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平成15年9月22日大臣会見の概要   河村大臣会見(初)

平成15年9月22日
20時8分〜21時13分
文部科学省記者会見室

大臣)
 この度、文部科学副大臣から文部科学大臣に就任しました衆議院議員の河村建夫でございます。どうぞよろしくお願いいたします。就任に当たって、総理からいくつかの指示をいただきました。第一は、人間力向上の観点です。これまでの知・徳・体に加えて、食育の問題も踏まえながら、人間力向上に資する教育改革に取り組んでもらいたいということでした。また、教育基本法の見直しについては、与党3党が協議を行っているので精力的に進めるようにということでした。それから2点目は、「基本方針2003(骨太方針)」にも記述されています、義務教育費国庫負担制度の問題についてで、16年度予算では地方の裁量を大幅に拡大する方向で改革してもらいたいということでした。退職手当、児童手当の国庫負担の一般財源化も「基本方針2003(骨太方針)」に沿って実現を図りたい。これは一つの既定方針で、これまでの国会論議の中でも遠山前大臣が触れたところです。
 それから大学改革の問題ですが、国立大学法人化に関して、大学が自主的な運営ができるよう、経営をおもいきり効率化できるようにしてほしいということでした。国立大学法人法案は、私も副大臣として法案の成立まで関わってきました。議論の中には、文部科学省は新たな省益の拡大を図るとか、新しい形で大学を管理しようとしているのではないかという意見もありましたが、決してそうではなく、法人化後といえども国が責任を持たなければいけない部分が多いわけですし、国ももちろん説明責任を果たしていかなければなりません。しかし、大学が自主的に管理運営をできるように、また、産学官連携をもっと進めていくことが経済活性化にもつながっていきますので、そのようなことを文部科学省として大いに支援をしながら、同時に大学の積極的な取組みを暖かく見守っていきたいし、助言もしていきたい。国立大学とは、これまでのような同じ組織の中の各機関としてでなく、法人化により新しいパートナーシップを築いていくということです。総理の指示を踏まえながら、国立大学の法人化に対しては、大学法人の自主性、運営の効率化に向けた仕組みを、これからも検討していきたいと思います。
 それから文部科学省としては、科学技術振興、科学技術創造立国という大きな課題もあります。この予算を重点的に拡大していかなければなりませんし、研究成果を厳格に評価するとともに、産学官連携も進め、科学技術創造立国という、これからの日本の大きな国家戦略として進めていく、その重大な責務を果たしていかなければならないと思っております。これまで遠山前大臣が積極果敢に、特に科学技術関係では遠山プラン(21世紀COEプログラム)という思い切った支援策等もとって、科学技術の振興には特段力をいれてこられました。また、17年度までの第2期科学技術基本計画においても、24兆円を着実に確保する目標もかかげられており、科学技術の振興には特別に力をいれてまいりたいと思っています。特に大きな当面の課題として、総理から指示を受け、これまで遠山前大臣が努力してこられたことを、さらに高めてまいりたいと考えております。また、私は政治家でもありますから、政治家とマスコミの皆様との関係が国民に向かって、お互いに切磋琢磨して緊張感を持てたらと思っております。文部科学行政を進めるうえでマスコミの皆様方の力は非常に大きいと思っております。そうした中で一体となって文部科学行政にお力を貸していただければ、こんなにありがたいことはありません。よろしくお願いします。

記者)
 文部科学副大臣から文部科学大臣になられ、以前から総括政務次官を務められたり、党や国会でも文教関係の仕事に就かれ力を注がれた分野で大臣に御就任された御感想をお願いします。

大臣)
 大臣をやらせていただけるなら文部科学大臣だと思っておりましただけに、責任の重さを感じております。時代の大きな変革のなかで教育が国の礎になると同時に、日本の今日までの発展は教育にあったと国民の皆様は思っておられます。現在起きているいろいろなことを考えると、教育がしっかりしなければならないということに行きつくわけです。小泉総理にも、私が副大臣の当時から、小泉改革の「起承転結」の「起」が米百表の精神といわれるなら、教育改革で国を再生させるということが「結」だと申し上げてまいりました。今回、総理から私に対し、文部科学大臣はこれまでやってきた所管なのでしっかり頼むといわれ、その気持ちを受けて教育改革にまい進したいという思いでございます。

