほど心が痛みます。インターハイや全国中学校体育大会も同様に中止されており、部活動に熱心に取り組んできた生徒の心情に配慮すると、各地域において何らかの形で、3年生がこれまでの成果を競い合う集大成の場が設けられることが望ましいと考えます。また、例えば、スポーツ推薦での進学を希望する生徒にとっては、3年次の大会成績は非常に重要な意味を持っており、このような生徒の進路選択の可能性を広げる観点からも、インターハイと同様に、何らかの大会の開催は有意義だと思います。私としては、地方大会の開催に向けて、部活動に熱い思いを抱く生徒の皆さんの希望を十分に汲み取りながら、各地域において検討を進めていただきたいと考えており、文部科学省としても、関係団体と連携協力してまいりたいと思います。併せて、このような地方大会での成績が何らかの証となるよう、文部科学省としても、大会の優勝校の選手等を対象として表彰を行うことを考えているところです。
 最後に、昨日、「新型コロナウイルス感染症対策の基本的対処方針」が変更され、京都府、大阪府、兵庫県の緊急事態宣言が解除されました。また、6月1日には、多くの都道府県において学校が再開される予定です。しかし、緊急事態宣言の対象地域から外れた地域において、学校における感染拡大のリスクがなくなるものではありません。また、国内外の感染状況を見据えると、私たちは、長期間、この新たな感染症とともに生きていかなければならず、一旦収束しても再度感染者が増加するなどの事態も想定されます。このため、学校の設置者においては、引き続き、一切気を緩めることなく、基本的な感染症対策を継続する「新しい生活様式」を学校において導入し、感染及びその拡大のリスクを可能な限り低減しつつ、教育活動を継続し、子供の健やかな学びを保障していくことが必要であると考えています。こうした考えを踏まえ、文科省では、学校の設置者が教育活動を実施するに当たり、学校における衛生管理に関する取組の参考となるよう、専門家の助言もいただき、「学校における新型コロナウイルス感染症に関する衛生管理マニュアル」を作成し、本日、全国の教育委員会等に発出をする予定です。衛生管理マニュアルでは、専門家会議の提言における地域区分を参考に、地域の感染レベルを1から3までに区分し、それに対応した身体的距離の確保などの基準を示しております。さらに、各教科等の部活動や学校給食などの具体的な活動場面ごとの感染症予防対策についても、地域の感染レベルに応じて記載をさせていただきました。学校の設置者においては、感染症対策を徹底しつつ、感染リスクをゼロにすることはできないという事実を前提として、地方自治体内での衛生主管部局との連携や、学校医・学校薬剤師等の専門家と連携した保健管理体制を整え、学校の教育活動を段階的に実施していただきたいと考えております。文部科学省としては、学校の設置者に対し、衛生管理マニュアル等に基づく助言を行うとともに、子供たちの学習を保障するための支援方策を引き続き講じてまいりたいと思います。私からは以上です。

記者)
 21日に、国立成育医療研究センターが、ES細胞を使って国内初の移植に成功したという報道がありました。それで、ES細胞を使った細胞移植は国内初です。大臣のご所感・感想と、今後、iPS細胞なども含めて再生医療研究というのが重要になってくると思うんですけれども、文科省としての取組と期待について教えてください。

大臣)
 国立成育医療研究センターにおいて、先天性尿素サイクル異常症の患者に対して、世界で初めてヒトES細胞由来の肝細胞を用いた移植手術が完了したと聞いております。本成果は、平成28年度まで文部科学省が支援をしていた基礎研究の成果を発展させたものであり、ES細胞を活用した再生医療の早期実用化を後押しするものと考えています。引き続き、安全の確保を第一としつつ、治験が着実に進められていくことを期待します。また、文部科学省としては、このような研究を始め、iPS細胞やES細胞など細胞種によらず再生医療の基礎研究を支援しているところであり、引き続き、厚生労働省を始めとした関係機関と連携しつつ、これらの成果がいち早く国民に届くように努めてまいりたいと思います。

記者)
 二点お願いしたいんですが、一点目ですが、先日、大阪の国立国際美術館が、6月2日に再開することを発表しました。今後、他の国立の博物館・美術館など、こういった施設の今後の再開の見通しについて教えてください。

