萩生田光一文部科学大臣記者会見録(令和2年5月8日)

令和2年5月8日(金曜日)
教育、文化、その他

キーワード

民族共生象徴空間(ウポポイ)、新型コロナウイルスの感染拡大と対策、新型コロナウイルスと学びの保障、新型コロナウイルスと学生への経済的支援、緊急事態宣言の延長と学校の再開、9月入学・新学期制、休校中の児童生徒の事故

萩生田光一文部科学大臣記者会見映像版

令和2年5月8日(金曜日)に行われた、萩生田光一文部科学大臣の定例記者会見の映像です。

令和2年5月8日萩生田光一文部科学大臣記者会見

令和2年5月8日萩生田光一文部科学大臣記者会見(※「YouTube」文部科学省動画チャンネルへリンク)

萩生田光一文部科学大臣記者会見テキスト版

大臣)
 おはようございます。
 冒頭は私から1件です。民族共生象徴空間(ウポポイ)なんですけれども、開業を5月29日と定めまして、5月23日に開園の記念式典を目指して準備をしてきましたけれども、このようなコロナ対策に関する緊急事態宣言が今月末まで延長されましたので、また、北海道も依然として厳しい状況にありますので延期することといたしました。開業時期につきましては、今後、改めて検討することとし、同様に、開園の記念式典についても、同様に、当面延期をしたいというふうに思います。私からは以上です。

記者)
 冒頭、新型コロナ対応に関連して二問伺います。一問目は、学びの保障についてなんですけれども、大型連休明けから学校再開する自治体が一部で出ている一方で、5月まで休校を継続する自治体も出ています。学習格差の懸念を指摘する声もありますが、文科省としての見解と対応について伺わせてください。関連して、対応策の一つとしてあがっている9月入学についての原状の見解をお聞かせください。

大臣)
 緊急事態宣言の延長に伴って学校の臨時休業が続く場合であっても、児童生徒の学習の機会が保障されることは大変重要であり、児童生徒の状況に応じた学校によるきめ細かな対応を、設置者及び学校にお願いをしています。具体的には、登校できない児童生徒に対して、児童生徒や家庭の事情を踏まえつつ、紙の教材、またテレビ放送、オンライン教材などを活用し、学校が指導計画等を踏まえた適切な家庭学習を課すとともに、電話や電子メール等の様々な手段を通じて教師が学習状況を把握し、きめ細かく学習支援を行うことを依頼しています。4月21日には、全ての自治体において責任をもって児童生徒の学習の保障に取り組んでいただくことが重要であることを改めて示した上で、臨時休業中に最低限取り組んでいただくべき事項等についてまとめ、児童生徒に計画的に家庭学習を課すための週間計画表、運動取組カードの例など、より具体的な留意事項とともに通知をいたしました。また、臨時休業期間中であっても、感染症対策や、徹底した上で、分散登校を実施し、段階的に教育活動を再開することや、その際、進路指導の配慮が必要な最終学年や教師による対面での学習支援が特に求められている小学校1年生の児童に配慮することについて、5月1日付けの通知でもお示しをしたところです。文科省としても、臨時休業期間中の学習機会の確保のため、ICT環境整備の加速や、児童生徒及び保護者が自宅等で活用できる教材や動画等を紹介する「子供の学び応援サイト」の開設などを行うとともに、学校再開後の児童生徒へのきめ細かな指導のための教員の加配や学習指導員、スクールカウンセラー等について、退職教員等の協力も得つつ、追加配置をし、各自治体・学校の取組を支援してまいります。引き続き、学校の臨時休業を行う自治体と緊密に連携し、児童生徒の学習の機会を保障するため、全力で支援をしてまいりたいというふうに思っております。
 9月の件ですけれども、「9月入学・新学期制」について、学校の臨時休業がさらに長期化する事態を想定した際の対応案の選択肢の一つとして声があがっていることは承知をしております。文部科学省としては、まずは、早期の収束に向けて感染拡大防止の取組を徹底した上で、これまでも行ってきている子供の学習の保障のための取組を一層しっかりと進めていくことが重要であると考えています。9月に移行するということになりますと、文部科学省だけが関わる問題ではなく、社会全体に影響を及ぼすものであり、各方面との調整が必要な案件です。仮に、我が国の社会全体の問題として広く国民の間で認識が共有できるのであれば、私としては、選択肢の一つではあるということを申し上げてまいりましたが、いずれにしましても、子供たちの最高の選択肢は何かということを第一に考えていくことが重要であると考えております。その上で、私としては、教育行政の責任者として、あらゆることを想定しながら対応をする必要があると認識していますが、9月入学については、導入時期も含め選択肢の一つとして検討をしているところであり、学校の臨時休業がいつまで延長されれば本格的な導入検討に向けて動き出すのか、また導入するとすればいつからなのかということについては、新型コロナウイルス感染症の今後の状況を十分に見定めつつ考えるべきことであると認識をしているところです。