記者)
 総理からは、何故、文部科学大臣に指名したのかという説明はありましたでしょうか。

大臣)
 特にありませんでした。総理からは、君の所管事項だから説明の必要もないでしょうというような感じで言われたと思います。私が副大臣として、また、総括政務次官として3代の大臣に仕えてきたことを承知の上で評価していだたいたと受け止めて、それだけに責任を感じました。私としては、これまで文部科学行政に携わってきた実績を認めていただいての御指名と思っておりますから、それだけに期待に応えなければならないという思いです。

記者)
 毎年8月の閣僚による靖国神社参拝は論議を呼びますけれど、大臣御自身は参拝するかどうかお考えをお聞かせください。

大臣)
 御遺族の気持ち、アジアの近隣諸国がどう思っているかを勘案して、また、内閣の一員という立場で考えなければいけないと思います。その時期までに、慎重に考えて対応していきたいと思います。これまで国会議員として、地元の御遺族の皆様とお参りにいっておりますし、同時に、過去の一時期アジアの近隣諸国と日本の間に不幸な時代があって、その国々の思いも受け止めなければならないと思います。

記者)
 衆参の憲法調査会での議論や自民党内での憲法改正に向けた動きがありますが、憲法改正の必要性について大臣のお考えをお願いします。

大臣)
 戦後作られた憲法の平和主義、基本的人権、民主主義の三原則は非常に大事でありますが、全体として今の時代にあった見直しをしていくことは、世論調査などでもかなり支持されていることを踏まえて、憲法調査会でも議論されております。憲法改正は国会の発議が必要であり、これからの日本はどう在ればいいか考え、今の憲法調査会の方向をしっかり見据えていきたいと思います。党内議論がいろいろございますけれど、平和主義、民主主義、基本的人権の大原則を堅持しながら、今の時代にあったものに改正していくことは必要であると思っております。

記者)
 教育基本法について、遠山前大臣が中央教育審議会の諮問をして3月に答申が出され、その後、与党で協議が続いていますが、教育基本法の改正の必要性についてのお考えと、今後、大臣としてどのように進めていくかお聞かせください。

大臣)
 総理の指示でも、今、与党で進めている協議をしっかりやってもらいたいということなので、中央教育審議会で示していただいた答申の在り方を踏まえて、与党協議が円滑に進むように努力をしたいと思っております。教育の憲法と言われるものですから、決して拙速ではなく、かなり時間をかけてやってきたつもりですが、まだ不十分だとの意見もありますので、与党でしっかり協議してもらう必要があると思います。これからの日本の教育を考える上で根本となるもので、歴代の内閣が教育の根幹に関わる非常に大事なものとの思いで取り組んできたものであり、教育の構造改革の一環でもあると考えていいと思います。中央教育審議会において、21世紀にふさわしい国際化時代における心豊かでたくましい日本人を育成するという方向が示されたことをしっかりと受け止めていきたいと思っております。与党協議の中で課題となっているのは、愛国心や宗教教育の問題だと思います。日本は、太平洋戦争から今日にいたるまで一種のトラウマのような思いが非常に強く、愛国心というと当時の軍国主義的なものとの思いがありますが、本来、愛国心は大事であり、軍国主義的との思いから一歩踏み出して考える必要があると思います。保守的だとか革新的だということではなく、愛国心は一つしかないはずで、愛国心の本来の意味も考えながら今の教育基本法を考えていく必要があると思います。
 宗教教育については、特定の宗教を国が支援するとか、義務教育段階で特定の宗教を教育することはあってはならないことです。イタリアへ視察に行った時、イタリアでは、義務教育段階で宗教教育がありますが、国内の9割がカトリックを信仰している国でも選択教科になっており、信教・信仰の自由が非常に大事にされていました。人間の生きる力を育む中に宗教的なものの考え方は必要です。宗教教育をどう進めていくかは難しい問題ではありますが、大切なことですのできちんと協議していただきたいと思います。教育基本法では、国や地方自治体など公の立場では特定の宗教のための活動を認めないのは当然ですが、宗教的なものの考え方は求めていく必要があると考えております。

