萩生田光一文部科学大臣記者会見録(令和2年4月10日)

令和2年4月10日(金曜日)
教育、科学技術・学術、文化、その他

キーワード

文化観光拠点施設を中核とした地域における文化観光の推進に関する法律案、新型コロナウイルスの感染拡大と対策、緊急事態宣言を踏まえた対応、新型コロナウイルスと先端的な研究施設の活用、家庭学習の学習評価とICT環境の整備

萩生田光一文部科学大臣記者会見映像版

令和2年4月10日(金曜日)に行われた、萩生田光一文部科学大臣の定例記者会見の映像です。

令和2年4月10日萩生田光一文部科学大臣記者会見

令和2年4月10日萩生田光一文部科学大臣記者会見(※「YouTube」文部科学省動画チャンネルへリンク)

萩生田光一文部科学大臣記者会見テキスト版

大臣)
 おはようございます。
 冒頭、私からは二件ございます。まず、今国会に提出しておりました「文化観光拠点施設を中核とした地域における文化観光の推進に関する法律案」が、先月の衆議院本会議で可決に続いて、先ほど、参議院本会議において全会一致により可決をされ、成立をいたしました。本法案は、文化の振興を、観光の振興と地域の活性化につなげ、これによる経済効果が文化の振興に再投資される好循環を創出することを目的とするものであります。本法律により、これまで連携が進んでこなかった文化施設と地域の関係事業者等との連携が進み、来訪者が学びを深められるよう、歴史的・文化的背景やストーリー性を考慮した文化資源の魅力を解説・紹介したり、来訪者を惹きつけるよう、積極的な情報発信や、交通アクセスの向上、多言語・Wi-Fi・キャッシュレスの整備など、文化施設そのものの機能強化や、さらに地域一体となった取組を実施することなどに取り組んでいただき、それらの取組に対して本法を通じて国として支援を行ってまいります。今後は、速やかに政省令や基本方針の策定を行うとともに、4月から文化庁に組織した文化観光担当の参事官を中心として、観光庁を始め関係省庁との緊密な連携の下、計画を検討される文化施設や自治体に対し、丁寧な情報提供を行ってまいりたいと思います。これまで文化観光という観点で必ずしも十分光が当たらなかった文化施設や地域が、地域の方々と一体となって文化観光の推進による地域の活性化に意欲をもって取り組んでいただけるように支援をしてまいりたいと思います。
 続きまして、新型コロナウイルスの関係です。4月7日の緊急事態宣言やその後の感染状況等を受けて、緊急事態宣言の対象区域に属する都道府県以外においても、新たに臨時休業を実施する自治体が急増しております。地域内の学校の一斉臨時休業については、専門家会議の提言によれば「感染拡大警戒地域」における一つの選択肢であり、また、学校の臨時休業を判断するに当たっては、子供や教職員等の「生活圏ごとのまん延の状況を踏まえていくことが重要である」と示されています。各設置者におかれては、ご自身の地域が「感染拡大警戒地域」に当たるのかどうか、臨時休業の必要性があるのかどうか、衛生主管部局に十分ご相談をいただきたいと思います。学校で教職員や友人と一緒に学ぶ経験は、子供たちの成長にとって、かけがえのないものであり、学校は大きな社会的役割を果たしていると思います。自治体におかれては、住民の不安に寄り添うこととあわせて、学校が果たしている大切な役割にも配慮いただき、臨時休業の判断を行う場合には、児童生徒等の感染のリスクを分析・把握した上で、学習の遅れや給食の取扱いなど休業によって生じる様々な影響も考慮し、慎重に判断をしていただきたいと思います。また、新型コロナウイルス感染症は、現時点で未だ解明されていない点も多く、保護者や児童生徒が登校に対して強い不安を持たれる場合もあると思います。このような場合、まずは学校で講じる感染症対策について十分説明をし、学校の運営方針について理解を得るよう努めていただきたいと思います。同時に、新型コロナウイルス感染症の特性に鑑み、学校再開後も登校の困難な児童生徒については、校長の判断により、児童生徒や保護者の責任に帰すことのできない事由により登校できないものとして、欠席扱いとはしないことが可能であり、各学校において柔軟に判断をいただきたいと思います。文科省からは、本日、新型コロナウイルス感染症対策のため、臨時休業により登校できない場合、あるいは学校再開後もやむを得ず学校に登校できない場合について、学校がとるべき学習指導に関する措置について通知を発出したところであり、この通知等も踏まえ、家庭学習等の支援を進めていきたいと考えております。いずれにしましても感染症対策に万全を期した上で、子供たちの「学びの保障」に社会全体で責任をもって取り組むことが重要であると考えており、そのための施策に全力で取り組んでまいりたいと思います。私からは以上です。