記者)
 二問目は、アルバイト収入を失った大学生などへの支援について伺います。与野党からも要望の声があがっておりまして、与党の検討を踏まえて、速やかに、追加的な対応・対策を講じていくという意向を表明されています。文科省としての具体的な検討状況についてお聞かせください。

大臣)
 今般の新型コロナウイルス感染症の影響で大学生等が進学・修学を諦めることがないよう、しっかり支えていくことが大事だということで、今までも繰返し発信をしてまいりました。このため、これら経済的に困難な学生等に対しては、本年4月に開始した真に支援が必要な低所得世帯を対象とする高等教育の修学支援新制度及び従来のより幅広い世帯を支援対象としている貸与型奨学金の両制度において、家計が急変した学生等への支援を行うとともに、大学等に対しては、授業料等の納付の猶予や減免等のきめ細かな配慮を要請し、また、そうした取組を行う大学等への支援を行っているところです。これらの支援策について、まずは確実に必要な学生等に行き渡ることが重要であり、各大学において周知や相談体制の強化に努めるよう要請しているところです。一方で、今般の感染症拡大によるさらなる状況の悪化に伴うアルバイト収入の大幅な減少により、大学等での修学の継続が困難になっている学生等に対して、さらにいかなる支援を行うことができるのか、現在検討しているところです。また、大学等が独自に行う授業料減免への支援についても、先日成立した補正予算を活用し、早急に対応してまいりますが、今後、大学等のニーズ等を踏まえ、必要があればさらに適切な対応を加えてまいりたいと思います。文科省としては、学生等の「学びの継続」のために、学生等を取り巻く経済環境の激変に対応するとともに、今般の感染症の長期化を見据え着実に支援を行ってまいりたいと考えております。今、与党の方でも様々なプランを早急に詰めていただいていると思いますので、そういった案とも呼応しながらですね、文科省としても追加の支援ができるならしっかり支えていきたいなと思っています。

記者)
 幹事社さんに聞いたことに関連してなんですが、政府、文科省としては9月入学の議論というのは、90年代以降、最近は大学についての議論が主で、小中高含めての議論というのは、政府としては、昭和60年代の臨時教育審議会で検討されていたというふうに聞いています。そこでは、7ヶ月入学の時期を前倒しにするという案が主だったと聞いているんですが、今回のコロナを受けて、今年の秋からの5ヶ月の後倒し案というのを急に検討していると思うんですけれども、それで合っているのかという事実関係と、あとは、連休前の自民党の教育再生実行本部の役員会でも、元文科大臣の議員さんなんかが、そもそも7ヶ月前倒しという話じゃなかったのか、グローバルに合わせるんなら5ヶ月後ろ倒しというのはちょっと急じゃないの、というような趣旨の指摘があったと思うんですけれども、今年9月からの後倒しというのは慎重な方が多かったと聞きます。で、諸外国に合わせるという趣旨込みでの7ヶ月前倒しだったのに、5ヶ月後ろ倒しだと義務教育のスタート年齢が遅れるという問題もあります。それ、今年以降もずっとそうなりますけれども、その問題への受止めを教えてください。