記者)
 義務教育費国庫負担制度については、三位一体の改革中で一般財源化する議論が続いていますが、大臣御自身のお考えと今後どのような方針で臨まれるのかお聞かせください。

大臣)
 総理のお考えにもあるように、現場を大事にしなければいけないと思います。先生方が必死の思いで子どもたちの教育に取り組んでおられる現場を、文部科学省は同じ目線で一緒にしっかりとらえ、支援するべきであると考えています。特に義務教育の根幹は、どこの国も国が責任を持っているということがありますし、財政論としてではなく、教育的視点からどうあるべきか考えないとうまくいかないと思っております。義務教育の根幹は国が責任を持つという考え方の上で、財源はどうあるべきかと考える必要があると思います。文部科学省は事細かに口を出すのではなく、地方が自発的に取り組む事については支援していくべきですが、これまでの日本の高い教育水準を保っていく役割は国が守っていかなければならないと思っています。そのようなことを踏まえて臨みたいと思っていますし、「基本方針2003(骨太方針)」でも18年度までに方向を示すことになっており、中央教育審議会でも専門的かつ国民的立場から議論していただくこととなっておりますので、そのことも踏まえながら文部科学省として考えていきたいと思います。

記者)
 新しい学習指導要領が実施され、総合的な学習の時間の導入など大きな変化がありましたが、学習内容を削減する見直しに伴って、世間から学力低下に関する懸念や不安が高まり、文部科学省は学力向上策を進め、世間からはゆとり教育からの方針転換であるという非難もありましたが、このような状況の御感想と学習指導要領をこれから全体的に見直すかも含めて大臣のお考えをお聞かせください。

大臣)
 私が初当選した平成2年頃、「日本の教育は偏差値教育であり、記憶力だけみる入学試験で18歳の時に運命が決まる社会は問題ではないか。」という大きな世論があったと思います。もっとゆとりをもって、人間力向上をすすめるのが大事であると考えます。ゆとり教育が、一部にゆるみ教育と間違ってとらえられたのが非常に残念な思いです。また、いわゆる7・5・3教育と言われ、小学校の段階で3割の子どもが授業をわからない状況で、次の段階に進むというのはあってはならないことだと思います。10割の子どもが皆理解して次に進むのが理想ですが、人間には個人差がありますので、理解が十分でない人も引き上げながら基礎基本を大事にしていくという考え方は正しいと思います。土曜日が休みになり授業時間が減るので、学力低下するのではなく、大事な基礎基本をしっかり学ぶことをしていないので学力低下するわけです。「確かな学力の向上のための2002アピール−学びのすすめ−」というパンフレットがあります。そのパンフレットに、「ゆとり」というのは勉強をしなくてもいいということではなく、基礎基本をしっかりしと学び、一人ひとりの個性等に応じて伸びるものは伸ばしていく、学びの進め方にもいろいろな選択肢があることを理解してもらいたいという、遠山前大臣の考え方が示されています。学ぶことの楽しさ、学習意欲を高めるため総合学習でもいろいろな体験をしてもらうなど、幼稚園から始まり義務教育でのいろいろな体験なども大事です。勉強はおろそかにせずしっかりやらなければなりません。それまで日本の経済がどんどん右肩上がりの時には、平均的な教育を受けた人材を自分の会社で再教育していましたが、今は社会が人間力を高めた人材を求め、そのような声に応える弾力性をもった選択肢のある教育を作り上げていく必要があると思っております。学力低下を心配している親もおられると思いますが、自分達が子どもの頃に偏差値教育の中で勉強してきた人が多いのではないでしょうか。当時と今は考え方が変わりつつあることを理解していただきたい。いい成績をとり有名校に行けば、いい人生がおくれるという考え方ではなく、個性に合った教育が大事であることを理解してもらい、もちろん学力に対する基本的なことはきちんとすることが前提ですので、今の文部科学省の方針を理解していただけると思っております。学習指導要領をどうするかという問題ですが、現在、学力に関する調査を行っております。この調査結果も踏まえながら、必要に応じて見直しを進めたい。教育は絶えず見直す視点は大事であると思いますが、ゆとり教育の基本的な認識を持てば、偏差値教育に戻ることはありえないと思っております。来年1月、2月に新学習指導要領において初めて実施される小中学校の学力調査がございますので、その結果も踏まえて総合的に検討していきたいと思います。