大臣)
 国立文化施設の再開につきましては、所在都道府県の休業要請解除等と歩調を合わせるとともに、業界ガイドラインに基づく万全な感染防止対策を講じ、近隣の地域文化施設のモデルとなるよう進めていくこととしています。国立文化施設の所在地域のうち、今回、緊急事態宣言が解除されなかった地域は東京都のみとなります。東京都に所在する全ての国立博物館、美術館については、現時点における東京都の休業要請が5月末を期限としていることを踏まえ、6月上旬に速やかに再開できるよう準備を進めているところです。

記者)
 二点目なんですが、二次補正に向けた文化芸術支援策についてお尋ねします。先日、4人の議員の方が、大臣に、公演などの中止で収入が断たれている今、個の努力に頼った準備などには限界があるということで、個別の個人への活動費の交付や文化芸術団体などへの資金を交付することなどが要望されました。二次補正に向けて、こうしたこれまではなかった直接的な支援についてはどのように検討なさっておられますでしょうか。

大臣)
 先日、与党の皆さんから、新型コロナ感染拡大防止に係る自粛等によって大きな打撃を受けている文化芸術活動について、個人の活動費や団体の維持・継続等を行うための支援を実現するよう、直接、ご要望をいただきました。文化芸術活動は、公演等の開催のために準備期間が必要であり、直ぐには従来同様の公演収入が見込めないことなど、業界固有の課題があると承知しておりまして、GOTOキャンペーンなどではその応援策は講じてはいるんですけれど、その出番までかなりの時間を費やすということがありますので、この文化芸術の灯を消してはならないという思いをですね、与党の皆さんとも共有しながら、第二次補正予算の編制に向けて、現在、必要な支援策を至急検討しているところでございます。

記者)
 「学生支援緊急給付金」について伺います。対象者の要件としてですね、外国人留学生にだけ、前年度の成績評価係数が2.30。これ文科省の担当課によると、全体の上位25%から30%ということなんですが、それを求めていると。日本人学生にも奨学金を利用しているといったような要件を求めてはいるんですけれども、留学生の方が明らかに厳しい要件でこれは差別ではないかという批判が高まっております。大臣の所見をお願いします。

大臣)
 今般創設した「学びの継続」のための「学生支援緊急給付金」については、外国人留学生の「学びの継続」も我が国にとって重要な要素となりうる観点から、その支援の対象としております。本給付金は、「学びの継続」を支援することを目的とする給付金であり、国費による支援であることも踏まえ、日本人であるか外国人留学生であるかに関わらず、支援の趣旨に鑑みて、それぞれ一定の要件を設けることとしています。留学生の場合は、我が国で学ぶ意欲のある外国人留学生を支援するため、その確認として、一定の出席率や成績といったものを要件にしているところであり、これらの要件は、外国人留学生向けの奨学金制度である日本学生支援機構の学習奨励費を踏まえたものです。原則としては、お示ししている要件を満たすことを求めますが、これらの要件を考慮した上で、大学等が特に必要と認める者は対象とすることにしており、留学生も含め、最終的には、一番身近で学生等を見ている大学等において、その実情に沿って総合的に判断をしていただきたいと思います。支援を必要とする学生たちに速やかに支援が行き渡るよう、各大学等とも連携して取り組んでまいりたいと思います。

記者)
 大学が最終的に決めるということなんですが、文科省として、日本人学生に比べて留学生に成績面で不利な要件を課すということは、これは差別には当たらないのでしょうか。

大臣)
 先ほども申し上げました全ての留学生に等しく支給ができるという制度だったらそういう要件は全く何にも必要ないと思うのですけれど、限られた財政の中で、学びの意欲のある、継続性のある人ということで、これは突然出したあれではなくて、学生支援機構の基準を引用させていただきました。先ほど、御社の方で3割というお話がありましたが、それは文科省が示した数字なの。

記者)
 はい。

大臣)
 絶対評価なので。相対評価じゃないのですね、各学校が。ですから、一定割合をあらかじめ、予測をして立てた制度ではなくて、あくまで支援機構の基準を引いたところでございますので、そこは一定線、ご理解をいただきたいなと思います。

記者)
 支援機構の基準というのは給付型奨学金の基準かと思います。特に、成績の良い方を選抜して少数の方に支援するという制度かと認識しております。その制度ですね、今回のような生活に困っている人に、分け隔てなく、できるだけ分け隔てなく支給するという制度に当てはめるのは適当でしょうか。