記者)
 一点お伺いします。先ほど冒頭発言にもありましたが、専門会議で地域文化観光推進法案が可決・成立いたしました。新型コロナウイルスの感染拡大で、観光業ですとか文化施設というのが一層厳しい状況におかれていると思いますが、この成立を受けて、文科省の今後の具体的な取組と、また地域に期待されることについてお聞かせください。

大臣)
 せっかく成立をしましたので、4月中を目途に政省令の整備、基本方針の策定を行って、来月には計画の申請受付を開始したいと思ってます。今ご指摘のように、コロナの関係で観光業自体が動きが止まってしまっている状況なので、こういう中で慌てて申請を受け付ける必要があるのかという議論も、実は国会の審議の中でありましたけれども、今まで文化庁としては100を超える自治体などと様々なヒアリングを行ってきて、仮にこの法案が成立すれば是非チャレンジをしてみたいと思っている自治体の意向についても承知をしていると聞いておりますので、ここは丁寧に対応していきたいと思います。一方ですね、予算関連法案として国会にご審議をお願いしましたけれども、途中で状況が変わってオリンピックに間に合うようにということが一つの題目だったんですけれど、その前提は正直崩れていると思います。したがって、計画の申請においては4月から文化庁に新設した文化観光担当の参事官においてできる限り丁寧な周知を行うとともに、例えば今年度に関しては複数回の申請受付を行うなどの工夫をする方向で、今、検討している状況でございます。期待すべきことというのはすでに観光地として独り立ちできているところは更にその魅力を伸ばしていけばよろしいんですけれど、そこから例えば距離的に近いところにあるんだけれど、非常にいいものなんだけれど、全く交通手段がなくて実は観光客が回遊してくれないというようなところをしっかり仕掛けていったりとかですね、あるいは、なかなか雑誌やテレビなどで紹介されたことないんだけど非常に深いストーリーがあって是非そこを訪ねることで街の中をいろいろ散策してもらうような仕掛けなども考えていただくことが大事だと思っておりますので、これも私、衆参の審議の中で申し上げました。首長さん独りよがりで提出するものじゃなくて、地域と一体となってこれを拠点として盛り上げていこうということが極めて大事であります。ですから、街の中の人たちもこれは自分たちの誇りだし皆さんに是非知ってもらいたいし、海外の人たちにも訪ねてほしいと思うような、そういう魅力ある施設を是非ブラッシュアップをしていただいて、コンサル任せじゃなくて皆さんの言葉で文化庁と話をしてほしいということを問いかけてきましたので、是非そういうローカルの、今まで光があたっていなかったけれども、なるほどと皆さんが思ってもらえるような申請があがってくることを期待しています。

記者)
 コロナ関係で、理化学研究所の大型放射光施設やスーパーコンピューターの「富岳」の使用試験、新型コロナ対策に関連する研究開発を促すことが加速しています。こうした取組についての大臣のお考えと、今後こうした取組が日本全体で拡大させていくというお考えあるのか、支援の形など教えてください。

大臣)
 補正予算の中にもですね、今回のコロナウイルスに科学技術で対抗していく様々な施策、予算を計上させていただきました。研究を加速すべく、先端的な各関係当省も研究施設も、総力を結集する必要があると思います。例えば、今ご指摘のあったスパコンに関しては、理化学研究所が令和3年度からの全面的な運用開始を目指して整備中の「富岳」ですけれど、すでに一部が利用ができる状況になっておりますので、前倒しをして7日から、新型コロナウイルスの治療薬候補の探索等を開始しました。また、各大学にありますスパコンの活用についても、新型コロナウイルス対策研究のために臨時公募を15日(水曜日)より実施したいと思っています。さらに、理化学研究所が所管する大型放射光施設「SPring-8」ですけれど、新型コロナウイルス感染症対策を目的としたタンパク質の結晶解析による治療薬の開発等にご利用いただけるように、こうした創薬関連研究に関する利用申請や解析依頼を随時受け付けております。文科省としては、我が国の科学技術イノベーションの発展を支える重要な基盤である「富岳」や「SPring-8」など先端的な研究施設を新型コロナウイルス対策に積極的に活用し、成果の早期創出を目指してまいりたいと思っています。

記者)
 今、通知に書かれていた中のことですけれども、家庭学習を学習評価に反映するとありますが、これは、学校が定めた家庭学習では、それが学校教育法上にある授業の時数をちゃんと満たしたということで認められるのかということを確認させてください。