記者)
 子どもに関わる事件、問題行動など、この夏、長崎、沖縄、東京と加害者、被害者になる凶悪事件が続いていますが、一方で不登校は統計では初めて減少したという調査結果がでました。いじめ、暴力行為も含めて児童生徒の問題行動も引き続き数多くある状況があり、文部科学省では、学校だけでなく家庭や地域との連携も大切であるということを強調されていますが、大臣自身はどのよう感想をお持ちで、今後どのように取り組まれるかお聞かせください。

大臣)
 最近の子どもたちの非行は非常に残念に思っております。大人も含めて正義感や倫理観が薄れつつあり弱くなっている面があると思います。正義感、倫理観を高める事が必要であると思います。先般、警察庁の方から、親の意識に関わるお話を聞きました。万引き犯を捕まえた時、親から、万引きくらい何が悪いのか、昔からあったではないかと言われたというのです。悪いことは悪いという根本的なところの教育をしっかりやってもらわないと、いくら警察官を増員しても追いつかないとの御意見を伺いました。私もその通りだと思います。家庭のしつけも最近欠けてきているのではないかと思います。中央教育審議会でも教育基本法に関する議論の中で、家庭教育の充実に関する記述も必要だという意見がありました。また、特に都市部における地域の教育力が低下したと言われ、人間関係が希薄になっている。地方ではまだ地域全体で子どもたちの面倒をみる風土がありますが、都市部では非常に希薄になってきているので、コミュニティーにおけるボランティアあるいはNPOを活用して、この問題に取り組んでいかなければなりません。「子どもの居場所づくり新プラン」という来年度の概算要求の目玉の一つがありますが、こればかりでなく有害図書などに子どもたちを近づけない仕組みなども大事だと思います。ひどい有害図書が、本屋の誰でも手に届くような場所にあることもありますが、そのようなことをなくすのは、大人社会の責任だと思います。そのようなことに警鐘を鳴らしながらPTA、地域、家庭で子どもたちを育てていく機運を高めていかなければならない。現場の学校の先生には限界もあると思いますが、そのようなことを前提としながら子どもたちを育んでいく必要があると思います。

記者)
 規制緩和の関係について、公設民営方式、株式会社・NPOの学校設置など、小泉内閣の下での教育の規制緩和についてどのように評価しているか、また、公設民営などの設置形態について、どのようにお進めになるかお聞かせください。
 