大臣)
 我が国で学ぶ意欲のある外国人留学生を支援するため、外国人留学生向けの奨学金制度である日本学生支援機構の学習奨励費の考え方を踏まえて要件を定めているところですが、いずれにしても、最終的には、一番身近で学生を見ている大学等において、その実情に沿って総合的に判断していただくという仕組になっておりますので、あくまで目安として、成績一定程度見ていただくことは大事だと思いますけれども、先ほど国会でも同様の答弁をさせてもらいましたが、ぜひそこは、それぞれの学生さんの声を学校でちゃんと聞いていただいて支援していただきたいなと思います。

記者)
 大学の判断で決めていいということは、結果的に成績評価係数が2.30に満たないものと、成績が必ずしも優秀じゃない人ばかりが給付対象になっても、それは大学の判断を尊重するということでよろしいでしょうか。

大臣)
 大学が総合的に判断をして、十分学ぶ意欲がある外国の留学生の方が困窮されていて、そして、応援することでさらなる学びが進むとすれば、学校がそういう判断をすれば、それを尊重したいと思います。

記者)
 昨日の緊急事態宣言の解除の関係でお伺いしたいんですけれども、東京都など子供たちが多い場所で引き続き継続となりました。今、課題となっている教育の格差についてどのように支援していくか、新たな支援を検討しているものがあればお願いします。

大臣)
 地域の状況に関わらず児童生徒の学習の機会が保障されることは大変重要だと思います。児童生徒の状況に応じた学校によるきめ細かな対応を、設置者及び学校にお願いをしています。臨時休業期間中であっても、まずは学校が指導計画等を踏まえて児童生徒に適切な家庭学習を課し、電話や電子メールなども活用しながら教師が行う学習指導・状況把握と組み合わせて、可能な限り学習を支援することが重要です。このため、4月10日には、その内容や方法などの例を具体的に示すとともに、4月21日には、改めて全ての自治体が最低限取り組んでいただくべき事項等についてまとめ、各自治体においてチェックいただくようお願いしたところです。また、最終学年等を優先した登校日の設定や分散登校の実施などの工夫により、感染症対策と子供たちの学びの保障を両立していくための考え方をお示ししております。文部科学省としても、ICT環境整備の加速や自宅等で活用できる教材や動画等を紹介する「子供の学び応援サイト」の開設・充実などとともに、児童生徒へのきめ細かな指導のための教員の加配や学修指導員、スクールカウンセラー等について、退職教員等の協力も得つつ追加配置をし、各自治体・学校の取組を、支援をしてまいりたいと思います。さらに、現在、文部科学省において、臨時休業期間における学習内容の定着を確認し、補うための教材等の作成を検討しているところです。引き続き、全国の自治体と緊密に連携しながら、全ての児童生徒の学習の機会を保障するため、全力で支援に努めてまいりたいと思います。

記者)
 夏の甲子園についてお伺いしたいんですが、主催は我が社でもあるんですが、私の個人的な意見としては開催すべきだと思ってます。大阪の府知事も開催すべきというご意見が、発表されていますが、改めて、大臣のお考えをお伺いできますか。

大臣)
 先ほども申し上げましたけれど、生徒の健康とか安全を考えるとですね、高野連のご判断、そこに朝日新聞さんがどういうふうに関わったかはちょっと存じあげませんけれども、主催者としての判断、高野連としての判断というものが、生徒のことを思うと、結果としては、止むを得ない判断であったんじゃないかなと思います。冒頭申し上げたように、高校野球だけ特別視をする立場にはないんですけれども、そうは言ってもですね、全国の予選決勝から、全試合を、公共放送であるNHKが生放送するという高校スポーツというのは他にないのだと思いますから、そういう意味では非常に国民の間にも定着したものだというふうに思います。開催ができなかったことは極めて残念でありまして、ニュースなどで項垂れる高校生の姿を見るとですね、本当に気の毒で言葉がないのですけれど、お話を聞く限りでは、高野連が地方大会で、いわゆる49代表になったかもしれない地方大会まではやるというふうに報道では承知をしておりますので、できればそこまでは頑張っていただいて、その先、どういう応援ができるかわかりませんけれど、インターハイなどと同じように、高校野球も文科省として応援できることはして差し上げたいなと思っています。秋の国体の開催について、まだ、様々な議論が行われているところですけれども、通常、甲子園の上位8校が秋の国体の参加権を得るわけですよね。そうすると、そういう選考の役割というものも無くなってしまうわけですから、何らかの形で、やっぱりその成果をですね、証しを残すようなことっていうのを、ぜひ関係者の皆さんとも一緒に考えながら対応していきたいなと思っているところでございます。

(了)

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