大臣)
 こういう事態なので、できるだけ柔軟に、しかしなるべく穴の開かないように丁寧な対応をしていきたいと思ってます。したがって、いろんな家庭学習を課すメニューを用意していただいていると思います。紙ベースでやって担任の先生が確認するものもあれば、電話で確認をしたり、あるいはICT環境が進んでいる自治体ではまさにオンライン授業ができる、そういう環境にある自治体も中にはあると思います。あるいはそこまでは進んでなくても、端末を利用してビデオ・オン・デマンドでYouTubeの授業などを皆さんに閲覧していただいて、そして何か提出物をきちんと出してもらうようなことがあると思いますので、いずれの段階でも、先ほどお話ししましたように、学習の評価に反映できるようにしていきたいと思います。ただし、そこはきちんと習熟ができているかどうかというのは学校再開後にチェックをしていただく必要があると思いますから、これと組合せで、一定の評価をきちんとできるようにしたいなと思っています。

記者)
 一つフォローさせてください。先週の未来投資会議で、同じ授業時数について、文部科学省に対して要請というか要求がありました。これはAIの教材とかを使うと、これまで定められている授業の時数よりも短い時間で単元が済んでしまいます。それにつきまして、現在の学校教育法の規則ですと、学年を超えて先に進むことができないということになっています。これも柔軟に見直してほしいということが未来投資会議から文部科学省のほうにされています。これについて、具体的にどういうふうに対応なさるのかという点と、これはなかなか微妙な点がありまして、日本でずっと認められていないような飛び級みたいなものまでもしかすると話が広がる可能性もあるかと思うんですが、そうしたことも含めてご見解を伺えればと思います。

大臣)
 今、それらについては中教審で様々な議論をしている真っ最中です。未来投資会議からは、少し尖った提案があったことは私も承知しておりますけれど、例えば、今回のコロナの事態を受けて、大学や高等学校における遠隔授業などは、多少、今までの要件を緩和をして、授業時間の、今頭打ちをしていましたけれど、そこは少しカウントを広めにとろうということは認めていきたいと思いますけれども、少なくとも義務教育の小学校中学校においてはですね、直ちにこのオンラインでやったものについて、特別な査定をするとか、あるいは結果としてですね、学校には全然来ていないけれども、家庭学習で十分クリアできたからということを前提にですね、進級やあるいは飛び級なんていう事態になりますと、これはちょっと本来の趣旨とは違ってくると思いますので、義務教育機関までの対応と、それから高等学校や高等教育機関での対応というのは少し考えて、冷静に考えてみたいと思います。いろんなことを見直すいいきっかけにはなると思うんですけれど、直ちにこの混乱の中で制度を変えていくということを早急にやるということは、結果として大きな、言うならば誤解や過ちを生じることがあると思うんで、そこは慎重に、中教審などとしっかり議論しながら進めていきたいと思っています。

記者)
 このほど全国知事会が国に対して、イベントの自粛などによって負った損失を補償するよう求める提案をとりまとめました。大臣は文化・芸術分野のイベントについて損失の個別補償は難しいということと、雇用調整助成金ですとか先般発表された緊急経済対策の給付金などの概念を使って、何とか芸術の灯を消さない、つないでもらいたいとご見解を述べておられましたけれども、緊急事態宣言が出た今、このお考えについてはお変わりないかどうかお聞かせ願いたいと思います。

大臣)
 繰り返し答えてきましたけれど、これは文科省だけで、あるいは文化庁だけで対応するということじゃなくて、政府全体で対応していかなきゃいけないと思います。図らずも今回、文化・芸術関係で働く人たちの、言うならば勤務体系というものが、なかなか一般の国民には理解できないスタイルで、皆さんこういったものに携わっていることがクローズアップされたことは、我々、文化庁を所管する担当としては少しありがたい部分はあったと思います。現段階では、繰り返し申し上げているような既存のメニューの中で、一人一人の立ち位置や働き方が異なりますので、ぜひ自分に合うものを使っていただいて頑張っていただきたい。そして我々にできるのは、コロナに打ち勝って、そして再び文化が活発に活用できるように、その時のV字回復ができるような形で、皆さんの活躍の場を増やしていくということで、後々応援をしたいと思ってますので、ややその部分、タイムラグがあって不安に思う方もいらっしゃると思うんですけれど、極めて形態が多様化しています。株式会社に所属している人、財団に所属している人、全くのフリーランスでやっている人、アルバイトと組合せでやっている人など様々なので、ここは、一概に文化・芸術団体を支援する気持ちは十分ありますけれども、直ちにそれに見合うオーダーメードのメニューを作ってこの場をしのぐというのはやや難しいところがありますので、様々な給付金や貸付金などをぜひ使って頑張ってほしいなと。必ずその後には、トンネルを抜けた先には、我々、大応援団としてですね、皆さんの活躍の機会を増やすことで収入にもつなげていきたい、そう思っております。