大臣)
 不登校児童生徒数が13万1千人と減少してきたことは、教育現場の先生方の努力であり、またNPOでも教育のことについて真剣に取り組んでこられた結果だと思います。また、チャータースクールへの努力もあるように思います。多種多様な選択肢があっていいと思います。まず特区で実施してもらい、成果があればさらにすすめるということですが、ただ、アメリカのチャータースクールのように学力低下問題に取り組むだけのチャータースクールなら、日本の場合は予備校や塾があるので不要です。日本では人間力を向上させるようなところを評価したいと思います。例えば不登校児を対象とした実績のあるNPOについては、学校の設置を認めるべきだと考えておりましたので、まずは特区でと思っております。株式会社についても資金が集めやすく、参加される方が教育に理解があり、いい教育が進められる確信があればやってみていいと思っております。これは規制緩和ですので、まず特区で進めていただければといい考えます。特区は、どちらかというと経済活性化・地域の活性化から生まれたもので、地域のやり方を尊重する方法ですので、国は資金協力はせず、地方で知恵を出してくださいということで行っているのです。株式会社なのに私学助成をしてほしいという要望まで出てきておりますが、憲法第89条の問題もありますし、行き過ぎではないかと思います。多種多様な取組みをしていだだく、あるいは公設民営についても、当面は幼稚園、高等学校について、中央教育審議会の御意見を踏まえて検討する方向で特区推進本部にもお示ししました。教育についてもできるだけ規制緩和するのが、今回の総理の指針でも示されておりますので、いろいろ多様な取り組みをしていただいて、地域の教育力を高めていただくことは大いに結構だと思います。そのことが義務教育段階の教員に刺激になれば、大いにやってもらいたいと思っております。教育は非常に公益性が高いことを十分に認識していただいて、これまで学校法人でやってきた私学の努力をないがしろにすることなくやっていただければと思っております。

記者)
 文部科学省が進める科学技術政策が、総合科学技術会議と必ずしも一致しないという指摘があります。今後、科学技術行政を進めるうえで総合科学技術会議との関係などについて、どういう形でお進めになるかをお聞かせください。

大臣)
 科学技術政策担当大臣が設置された時、科学技術政策が二元的になってはいけないと思ってましたが、政府全体の国家戦略として、日本の21世紀がかかった科学技術振興を総合的に考えていくための戦略、或いは総合的な資源配分をどうするかといった基本的な事項を総合科学技術会議でやっていただく、それを踏まえながら特に文部科学省は研究開発の中心的役割を果たしていく、或いは基礎科学をしっかりやっていくという具体的事項を行っていくことになります。両機関が役割を分担しながら一体となってやっていく、科学技術振興というのは文部科学省一省の担当では無いわけで、平成15年度の科学技術関係予算3兆6千億近くの64パーセントは文部科学省の予算でありますが、残りは他省庁にまたがっていますから、それを総合的に国家戦略として見ていくために総合科学技術会議の役割があると思ってまして、それとの連携をしっかり取ながら総合的に日本の科学技術を振興させることが大事だと思っております。

記者)
 東大などで科学研究費補助金等の不適正な使い方が相次いで発覚しましたが、基本的にどうあるべきかということについてお考えをお聞かせください。

大臣)
 大学において、科学技術・学術を推進しようとする教授の中にそういう者がいるというのは、モラルの問題としても極めて遺憾なことだと思っております。このようなことが起きないように、絶えず警鐘を鳴らしているのですが、これからは、さらに毅然として望まなければいけない。科学研究費補助金について問題を起こした研究者に対しては、一定期間科学研究費補助金の申請を採択しないということを、はっきりと明確にしました。我々も選挙違反をすると5年間立候補できないといった法律もできましたし、そのくらい厳しくしていかなければならないことは残念なことだと思ってます。最高学府である大学で起きたということは「何をか言わんや」、そういう思いを感じています。大学の先生も不正をやっているではないかとの風潮が広まったら、これは大変なことですから、きちっとしなければいけないことだと考えています。

記者)
 ITER(イーター)についてですが、青森県に誘致する方向であると伺っておりますが、大臣のITER(イーター)に対する基本的なお考えと今後の取り組みの方針についてお聞かせください。

大臣)
 日本が科学技術において世界の最先端をいく、或いは前向きな問題を含めてITER(イーター)の誘致を内閣として踏み切ったわけですから、文部科学省としては全力をあげてこれに取り組んでまいりたいと思っております。今、四ヶ所の誘致競争になっているわけですが、大きな国家戦略として取り組んでいるわけでありますから全力をあげてまいりたいと思っております。地元の青森県、関係省庁との連携も踏まえながら最大限の努力をいたしておりまして、現在、事務レベルの協議に入っている段階です。青森の利点を十分PRして誘致に成功したいと思っております。