大臣)
 まず、過去の臨教審や中教審などで、昭和や平成の時代にこの9月以降という案が出ていたのは承知しています。今、私たちが、一つ選択肢として考えているということで申し上げている9月、まあ9月に限らないかもしれませんけれど、少し始業時期をずらしてもう一度学び直しをきちんとやる必要があるんじゃないかというのは、あくまでですね、この時代の子供たちが、記者会見でも何度かお答えしていますけれども、例えば、学校がフルスペックで正規の再開ができたとして、どうやってこの失われた数ヶ月をしっかり取り戻すことができるのかということを、様々シミュレーションをしています。その一つの案として、例えば、長期休業を短縮をしたりとか、土曜日の授業を行ったりとか、あるいは平日に更に授業数を増やすなどの案も、様々検討の中には入っているんですけれども。私が、繰り返し申し上げているのは、学校教育というのは授業のコマ数の積み上げだけじゃなくて、やっぱり集団活動の中で、行事にみんなで取り組んでみたりとか、あるいは修学旅行や文化祭や体育祭、こういったものもかけがえのない学校教育の、一つ一つの、私は重要なテーマだと思っていますので、そういったものを全部諦めて、ただ単に、授業時間数だけ確保することによって、そして今まで自宅でやったプリントをもってですね、前に進むということが、本当に今、この事態に置かれた子供たちにとっていいかどうか、そのことを考えた中で、やむを得ない選択肢の一つとして少し卒業時期を遅らす、結果として、今言われている9月入学に移行したらどうか、というこういう案が出てきているのは事実だと思うんです。ですから、アプローチが若干違いまして、その結果として、国際化に並んでいいメリットもあるじゃないかっていろんなことをおっしゃる方もいるんですけれども、それは次の段階の話で、今はとにかく、今のこの時代の子供たち、特に最終学年の子はもう後がないわけですから、高校3年生、中学3年生、小学校6年だけでも、300万人の子供たちが学習機会を奪われて、それを、その属性の中で、巻き返しができないかもしれないという事態が起こるとするならば、それを大きく保証する意味で9月からしっかりやり直すというのも一つの選択肢だなと思っているので、今まで積み上げてきた議論の9月入学とアプローチが違うということは十分に承知をしています。仮に、世の中がみんなそれでいこうということになったときには、将来的には、今はこの後ろにずれた9月入学というか、9月始業ということになりますけれど、将来的には、これだとその国際スタンダードより数ヶ月遅れた子供たちの学びになってしまうわけですから、段階を追って、もし可能でしたら、それはずらしていくということも一緒に考えなきゃならないので、そういう意味ではすごく大きなテーマかなというふうに思っているところです。今私が、皆さんの前でお話している文部科学省内で検討しているテーマというのは、あくまで目の前の子供たちの学びをどうやったら保障できるか、これを第一に考えてやっていくことです。

記者)
 今の大臣のお考えですと、一旦後倒しにして、その後のことを考えるともう1回ゆっくり前倒しにすることも一つの案ではあると。

大臣)
 そんなに慌てる必要はないんじゃないかと、そんなに慌てて社会に出なくてもいいんじゃないかと。この数ヶ月は、別に大きなスパンで見れば大したことはいんじゃないかという、きっとご意見もあると思うんですけれど、国際社会としっかりと伍していくと、そして例えば、皆さんの好きなOECDのテストなどは、これは年齢でやっていますから。うちが高校生で外国の人は大学生でなんて言うと、やっぱりそれは、学びの環境は変わってくると思いますので、将来的には、もしせっかく時期をずらすんだとすれば、国際社会と足並みを、カレンダーを一緒にしていくということも考えてなきゃならないと思います。ただ、それは今年やったらそっくり穴が開いてしまうわけですから。今私たちが考えているのは、今の学年のこの子たちが、あらゆることを我慢しながら、今頑張っているわけですけれど、それでいいかどうか、いけるかどうか、それを見極めなきゃならないと思っていますので、そういう意味での、言うならば後ろへずれた9月始業ということを前提に、いろんな検討を加えているところです。

記者)
 今の子たちを考えつつ、義務教育開始年齢についても遅くなっちゃいけないという問題意識も一方ではあられるということ。それを含めて、今まで大臣がおっしゃったように、この春卒業した園児の受け皿と、今の年長児の学年が1.4倍くらいになっちゃうという問題も指摘されていますけど、実現のハードルは決して低くはないと思うんですけれども、可能性というのは、選択肢という言葉がありましたけれど、今どうお考えでしょうか。

大臣)
 よく言われている、例えば来年の新入生ですね、どういう生まれ月で設定するかによっては、ご指摘のように数倍、1点数倍、新入生が一時的に増えるということが起こると思います。ですから、そういったことも含めて飲み込みができるのかどうか。誤解を恐れず申し上げれば、公立の学校のスペースを考えますと、教室はあると思います。ただ、私立の学校などは、もうほとんどフルに教室を使って運用していますから、実際にはそういったことがなかなか難しくなるんじゃないか。もっとも、私立の場合は、定員数を絞って選抜をしていますから、逆に、人数から割り戻してそういう課題は解決できるのかな、なんてことも含めていろんなシミュレーションをしているのは事実です。一時的にそういう課題を超えていかなきゃならないということも当然出てくると思います。