記者)
 冒頭にお話しのあった通知の関係で改めて確認なんですけれども、ICT教育、遠隔教育を含めた家庭学習について、標準授業時数という小中については定めがありますけれども、それのカウントとしては基本的には扱わないという理解でいいのかという確認をまずしたいんですけど。

大臣)
 扱うの。

事務方)
 標準授業時数の中にカウントするものではありません。

大臣)
 カウントしないけれど、再度、再開後にその授業をやらなくてはならないということではないんだよね。

事務方)
 また後程ご説明できればと思いますけれども、今、コロナの特例的な扱いとして考えていますので、家庭学習を行ったものについて、しっかりと子供が、その学習が身についたということが確認がとれれば、そのことについて学習評価に反映することができるというような扱いかなというふうに考えています。

事務方)
 一方で、授業時数自体はすでに弾力化して取り扱うということの通知を出していますので、そちらとのバランス。

記者)
 成績評価という意味では、いわゆる授業時数としてカウントするものではないという理解でよろしいでしょうか。分かりました。で、その前提なんですけれども、通知の特例措置の条件としてですね、「長期間の休校」という前提が書いてあるんですけれども、長期間というのは具体的にどれくらいのことを、例えば1ヶ月2ヶ月とか、想定されているのか。

事務方)
 かなり細かいところも入っていると思いますので、よろしければ、後ほど、また少しご説明の時間をとらせていただければというふうに思っています。

記者)
 二点伺いたいんですけども、大臣、おっしゃられたように、休校がかなり広範な地域に及んでいると思います。これは、文科省のガイドラインをかなり超えたような対応になっていると思うんですけれども、感染拡大警戒地域以外においては、大臣としては、できる限り、学校再開というもののを担保すべき、それが望ましいと考えているのかどうかというのが一点です。もう一点が、再開をした地域においては、保護者の強い意向によって、学校に出席させないという方が出てきているという話を聞いております。これを出席扱いをどのようにすべきかという点に関してどのようにお考えでしょうか。

大臣)
 まず、第一に未知のウイルスでありますし、それに対抗できるウイルス剤や様々な科学的な知見がまだ整理をされていない中で、絶対的に何が正しくて、絶対的にどっちが間違っているかということは、なかなか文科省としても判断できないところがあります。ただ、この間ですね、国民の皆さんのご協力もいただきながら、例えば、子供同士のヒト-ヒト感染の事例というのはないという、このことは一つのエビデンスとして受け止めております。それから10歳代の感染者が増えていることも事実なんですけれど、それはどちらかというと家庭内感染が多くてですね、結果として学校などでクラスター化はしていないということも、一つエビデンスとしては、短い期間でありますけれども、確認をしてます。専門家会議の皆さんの判断では、要するに3つの密を避ければですね、学校は大事にやっていただくことは一つの方法としては決して間違っていないという評価をいただいておりますので、これも自治体によって環境がずいぶん異なると思います。今、世の中に出ているのは都道府県の感染者の数でありますから、これを細分化していくとですね、いわゆる基礎自治体の市町村に分けていくと、ゼロという自治体もかなり数多くあるわけですから、まず、緊急事態の宣言をされた自治体は少し大きめにやっぱり心配をしておかなきゃというのはあると思うんですけど、そうじゃない自治体においては、もちろん今まで繰り返し様々な通知をしてきましたけれども、用心をした上でですね、学びの機会は確保してあげていただきたいというのは基本的に、私、考えているところでございます。ただ一方で、繰り返しになりますけど、未知のウイルスで、今後どういう展開があるかというのは分からない中で、親御さんが心配だと、あるいはご本人も不安だという家庭の環境の中でご判断するんだとすれば、そこは、先ほども申し上げましたけども、現時点でいまだ解明されていない点も多い特性に鑑みて、例えば、感染経路の分からない患者が急激に増えている地域であるなどにより感染の可能性が高まっていると保護者が考える場合にはですね、合理的な理由があると校長が判断する場合に欠席扱いはしないことも可能であることをお示ししたものでありまして、この場合には、登校しなかったことにより学習に著しい遅れが生じないように、適切な家庭学習を課すことや教師による適切なサポート等を組み合わせて、児童生徒の学びを支援していただきたいと考えております。で、もう一つ加えさせていただきますと、例えば、高校生などが、引き続き休校を求めている声などもあります。小中学生というのは、ほぼ徒歩圏で学校に往復行ってますので、その義務教育期間の小中学生の、言うならば外へ出るという環境と、電車通学やバス通学をしないと学校へ辿りつけない高校生とは、やっぱりその辺のリスクは違うんだと思いますので、一概にではなくてですね、自治体ごとにまたきめ細かく対応していただいて、ぜひ社会総ぐるみで「学びの保障」をしっかり取り組めるように文科省としては指導・助言を繰り返していきたいなと思っているところです。

(了)

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