記者)
 食育ということを強調されたことには、どのような理由があるのでしょうか。

大臣)
 1990年に立候補する時に、政治改革というのは正に血液から直していかなければ直らないと立候補の所信を述べました。狂牛病事件以来、特に食育が大切であるという思いがありました。この時は、衛生面・安全面の問題が中心だったのですが、私はかねてから食べることは一番大事だと思っていましたものですから、早くから学校現場で栄養教育をちゃんとやるべきだと思っていました。学校給食では、いわゆる栄養士がおられてバランスを考えておられますが、栄養士の皆さん方を栄養教諭として学校教育現場で活用して、もっと食育をしっかりやっていくことが必要だと思っておりました。中央教育審議会でその方針が打ち出されておりますので、それを進めていくことによって、食育が本格的に教育の一環として学校現場に入ってくることは、大いに意味があります。心身ともに健康な子どもを育ていくうえで、食べることは大事です。最近の高校生などは、すぐ貧血で倒れたり、献血が十分できない子どもがいる。朝、昼、晩きちっと食事を採らないとそういうことが起こり得る。食育を大切にすることを総理の所信に入れてもらったということは、文部科学行政を進めるうえで非常に大事なことだと思っていますので、重視していきたいと思っております。

記者)
 2年後に福岡の大宰府に博物館が建設されますが、文化行政についてはどういった取り組みをされるおつもりですか。

大臣)
 日本の伝統、歴史などを国民の皆さんに広く理解していただく意味で、博物館は非常に大事です。九州の伝統と歴史というのは、日本の大きな文化の一つでありますから、地元の御協力もいただきながら、国としても一体となって進めていくという方向になりまして、平成17年度中に開館する方向で進めております。文化行政にしっかり取り組むことによって、日本にこれだけ素晴らしい文化があるということを子ども達もしっかり学ぶ、そして日本の文化を世界に発信することで日本も元気を取り戻す。その意味で文化に力を入れることは大切でして、今年度予算で文化庁予算が1,000億円をやっと超えました。地方においても、史跡などを大事にして街づくりをしたいという声が高まっていますので、そういう取り組みをしっかり支援したいと思っています。

記者)
 高等教育関連ですが、大学を卒業しても就職ができないとか、少子化が進んでいるなどの問題点がありますが、今後の高等教育をどのようにお考えでしょうか。

大臣)
 国立大学の法人化という新しい時代を迎え、私学側にも緊張感が高まって来ております。少子化の傾向もあり、私学にしわ寄せがいくのではないかとの懸念もありますが、そのことで学生たちが被害を受けることがあってはならない。突然に大学が廃止になり、学生の行き場が無くなっては困りますので、財務諸表のあり方や公開の仕方などを考えていく必要があります。国立大学も評価を受ける時代ですから、私学も評価を受けながら、仮に経営困難になった場合にも修学の機会を優先的に確保していく方法を作らなければいけません。私学の建学の精神からいって、文部科学省が経営にあまり口を出すわけにはいきませんけれども、私学教育が持つ公益性を考えると無関心ではおれないと思っています。私学も必死にいろいろ特色ある取り組みをされていますけれども、それでも行き詰まってしまうということがあるかもしれません。そういう場合に学生が被害を被らないように、文部科学省としても何らかの対策を検討していかなければならないと思っています。

記者)
 食育についてですが、中央教育審議会で栄養士を教育現場にとの方針がでたのですが、何故、今日の共同記者会見の場であえて発言されたのでしょうか。何か今までの文部科学行政の中で位置付けられた食育というものを、超えるような施策を大臣が期待をされているという意味なのか、そのへんのところをお聞かせください。