記者)
 学生支援に関連してなんですけれども、先日、京都大の山中教授がインターネット番組での安倍総理との対談の中で、経済的に苦しくなった大学院生への支援を訴えられました。新型奨学金等のですね、現行制度から漏れている研究者の卵たちの支援について、必要性、まず大臣のお考えを教えてください。

大臣)
 私も山中先生の発言を聞いて、確かにそこもきちんと手当てをしていかないとですね、厳しい状況になるなというふうに承知をしております。現行制度では、大学院は対象にはなってないんだよね。はい。現行制度では申し訳ないんですけど、救えない状況にあります。他方、大学院生の場合には、アルバイトなどしながら研究を続けている方も大勢いらっしゃるので、そういう中でどういう手立てができるか、今まさに新しくですね、追加の支援策をやるということになれば、これは大学院生の皆さんの応援もしていかなきゃいけないなと、そういう問題意識は持っています。

記者)
 ちょっと話が変わるんですけれども、昨日江戸川区で、休校中の中学生が交通事故に遭うということが発生しました。休校中の児童生徒が事故に巻き込まれるというケース、他にも複数ありまして。学校の目が届きにくい中でこうしたことが起こっているということについて、注意喚起ですとか、何か呼びかけがあればお願いします。

大臣)
 昨日、江戸川区でですね、交通事故で、外出中の中学生がお亡くなりになりましたこと、改めてお悔やみを申し上げたいと思います。文科省としては、4月23日に都道府県教育委員会に対してQ&Aを発出をし、臨時休業期間における分散登校や登校日の設定については、これまでに行ってきた交通安全に伴う安全教育の内容を再度児童生徒に伝達するなど、通常時より、同様に児童生徒の安全確保に適切に対応していただくようお願いはしてまいりました。児童生徒が、休校中に登下校時と異なる経路、異なる時間帯に外出することもあると考えられますので、慣れている登下校とは異なる交通状況であることから、各学校・家庭においても、児童生徒の外出時には、交通安全について気を付けていただけるように、児童生徒に指導していただきたいと思っています。警察庁の情報によりますと、特に小学校低学年の交通事故が大変多くなっておりまして、通学に不慣れな小学校新1年生の通学中の安全確保については、各学校においても十分留意していただく必要があると考えています。文部科学省としても、引き続き、警察庁等関係省庁とも連携し、児童生徒の交通安全の確保に取り組んでまいりたいと思います。

記者)
 学校の休校に関して伺いたいんですけれども、以前、文科省の方ではですね、学校の一斉休校に関しましては、経済活動の自粛による感染拡大の防止策の一貫として考えうるものであるというような考え方を示されていたと思うんですが、連休明けに関しまして、都道府県の方で、経済活動の自粛に関しては、特措法に基づくものを全面的に解除する一方で、5月31日まで休校を決めているという自治体がいくつかあると聞いています。このことに関しまして、経済活動は再開してもですね、学校の休校は続くということに関しまして、大臣の見解を伺えればと思います。

大臣)
 学校再開に先立って企業への休業要請の解除が予定されている都道府県も数多くあると承知していますが、児童生徒の学習の機会を保障することは極めて重要であると認識しております。緊急事態宣言の対象地域であったとしても、各学校の設置者におかれましては、感染防止のための取組を最大限に実施し、可能な限り感染リスクを低減させながら地域の感染状況を踏まえて、児童生徒の学習の機会を保障していただきたいというふうに思っております。ご案内のとおり、学校の設置者は知事であったり市町村長であったりしますから、その、私たちが霞が関から全体見渡して、地域状況がつまびらかに分かるわけではありませんから、それぞれの長の皆さんの判断があると思うんですね。ですから、大事を取ってもうしばらく休むという判断もこれあり。また、私たちの自治体は大丈夫だろうということで、感染拡大防止に最大限リスクを低減する努力をしながらですね、少しずつ学校を開いていこうという取組もこれから始まるというふうに思います。私の所感をと言われればですね、この長い休みで、子供たちも、また親もですね、大きくストレスも感じてらっしゃるし、学びへの不安というのも持ってらっしゃると思います。ぜひ、段階的でもですね、リスク管理をしっかりしていただきながら、少しずつ学校再開にご努力いただくことが望ましいなというふうに思っているところです。

(了)

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