大臣)
 食べることは大事だということを教育現場でも十分認識していかなくてはならないと思っております。食事というのは、一家団欒や意志の疎通の場としても非常に大きい意味があります。また、最近の子どもたちの「キレる」とかいう話でも、確たるものはありませんが、そういうことを調べている方の中には栄養のバランスを欠いたり、或いはカルシウムが特に不足するとそうなるとの指摘もあり、私もそういう議論をしたことがあります。学校栄養士の皆さん方が食育の重要性を絶えず訴え続けていることも事実です。私は、子どもたちの健康を考えた時に、食の安全や食事の習慣をきちっと守っていくことが、社会に出てからでも非常に大切だと思います。食に対して義務教育段階からきちっとした教育をしていくということは大事だと思っていますから、こういう一つの方向がでたということは大いに歓迎している。家庭の中での食事というものをもっと大事にしてもらいたいと思っておりますし、そういう総合的な観点から食育を進めてもらいたいと思います。

記者)
 大臣は総括政務次官から副大臣まで務められて、今回、教育基本法の改正という大きな課題の時期に満を持して就任された感じが強いのですが、「私が文部科学大臣をやる」という気持ちが強かったと受け止めてよろしいですか。

大臣)
 私は、もし大臣に選ばれるなら、文部科学大臣以外ありえないとの思いがございました。それは今ご指摘のように、総括政務次官、副大臣を務めてまいりましたし、教育基本法の改正は、日本の21世紀を見据えた形での教育改革の一番の根っこのところだという思いを持っておりますから。これは非常に大きな課題ですし、いろいろな御意見があることを踏まえながら、十分御理解いただけるように、教育基本法の改正についてしっかり汗をかき努力したいと思っています。

記者)
 職員にとっても、ある意味気心の知れた大臣だという声が聞こえてくるのですが、職員の方とはどのようにやっていきたいという考えをお持ちですか。

大臣)
 私も3人の大臣に仕えたといえども、トータルするとたかだか2年の期間で、全部が全部解っているということでは決して無いのです。文部科学省の皆さんが教育を変えなければいけないとの思いでがんばっていることは承知しています。気心が知れているからといって馴れ合いになってはいけませんし、変える時は思い切って変えていかなければいけないと思っています。文科省解体論というものも、若い議員のマニフェストには載っているくらいですから、そういうこともあるんだという覚悟のうえで取り組む必要があるのではないかと私は思っています。

記者)
 歴史認識について伺いたいのですが、歴代の内閣では閣僚の歴史認識の発言をめぐって、アジアの近隣諸国を刺激することが繰り返された経緯があると思います。村山内閣で過去の植民地支配と侵略についてお詫びの気持ちを表明した経緯があります。これは教科書検定などにも関わることでありますけれども、大臣御自身は先の大戦についてどのような御認識をお持ちかということや、村山内閣の談話についてどのようの御認識をお持ちかということをお聞かせいただけますか。

大臣)
 靖国神社参拝に関する御質問の時にも申し上げたのですけれども、第二次世界大戦でアジアの近隣諸国に大変な損害と苦痛を与えたという事実は、正面から受け止めなければならないと思います。同時に、その反省にたって日本は戦後50余年平和立国に努めてきました。その誇りは、失ってはならないと思いますが、アジアの近隣諸国の気持ちを十分受け止め進んでいかなければならないと思っていますので、基本的には当時の村山総理の談話というのは一つの方向だし、その思いがあるからこそ日本は平和で豊かな国造りをし、日本が作り上げた果実を少しでも、世界の平和に役立てたいという気持ちを持ち続けなければいけない。そういう意味での国際協調というのも大事です。それがなければ日本の国は成り立たない。世界の国々の理解と協力がなければ成り立たない。まして、一番近い中国や韓国との協力関係は非常に大事になってきています。日本は欧米ばかり向いているのではないかという思いがアジア諸国にあるかもしれませんが、そうじゃない。地理的な条件というのは永久にあるわけです。もちろん歴史認識が自虐的になり過ぎて誇りを失うようなことがあってはいけません。しかし、過ちは過ちと認めながら、今の日本の実績を見てくれということが大事だと思います。韓国においても、日本と協調していこうという機運が高まってきつつあると思います。経済協力にしても何にしても、お互いの信頼関係がなければうまくいきません。そのために日本がどうあったらいいかと考える。国益とはそういうものでなければいけないと私は思っております。

(了)


(大臣官房総務課広報室)

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